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2021年のグッドデザイン賞にも選ばれたSound AR™※アプリケーション「Locatone™(ロケトーン)」の開発プロジェクトに、サーバーサイドエンジニア(サーバー側で行う処理に必要なプログラム開発やデータ管理を行うエンジニア)として立ち上げから関わっている日野さん。聞けば、サーバーサイドの開発に関しては入社してから独学で習得されたとか。Locatoneの開発や日野さんご自身のユニークなキャリアについて、お話を伺いました。
*Sound AR™とは、現実世界に仮想世界の音が混ざり合うソニーによる新感覚の音響体験です

<お話を伺った人> 日野 直登(ヒノナオト)
ソニー株式会社 ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 HESソフトウェアセンター
2013年にソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社入社。スマートコネクトアプリの開発・先行開発、スマートプロダクト向け先行開発を担当した後、2019年からは現職にてSound ARクラウドの開発に着手。Locatone(ロケトーン)の立ち上げに、サーバーサイドエンジニアとして携わっている。

最初は携帯電話をつくりたかった

-日野さんはもともとLocatoneのようなアプリケーション開発がやりたくてソニーに入社した…というわけではないとお聞きしたのですが。
入社したのはソニーモバイルコミュニケーションズ(現在はソニー株式会社に社名変更)という、ソニーの携帯電話事業を担っている会社ですね。僕が就職活動をしていた2011年、2012年頃は、日本でもスマートフォンが普及して盛り上がってきているタイミングだったんです。それにともなって通信技術も大きく発展していきそうで、単純に面白そうな領域だと思っていました。

-大学・大学院でも関係する領域を学ばれていたんですか?
それが携帯電話とは全然関係なくて(笑)。大学院ではプロジェクションマッピングについて研究していたんです。いわゆるプロジェクター型のMR(Mixed Reality/複合現実)です。ただ、これまで学んだことに囚われずに仕事を選ぼうとは考えていました。

-具体的にはどんな仕事がしたいと?
ソニーのさまざまなプロダクトの連携です。携帯電話は他の機器との連携もしやすく、ハブになれる存在だと考えていました。その頃ちょうどソニーモバイルコミュニケーションズも、「テレビやノートPC、スマートフォンやタブレットをシームレスに連携させる」といった構想を発表していたのですが、その考え方にものすごく共感したことを覚えています。

-さまざまなプロダクトをつなぐハブとしての携帯電話に興味を持っていらっしゃったんですね。
当時は携帯電話やスマートフォンがソニーの各プロダクトを連携していく中心になっていくようなイメージでしたが、今となって思うことはハブとなるのは携帯電話ではなく、インターネットやネットワークだったということですね。さまざまな機器をつなげていく手段として不可欠となるのがサーバーサイドの役割であり、それがサーバーサイドの開発に興味を持ったきっかけでもあります。

-つくりたかったのは、プロダクトそのものではなくさまざまなプロダクトをつなげるコトだったんですね。
そうですね。ハブのようなものだったり全体最適だったり、全体を把握して考えるといったようなことが昔から好きだったように思います。

知りたいことだらけだった日野少年

-全体を把握するのが好きなんて、あまり聞いたことがありません。
小さい頃からそうだったみたいで、あらゆることに対して「なんでこうなっているのか?」がとにかく気になる子どもだったようです。「なんで?」「なんで?」を連発して、まわりの大人を困らせていたと母から聞かされています(笑)。

-日野さんの探究心のルーツがそんなところに!
探究心といえるほど立派なものではありませんが、知らないことを知って世界をひろげていくことが面白かったんだと思います。学校の勉強はあまり好きじゃなかったんですが、その後も好きなことには熱中するタイプでした。

-たとえばどんなことに熱中されていたんですか?
誰でもそうなのかもしれませんが、Wikipediaを見ていると時間を忘れてしまうということはよくありましたね。

-いや、あまりそういう方はいらっしゃらない気がします(笑)
あとは、新聞の経済面がお気に入りで、中高生の頃は毎日読んでいました。社会の動きを把握したり、情報を関連付けて理解したりといったことが最初は面白かったのだと思います。このあたりは、先程の「全体を把握する」ということにもつながっているのかもしれないですね。

-経済面を毎日読む理系学生というのも珍しいというか、進路選択では迷われなかったですか?
当時は自分の中でまだやりたいことが決まっておらず、結局は決めきれないまま研究領域が広くて何でもやれそうな、システム科学という分野を選びました。学びの領域を「これ」と決めてしまいたくないという思いもありましたね。

-学びの領域を決めてしまいたくないというのは面白いですね。
僕はもともと、自分で物事を決めて自分の好きなようにやりたいという思いが強い。型にはめられるのが苦手なんです。そういう意味では、自由闊達な風土が根付いているソニーという職場環境は自分にぴったりなのかもしれません。

Locatoneは別プロジェクトでの経験から生まれた

-携帯電話をつくりたくて入社された日野さんが、どのようにしてLocatoneの開発に携わるようになったんでしょうか?
入社後はさまざまなプロダクト開発に携わってきました。Locatoneの前は主にXperia Ear Duo™(エクスペリアイヤーデュオ)というワイヤレスイヤホン向けのアプリケーションなどを開発する部署に所属していたのですが、そのときの経験から立ち上がったのが、Locatone開発プロジェクトなんです。

-どのような経験をされたんですか?
当時、僕が先行開発として手掛けていたプロトタイプは結局、商用化されませんでした。先行開発なのでそういったことはもちろんあります。ただ、そのときに培ったサービス開発技術を使って、ソフトウエアの商用化に取り組みたいという気持ちが強くなりました。

-なぜハードウエアじゃなく、ソフトウエアなんですか?
ハードウエアはある程度年数が経ったら仕様の変更があったり、販売終了する可能性もあって、ハードウエアに紐づいているソフトウエアでは持続的にメンテナンスしたり発展させていくことが難しいんです。そうした思いは僕だけでなく部署内の他のメンバーも持っていたようで、「次はソフトウエアサービスとしても独自に収益を上げられる活動にしていきたい」という思いがメンバー間で共有されていきました。また、Xperia Ear Duoで評判の良かった「場所や時間に応じてアシスタントが話しかけてくれる」という機能を発展させる形で、Locatoneプロジェクトの立ち上げへとつながっていきました。

先が読めないからこそおもしろい

-あらためて、Locatoneのことを簡単に紹介してください。
一言でいうと、場所に応じて音が鳴るというアプリです。美術館とか博物館で、展示物に応じて解説が聞こえるようなシステムをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。そこにソニーの独自技術である「360立体音響技術」や「身体連動」なども使って、屋内外で現実世界と組み合わせた音体験をつくりだすことができます。

-アプリをインストールしてみると、いろいろなコンテンツがアップされていますね。
Locatoneではコンテンツのことをツアーと呼んでいるのですが、Locatone上にツアーをつくってくれるクリエイターを支援するために、Locatone Studioという場も用意しています。今はまだ限られたクリエイターの方々にしか利用いただけませんが、将来的には一般公開してツアーのさらなる充実を図っていくつもりです。

-Locatoneはグッドデザイン賞も受賞されていますね!
地方活性にもつながる新しいビジネスをつくりだす可能性がある、というところが評価いただいたポイントだと聞いています。Locatoneとしては地域活性に特化した使い方を想定していたわけではありませんでしたが、こうした評価をいただけて、より可能性が広がったと感じています。

-もともとLocatoneはどんなユーザーや利用シーンを想定していたんですか?
Locatoneとしての大きなビジョンのようなものはありました。ただ、ユーザーや利用シーンについてはプロジェクトチーム内で話していたものの、Locatoneの可能性を限定しないためにも、今回は敢えてそういった部分を定めずにリリースしたというのが正直なところです。

-プロダクト開発って、ターゲットユーザーとかニーズとかをかっちり定めて進めるものだとばかり思っていました…。
そのあたりをどこまで明確にするかといった裁量を、現場に持たせていただけたのかなと。もちろん実際のお客様とともに実証実験を行い、評価いただいたうえでリリースしていますが、こうした新規事業や新しいチャレンジを後押ししてくれる文化や風土が社内に根付いているのがソニーの良いところです。

-とはいえ、ユースケースを固定しない開発というのも難しいのでは?
そうなんです。アプリケーションとしての可能性は広がるものの、ユーザーや利用シーンが広がっていくと機能拡張なども必要になっていきます。僕が担当しているサーバーサイドは「全体をつなぐ」「全体を制御する」といった役割を担っているため一度つくると簡単に変更できない部分も多く、長期的な見通しを持ってロードマップを作成する必要があります。拡張性があるという点ではなかなか先が読めず難しい部分もありますが、僕も未来を考えることは好きなので、相性の良い仕事なのかなと思っています。

-日野さんにとっては、簡単じゃないからこそおもしろいわけですね。
さらに言うと、今回のように先の読めないふわっとしたプロジェクトの方が「答え」がない分、自分の意見も自由に言えて主体的に関わることができるのも魅力の一つです。

個人が自由に表現できる世界をつくりたい

-Locatoneの今後の展開について教えてください。
Locatone Studioの話もしましたが、魅力的なツアーをつくってくれるクリエイターやLocatoneをたのしむ場所を提供してくれるロケーションオーナー、そしてツアーをたのしむユーザーをつなぐエコシステムをつくっていきたいと考えています。

-具体的なイメージはありますか?
まずは魅力的なツアーを増やすためにも、クリエイターの方々がハードルなく簡単にツアー制作できるような体制構築が必要だと考えています。あとはクリエイターがツアーをつくると一定の収益が得られるといった仕組みもつくって可視化していきたい。こうした仕組みが整ってくると、地域の方々が自地域でツアーをつくって地域を盛り上げる…といったこともできるようになっていくと思うんです。そしてそこに、「360立体音響技術」などソニー独自の技術やソニーのイヤホンなどとの親和性を生かして実現していくことが、僕に求められる部分なんじゃないかと思います。

-日野さんご自身のビジョンというか、Locatoneに関わることで実現したいことはありますか?
個人のクリエイターの方、たとえばYouTuberや一般の表現者の方々が、自己表現の場の一つとしてLocatoneを使ってもらえたら嬉しいですね。

-それは、日野さんにとってどう嬉しいことなんでしょう?
SNSだったりYouTubeだったり、テクノロジーの民主化というか、個人がどんどん発信できるようになってきている流れがあると思います。個人的にはそれはとても良いことだと感じていて、自分もそういう流れを後押ししたいんです。

-Locatoneには、日野さんのそんな思いが込められていたんですね…
僕はもともと、自分で物事を決めて自分の好きなようにやりたいという思いが強いんですが、そういう意味では、個人が自由に表現して発信できる世界ってすごく理想的なんですね。そうした世界を実現するために僕はいま、Locatoneのような新規事業に関わらせてもらっているわけですが、前例のないことにチャレンジしているからこそ、僕自身もまた自由にたのしく仕事ができています。

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