自分の作ったガンプラが動き出し宇宙空間に出撃! 「バンダイナムコグループ×ソニー」が仕掛ける「ハイクオリティ・ガンプラスキャンサービス」とは?
1980年の発売以降、7億個以上も出荷されているアニメ「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデル、通称ガンプラ。全世界にいるガンプラファンの夢を実現するサービスが始まります。「ハイクオリティ・ガンプラスキャン」というサービスで、2025年2月〜4月に福岡市の「THE GUNDAM BASE FUKUOKA」で試験的に実施されます。
ユーザーが自作したガンプラを専用の機器でスキャンして、3Dデータ化。スキャンされた「世界で一つのガンプラ」が宇宙空間に出撃するジオラマムービーを楽しむことができます。将来的には、ガンプラ同士がバーチャル空間で戦うバトルの実現も目指しています。
このサービストライアルは、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)が、BANDAI SPIRITSを中心としたバンダイナムコグループとコラボして展開します。開発の経緯やサービスにかける思いを、SMEJ EdgeTechプロジェクト本部 PVチームの渡辺祐介に聞きました。※本サービスは現在終了しています。
目次
熱烈なガンプラファンが企画した「3Dスキャンサービス」
「ハイクオリティ・スキャンサービス」では、自分のガンプラが宇宙空間に出撃する様子をアニメーション動画として楽しむことが出来る。
発売から今年で45年目を迎えるガンプラですが、現在でも国内外で根強い人気があります。精細な造形が特徴でそのまま組み立ててもクオリティが高く、コアなファンになると、さらに作中のリアリティを追求する形で、世界に一つだけのカスタムを施していきます。その質の高さを競うコンテストも、世界規模で開かれています。
10代後半から20代前半の若者に加え、1980年代の「ガンプラブーム」を子ども時代に経験した世代にも人気があります 。「ハイクオリティ・ガンプラスキャンサービス」を企画した渡辺も、第一次ガンプラブームで育ったファンの一人。サービスの内容を渡辺はこう説明します。
「このサービスでは、ガンプラをスキャンすることで3Dデータ化し、デジタル空間でガンプラを鑑賞したり、動かしたりすることができます。また、3Dデータを基にガンプラが宇宙空間に出撃するジオラマムービーを作成し、ダウンロードできます」
使用するのは「SCANOSYS™」(スキャノシス)という高精細3Dスキャン機器。SMEJが主導して、新たに開発しました。光学スキャンには、ソニーのミラーレス一眼カメラ「α™(Alpha™)」シリーズを4台使用。高精度な形状データと撮影したテクスチャデータを融合し、作り手のこだわりが詰まった実物のガンプラに迫るクオリティの3Dモデルデータを生成することが可能です。
渡辺は「これまでのガンプラは、作って愛でることが一般的な楽しみ方でした。3Dデータ化することで、自分のガンプラをアニメの名場面に登場させたり、自分だけの展示即売会を開いたり、自分が作ったガンプラを操作してバトルするなど、フィジカルでは実現できない楽しみ方ができるようになります」と説明します。また、最終的には、そういったユーザー同士を繋ぎ合わせた循環型のエコシステムを実現したいと考えています。
SMEJ主導で新たに開発した高精細3Dスキャン機器「SCANOSYS」を使いガンプラを3D化する。
「ガンダム×ソニー」の社内公募企画がきっかけ
「ハイクオリティ・ガンプラスキャンサービス」は、SMEJの「PV Project」の一つとして始まりました。「PV」とは「From Physical to Virtual」(実空間からバーチャルへ)の略。ガンプラに限らず、現実の世界にある様々な物体をデジタル化してバーチャルの世界に持ち込むことで、これまでになかったエンタメ体験の創出を目指すプロジェクトです。
きっかけは2020年。ソニーグループの社内公募企画で「ガンダム×ソニー」というテーマのアイデアコンテストが開かれたことでした。
「私がガンプラをスキャンして3Dデータ化する企画を提案したところ、ガンダムTVシリーズのアニメを制作する『サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)』の方に高く評価していただきました。ガンプラをスキャンしてバトルすることは、バンダイナムコグループの悲願でもあったとのことで、即座に協業を進めることになりました」(渡辺)
企画した渡辺は、1997年のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)入社後、主にゲームのディレクターやプロデューサーとして活躍してきましたが、もともとは大のプラモデル好き。小学生時代からのガンプラファンで、これまでに制作したガンプラの数は「100体を超える」とのこと。「SIEでもガンダムの企画をバンダイナムコエンターテインメントさんに持ち込んだことがある」といいます。
ガンプラのために一から開発した3DCGツール
ガンプラを3Dスキャンする「SCANOSYS」のハード面は、ソニーの既存技術を活用して開発されました。一方、ガンプラのような剛体を違和感なくアニメーションさせたり、簡単な操作でリグ入れ(骨を入れて3Dモデルと紐づけること)を可能にするツール開発は、「ゲーム制作で得た知識や経験がなければ困難だった」といいます。
「オートスキニングという技術です。通常だと3Dスキャンしたデータをそのまま動かすことはできません。そのデータに骨格の情報を組み込んで、その骨格の動きに合わせて3Dモデルを自在に変形させる技術が必要なのです」(渡辺)
3Dデータを動かす需要は大きく、「Maya」や「Blender」といったクリエイター向けの3DCG制作ツールがよく利用されています。
「ところがガンダムはロボットですから、関節の構造が人体と違います。ロボットの動きとして違和感がないように、3Dデータからアニメーションを再生させるための新たなアルゴリズムが必要になりました」(渡辺)
そこで、渡辺は長年のゲーム制作を通して繋がりがあったゲーム制作会社にスキニングツールの開発を依頼。ガンプラに特化したツールを開発することができました。
このツールは、バンダイナムコグループの担当者も「複雑な形状になりがちな改造ガンプラに対しても、高い精度のスキニングが実現できている」と評価しています。
オートスキニングという技術を使い、ガンプラに特化したツールを独自開発して、3Dモデルを自在に変形させることが可能になった。
ガンプラファンの「悲願」の実現に向けて
今回のガンプラスキャンサービスは、PV Projectの第1弾。渡辺は今後の展望について、次のように語ります。
「具体的な時期はまだ明言できませんが、将来的にはガンプラ同士を戦わせるところまでサービスを展開したいですね。その際には、改造のアイデアやテクニック、そして完成度の高さなど、作り手がこだわったポイントを数値化して機体性能に変換することが課題になります。ガンプラコンテストの評価指標を参考に、アプローチ方法を検討していますが、具体的なアイデアをお持ちの方がいれば、是非ご意見をお聞かせいただけると嬉しいです」
ガンプラ同士を戦わせる「ガンプラバトル」の構想は、フィクションの世界では40年以上前からあり、ガンプラファンの悲願といえます。バンダイナムコグループの担当者も、「ガンプラバトルは歴代のガンプラ担当者にとっても夢であり、実現に向けて試行錯誤を繰り返してきました」と話しています。
「ハイクオリティ・ガンプラスキャン」サービスは、2025年2月22日から4月27日まで、福岡市の「THE GUNDAM BASE FUKUOKA」でトライアルとして実施されます。利用は完全予約制(予約開始は2月12日から)で、価格は1回3,300円(税込)を予定しています。
サービスと連動して、「ガンプラスキャナーズコンテスト Vol.0」も開かれます。ガンプラそのものを評価する「ビルド部門」と、3D動画を審査の対象とする「ムービー部門」の2部門で、自慢の作品を募集します。
「全世界のガンプラファンが夢に描いていた世界が、現実に体験できる一歩手前まで来ています。ガンプラの『3Dデータ化』というこれまでにないサービスを通して、新しいガンプラの楽しみ方を体験していただけるのではないかと思います」(渡辺)
ガンプラファンの夢がいよいよ現実のものに。
渡辺祐介(わたなべ ゆうすけ)
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント EdgeTech本部 PVチーム デザイナーとしてキャリアをスタートし、1997年にSIEに入社。JAPAN Studio(ジャパンスタジオ)在籍時に「サルゲッチュ」シリーズにアーティストとして参加。PlayStation®3 用トレーディングカードゲーム「THE EYE OF JUDGMENT」ではディレクターとして、ARを使ったカードゲームを発案し世界で初めて製品化させる。同タイトルでは、米ハズブロ社との業務提携にも関わり全世界でTCGを流通させる。PlayStation®4およびPlayStation®5のリードシステムアーキテクトであるマーク・サーニー氏を総監督に迎え制作された「KNACK」シリーズでは国内外のスタジオを横断する大型プロジェクトのプロデューサーを担当。現在は、UXリサーチ&開発室にて次世代の入力デバイス向けキーテクノロジーの研究開発を行いながら、SMEJを兼務して、「ハイクオリティ・ガンプラスキャン」のプロデュースに携わる。