Sony Outstanding
Engineer Award 2021

Sony Outstanding Engineer Awardは、エンジニアの新たな挑戦を加速させるために設立した、
ソニーグループにおけるエンジニア個人に与えられる最も価値の高い賞です。
ソニーがお客様の感性に訴える商品・サービスを開発するためにチャレンジすべき技術課題は、
要素技術開発に加えて、独創的な技術の融合や複雑なシステムの最適化など、多様な範囲に及んでいます。
これらチャレンジングな課題に積極的に挑み、大きな価値創造を成し遂げた2021年度の受賞者をその功績とともに紹介します。

ソニーAIの強化学習プラットフォーム

『グランツーリスモSPORT®』のトッププレイヤーと競い合うAI(グランツーリスモ・ソフィー™)の強化学習を可能とするトレーニングプラットフォームを開発。1,000台以上のPlayStation®4と高い画像処理能力を備えたコンピュータを同時に使い、AIの機械学習とテストの容易化は図った。これによりAIエージェントは『グランツーリスモSPORT』の最高峰ドライバーに勝利し、その結果がNatureにも論文掲載されるなど、ソニーの技術力訴求に大きく貢献した。

フラグシップモデルのミラーレスカメラ向け高速読み出しアーキテクチャの開発

2021年3月に発売されたデジタル一眼カメラ『α1』は、前モデル『α9』シリーズ の2,420万画素を上回る画素数と高速読み出しを実現し、14ビット解像度を維持しながら、4ミリ秒あたり約5,010万画素の高速読み出しを可能とする。Noam Eshel氏はシグマ・デルタADCに低ノイズサンプリング回路を組み合わせることによって、この新たな読み出しアーキテクチャを考案・開発。ソニーの主要技術のひとつとしてセンサーに搭載され、『α1』を始め数多くのソニー製品を成功に導いた。この功績は、半導体技術に関する世界最大の国際学会『ISSCC 2021』やソリッドステート回路に関する査読付き科学ジャーナル『IEEE Journal of Solid-State Circuits』においても発表された。

高い臨場感を実現するオーディオテクノロジー『Monopole Synthesis』の開発

自身が博士論文で提唱した音源放射モデルをベースに応用研究を重ね、立体音響レンダリング技術『Monopole Synthesis』を開発・特許化。さらにゲームや音楽のリアルタイム再生に向けた開発を行った。この技術は計算量が少なく、壁の反響音を利用して没入感を高めるなどスピーカーの配置が柔軟で、さまざまな製品への搭載が可能である。『360 Spatial Sound Mapping』技術として『HT-A9』や『HT-A7000』などのソニーのホームシアターシステム・サウンドバー製品やSound Building Blocks™として『2021 MAHINDRA XUV700』などの車載オーディオに採用され、ソニーの立体音響技術の進化に貢献。ソニー株式会社のチームメンバーと密接に協力しながら開発を行うなど高いチーム力を牽引した。

不整地での安定かつ高効率な移動と高い可搬重量を可能にする脚ロボットの開発

独自のSeries-Parallel Elastic Actuator 開発により20kg可搬重量で階段登坂可能な4脚ロボットを実現し、更に安定性と移動効率を向上させる世界初の構成の6脚直動車輪ロボットを開発した。ここで開発された成果や技術は、不整地の介在する環境でもロボットが安全で効率的にモノを運ぶ事に活用され、エンタテインメント領域から、建設産業やラストワンマイル物流など様々な産業への応用が期待できる。本技術の一部は清水建設との建設現場での実証実験において使用されており、国際学会IROS2021でも発表済である。

ステレオSLAMの開発と社内関連開発への貢献

R&Dチームをリードし、カメラ画像と慣性センサを融合してデバイスの運動と周囲環境を推定するSLAM(simultaneous localization and mapping)技術を開発した。SLAM技術はさらに多くのビジョンやロボティクス技術を実現する基盤となっている。開発においてはデバイスの構造設計から処理パイプラインのアーキテクチャ設計まで、広範囲にわたって貢献した。多くのR&D部門、SIE、SSSからの協力を得て製品レベルまで技術を高めることができた。プロフェッショナル向けドローン『Airpeak S-1』ドローンはこのSLAM技術を搭載した最初の製品として2021年11月に発売され、同技術を使って対風性の高い飛行安定化、衝突回避、自動帰還機能などのユーザー支援機能を実現した。

VR向け4K OLEDマイクロディスプレイの開発と商品化への貢献

VRヘッドマウントディスプレイの小型化・高精細化の両立に向け、4K OLEDマイクロディスプレイ(M-OLED)を開発した。従来比4倍以上の高解像度化と優れた画品位を実現するとともに、新規アーキテクチャの導入によって筐体に組み込みやすい省ピン化・低消費電力化(低発熱化)を達成。
また、パネル実力を引き出す環境を構築してこれまでにないリアルな映像表現を社内外に訴求することで、パネルの価値を実証するとともに商品化に貢献した。

ロボットOSベースの三次元自律移動システムアーキテクチャの構築と、空撮で実用的なドローン自動飛行商品化

空撮を主立ったユースケースとするドローン Airpeak S1 において、aibo等で培ったROS応用技術をベースとした、安全のための減速・停止制御と空撮に求められる飛行安定性を両立する三次元自律移動システムアーキテクチャを考案した。自在な曲線飛行や再現飛行、自己診断機能等の開発をリードし、安心安全で映像作品用途で実用的な自動飛行機能の商品化を達成。従来の自動飛行が適さなかった空撮クリエーターの世界で新しいユーザー体験の創造に貢献した。

360 Spatial Sound Mappingで圧倒的な音空間を実現する新ホームシアターシステム『HT-A9』の音響開発と商品化への貢献

映画館の広大な音空間や臨場感をそのまま家庭で楽しめる、新コンセプトのホームシアターシステム 『HT-A9』 の音響開発から商品化まで、技術開発をリーディングし、またこの実現に必要不可欠なソニーの新しい立体音響技術360 Spatial Sound Mappingの開発・立ち上げに貢献した。従来のサラウンド技術は、スピーカ配置や視聴位置が理想的でないと、クリエイターの意図した音空間を再現できないという課題があった。『HT-A9』は、フレキシブルなスピーカ設置を実現しつつ、フォーマットそれぞれの理想位置に仮想スピーカを配置できる立体音響信号処理技術と、その効果を最大限引き出す音響トランスデューサ・メカ構造の融合により、クリエイターの意図した音場をリビングで達成した。

イメージセンサー画質劣化モデルの解明と高画質化への貢献

イメージセンサーの画質劣化モデルを解明し、試作段階における画質劣化リスクの早期検知と対策立案を行った。半導体シミュレーション技術を活用したノイズ信号の分析手法を確立したことで、より短期間でノイズ源の発生メカニズムを特定可能となった。また、解明した発生メカニズムをもとに、ノイズ源の発生を大幅に抑制可能な製造技術をソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社と共同で開発し、イメージセンサーの高画質化に貢献した。

リモート音声制作を可能にした360 Virtual Mixing Environmentの開発と映画制作への貢献

ヘッドホンだけで300席を超えるサイズの映画音声制作用スタジオの音響環境を忠実に再現する技術(360 Virtual Mixing Environment)を開発。従来難しかったリモートでの映画音声制作を可能にし、 「Ghostbusters: Afterlife」、「Venom: Let There Be Carnage」といったSony Pictures Entertainmentの映画作品制作に貢献した。

新規アーキテクチャ開発によるプロフェッショナル映像制作用システムカメラHDCシリーズ商品化の期間短縮と開発費削減

スポーツイベントや音楽ライブ、スタジオ収録等で使われるシステムカメラの新アーキテクチャを開発、商品化することで、従来機種個別設計であった製品ラインナップを1プラットフォームで実現した。
膨大なデータフローを再構築して構造に反映することにより、商品化期間の大幅短縮、低コスト化を達成。また将来的な機能拡張を見込み、各機能ブロックの分離性を高めるだけでなく、各種センサーを搭載することで顧客の新たなニーズにも追従出来るように備えている。 これら製品群は大規模なスポーツイベントをはじめ様々な撮影で使用され、世界中の人々へ感動を届けている。

多様な未知物体を優しく扱うロボットハンドの触覚センサと適応把持力制御技術の開発

ロボットハンドのための、世界初(※)の任意方向の滑り予測数理モデルを構築し、独自の触覚センサと把持力制御技術を開発した。この技術により、対象物体の形状や大きさなどの物理情報が得られなくても、必要最低限の把持力を自律的に算出できる。最終的に事前学習不要で脆弱物(花やケーキ等)を含む多様な未知物体を人間の手のように優しく把持できるマニピュレータの実現に貢献した。未知物体の把持は、家庭等の非構造化環境で物理作業を行うロボットの実現に必須であり、ロボット工学における大きな課題の一つでもある。社会実装の可能性を示し、論文発表などを通じて、ソニーのロボティクス領域のプレゼンス向上に貢献した。

※2021年12月時点、当社調べ

世界最小画素の積層型イベントベースビジョンセンサー(EVS)の開発と商品化

近年機器に搭載されるセンサー数が増加する中でデータ量の削減及びセンサー自体の高効率化が必要とされている。この要求に対して極めて低遅延かつ低消費電力でシーンの変化を検出するEVSを開発した。本成果は、イメージセンサーで培った低ノイズデバイス技術、積層技術及び高性能回路設計技術を高度に組み合わせることで、世界最小4.86μm画素かつ世界最高水準の性能を発揮することに成功し、産業機器向けに『IMX636』『IMX637』として商品化した。

5,000万画素 14bit 250fps 裏面照射構造の積層型CMOSイメージセンサ開発と120frame/sのBlack Out Free撮影実現およびα1商品化への貢献

高解像と圧倒的なスピードを高次元で両立するフルサイズの裏面照射構造積層型CMOSイメージセンサーを開発した。本センサーは新開発となるkT/Cノイズキャンセル機能搭載のSample & HoldとΔΣADC回路を融合するアーキテクチャによって、世界最高となる50Mpixel 14bit 250fpsの読出し速度を1.18e-rmsの低ランダムノイズ特性を低消費電力で実現し、このアーキテクチャをベースとした新開発のシステムによって、α1の超高速120 frame/sのBlack Out Free撮影を可能としている。また、本技術報告はISSCC2021やJSSCに採択にされ、高い評価を受けている。

新世代モバイル(5G/6G, Wi-Fi等)を支える、ダイナミック周波数共用システムの実現

有限な周波数資源の枯渇問題を解決・緩和し、大量の電波資源を必要とする新世代モバイルの普及を後押しする新たなICT基盤技術、ダイナミック周波数共用システムの法制化、規格化、システム実装と日米欧での社会実装導入に貢献。無線通信の利便性を確保する上での根底の課題となる有限な周波数(電波)資源の枯渇問題に早期着眼。法改正・標準化・技術開発の3軸での活動を根気よく続け、法規制・既得権益要素が強い領域で、“不可能”とも言われていた周波数共用のコンセプトをグローバルに展開。近年、国内外メディアにて、本功績が多数取り上げられ、無線通信技術分野におけるソニーグループの評価を大きく高めることに貢献。業界トップクラスの特許ポジションを確保。

スポーツ向けリアルタイム骨格トラッキングシステム

スポーツ選手の位置・姿勢などをリアルタイムでトラッキングする『SkeleTRACK』の開発を先導。競技場に設置されている固定カメラに加えて、システムと同期していない放送用カメラを活用することにより、トラッキングの精度や安定性を向上した。汎用的なフレームワークをベースに、数秒間のデータをバッファリングしながら複数のトラッキング結果の仮説(Multi-hypothesis Tracking)を保持する工夫により、最終的に確からしい結果を確定している。チームカラーや選手の外観・ユニフォームの背番号などのさまざま情報を読み取り、ピッチ上の選手それぞれを自動識別することも可能。トラッキングデータは審判判定補助や統計での利用、ARやリアルタイムでのバーチャルリクリエーションへの活用が可能である。

音響イベント検出及び方向推定技術で世界1位を達成

音響認識分野における世界最大の国際コンペティションIEEE AASP Challenge on DCASE 2021の音響イベント検出及び方向推定タスクにて1位を獲得した。人の声、足音や犬の鳴き声といった音響イベントがいつどこで起きたかを推定する問題に対して、新たなデータ表現方法及びデータ拡張手法を考案し、雑音環境下でも高精度に推定できる技術を実現した。DCASE2022ではタスクオーガナイザーとしてフィンランドのタンペレ大学と協力しながら、実環境での評価を可能にするデータセットSTARSS22を作成・公開し、音響認識分野に貢献した。

ハイレゾオーディオワイヤレスコーデック “LDAC”のデファクト化への貢献

Bluetoothを使ってハイレゾオーディオ伝送を実現できるLDACの規格化と技術パッケージ群の開発を行い、ライセンス枠組を構築した。現在、LDACはソニー製品での採用は勿論、国内外のオーディオメーカーや大手自動車メーカーにライセンスされている。そのライセンシー数は100社を超えてデファクトスタンダードを実現しつつある。また、日本オーディオ協会の定める”Hi-Res Audio Wireless”の認証を受け、完全ワイヤレス型イヤフォン『WF-1000XM4』へのLDAC搭載を実現し、ソニー製品の商品力向上へ貢献し続けている。

独自機構により史上最高性能を達成した世界初フルサイズ直動フォーカルプレーンシャッターの開発

「電磁アクチュエータ」と「バネ」を併用し、従来比4倍のトルクを生み出すシャッター用アクチュエータを考案。デュアル駆動シャッターとして、フルサイズミラーレス一眼カメラのフラッグシップ機『α1』に搭載され、フルサイズカメラとして初めてフラッシュ同調速1/400秒を実現。市場に大きなインパクトを与えた。
同時期に、従来比大幅な小型軽量化を実現する新構造の電磁アクチュエータも考案。世界初のフルサイズ電磁駆動シャッターとして『α7C』に搭載され、フラットトップデザインのフルサイズミラーレスカメラの実現に貢献した。

”XR OLED Contrast Pro”の開発

WRGBの全色同時点灯により、OLEDの特色であるコントラストを活かしつつ、更なる高輝度化を実現した”XR OLED Contrast Pro”の開発。
表面の温度分布を検知する温度センサーと放熱用インナーシートを組み合わせた独自構造のパネルを採用しつつ、4つのSubpixelに電流が集中することによる急激な温度上昇を抑えつつ、画素ごとの緻密な制御をすることで、他社が実現できなかった極限状態の点灯を可能とし、ブラビア®の商品力向上に貢献。