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ゲイであることをオープンにして自分の世界を広げる

中村 俊介
ソニー生命保険株式会社 新宿ライフプランナーセンター第2支社 第5営業所

本当のことが言えず、気持ちに蓋をしていた青春時代

自分がゲイだと認識しはじめたのは、中学生の頃。私が通っていたのは男子校だったのですが、ある同級生に対して、自分以外の友だちと仲良くしていると嫉妬するなど、友情とは違う感情を抱いていることに気付いたのがきっかけでした。その後で、恋愛ドラマを観ていたときに、その感情が恋愛感情であることを確信しました。また、友だち同士で好きな女性タレントの話をしていて、「こういう人を彼女にしたい」という話題になったとき、好きな女性タレントはいたものの、彼女にしたいという気持ちが理解できず、周りとはやっぱり違うんだなと思ったこともありました。私はゲイであることがいけないとか、ダメなものだという感覚は、まったくありませんでした。しかし、当時学校では、なよなよした子を馬鹿にしたり揶揄したりするような風潮があって、もし私がゲイだと言ったら、いじめられるんじゃないかと思い込んでいました。そして、これは絶対に人に言ってはいけないことだと思うようになりました。

正直私自身は、本当のことを言えないということに、そんなに悩んだり苦しんだりはしていませんでした。ただ、同級生に嘘をついていることや、本当の自分ではない部分を見せなければいけないことに、後ろめたさは感じていました。大学生ぐらいになると「彼女いるの?」と聞かれることがよくありますが、そんなときは、当時付き合っていた彼氏を彼女ということにして、架空の名前や性格を設定して話していたこともありました。でも、だんだん話のつじつまが合わなくなってきて、「この前、こんな子だって言ってなかった?」と突っ込まれることも。その場はなんとかしのぐのですが、言っていることがチグハグで自分に嫌気がさしたこともありましたね。

高校生の頃。中高一貫校だったので、高校でも同じ気持ちを抱きながら過ごしていました。

本当にやりたいと感じたライフプランナーという仕事

大学卒業後は、通信教育や出版を手がける会社に就職し、ダイレクトメールの企画・制作などプロモーション関係の仕事に携わっていました。あるとき、大学の先輩の紹介で某生命保険会社のスカウトの方から「ライフプランナーとして働いてみないか」というお誘いを受けました。私はそのとき、ライフプランナーという仕事があることを初めて知りました。実際にライフプランナーをしている先輩に会って、どんな仕事なのかを聞いてみると、保険商品を売るだけではなく、どう生きていくかをお客様と一緒に考える、人生の伴走者のような存在であることがわかり、とても興味がわきました。もともと私は友人や大学の後輩のキャリアの相談にのるのが好きだったので、ライフプランナーの仕事は、自分がやりたいことと合っていると思いました。それから、さまざまな保険会社の方にお会いして話を聞きましたが、人生を一緒に考えることに、どの会社よりも本気で取り組もうとしているソニー生命のライフプラニングに感銘を受け、転職を決意しました。

ライフプランナーは、万が一に対する備えから、住宅や教育の資金、老後の資産形成まで、お客様のお金に関するプラン全般の設計を一緒に考え、商品をご案内するのが仕事です。ご契約をいただいた後もライフイベントなどによって人生設計は変化していきますので、そのときどきに見合った内容の見直しや商品提案を行うことも必要です。まさに「人生の伴走者」という言葉通りの仕事だと思います。自分のご案内ひとつで、お客様のご家庭の運命を左右することにもなりかねないので、とても責任の重い仕事ですが、その分、お客様から信頼されたり、感謝されたりすることも多いです。「あなたがいてくれると、本当にありがたい」と直接言っていただけたときは、すごくやりがいを感じますね。

ソニー生命に入社したばかりの頃。お客様の人生を一緒に考える仕事は、私がやりたいこと、そのものでした。

目に見えない生きづらさを抱えた人の力になりたい

私は現在、さまざまな事情を抱えている人のカミングアウトを支援する団体で、ボランティア活動をしています。以前の会社の先輩がこの団体の活動に携わっていて、その存在は以前から知っていました。あるとき、先輩に誘われてイベントに参加したのですが、セクシュアルマイノリティをはじめ、ひとり親の人や児童養護施設で過ごしたことがある人、吃音などの障がいがある人など、外からは見えない生きづらさを抱える人たちのインタビュー記事が会場に掲載されていているのを見て、衝撃を受けました。学生時代からいろいろな人たちと接してきて、知り合いや友だちが多いことが自分の強みだと思っていましたが、その中に生きづらさを抱えた人がいたかもしれないのに、全然わかっていなかったことに気付かされました。この出来事がきっかけで、自分と同じように外からは見えない事情を抱える人たちの力になりたいと考えるようになりました。

団体では、10月11日のカミングアウトデーに向けたイベントの運営や、現在は休止中ですが、多様な人たちが交流できるバーの運営、学校や企業での研修などを行っています。カミングアウト支援など当事者にフォーカスした活動も行っていますが、当事者の周りにいる人たちの意識を変える活動も行っていることが大きな特長です。この団体で得たものはたくさんありますが、一番大きいのは、心の底から洗いざらい、気を使うことなく、さまざまなことを言い合える仲間だと思います。メンバーはみな多様性に富んでいて、それぞれの人生にさまざまな問題を抱えていますが、そういうことに真剣に向き合い、語り合える仲間がいるということが、今はとてもうれしいです。

ボランティア活動をしているNPO法人バブリングが主催するカミングアウトデーに向けたイベントでの一コマ。

自分をオープンにすることで広がった周囲との関係

ライフプランナーとしてお客様と対話したり、ボランティア活動でさまざまな事情を抱える人と接していく中で、誰もが人に言えないことを抱えていることに気付き、そういう人たちの力になりたいと思うようになりました。そのためには私自身が当事者であることをオープンにする必要があると考え、まずは家族と友人たちに告げました。職場では、ネガティブな反応があったらどうしようという思いもありましたが、同僚のライフプランナーたちに伝えたいことがあったので、カミングアウトすることにしました。一つは、お客様の中にもLGBTQ+の方がいるかもしれないので、結婚・出産など、いわゆる一般的とされる設計のライフプランありきで、質問したり、案内しないでほしいということ。もう一つは、私はLGBTQ+の専門家ではないけれど、いつでも相談にのれるので、なんでも気軽に言ってほしいということです。いきなり世界を変えることはできないけれど、まずは私が所属している職場から少しずつ変えることができたらという思いで、朝礼の5分間スピーチで自分の番が回ってきたときに言いました。

カミングアウトした後は、「自分のお客さんにもLGBTQ+の方がいるから、相談にのって」といった声をかけてもらい、実際に相談もたくさん受けるようになりました。LGBTQ+のお客様からは、当事者の気持ちをわかったうえで提案してもらえるので相談しやすいと言っていただけます。「自分の知り合いにゲイのカップルがいるから、相談にのってあげて」とお客様をご紹介いただくこともあります。カミングアウトしたことによって、社内でのつながりも広がりました。私の同期がLGBTQ+のお客様向けのセミナーをやっていることを人づてに知り、一緒に活動するようになりました。やがて、ソニーグループの人事の方ともつながりができ、そちらのイベントや研修にも講師として参加させていただくようになりました。

ソニーグループのイベント「ダイバーシティウィーク2017」では、LGBTQ+当事者によるパネルディスカッションに参加させていただきました。

それぞれの事情を理解し合い、誰もが安心できる社会へ

私はカミングアウトをする選択をしましたが、当事者の方々の中にはカミングアウトできない、したくないという方もいらっしゃって、それは決して悪いことではありません。ただ、非当事者の方々の意識が変わると、カミングアウトしやすい社会になることに違いないと思っています。そのために、非当事者の方々には、当事者を理解しようとしているという意思表示をしてほしいのです。たとえば、最近はLGBTQ+を題材にしたドラマや映画が増えていますが、日常会話の中にそういった話題を出して、「いいよね」「素敵だよね」と肯定的な言葉をもらえると、当事者の方も「この人になら、言っても大丈夫かも」と思えるようになります。当事者が自分から話をするのは勇気がいるので、非当事者の方から話してもらえるとうれしいですね。

私はセクシュアルマイノリティの当事者ですが、違う側面では非当事者でもあります。誰もが多かれ少なかれ生きづらさを抱えている当事者なのだと思います。先日、電車の優先席に座っていた若者を注意したら、その若者はカバンにヘルプマークを付けていたという話を聞きました。「若者は優先席に座ってはいけない」という固定観念を一旦横に置いて、どうして座っているのかを想像すれば、ヘルプマークを付けていることに気付けたかもしれません。想像することは、外から見ただけではわかりにくい当事者を理解するために大切なことです。事情は違えど、それぞれが何かしらの当事者であると思えば、お互いにちょっと優しくなれるのではないでしょうか。それぞれの事情を理解し合い、誰もが安心して過ごせる社会を作っていけたらいいなと思います。