報道資料
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2011年7月12日
ソニーは、ノートPCの電池として広く使われている直径18mm、長さ65mmの円筒形において、スズ系アモルファスを負極材料に用いた、3.5Ahの高容量リチウムイオン二次電池“Nexelion(ネクセリオン)”を開発しました。
ソニーは、2005年に高容量材料である「スズ系アモルファス負極」の開発に成功し、直径14mm、長さ43mmの円筒形サイズで、業界で初めて商品化し“Nexelion”として導入しましたが、このたび直径18mm、長さ65mmの円筒形サイズに拡張し、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧2.0Vまで範囲を広げることで、3.5Ahの容量を実現し、2011年中の出荷を予定しています。
1.スズ系アモルファス負極
一般にスズやケイ素、あるいはこれらの元素を含む化合物は、リチウムイオン二次電池の高容量化を実現する負極材料として注目されてきましたが、これらの元素を用いた場合、充電・放電時の粒子形状の変化が大きく、実用化においてはサイクル特性(充放電を繰り返すことにより電池容量が低下する現象)の改善が大きな課題でした。2005年2月に、ソニーはこの課題を克服すべくスズ・コバルト・炭素などの元素を原子レベルで均質混合し、アモルファス化処理した材料を開発、この負極材を採用することにより、充電・放電時の粒子の形状変化を抑え、充放電サイクル特性の向上を図ることに成功しました。
そして、さらに電池の形状をノートPCなどに広く使われている、一回り大きなサイズにも展開できるよう、2005年発表時より更に負極粒子形状の最適化を図り、実用性と量産性を高めた材料を採用することで、電池容量の大幅な向上が実現できました。また、この負極材のリチウムイオン受け入れ性の高さにより、充電特性が高く、0.7ItAでの急速充電が可能、加えて同材料の特長である低温特性が良いといった利点も継承されています。
化学的に容量が低下するとされている低温度環境下(−10度〜0度)でも高い容量維持率を保持、弊社従来品(同サイズの円筒形2.2Ah品)に比べて放電容量はおよそ75%アップしています。
高容量化には、スズ系アモルファス負極の採用だけでなく、正極材料の表面処理技術も寄与しています。高い充電圧が負荷された状態においても、材料元素の安定性を保つための表面処理技術によって、4.3Vまでの充電終止電圧が達成でき、電池としての信頼性の向上や高容量化を実現しています。
今回採用されているセパレータには、ポリオレフィン微多孔膜に3次元ネットワーク構造を持つセラミック層を付加し、微多孔膜そのものが持つ透気性や強度などの特性を損なうことなく、万が一、金属異物が混入した場合でも内部短絡をシャットダウンする機能が働いています。この安全性を高めたセパレータにより、エネルギー容量の高い充電や放電にも対応できるため、高容量化に貢献しています。
項目 | 当社従来品(18650G6G) | 新開発Nexelion(18650WH1) |
負極材料 | 黒鉛 | スズ系アモルファス材 |
正極材料 | ニッケル-コバルト-マンガン 複合酸リチウム |
コバルト酸リチウム |
電解液 | ハイブリッド電解液 | ハイブリッド電解液 |
サイズ | 直径18mm×高さ65mm | 直径18mm×高さ65mm |
容量(0.2ItA) | 2.2Ah (3.0V終止) | 3.5Ah (2.0V終止) |
標準充電電圧 | 4.2V | 4.3V |
エネルギー密度 | 474Wh/l、182 Wh/kg | 723Wh/l、226Wh/kg |
質量 | 43.5 g | 53.5 g |