フィロソフィーは、
私たちが積み上げていくべき
あり方

リッケ ゲルツェン・コンスタイン

CMFを手掛けてきたデザイナーが語る
ソニーデザインのフィロソフィー

学びと体験を通じて
フィロソフィーを
自然に体得できる

ソニーのデザインフィロソフィーについて、どのように受け止めていますか?

ソニーデザインには「原型を創る」という、脈々と続くフィロソフィーがあります。そこには先駆、本質、共感といった概念も含んでいるので、単に美しいハードウェアをデザインするための考えをまとめたのではなく、より人間的な部分に訴えかけてくるのです。そのため、私は初めて聞いたときから共感できました。

フィロソフィーとは、毎週確認するチェックリストのようなものではなく、デザイナーの一員としてのあり方であり、私たちが積み上げていくべきソニーデザインの価値です。改めてその言葉を見返してみると、今の世の中に沿ったものだと感じています。パンデミック以降、あまりにも多くのことが不確かに感じる中で、本質と共感にフォーカスすることはつねに優先されるべきではないでしょうか。

先駆とは、常に新しい事に
挑戦して一歩先をゆくこと
ソニーのデザイナー、リッケ ゲルツェン・コンスタインがソニーデザインフィロソフィーの「先駆」について語ったものをコンピュータグラフィックスで表現した映像です。

ソニーの歴史はイノベーションを推進し、新しいビジョンをつくりだそうとするエンジニアとデザイナーの努力の積み重ねであり、それは現在も変わりませんが、以前は「なにか新しいものを創る」ことを優先して「誰のために」という視点が弱かったのかもしれません。だからこそ私は日々デザインする上で、このデザインフィロソフィーに沿ったものをデザインできるように努めています。

まず「先駆」ですが、これは好奇心を持つということでもあります。常に新しい事に挑戦して一歩先をゆくことです。

本質は、企業としての
コミットメント
ソニーのデザイナー、リッケ ゲルツェン・コンスタインがソニーデザインフィロソフィーの「本質」について語ったものをコンピュータグラフィックスで表現した映像です。

「本質」を求め、なにが実現可能かを見極めながら誠実に創造する。これは企業としてのコミットメントです。

最後が「共感」で、私のお気に入りです。人の感情に訴えること、それと同時に社会のコンテキストを理解すること。後者についてはやるべきことが山積みです。ダイバーシティやインクルージョンについてよく耳にしますが、これを一過性の流行語にしてはなりません。これらの理念は呼吸のように私たちの生き方に組み込むべきものです。

共感とは、人の感情に訴え、
同時に社会のコンテキストを
理解すること
ソニーのデザイナー、リッケ ゲルツェン・コンスタインがソニーデザインフィロソフィーの「共感」について語ったものをコンピュータグラフィックスで表現した映像です。

ソニーのデザイナーとして、大切にしていることは何ですか?

まだ若い頃、新しくて、他と違う面白いものをデザインしたいと思っていました。そうすると、先輩デザイナーやマネージャーから質問攻めに遭うわけです。「これは本当にユーザーのためになるのか? 触ったときに心地いいのか?」と。当たり前のことばかり聞かれていると思って防御モードに入り「私はこれがいいと思う、これが正しい」と、私なりの信念で反論しました。

でもこの経験を通して学んだのは、自分だけの視点を超えて、相手の立場に立って考えなければならないということです。これが、フィロソフィーの「本質」と「共感」の部分なのだと。私にとっては、このように仕事を通じて得られた学びと体験こそがフィロソフィーそのものなのです。

デザイナーは
直感的でなければいけない

デザインが今後、世の中に寄与できるとしたら?

現在私が関わっているプロジェクトはCMFフレームワークという、色・素材・仕上げの戦略の策定で、専門分野が異なる多様なメンバーで構成されたチームで取り組んでいます。色や素材はハードウェアだけではなく、各種サービスから映画やゲーム、あるいはスマホに表示されるUI、VRエクスペリエンスなど、すべてに関わっているからです。ソニーが携わる様々な領域に影響を与えることができるのです。

各領域のデザイナーには、大規模なリサーチを実施する時間的余裕がない場合も多々あります。そこで私たちが代わりに、起点とできるような標準を策定することで、個々のデザイナーがまったくのゼロからプロジェクトを始めなくて済むわけです。

CMF フレームワークプロジェクト

私にとって、ソニーデザインの最初の印象は、ハードウェアデザインです。それは「優れた品質とクラフトマンシップの反映」で、両者はとてもソニー的な価値観です。CMFフレームワークのプロジェクトを始めた頃、私たちのプロダクトの80%はブラックかシルバーでした。それ自体は強力なDNAでありアイデンティティなのでいいことなのですが、一方で時流にフィットさせる変革が必要な時期なのではないかと考えました。世の中はもっと色彩豊かですし、もしダイバーシティを語り、より多様なお客さまにプロダクトを届けるということを考えるならば、消費者のニーズによりオープンに向き合い、対話することを考えるための変化が必要だと考えたのです。これこそが、今の世の中に合う「共感」を視野に入れたソニーのDNAのアップデートだと思っています。

実際、人々がよりオープンに話し合うようになった世界の状況は、私のデザインプロセスの「共感」の部分に影響を与えています。デザイン・ディスカッションでも、BLMなどの活動や、パンデミックで人々が困窮している状況が議論に含められるようになりました。

ソニーのデザインはあらゆる人々のためのものですが、今の若い人たちは私たちの世代が若かった頃と違う形でテクノロジーと向き合っていて、あらゆる面でより自発的に行動するようになったと思います。彼らは単にモノを買ったり消費したりするだけではなく、自分の意見を持つことを重視します。ソニーも自らの姿勢をはっきりさせることが期待されており、私たちの活動については透明性が求められていると感じます。異なる立場の人たちの声をまず傾聴し、正しく理解したうえで、彼らに合った言語で語る必要があります。

先駆・本質・共感というフィロソフィーの3要素には、この傾聴と理解というものも含まれていると私は考えています。

リッケ ゲルツェン・コンスタイン

ソニー・エリクソンに2002年に入社。現在は、デザインセンター・ヨーロッパのスタジオ・ノルディック・デザインセンターにて
CMFフレームワークの戦略立案及び実装、素材開発を担当。