報道資料
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2007年8月23日
〜パッシブ型バイオ電池で世界最高出力を達成〜
ソニー株式会社(以下ソニー)は、植物に含まれる栄養源である炭水化物(ぶどう糖)を酵素で分解して活動エネルギーを取り出す生物のしくみを応用し、活動エネルギーのかわりに電気エネルギーを取り出して発電するバイオ電池※1を開発しました。
今回試作したバイオ電池は、パッシブ型※2バイオ電池の基礎研究成果として、50mWの世界最高出力※3を達成しています。また、試作したバイオ電池を使って、ウォークマン(メモリータイプ)による音楽再生を実現しました。
世界最高の出力を実現するにあたっては、ぶどう糖を効率的に分解して電気エネルギーを取り出せるよう、酵素と、電子伝導を助けるための電子伝達物質を、活性を維持した状態で高密度に電極(負極)に固定化する技術を開発しました。また、反応に必要な酸素を効率的に取り込めるように、電極(正極)内の水分を適度に保つ技術を開発しました。これら2つの技術に最適化された電解質を用いることで高出力の発電が可能となりました。
ぶどう糖は、太陽光を受けた植物が、光合成によって合成する物質の1つで、地球上に豊富に存在する再生可能なエネルギー源であり、ぶどう糖で発電するバイオ電池は、環境にやさしい将来のエネルギーデバイスとして期待されます。
ソニーは、今後も酵素固定化方法や電極材料の開発による発電性能や耐久性の向上など、様々な要素技術の研究開発を行い、将来の実用化を目指していきます。
なお、この研究成果は、米国マサチューセッツ州ボストンで8月19〜23日に開催のアメリカ化学会ACS(American Chemical Society)234th National Meeting & Expositionに採択され、現地時間の8月22日午前11時(日本時間8月23日午前0時)に発表しました。
ぶどう糖で発電するバイオ電池は、ぶどう糖を分解する酵素と電子伝達物質を固定化した電極(負極)と、酸素を還元する酵素と電子伝達物質を固定化した電極(正極)で、セパレーターを挟んだ構造になっています。
負極側では、外部からぶどう糖(グルコース)の水溶液を取り込み、ぶどう糖を酵素で酸化分解する際に電子と水素イオンを取り出します。
〔グルコース →グルコノラクトン + 2H+ + 2e-〕
水素イオンはセパレーターを介して、負極側から正極側に移動します。正極側では、空気中の酸素を取り込み、電子と水素イオンによる還元反応によって水が生成されます。
〔(1/2)O2 + 2H+ + 2e- → H2O〕
この一連の電気化学反応を通じて、電子が外部回路を移動する際に、電気エネルギーが取り出されます。