SONY

メニュー
サイト内検索ボタン

検索

Technology

「データエコシステム」の構築によって
リカーリングでサステイナブルな価値創造を目指す

不動産事業というリアルビジネスの「スマート化」「プラットフォーム化」「オープン化」によって、不動産事業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を成し遂げつつあるSREホールディングス株式会社(以下、SRE)。この知見がいま、他業種へと拡張し始めている。その核となっているのが、AIによるクラウドサービスとコンサルティングサービスだ。SREは、いかなる未来を見据えているのだろうか。角田 智弘(取締役)と李 駿(データサイエンティスト)に訊く。

プロフィール

  • 角田 智弘

    SREホールディングス
    株式会社
    取締役

  • 李 駿

    SREホールディングス
    株式会社
    AIクラウド
    &コンサルティング事業本部

なぜソニーが「不動産」だったのか?

──SREは、どのような経緯で創業し、現在はどのような事業をおこなっているのでしょうか?

角田:2014年4月にソニー不動産株式会社として創業しました。コーポレートベンチャーという位置づけです。お客さま(ニーズサイド)とエンジニアが連携し、リアル世界で役に立つサービスを、テクノロジーを駆使してラピッドに生み出していく……。そうした価値創造がこれからは重要であり、なかでも不動産事業はまだまだテクノロジーが行きわたっていない領域なので、ソニーらしいイノベーションを起こしていけるのではないか、というのが創業時の考え方です。まずは不動産事業のIT化・AI化を進め、その過程で、不動産価格を担保評価等に利用する金融分野に進出し、徐々にほかの領域へと拡張していきました。その結果、不動産とAIを活用した他業種へのコンサルティングの2つが事業の柱となり、2019年5月にSREホールディングス株式会社へと社名変更しました。

李:同じオフィスに、不動産事業をおこなっている不動産実務メンバーと、AIエンジニアが同居している、いわば「リアル×テクノロジー」がSREの特徴だと思います。技術力に優れたテクノロジー会社やAIベンダーが、その業界のプロの人たちに対して「このサービスやシステム、便利なので使ってください」と渡すのではなく、企画段階から不動産のプロとエンジニアがディスカッションし、お客さまに依拠する実データを活用するからこそ、業界のニーズにより即したサービスを開発・運用できる。実際、我々が開発した不動産の価格推定AIにしても、単純にビッグデータをAIに学習させて出しているのではなく、当社の不動産のプロに実際に使ってもらい、そのフィードバックに基づきアルゴリズムのチューニングをおこなっています。AI、IoTやデータ解析をベースにしたサービスを世の中に展開していく上で、お客さまと直に接し、課題をヒアリングし、リアルなデータをいただいて機械学習のモデルを作り、課題解決をする……というのが、我々の事業に一貫している特徴だと思います。

リアル×テクノロジーのオープン化

──AIコンサルティング事業が育つまでには、どのような過程を経たのでしょうか?

角田:「リアル×テクノロジー」を自社サービスとして展開を進める中で、様々なお客様の支持を得ることはできましたが、「世の中を変えていく」とか「世の中にもっとイノベーションを拡げていく」という観点からすると、自社だけで強いものを作っていてもその利用は限られ、業界全体に拡がるまでに長い時間がかかってしまいます。だったら自分たちの技術やサービスをプラットフォームとして展開したほうが世の中を変えるスピードは上がるだろうということで、創業1年後にヤフー株式会社と協業し、不動産をオンライン売買できるプラットフォームを構築しました。もちろん、今後は間違いなくAIを活用する時代になるはずなので、プラットフォーマーとなり、データをしっかり集めていくことが重要だという認識もありました。その後、「契約書や重要事項説明書をオンラインで簡単に作れます」「オンラインで集客できます」「不動産の査定がAIで簡単にできます」といった法人向け不動産売買にかかわる様々なツールセットをクラウドで提供し始めました。

2018年には、金融機関から「不動産領域で使っていたAIを価格推定に使いたい」という相談を受けたことがきっかけとなり、AIソリューション事業が本格化し始めました。現在は不動産や金融機関のほかに、電力業界や証券会社、クレジットカード会社など、多岐にわたるお客さまに事業展開しております。

SREとしては「プラットフォームからデータが集まる」「お客さまからのリアルなフィードバックが集まる」といった、データのエコシステムをしっかり作ることが重要だと思っています。我々が提供している「おうちダイレクト」という不動産売買のプラットフォームは、ほかの不動産業者にも提供しているので、過去の不動産売買履歴も相当量が集まってきます。我々は、いろいろな不動産会社と連携することで独自のデータをどんどん利用可能な状態で貯められることができ、それが差異化につながっていると考えています。

──ソニーが不動産領域を持っていることで、どのようなメリットやシナジーが生まれると考えていますか?

李:通常のソニー製品は、例えばテレビなどは、お客さま自らが家電量販店やウェブサイトで購入し、設置を行うことが多いと思います。その点、SREは不動産事業をおこなっているので、建設やリフォームの際に、すべて利用可能なかたちで組み込むことができる。つまり、違う売り方ができるわけです。さらに言うと、環境側(建物側)にセンサーを埋め込むことが最初からできるわけで、今後それは、街づくりへとつながっていく可能性があります。「リアル×テクノロジー」という強みを活かし、いわゆる「不動産のDX」にソニーがかかわっていける可能性があると思います。もちろん、不動産取引においても、先に述べたように様々な「不動産のDX」を推進できると考えています。

コンサルティングとクラウドサービス

──AIに関するいろいろな課題のひとつに「バイアス問題」があると思います。みなさんの事業領域では、どのようなバイアスがありえて、それに対してどのような対策をおこなっているのでしょうか?

李:AIにおけるバイアスは、AIを扱う上で避けて通れない問題ですし、今後も議論されていくべき問題です。様々な場面でAIのバイアスは起こりえると思いますが、私たちが主に対策をおこなっているバイアスは大きく2つあります。ひとつが「時間経過によるバイアス」です。実状は変化しているにもかかわらず、古いデータをそのまま使い続けているというケースはあると思います。私たちが提供している「不動産価格推定エンジン」の場合、その対策として週に一度ほどアップデートしています。また、私が現在開発に携わっている電力の需要量・供給量予測エンジンでも、気候変動や発電機器の経年劣化、各世帯の居住者の生活スタイルの変化などに対応するため、各エンジンに対して適切なモデルの更新頻度を設定し対策をおこなっています。このように、情報鮮度によるバイアスは、時間経過に従ってモデルをアップデートしていくことが対処法になると考えております。

もうひとつは「サンプルバイアス」です。例えば、ある会社の過去の採用データを基に、その会社に適した人材を採用するAIの開発をおこなうとしたら、そもそもの過去の採用数が男性の割合が多い場合、「応募者の中から男性を採用する」という推測をAIがおこなう、といった不公正をもたらし、そのバイアスがさらに繰り返され、強化されるというフィードバックループが発生しうることは一般に知られています。これは人間がデータと作成された学習モデルを深く理解せずに利用することで起こる問題です。とどのつまりAIといっても入力される過去データを根拠に推論・判断しているに過ぎません。我々は、「データの構成はどうなっているか」「推論や判断の根拠は果たして何か」「あるデータとあるデータが相関している」といった学習データの中身と学習モデルをしっかり可視化し把握することで議論をおこない、複眼的な視点でデータとAIの出力結果を見ていくことが大切だと考えております。

角田:AIに関するブラックボックス的な話は確かに出てきますね。例えばある金融機関が住宅ローンを数万件実施している場合、ローンを実行している物件の資産価値を算定する必要があります。そのために、ディープラーニングを駆使し、ロジックの説明性は低くなってしまうのですが、精度の高いAIエンジンを作ることは可能です。ただ、彼らには説明責任があるので、ホワイトボックス化というか、ある程度説明が可能なAIモデルを使いながら、説明性が高い価格推定を作ることになります。ただし、ディープラーニングと比べて精度は少し落ちる。精度と説明責任、どちらも重要ですが、用途によってその優先度は変わるのかもしれません。

──SREのAIソリューションビジネスには、AIコンサルティングのほかに、AIクラウドサービスもあると聞きました。その2つのビジネスは、どのように連関しているのでしょうか?

角田:先程も少し触れたとおり、「企画から運用開発まで自分たちで」といったことと近い話なのですが、AIのモデルを作るだけではなく、自分たちでクラウドサービスを開発し、保守運用まで行っている点が、我々のAIソリューションビジネスの特徴です。最近だと「AI as a Service」と言われたりしますが、不動産の査定ツールや、お客さまに1 to 1の物件情報を届けるサービスにしても、すべて自社で運用しています。いわばリカーリングのビジネスです。

もうひとつの柱であるAIコンサルティングは、お客さまは多業界にわたりますが、それぞれの課題に対してAIのモデルを構築し、実際にAIを組み込むシステム開発までをビスポークでおこなっています。こちらは、まずP o C(技術適用の実証実験)を実施したあとに実開発し、組み込んでからは月額でライセンス料をいただく、といったかたちでやっています。

──どのような業界で、どういった課題に取り組んでいるのでしょうか?

李:AIコンサルでは、まず金融業界への取り組みが挙げられます。例えば投資銀行の案件では、まだ債券を購入したことがないカスタマーに対して、株の取引履歴から、債券を買う確率とどういう商品を買うかを推定するレコメンドAIや、債券市場状況の可視化といったことをおこなっています。あるいは、ホテルや旅館といった宿泊施設向けに、収益を最大化するためのダイナミックプライシングのAIを提供しています。ホテルを予約するときに、旅行に関するウェブサイトやアプリなどのサービスを利用すると、いろいろなプランが出てくると思います。その金額設定によって、宿泊施設側の収益は変わってきます。閑散期は安く、繁忙期は高くするなどと設定するわけですが、うまく決めないと収益が出ません。高すぎればお客さんは来ないし、低すぎれば利益が出ない。いままでは、旅館の方が経験に則って値段設定をおこなっていたわけですが、人件費がかかりますし、経験によって見極める力にも差が出てきます。そこで、プライシングを自動化できるシステムを構築しました。

角田:ホテルは、例えばシングルとダブルとかスペックが決まっているので、ダイナミックプライシングも単純なんです。周辺の競合がどれくらいで出しているかを見ればいいわけですから。しかし旅館の場合は、同じ部屋でも、会席料理プランを付けるのか、素泊まりなのか、露天風呂付きなのかで値段構成や利益率が変わってきます。4人泊まれる部屋でも、このシーズンだと2人でも泊まれるようにするけれど、この時期だと3人以上じゃないと泊まれないとか、いろいろコントロールされています。つまり、最適化のパラメータが非常に多いんです。なので、我々の場合はダイナミックプライシングで値段をコントロールするだけではなく、旅館のプランのコンビネーション自体もマネジメントしているんです。ですから、ほかのAIエンジンとはレベルが全然違うと思っています。

李:あとは、カード会社にクレジットカードでリボ・分割払いをする確率が高い人をサジェストする、オンライン証券会社向けに、アカウントを作ってから3か月の履歴を見て、今後5億円以上の金額を使う可能性が高い人を推測する、不動産会社向けに、中途採用者が入社1年後に120%以上の成績を上げるか、それとも80%に留まってしまうかをレジュメとSPIデータを使って推定する……といった課題解決をおこなっています。そういえば、証券会社をはじめとする金融機関が持つ課題のひとつに、「富裕層のお客さまを見つけ出したい」というものがありました。そういった予測は以前から独自にしていたそうですが、我々が持つ不動産の価格推定技術と、金融機関が持つ顧客の住所情報を掛け合わせることで、いままでより高精度な富裕層判定ができるようになってきました。

ブルーオーシャンAIを目指して

──AIクラウドのほうは、どのような業界にどのようなサービスを提供しているのでしょうか?

角田:AIクラウドは、業種でいうといまのところ不動産と金融がメインで、不動産AI査定と金融担保評価を提供しています。ただ、AIコンサルティングと掛け合わせることで、より効果が発揮できると考えています。まず、AIコンサルティングによって課題を発見して抽出し、新たなAIクラウドを生成してリカーリングしていく。そしてデータがたまっていくという、AIクラウドとAIコンサルティングの双方を有しているエコシステムを作っていこうというのが、いま考えている戦略です。

──ほかのAIベンダーとSREを比較したときの特徴はなんでしょう?

角田:通常、「いきなりクラウドを作ってリカーリング」はできないので、AIコンサルティング的なところから始まることが多いと思います。その点SREは、ソニー不動産の開発部門として自分たちでクラウドサービスを作っていたものを、金融機関からお声がけいただき提供したという背景があるので、実はAIクラウドサービスから始まっているんです。ほかのAIベンダーさんと比べると、リカーリングのベースがあって、その上でAIコンサルティングの売り上げを積み上げるかたちになっているので、ビジネス的にやりやすい事業体になっています。

──今後の取り組みの方向性を教えてください

角田:我々には不動産仲介というリアルがベースにあるので、そのスマート化をするためのテクノロジーを進めることで、まずはそのリアルビジネスがマネタイズできるようになりました。実用に耐えうるようになったAIサービスをプラットフォーム化することでスケールさせ、さらには他業種に対してオープン化していくことにも成功しました。また、『AIFLAT』を軸としたスマート化のためのクラウドを有していますが、今後はほかのデベロッパーにもそのプラットフォームを使っていただくことでデータが集まり、さらにスケールさせていくというのが今後の流れになります。その次に待つのが不動産投資事業の領域です。今後はREIT(不動産投資信託)事業への進出を準備中ですが、この分野においてもIT化・オープン化の流れを作り、データをためることで、事業を大きくしていきたいと思います。

我々はよく、レッドオーシャンAIとブルーオーシャンAIという言い方をしています。例えばAIチャットボットみたいなものは、テクノロジー的にはそれなりに難しいのかもしれませんが、その利用シーンはイメージしやすいものであり、機械学習に詳しい人ならば、開発が可能だと思います。でも「不動産仲介の売買プロセスのAI化」みたいなことを依頼しても、そもそもリアルの不動産仲介プロセスがわからないと作れないわけです。REITには不可欠なアセットマネジメントのAI化も、当然できません。つまり、リアルを持つ我々が作っているAIには参入障壁があるわけで、普通のAIがわかるだけでは作れません。それが、ブルーオーシャンのAI。そこは今後もしっかり押さえていきたい。そして実績が出れば、不動産から金融に拡がったように、ほかの領域でも導入しやすくなる。そういった流れでやっていければと思います。データエコシステムをしっかり作り、リカーリングでサステイナブルなビジネスを展開していきたいと思っています。

李:「データがないからAIを使えない」といった、お客さまの課題にかかわることが日々あります。我々は「ビッグデータがあればAIを作れます」ではなく、データを取るところのお手伝いから始め、リアルからデータを収集し、AIサービスを構築することを旨とします。将来は、取得したデータによる処理をデバイス側でおこない、リアルタイムでフィードバックをおこなうことになるかもしれません。そんな、高性能・高レスポンスのエッジコンピューティングといったところに対しても、不動産事業というリアルを持っているが故に、勝っていけるスキームを作っていけるのではないかと考えています。

欲しいのはフルスタックエンジニア

──さらなる発展を目指すにあたって、いま、どのような人材を欲していますか?

角田:いま、我々は面白いステージにいると思います。ソニーグループですが、AIベンチャー的な立ち位置でやらせていただいていて、しかもリアルなデータに実際に触れる環境下にあるので、「技術を使って実際にビジネス構築したい」「世の中にソリューションを出していきたい」という思いを持つ人には、すごく合っている職場だと思います。

李:特に、様々な技術領域・開発プロセスを知っているフルスタックエンジニアですと、活躍の場がより広いと考えています。フルスタックエンジニアとは、開発に必要なすべての工程をこなすことができるエンジニアのことを指します。様々なニーズに柔軟に対応しつつスピード感をもってビジネス構築をしていくためには、各人が状況によって複数の役割をこなす必要が出てきます。そのため、様々な技術領域を知っている、または興味がある方は力を発揮できる職場だと思いますし、ぜひ私たちの仲間になってほしいです。

角田:どういうものを作るのかという企画から、プロトタイプ、そして実際のシステム開発、それをクラウド上で運用するインフラやネットワークの設定……。あとはソニーグループならではともいえる、要素技術開発との連携部分。どの様なことに対しても興味を持つフルスタックな人材が確かに必要です。「ここだけをやりたい」とか「私は運用はやりたくない」というメンタリティではなく、なんでもやりたいという人材が現在の我々のフェーズに合っています。そして、入社して5年くらい経ち、「AIを使ってこんなサービスを作りたい」と発想したら、サーバー構築から運用まで、一通りできるようになってほしい。それこそ新たなAI会社を作ったっていい。新しい技術をベースにした新しい価値提供を作っていこうと思っていますので、スキルを身につけて、お客さまの課題を訊きながら、もしかしたら新たな不動産用の○○AI会社を作れるかもしれない……といった野望を持ってワクワクしてくれる人は、ぜひ来ていただきたいと思います。

関連リンク:
SREホールディングス株式会社
SRE AI Partners株式会社

前の記事

教育における「地域格差」をなくし
「個別最適な学び」をうながすための準備は整った

2020年12月18日

次の記事

医療のDXが加速することで「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる」未来が訪れるかもしれない

2021年2月24日

Stories 一覧へ

このページの先頭へ