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アクセシビリティを追求し、誰もが感動を分かち合える未来へ

    ソニーグループは、10年後のありたい姿を示す長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」の中で、境界を超え、多様な人々や価値観をつなげ、コミュニティを育む「Boundaries Transcended」をフェーズの一つとして掲げています。そして、ソニーグループは、年齢や障がいなど個人の特性や能力、環境に関わらず、製品、サービス、エンタテインメントを楽しんでいただけるように、アクセシビリティの取り組みを進めています。誰もが自分らしく、感動を分かち合える未来に向けた具体的な活動内容について、ソニーグループのアクセシビリティ推進を取りまとめるサステナビリティ推進部のシッピー 光と西川 文に聞きました。

    目次

    未来に向けて、インクルーシブな社会の実現に貢献

    ──ソニーグループがアクセシビリティに取り組む理由を教えてください。シッピー:ソニーグループは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose (存在意義) のもと、事業活動を行っています。この世界の人口のうち約13億人、実に6人に1人が何らかの障がいを抱えており、さらに今後、世界的な高齢化などによって障がい者の人口は増え続けると予測されています。私たちはこの現実に向き合い、多様な事業を通じてアクセシビリティを高めることで、インクルーシブな社会の実現に貢献したいと考えています。

    ※出典:Global report on health equity for persons with disabilities: executive summary (who.int) Population ages 65 and above, total | Data (worldbank.org)

    西川:一方で私たちは、アクセシビリティは自社のビジネスにも貢献する重要な領域だと認識しています。「障がいのある方には自分たちの製品を使っていただけない」と考えることは、差別や偏見であると同時に、ビジネスの機会を自ら逃していることにもなります。製品やサービスのアクセシビリティを高め、障がいの有無にかかわらず、より多くの方に感動を届けることがソニーの役割だと思っています。

    シッピー:このような考えを社内外に示すため、アクセシビリティに関するソニーグループ共通のメッセージ「誰もが感動を分かち合える未来を、イノベーションの力で。」を策定しました。さらに、アクセシビリティの定義を、障がい者・高齢者への配慮にとどまらず、「年齢や障がいなど個人の特性や能力、環境にかかわらず、商品・サービス・エンタテインメントを利用できること」とし、各事業のユニークさや強みを活かしながら、グループ全体でアクセシビリティに取り組んでいます。

    ──製品やサービスのアクセシビリティを高めるために、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。シッピー:アクセシビリティの重要性を経営層から社員1人ひとりに至るまで浸透させるために、環境や仕組みづくりに取り組んでいます。まず土台として、アクセシビリティ&インクルージョンが重要であるという理解の促進だけではなく、実感を伴った職場環境を醸成するため、社員がインクルーシブデザインを体感する機会を設けています。インクルーシブデザインとは、多様なユーザーの中でも、特にアクセシビリティを必要とする高齢者や障がい者を中心に、企画・設計・開発段階から参加してもらい、製品・サービス・エンタテインメント・職場環境などを一緒に検討する手法のことです。

    西川:そうして職場環境の土台が固まってくると、次のステージである仕組み化に取り掛かります。組織横断で取り組むアクセシビリティに関する達成基準を策定・運用するとともに、経営層に定期報告し、意見交換をしながら施策をアップデートしていきます。現在、その新しい施策として、インクルーシブデザインを製品の商品化プロセスに取り入れるようになりました。さらに、計画的に実装していくため、各領域の中期計画・事業計画にアクセシビリティの具体的要件を含めています。この積み重ねによって、アクセシビリティに配慮した製品・サービス・エンタテインメントを創出し、事業を通じた社会への貢献につなげています。

    インクルーシブデザインで新たな価値を創出

    ──アクセシビリティを高めるために、インクルーシブデザインを重要視しているとのことですが、その理由を教えてください。シッピー:インクルーシブデザインによって、障がい者や高齢者のニーズを汲み取れるとともに、自分たちが「見過ごしている不便」に気づけるからです。この背景には、多数派(平均)ユーザーのニーズをもとにする私たちの従来型の商品開発が、人々のニーズが多様化・複雑化している現代社会において通用しなくなってきたという状況があります。一見、障がい者や高齢者のニーズは、多数派ユーザーのものと異なると思われるかもしれませんが、ソニーは、こうしたニーズや制約に向き合うことで、より多くの人にとって価値向上につながる本質的なニーズを捉えられると考えています。

    西川:そのような観点から、ソニーでは多数派ユーザーに使われるものを制約のあるユーザーにも使いやすくするアプローチ(下記左図)を基本にしながら、制約のあるユーザーの気づきから発想するインクルーシブデザイン(下記右図)を積極的に進めています。思えば、今日私たちが当たり前のように使っているパソコンのキーボードや映画の字幕なども、当事者の制約から気づきを得て開発され、障がいの有無にかかわらず広く愛用されるようになったもの。制約のあるユーザーのニーズは新たな価値を創出する起点になると思っています。

    九州大学大学院 芸術工学研究院 平井 康之教授の講演内容をもとに制作。左図は、多数派ユーザーが使うものを制約のあるユーザーにも使いやすくする従来型の商品開発、右図は制約のあるユーザーのニーズから多数派ユーザーにも価値あるものをつくるインクルーシブデザインの開発手法。

    ──実際のインクルーシブデザインの現場では、どのような活動をしているのでしょうか。シッピー:制約からの気づきを得るために、高齢者や障がい者など、多様なニーズのあるユーザーの行動を観察しながら、私たちが「見過ごしている不便」を発見します。ここでその解決方法をすぐに考えてしまうと、慈善的な要素が強くなりすぎて、事業として持続できないものになりやすいため注意が必要です。その不便な点を、自分たちの日々の生活や体験を振り返って照合し、誰しもに共通で本質的な課題を抽出したのちに、クリエイティビティとテクノロジーの力でその課題の解決を目指すというステップをとっています。

    西川:これらのステップをスマートフォンXperia™撮影の事例で具体的に紹介しましょう。このときは視覚障がい(弱視)のある社員とのインクルーシブデザインだったのですが、スマートフォンの開発メンバーはこの社員と一緒に街を散策するなかで、彼女が家族や友人とコミュニケーションをとるために頻繁に写真を撮っていることを知りました。さらに、撮影時に顔を画面にかなり近づけるため、全体の構図を確認しながら撮影できないという不便に気づきました。この不便な点を自分の行動に置き換えて「自分も目の前に人垣がある場合は、スマートフォンを上に掲げて画面を見ないで撮影している」とイメージ。そこから「画面を見ずに簡単に撮影できないこと」が障がいの有無にかかわらず、解決すべき課題だと分かり、スマートフォンが傾いたとき、水平になったときにそれぞれ音で通知する撮影補助機能の開発につなげました。

    弱視の社員がスマートフォンで撮影している様子(左)、スマートフォン開発者と弱視の社員で検証する様子(右)。

    シッピー:このようなインクルーシブデザインの価値を社員に体感してもらうためにワークショップを開催し、これまで経営層から一般社員まで2,500名以上が参加しています。商品開発に携わる社員もそうでない社員も参加し、さまざまな障がいのある方と混合チームになってフィールドワークを行うこの活動を、ソニーでは非常に重要な施策として位置づけています。近年、これらの活動が実を結び、多様な事業から、アクセシビリティの導入事例が出てきています。

    ソニーグループのインクルーシブデザインの事例:

    PS5とアクセシビリティ:発売から2025年までの機能拡充の歩み
    ゆる楽器「ハグドラム」
    業界初、障がいのある俳優たちによるループグループ設立

    アクセシビリティが企業の競争力になる時代に

    ──今後、アクセシビリティをどのように展開していくのかを教えてください。西川:冒頭で「アクセシビリティは自社のビジネスにも貢献する」と言いましたが、その傾向は今後もっと強くなると思います。例えば、ソニーの座席管理ソリューションSEATouchでは、視覚障がいのある社員とのインクルーシブデザインを実践し、全盲や強度な弱視の方はもちろん、誰にでも使いやすいアプリを開発しました。そのセールス時に、アクセシビリティへのこだわりに加え、インクルーシブデザインのストーリー自体に共感して導入を決めてくださった企業様もいました。また、お客様から「ソニーと他のメーカーで迷ったら、アクセシビリティ・インクルーシブデザインに取り組むソニーを選ぶようにしている」というコメントもいただいています。このような関心の高まりを踏まえ、さらにアクセシビリティを追求していきたいと考えています。

    ──最後に読者の方にメッセージをお願いします。シッピー:この社会には、障がい者、高齢者、グローバル人材など多様な人がいて、アクセシビリティが担保されていないために本来の力を発揮できない、やりたいことができない方がいます。私たちが目指すのは、そのような多様な人が交わり、循環し、活躍できる社会基盤の構築です。それに向けて、今後もインクルーシブデザインを積極的に実践し、アクセシビリティを追求した職場環境を整え、誰もが楽しめる製品やサービスをステークホルダーに提供していきたいと思います。しかし、ソニー1社だけではそのような社会基盤は到底完成できません。より多くの人や組織と一緒にこの社会基盤を強固にしていくことで、インクルーシブな社会の実現とパートナーの事業の両方に利益をもたらせられればと思っています。

    シッピー 光(しっぴー みつ)

    ソニーグループ株式会社 サステナビリティ推進部 シニアゼネラルマネジャー 民間財団を経て2000年に入社後、国連機関やNGOとの共同プロジェクトの企画実施をはじめ、ソニーのサステナビリティ・CSRに携わる。2021年より現職。

    シッピーさんの顔写真

    西川 文(にしかわ あや)

    ソニーグループ株式会社 サステナビリティ推進部 アクセシビリティ&インクルージョングループ ゼネラルマネジャー 人間中心設計専門家として、グローバルでユーザー調査を行う社内スキームの運営・実施に従事。現在は、アクセシビリティ・インクルーシブデザインの全社推進に取り組む。

    西川さんの顔写真