報道資料
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2012年11月21日
〜免疫・がん・再生医療の研究やiPS細胞研究などに新たな解析方式を提案〜
ソニーは、ブルーレイディスク技術を応用した細胞分析装置‘フローサイトメーター’の第二弾として、独自の蛍光の波形形状を検出する‘スペクトル解析機能’を新搭載した、スペクトル型セルアナライザーSP6800の発売を、2013年春より開始します。(2013年1月7日より予約受付開始)
型名 | 発売日 | メーカー希望小売価格 |
---|---|---|
細胞分析装置‘フローサイトメーター’ スペクトル型セルアナライザー SP6800 |
2013年春 | 4,095万円 (税抜き価格 3,900万円) (2レーザーモデル) |
細胞分析装置‘フローサイトメーター’とは、特定の条件下で発光する蛍光試薬で細胞を染色し、レーザー光を当てた際に発する光を蛍光情報として検出することで、1秒間に数万個におよぶ各種細胞の大きさや個数、細胞表面や細胞内部の各種情報(構造、機能、バイオマーカー等)を解析する装置です。‘フローサイトメーター’には細胞の解析のみ行う「セルアナライザー」と、細胞の解析および分取を行う「セルソーター」の2種類があります。
‘フローサイトメーター’は、大学や研究機関、製薬メーカーなどの研究室で、免疫やがんの研究分野や、iPS細胞(人工多機能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)などの幹細胞、再生医療の研究分野の分析装置として活用されており、その市場は、これら研究の広がりに伴い、急速に拡大しています。
一般的なセルアナライザーは、目的とする蛍光情報を検出するために、光学フィルターを使用して蛍光波長域(チャンネル)別に分割、抽出し、その蛍光の強さのみを測定しています。この方式では、ある特定の蛍光波長域を抽出しても、同じチャンネル内に複数の蛍光色素の情報が重なりあった状態で検出されることになり(図1)、この補正作業が必要となります。そのため、解析の精度と再現性、作業スピードなどが課題となっています。
ソニーが新開発した‘スペクトル解析機能’は、光学フィルターは使用せず、独自設計のプリズムで蛍光波長を各色に分離し、新開発した「32チャンネル光電子増倍管」を組み合わせて用いることで、蛍光の波形形状を高精度に測定します。(図2) 重複する蛍光色素の情報は、ソニー独自の解析アルゴリズムにより各色素に分離して、その波形形状を解析できるため、従来方式での手間のかかる補正作業が不要です。また、従来の光学フィルター方式では困難であった、蛍光波長のピークがよく似た蛍光試薬の分離も、この解析アルゴリズムにより高精度・高再現性かつ迅速に解析します。
本機は、この‘スペクトル解析機能’により、2本のレーザーで15色以上の多色解析を実現しています。
さらに、蛍光色素で染色していない細胞自体が自然に発光する微弱な蛍光情報(=自家蛍光)も、その波形全体の形状を高精度に検出できることから、無染色の細胞や、染色による刺激を嫌う種類の細胞の解析にも適している特長があります。
また、これらの一連の測定はすべて全自動で行うため、作業の簡便化、迅速化を実現しています。
今回発売するセルアナライザー SP6800は、先進の研究分野の研究者に向けて、新たな解析手法を提案する商品です。研究において未開拓の分野をさらに深く掘り下げる可能性があるなど、従来にはなかった解析結果をご期待いただけます。
東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター 中内啓光教授のコメント
「これまでとは全く異なる新しい技術の導入により、複雑なコンペンセーション(蛍光補正)を考えること無く、高精度かつ容易に多重染色解析ができる画期的なアナライザーだ。ソニーが製品化したことで信頼性や使いやすさも大幅に向上しており、細胞研究に大きな貢献をすることが期待される。この技術の価値と有用性が理解されれば、将来すべてのフローサイトメーターにスペクトル解析機能が搭載されるかもしれない。」
ソニーは、中長期に成長を目指す事業領域の一つであるメディカル事業の中で、今後も‘フローサイトメーター’の製品ラインアップの強化につとめ、品質の高い革新的な製品を提供していきます。
1. 新開発 スペクトル解析機能
光学フィルターは使用せず、独自設計のプリズムで蛍光波長を各色に分離し、新開発した「32チャンネル光電子増倍管」を組み合わせて用いることで、蛍光の波形形状を高精度に測定します。
重複する蛍光色素の情報は、ソニー独自の解析アルゴリズムにより各色素に分離して、その波形形状を解析できるため、従来方式での手間のかかる補正作業が不要です。
また、従来の光学フィルター方式では困難であった、蛍光波長のピークがよく似た蛍光試薬の分離も、この解析アルゴリズムにより高精度・高再現性かつ迅速に解析します。
細胞は水分以外の成分にたんぱく質を含んでおり、たんぱく質にレーザー光を照射した際に微弱な蛍光を発します。本機は、この微弱な蛍光も蛍光波形全体の形状での検出が可能です。
これにより、より自然に近い状態で細胞の試薬で解析ができるほか、試薬で染色する手間やコストの削減や、細胞にとっては異物である試薬を取り除く作業も省くことが可能です。また、再生医療などで一度体内から取り出して、再度体内に戻すような場合には、作業効率が大幅に向上することが見込まれます。
基本的に細胞は、フローセル・チップの流路の中心あたりを流れますが、細胞によっては中心からずれてしまい、検出データが正しく得られない場合があります。これは、稀少細胞の解析などにおいては実験の結果を左右しかねない課題です。
位置検出センサーは、光ディスクの位置制御技術にも使われるセンサーを応用して、散乱光からフローセル・チップ内細胞流路の位置検出を行うものです。 フローセル・チップの流路内を流れる細胞集団のうち、より再現性の良い条件で測定された細胞だけを解析対象としてそのデータを取り込めるようユーザーが選択できるようになりました。
光学検出部のみ、より感度の高い蛍光情報を引き出せる石英を使用した、新開発のフローセル・チップを採用しました。チップ全体はプラスチック製なので、測定前のセッティングの簡便さや価格面でのメリットはそのままに、精度の高い解析を実現しています。
光学系 | レーザー仕様 | |
波長 | 488 nm, 638 nm | |
検出光学系 | ||
測定パラメーター数(計68) | 1×前方散乱光(FSC)、1×側方散乱光(SSC)、64×蛍光パラメーター、2×細胞通過位置座標(X、Y) | |
層流位置検出 | 四分割PD | |
蛍光カラー数 | 15色以上 | |
本体 | 寸法(W×D×H) | 60.0 cm × 63.5 cm × 71.3 cm |
重量 | 本体:98kg | |
電源 | 100 V 50/60 Hz, 120 V 60 Hz | |
消費電力 | 220 W (max.) | |
動作温度 | 16 〜 29℃(室温変動5℃以内) | |
湿度 | 20 〜 80% (結露しないこと) | |
データフォーマット | Flow Cytometry Standard (FCS) 3.0、3.1 | |
PC | パーソナルコンピューター VAIO 「Lシリーズ」Windows®8 |
ソニー(株) メディカル事業ユニット ライフサイエンス事業部門