「原型を創る」とは、
新しい価値を未来に示すこと。

ポップ ヅァン

コミュニケーションデザインを
手掛けてきたデザイナーが語る
ソニーデザインのフィロソフィー

オリジナリティを見つける
ことが「本質」の基準

ソニーのデザインフィロソフィーについて、どのように受け止めていますか?

数年前、「原型を創る」という言葉が打ち出されたとき、それまで自分のなかでぼんやりとしていた部分がはっきりと理解できるようになりました。私がこのフィロソフィーの中で重要だと感じるのは、未来形の表現であるという点。静的なものではなく、もっと動的なもので、つまり、新しい価値観を示していくことだと考えています。自分自身を常にアップデートし、学び、先にあるゴールへ向かって歩き続ける。そうやって地道に積み上げたものが原型になるのです。

自分ならでの
オリジナリティを保つこと
ソニーのデザイナー、ポップ ヅァンがソニーデザインフィロソフィーの「本質」について語ったものをコンピュータグラフィックスで表現した映像です。

「先駆」や「本質」は、実用的な考え方であり、比較的容易に進めることができるので、個人的にはとても明確です。また、「本質」は単に誠実さや完璧さの追求だけでなく、ソニーのデザイン領域の中で自分なりの個性を見つけることでもあります。ガイドラインやレギュレーションに沿ってデザインするだけではなく、自分ならではのオリジナリティを保つことが必要です。

「共感」のためには
社会や人々への理解が重要
ソニーのデザイナー、ポップ ヅァンがソニーデザインフィロソフィーの「共感」について語ったものをコンピュータグラフィックスで表現した映像です。

そして「共感」とは、新しい価値観だと考えています。どちらかと言えば抽象的で、かつ広範囲に及ぶものだと思っていますが、確実に言えるのは、デザインは常に人々の役に立つものでなければならないということ。よって、世の中で起きていることの文脈や、社会、そして人々のことを深く理解することがとても重要です。

特に新型コロナウイルスのパンデミックを背景とした環境では、地域によって人々の価値観や態度、ライフスタイルが大きく異なっています。例えば今の中国の若い世代は国家と伝統文化に誇りを持っていますが、だからといって常に伝統的な色や文様を好んでいるわけではなく、もっとグローバルな視点で物事を見ています。

つまり、フィロソフィーをデザインとして表現し、新しい原型となるものを描くためには、出来事の背景にある理由や価値観まで理解する必要があります。自分を知り、相手を理解して初めて、私たちはデザインの価値を定義でき、ひいてはそれをユーザーに届けられるのです。

ソニーのデザイナーとして、大切にしていることは何ですか?

デザイナーが担う役割は、どんどん広がってきていると思います。ソニーに入社した当初、私はグラフィックデザイナーとして、グローバル展開するパッケージを作ることが仕事でした。求められていたのは、いかに美しいパッケージをデザインするかということ。しかし今では、プロジェクトプランナー、リサーチャー、ストーリーテラー、デザインプロデューサーなど、様々な役割を担っています。

そこで一番大切にしているのは、プロジェクト関係者とのコミュニケーションです。私たちの最終的な目標は、デザインを通して人々の問題を解決することなので、まずはプロジェクトの目的と目標を理解し、ゴールを明確にした上で、それを達成するための解決策を検討することが大事だと考えています。そのうえでメッセージをターゲットに届けるために様々な方法を考えます。例えば、見え方を改善したり、グラフィックをスクリーンやアニメーション、モーショングラフィックのような新しいメディアに発展させたりなど。また、最近ではメッセージをビジュアルだけではなく文章でも伝えていかなければならないと感じています。

2021年に中国で開催された「ソニーエキスポ」のビジュアルコミュニケーション

ソニー製品に魅力を感じたエピソードを教えてください。

私の最初のお気に入りはウォークマン® でした。カラフルで個性的で多様なデザインスタイルが好きでした。しかしあるとき、東京のソニー歴史資料館でとてもクラシックで貴重なデザインの製品を見つけてからお気に入りが変わりました。それは「CHOROCCO」というもので、ミニカーの形をしたレコードプレーヤーです。レコードプレーヤーと言えば、通常はレコードが回って針が固定されているものですが、CHOROCCOは回っていないレコードの上を針のついたミニカーが走ることで音を再生する仕組みです。1976年に社内アイデアコンクールで提案されたもので、私にとってはとても革新的なものでした。

*ソニー歴史資料館は2018年末に閉館しました。

CHOROCCO

デザインの力でサステナブルな
未来を実現したい

デザインが今後、世の中に寄与できるとしたら?

今の社会はものすごいスピードで発展していて、新しいテクノロジーがいたるところで生まれています。そのテクノロジーを組み合わせ、活用し、ユーザーフレンドリーでわかりやすいソリューションとして人々に提供することが、デザインの、そしてデザイナーの使命です。

これまでのソニーは、デザインによって最先端であるというイメージを伝え、常に人々の興味を惹いてきましたが、その手法は、まだまだ追求する余地があると思っています。その中で私は、人々がテクノロジーに対する意識やビジョンを高められるようなメッセージを打ち出し、持続可能な未来のために貢献していきたいです。ソニーにはそれを実現できる機会があると信じています。

「落ち着いて、先ずは考える」このようにしてアイデアが生まれます。

ポップ ヅァン

2010年ソニー入社。ローカル/グローバルのコミュニケーションやデザインのサポートを担当した後、
現在はデザインプロデューサーとして、「ソニーエキスポ 2021」のローカルマーケティングなどを手掛ける。
直近では、若い世代のニーズや価値観を知るためのリサーチプロジェクトを行う。