
サステナブルな社会づくりを目指している、再生可能エネルギーシステム
ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は、再生可能エネルギーを共有し活用する技術やコミュニティの行動変容の推進を通じて、社会の持続可能性を高め気候変動に対応していきます。

人間の活動は気候変動や生物多様性の喪失などを引き起こし、その結果、あらゆる生命に影響を与えています。ソニーCSLは地球上の生物多様性を守り、環境負荷が地球の限界を超えないように、エネルギーインフラに関わる環境の課題解決に挑んでいきます。その取り組みのひとつが、オープンエネルギーシステムTM(OES)です。
オープンエネルギーシステム(OES)とは?
技術のちからと行動の変化によって再生可能エネルギーを安定的に供給することは、エネルギー、コミュニティ、環境のトリレンマ(3者の目標を同時に達成するのが難しい状態)の解消につながります。OESの技術でコミュニティの電力需要をナビゲーションすることによって、再生可能エネルギーを使いやすく、地域の環境にも配慮した、好ましいサイクルを生み出すことが可能です。

OESは、再生可能エネルギー由来の電力を備蓄してコミュニティ内で柔軟に融通し合うことができる、人に寄り添う分散型のエネルギーシステムです。技術によって再生可能エネルギーの発電量の変動を平準化するだけではなく、人々の行動変容を促すことでこのシステムを実現します。
[1] 従来の電力システム(中央集権型) [2]オープンエネルギーシステム(OES)(分散型)
地産地消を念頭に発電された再生可能エネルギーは、P2P電力融通技術を介して、自律的かつ効果的に共有されます。これにより、電力の余剰と不足をユーザー側で制御しながら融通し合えるだけでなく、コミュニティ内の人々が需要と供給を意識することで自身の行動を変えるきっかけにもなります。
[1] 電力量 [2] 時間 [3] 電力消費 [4] 太陽光発電 [5] 余剰電力 [6] 家庭用蓄電池 [7] コミュニティ
OESは人々に電力の使い方についての再考を促します。再考により、人々は行動を変え、環境への意識を高めて、ひいては地球の限界(惑星限界)を超えないことにつながります。また、再生可能エネルギーを活用することで、電線のない場所でのあらたな生活・体験の提供にもつながります。
オープンエネルギーシステム(OES)の実現を目指して
OESは電力を自律的に柔軟に融通することで、再生可能エネルギーの有効性を高めます。また、既存の送配電網からの自立性が高いため、安定的した送配電網が存在しない地域や停電が頻発する地域において特に効果的です。そして、コミュニティの人々の電力消費についての行動変化を促します。

2010年にアフリカで、国際的なサッカー大会をパブリックビューイングで提供するプロジェクトを実施して以来、これまでさまざまな実証実験を実現してきました。OESは、分散型の電源と蓄電池を使用して自律的に運用されるので、自然災害に対するレジリエンス(強じん性)に優れているほか、事業者や自治体、さらには個人単位で導入することができます。

ソニーCSLは沖縄科学技術大学院大学(OIST)のキャンパス内に直流(DC)を採用したOESを設置し、2014年12月から電力の自律的な相互融通の実証実験をおこないました。


OIST における2015 年の実データによるシミュレーション
2014年から2020年まで、OISTと共同で構内の教員用住宅19棟に太陽光発電(それぞれ約2.8kW、4.2kW)と蓄電池(約4.8kWh)を設置。電力を柔軟に融通し合うことで、再生可能エネルギーの自給率が向上することが実証されました。
[1] 融通あり [2] 融通なし [3] 自給率 [4] 1月 [5] 8月
OESを制御するソフトウェアAPISは実用レベルに達しつつあり、現在はオープンソース化されています。拡張性が高く、標準的なIoTボードといった市販のハードウェアでもエネルギーシステムを制御することが可能です。ソニーCSLでは、オープンイノベーションを通じて、分散型電力システムの実装を促進するとともに、さらなる環境技術の開発を後押ししていくことを目指しています。

この実証実験では、発電量の予測(天候データを活用)と電力消費量の予測(宿泊予約の状況と天候データを活用)に基づき、システムが自動的に充電計画を策定。最も効率の良い形で電力の「おすそ分け」を自律的に実行します。また、電気自動車(EV)が、人だけでなく、電力も運搬していきます。
エネルギーシステムの未来
既存システムと地域分散型電源をつなぐ
気候変動に対応するにあたり、ソニーはOESの技術を活用することで持続可能なエネルギー社会の実現を目指しています。これは、既存のシステムと連携しつつ、災害に強い分散型システムによる発電と電力使用や、コミュニティの人々の行動変容を通じて実現する社会です。また、既にオープンソースとして公開した技術を活用し、モビリティや物流との連携を強化していきます。
[1] 再生可能エネルギー [2] 住宅 [3] コミュニティでの行動変容 [4] [5] [6] 公共施設(オフィス、学校など) [6] EV [7] バックアップとしての既存系統のエネルギー
開発者インタビュー

川本 大輔
ソニーコンピュータサイエンス研究所
プラネタリーナビゲーショングループ
OXSプロジェクト
私たちは、プラネタリーバウンダリーをポジティブに変容させる新たな文化を根付かせることを目指して活動しています。
これまでのオープンエネルギーシステム(OES)での活動を通じて、どこでも手軽に作り・使うことができる再生可能エネルギーを活用することで、人類が活動可能な地域を広げ、これまでにない体験や価値を持った新たな生活様式を創造できる可能性が見えてきました。
人々の行動のナビゲーションと、行動とインタラクティブに連動するエネルギーの制御技術により、人類の活動範囲を物理的・心理的両面から拡張し、新たな文化へとつなげる研究を、これからも私たちは進めていきます。
ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は、新たな研究領域や研究パラダイム、新技術や新事業を創出し、人類、社会、そして地球に貢献することを目的とし、1988年2月に設立されました。東京、パリ、京都、ローマを拠点とし、現在は生態系、都市計画、エネルギーなどの社会課題から人間の能力や創造性の 拡張、そしてAIやデータ解析まで多様なテーマの研究と研究成果の社会還元・実装に取り組んでいます。

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