ソニーで働く女性管理職下川僚子さんが、ソニーでチャレンジしようと思った源泉はいったいなんだったのか?
そんな下川さんの好奇心を形作るキャリアについて聞いてみた。
私は現在、カメラのUI開発を担う部署のマネージャーという立場にあります。入社した当時は、携帯電話の部門でアプリケーションの開発やパネルのドライバなどをつくっていましたが、その後は、カムコーダー用のアプリケーション開発やカメラのシステム開発、インドでのオフショアの立ち上げ、大規模なカメラのUI刷新プロジェクトなどを経験し、現在に至っています。
どれも好奇心を刺激する、やりがいのある仕事でしたね。そうしたキャリアの中、私はアサインされた仕事だけでなく、その仕事の周辺のことにも興味を抱くことが多く、興味を持った仕事も一緒にやらせて欲しいと意思表示をしてきました。上司や周囲の方たちは私の意志を尊重してくださり、どんどんチャレンジさせてくれましたし、時には間違った方向に進まないよう、アドバイスなどで導いてくれました。今思えば本当にありがたいことですね。
これまでの私自身の経験を振り返って思うのは、「若いうちから様々なことにチャレンジさせる。そして成功体験へと導いていく。」というのが、ソニーの社風なのだということです。管理職という立場になった今、若い人たちが積極的にチャレンジできる環境を整えることが、私の役割だと思っています。
これまでもキャリアを積むたびに新しい好奇心が生まれ、その好奇心を原動力に様々なチャレンジをしてきましたが、今一番興味を持っているのは、カメラの新しいUXを生み出すための取り組みです。今までになかったカメラの使い方を世の中に提示し、新しい世界を創りたい。そうした想いが強いですね。
ソニーのカメラに関する技術は、世界的にもトップレベル。トップランナーとして常に新しいテクノロジーを開発し、誰も見たことのない商品を創り出していくのが、私たちの使命です。少し大げさかもしれませんが、自分たちが未来を創り出している、というくらいの想いで、今後も仕事に取り組みたいですね。
もちろん未来を創るというのはとても難しいこと。でも、難しい方が楽しいと思うんです。そう思えるのは、これまでのキャリアの中で困難を乗り越え、積み重ねてきた成功体験のおかげかもしれませんね。
UI開発部門のマネージャーとして活躍している下川さん。仕事のスタイルや想い、人柄などについて、共に仕事に取り組む上司や同僚、部下の方たちからお話を伺いました。
田渕 達人
上司(部門長)
デジタルイメージング本部
ソフトウェア技術第1部門
佐藤 大輔
同僚
デジタルイメージング本部
ソフトウェア技術第1部門
プロジェクトマネジメント1部
村上 春佳
部下
デジタルイメージング本部
ソフトウェア技術第1部門
プロジェクトマネジメント1部
山本 大介
部下
デジタルイメージング本部
ソフトウェア技術第1部門
プロジェクトマネジメント1部
田渕:私はソフトウェアの開発部門を統括していて、下川の上司になります。彼女はその部門の中でカメラのUIを開発するチームの統括課長をしています。彼女とは長く一緒に仕事をしていますが、一番信頼しているところは、現場で起きていることをありのまま伝えてくれるところですね。私としては現場と離れていくことが一番マネージしづらくなるのですが、彼女は現場としっかり話をして、良いことも悪いことも隠さず伝えてくれます。とても頼もしいですよ。
佐藤:私は下川さんと同僚で、同じ部署の別の課のマネージャーをしています。下川さんと初めて一緒に仕事をしたのは2013年の「α7」の開発に伴うUI刷新プロジェクトでした。その後、新たなシステムの立ち上げを下川さんがプロジェクトマネージャー、私がプロジェクトリーダーという関係でさせてもらったのが一番接点の多かった仕事ですね。その時感じたのは、下川さんはもともとコミュケーションの取りやすいタイプである上に、人を引っ張る力もある人だなと感じました。周囲の人をドンドン牽引してくれますし、指示も的確。当時、下川さんの下にいた私はとても仕事がやりやすかったですね。
村上:下川さんの直属の部下になってから3ヶ月ほどしか経っていないのですが、以前からいくつかのプロジェクトで顔を合わせていましたし、「女子カメラ活動」という部活動的なカタチで女性で集まってカメラを良くしていこう、という活動にも声をかけてもらっていました。まだ一緒に仕事をさせてもらって間もないですが、私たちの伝えたいことを引き出してくれるという意味でとても助かっています。
山本:下川さんとは8年ほど前からお仕事をさせてもらっています。その間、いろいろな課の立ち上げや運営のやり方を見てきましたが、どの課も上手くいっているんですね。時にはさまざまなバックグラウンドを持った人間が集められた課もあったのですが、そういうケースでも最終的には仲間意識を強く持つ、まとまった課になっていました。雰囲気の良いチームをつくるのがとても上手いと思いますね。
田渕:私は下川のことを女性として意識したことはありませんね(笑)。あくまで1人の優秀な人材であり、もちろん今のマネージャー職に就いていることも必然だと思っています。少なくとも私たちの周りでは性別を意識することはありません。
村上:女性の立場からしても仕事はとてもやりやすい環境ですね。下川さんのようにマネージャーになって活躍されている女性も多いので。女性のキャリアを考える上で下川さんのような存在は、すごくいい目標だと思います。下川さんとの関わりでいうと、確か2013年の「α7」のUI刷新プロジェクトの時は、ここにいる全員がなにかしらプロジェクトに関わっていましたよね?
田渕:あのプロジェクトでは下川は妥協しなかったよね。UIというのは100点がなくて、ゴールがない。商品化するためにどこまでやるのかは、開発者の意志で決まります。UIの刷新というのはとても難しいプロジェクトだったので、いくらでもアクセルを緩める選択肢はあったと思うのですが、最後までアクセルベタ踏みでしたね。ここまでやらなきゃダメだってところを曲げずに最後までやった結果、そのUIは今でも使われていますから。
佐藤:当時私もあのプロジェクトに関わる別のチームにいたのですが、妥協しない開発をするということは、関係するチームに様々な負荷がかかり、困難な状況が生まれることもしばしばありました。そうした状況に陥ると、下手をするとチームごとに「なんであんなことやってんだ」ってなりかねないです。でも、下川さんは妥協しない理由をきちんと説明して必要性を説いてくれるので、それなら一緒にやろうって気になりましたね。
村上:下川さんって「こうしたい」という想いをすごく発信されるんです。そして、その想いに共感できるんですよね。だから、私たち下の人間もついていきたいと思いますし、頑張らなきゃ、って気持ちになりますね。
山本:あと、相談すると必ず前に進めてくれますよね。うやむやにすることなく、即座に判断してアドバイスしてくれます。あまりに早すぎてどこまで考えて言っているんだろうって思うこともありますが…(笑)。実はちゃんと判断ができている。そういう所、真似できないなと思います。
田渕:バランス感覚も良くて、良い時は良い、悪い時は悪い、をはっきり言う。場合によっては男性マネージャーより厳しいことを言っていると思いますよ。でも、その言葉には説得力がある。だから、みんながついてくるんでしょうね。あとは、こちらのオーダーに対して答えが大きくブレることもない。人の発言の細かなニュアンスなんかも理解しようとしているからだと思いますね。そういった部分は女性ならではの良さなのかもしれません。そのあたりはどう?
下川:基本的にわからないことをわからないまま抱えるのがすごく嫌なので、その人がどういう意図で発言しているのかをしっかり理解しようとしますね。わからなければ上司に確認したり、周囲の人にも積極的に聞きにいきます。
田渕:私はこれまで彼女には抽象度の高い業務を任せているます。例えば、何年かに1度大きなモデルチェンジをしないといけない商品や、全く違うタイプの商品をつくらないといけない時があります。誰もが初めての開発に直面するわけで、大きな困難を伴います。でも、彼女は「何をやればいいのか」から考えるタイプなので、ルーティンワークよりもそういった業務で大きな成果を挙げられると思います。今後も新しい道を切り開くような活躍を期待したいですね。
下川:まあ、前線で戦う仕事がよく回ってくるなと…(笑)。
一同:(笑)
山本:確かに固まったスキームの中に収まるわけではなくて、「こういうことをやってみようよ」といろいろ提案してくれるので、私たちも新しいことにチャレンジする意欲が湧いてくるんですよね。
佐藤:以前、下川さんと新たなシステムを立ち上げる仕事をした時に楽しくできたので、もっと大きくて難しいプロジェクトを一緒にやってみたい気持ちはありますね。下川さんとなら難しさを楽しさに変えるような仕事になるはずですから。
村上:私もこれまでやってみたいと思いながらなかなか一歩を踏み出せなかったことでも、下川さんに相談すれば積極的に後押ししてくれますし、ドンドン新しいことに一緒にチャレンジしていきたいと思いますね。