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報道資料
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2002年3月19日

高度な運動性能と豊かなコミュニケーションを実現した小型二足歩行エンターテインメントロボットを開発

ソニーは、二足歩行ロボットの可能性を追求するため、家庭において想定される環境や場面に適応して行動する小型二足歩行エンターテインメントロボット『SDR-4X』を開発しました。 各種センサーシステムと記憶や学習に基づく行動制御ソフトウエアを開発することにより、 高度な運動性能とともに、人とのより豊かなコミュニケーションを実現しました。

SDR-4Xでは、各関節を駆動する小型アクチュエータの出力性能を向上させるとともに、内蔵された各種センサーからの情報に基づいて全身38箇所の関節部をリアルタイムで制御する 『実時間統合適応制御システム』を新たに開発しました。不整地面や傾斜面における二足歩行だけでなく、外部から力が加えられた場合の姿勢保持制御なども可能となり、より高度な運動 性能を実現しました。さらに、歩幅や旋回角度など、状況に応じて必要な歩行動作パターンをリアルタイムで生成することで、安定かつ柔軟な歩行が可能です。
 また、2つのCCDカラーカメラを搭載しており、2つのカメラの視差を利用して被写体までの距離を検出することが可能になりました。これにより、床面の存在や障害物とロボットとの間隔などを認識し、障害物を避けた経路を自動的に生成して歩行することもできます。

また、画像・音声認識技術や音声生成技術に加えて、記憶に基づく対話や行動の制御技術を採用し、人とのより豊かなコミュニケーションを実現しています。CCDカラーカメラから入力された正面顔画像から、顔を検出し、誰であるかを識別することができます。また、頭部に配置された7つのマイクロフォンを使用して、音のする方向を検出するとともに、話者識別を行なうことが可能です。さらに、内蔵ワイヤレスLAN機能を利用することによりSDR-4XのCPUに加え、外部接続されたコンピュータとの連動も可能となり、大語彙の連続発話の音声認識も実現しています。
 画像認識で得られた人や物の場所など情報は、短期・長期の記憶情報として利用され、記憶に基づいてより複雑な対話や行動を実現することができます。さらに、楽譜データや歌詞データを入力することで、音声合成によりビブラートを含む歌声を生成、感情や動作に合わせた歌唱など、エンターテインメント性の向上も図られています。

なお、『SDR-4X』は、2002年3月28日(木)から31日(日)までの4日間、パシフィコ横浜(横浜市みなとみらい)で開催される人間共存型ロボット博覧会「ROBODEX 2002」に出展される予定です。

試作機"SDR-4X"の主な特長

1) 実時間統合適応制御( Real-time Integrated Adaptive Motion Control )

不整地面や傾斜面での歩行だけでなく、外力が加えられた場合の姿勢保持など、統合的な適応制御が実時間で可能となりました。

  • 約10mmまでの凹凸面に対応した不整地歩行が可能。
  • 約10度までの傾斜面の歩行と登坂が可能。
  • 外力が加わる場合は、転倒を避ける回避移動を実行。
  • 転倒時には、衝撃回避に適した姿勢の保持するとともに関節を柔らかく制御し、衝撃を緩和。

2)実時間歩行動作パターン生成制御( Real-time Gait Pattern Generation Control )

センサーからの情報に基づいて、状況に適応して歩幅、歩行周期、旋回角度などを可変し、必要な歩行動作パターンを実時間で生成します。動的に安定かつ柔軟な自在歩行が可能となりました。

3) 実世界空間知覚技術( Real-world Space Perception Technology )

頭部に装備された2つのCCDカメラにより、被写体までの距離検出が可能となり、床面や障害物までの距離などが認識できます。その情報を利用することで、障害物を避けた経路を自動的に生成し、歩行することが可能となりました。また、頭部に装備された7つのマイクロフォンにより、音源の方向を検出することもできます。

超小型ステレオビジョン 超小型ステレオビジョン
実時間障害物検出/経路計画 実時間障害物検出/経路計画
(1)
(2)
(3)

4) マルチモーダルヒューマンインタラクション技術 ( Multi-modal Human Interaction Technology )

  1. 個人検出、識別学習技術
    複雑な背景の中から顔(正面顔)を検出、識別します。また、学習機能により最大10名までの顔を記憶することができます。さらに、音声により誰であるかを識別することも可能です。
  2. 連続音声認識と未知語獲得
    ワイヤレスLAN機能を使って、外部接続されたコンピュータと連動することにより、 大語彙の連続発話による音声認識が可能です。また辞書にない単語を新たに学習して記憶することができます。
  3. 記憶に基づく対話、行動制御技術
    CCDカメラから得られた人や物の場所などを一時的に覚えている短期記憶機能に加え、会話などによる人とのより深いコミュニケーションを通じて顔や名前などを記憶する長期記憶機能を搭載しています。 長期記憶には、コミュニケーション時における情動的な情報も記憶されます。短期・長期記憶を利用することで、より複雑な対話や行動を実現しています。
  4. 音声合成と歌声生成
    感情を込めた発話や全身動作に合わせた発声により、エンターテインメント性を向上しています。楽曲および歌詞をデータ入力することで、音声合成によりビブラートを含む歌声を生成することができます。

5) 人とのコミュニケーションのための安全設計

人とのコミュニケーションにあたり、手などがはさまれにくい関節部の構造を採用するなど、安全に配慮した設計がなされています。

6) 自由度追加による表現力の向上

新たに頭部に4軸、手首に1軸の自由度を追加し、表現力を高めました。さらに、手部には、独立して動作可能な5指を有しています。

7) 小型アクチュエータの性能向上

2000年11月に技術発表したSDR-3Xで使用した小型アクチュエータに比べ、始動トルクで約30%、定格トルクで約15%、効率で約20%、それぞれ向上し、より優れた運動性能と応答性を実現しました。

8) SDRモーションクリエータ( SDR Motion Creator )

パソコンを使って、ダンスなどの多彩な動作を簡単に生成、編集することが出来るソフトウェアシステムです。このソフトウェアには、クリエーターの入力に対して転倒を防止するための自動補正機能が含まれており、複雑な動作を容易に作成することが可能です。

試作機"SDR-4X"の主な仕様

CPU 64ビットRISCプロセッサ(×2)
主記憶装置 64ビットRISCプロセッサ(×2)
オペレーティングシステム Aperios(ソニー独自のリアルタイムOS)
ロボット制御アーキテクチャー OPEN-R
制御プログラム供給媒体 16MB メモリースティック
関節自由度 首部:4自由度、胴部:2自由度、腕部:5自由度(×2)
脚部:6自由度(×2)、手部:独立5指(×2) 合計38自由度
センサ部  測距センサ 赤外線方式: 頭部x1、両手x2、計3
加速度センサ 体幹: X,Y,Z/3軸、 両足: X,Y/2軸
角速度センサ 体幹: X,Y,Z/3軸
足底センサ 力センサー(片足4 x 2 = 計8)
温度センサ 外部用(×4)、内部用(×2)
タッチセンサ 頭部 感圧ゴム
シートスイッチ
両手 シートスイッチ(×2)
両肩 タクトスイッチ(×2)
画像入力 11万画素1/5 インチCCDカラーカメラ(×2)
音声入力 マイクロフォン(×7)
音声出力 スピーカー
入出力部 PCカードスロット(タイプII) (×1) メモリースティックスロット (×1)
表示 目 LED 4096色( RGB 各16段階の組み合わせ)
耳 LED 1色 16階調
パワー LED 2色(同時点灯で3色)、動作・充電状態表示
歩行速度 最高 約 6m/分 (不整地面) 歩幅:10cm、歩行周期:1.0秒/歩)
最高 約 20m/分 (水平・平坦路面) 歩幅:6.5cm、歩行周期:0.20秒/歩)
不整地歩行能力 平坦度:10mm凹凸路面
(すべりなし条件下において)
斜度:約10度までの傾斜路面
(すべりなし条件下において)
質量 約 6.5Kg (バッテリー、メモリー搭載時)
外形寸法(高さ・幅・奥行) 約 580 x 260 x 190 mm
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