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2025年2月14日

女性研究者を支援する第1回「Sony Women in Technology with Nature」の受賞者を発表

左から:北野宏明(ソニーグループ株式会社 副社長 CTO)、Yating Wan氏(アブドラ国王科学技術大学)、Amanda Randles氏(デューク大学)、Jiawen Li氏(アデレード大学)、Hatice Gunes 氏 (ケンブリッジ大学)Kiana Aran氏(カリフォルニア大学サンディエゴ校)、Magdalena Skipper氏(Nature誌 編集長)

2025年2月5日、ソニーグループ株式会社は、「Sony Women in Technology Award with Nature」の初代受賞者を発表しました。この新しい賞は、ソニーとNatureがより良い地球と社会を築く画期的な研究をリードするキャリア初期から中期の女性研究者を表彰することを目的に創設しました。研究活動を推進するための賞金 250,000 USドルが3名の受賞者それぞれに授与されます。

東京のソニーグループ本社で開催された授賞式には、最終候補者たちが世界中の研究機関から参加しました。また、学術界や産業界からのゲストも参加し、バイオエンジニアリング、精密医療、シリコンフォトニクス、ロボティクス、AIなどの分野における受賞者の功績を称えました。

写真:ソニーグループ株式会社 会長 CEOの吉田憲一郎

ソニーグループ株式会社 会長 CEOの吉田憲一郎は、最終候補者への祝辞とともに、テクノロジーには無限の可能性があり、社会に前向きな影響をもたらすための手段にもなり得ると述べました。また、テクノロジーを通じて新たな価値を生み出すためには、そのクリエイティビティを担う人も多様であるべきという考えを示しました。そして、この賞を通じて、より良い世界を築くという共通のビジョンを持つ、テクノロジー分野の女性を支援し、共にコミュニティを発展させ、人々の生活をより豊かにすることに貢献したいと締めくくりました。

写真:沖縄科学技術大学院大学(OIST)Dr. Karin Markides学長兼理事長

次に、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のDr. Karin Markides学長兼理事長が登壇し、基調講演を行いました。イノベーションの創出には多様性が不可欠であり、多様性こそがアイデア、専門知識、視点の相互作用を生み出すとの考えを示しました。そして、持続可能な社会のシステムをデザインするためには、学際的なコラボレーションとオープンサイエンスが極めて重要であると述べ、「過去20年間で知識が爆発的に増加したことにより、オープンサイエンスとオープンイノベーションの活用機会が飛躍的に増加するでしょう。そして、学問分野の統合によって、さらに複雑な課題へ取り組むことが可能になり、イノベーションの在り方に対する考えも変化するでしょう。」と締めくくりました。

続いて、本賞の主催者であるソニーグループ株式会社 副社長 CTOの北野宏明とNature誌 編集長のDr. Magdalena Skipper氏が登壇し、受賞者を発表、トロフィーを贈呈しました。北野は、この賞のビジョンを語るとともに、パートナーであるNatureを紹介しました。

「ソニーグループでは、研究活動は、ユニークな人生経験を有す多様な人々によって主導されるべきと考えています。なぜなら、テクノロジーによって、あらゆる人が目標を達成できるようにしたいと考えるからです。この賞の高度な審査基準を策定するために、私たちは世界で名高い学術誌であるNature誌とパートナーシップを組み、素晴らしい審査員の方々に参画いただくことができました。」

Skipper氏は、9人の審査員とともに、世界中の研究者から寄せられた優れた論文の数々を審査したプロセスについて振り返りました。また、共同議長を務める著名なIT企業家で慈善家のDame Stephanie Shirley氏のコメントも紹介しました。

Kiana Aran氏は、バイオエンジニアリング分野における功績により選出されました。Aran氏は、フィンガーチップセンサーを利用したウイルス検出の研究に取り組んでおり、人工知能と高度なセンサー技術を組み合わせることで、複数のバイオマーカーを分析し、がんや加齢に伴う神経疾患の早期発見を可能にする方法を探索しています。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のバイオエンジニアリング・薬学教授であるAran氏は、生物学と現代工学の融合によって精密医療の向上をめざす先駆的な研究で知られています。その功績の一つが、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat; クリスパー)を応用した電子チップの開発で、グラフェンを使用し、遺伝性疾患や新型コロナウイルス感染症などの呼吸器感染症の早期検出に寄与する技術です。

「この賞を受賞できたこと、そして、インスピレーションを与えてくれる革新的な受賞者の皆さんと共にこの場に立てることを心から光栄に思います」とAran氏は語り、「私は、最大のブレークスルーは学問分野の交差点で起こるという信念に突き動かされてこれまで科学の研究を続けてきました。カリフォルニア大学サンディエゴ校のバイオエンジニアリング・薬学教授として、また起業家として、私は生物学とエレクトロニクスを融合させ、次世代のバイオセンサーや医療機器を開発することに力を注いでいます。工学、生物学、データサイエンスを融合させることで、かつては不可能と思われていた技術を生み出しています。科学における学際的なコラボレーションと包括性を称賛する場を創ってくださったソニーとNatureに感謝します。」と締めくくりました。

Amanda Randles氏は、ウェアラブルデバイスの情報に基づく複数の計算モデルを統合し、各患者固有の心臓血管動態に関する分析結果を提供し、治療戦略を最適化するデジタルツイン技術に関する革新的な研究が評価され、選出されました。

コンピューター科学者であり医用生体工学の研究者であるRandles氏は、デューク大学でRandles Labを主宰し、高性能コンピューティング、機械学習、および疾患診断と治療のための個別モデリングへの貢献で知られています。研究チームは、心疾患の治療を支援するデジタルツイン技術の活用方法の検討を終え、この技法をがんの早期介入に適用する方法を探っています。今回の受賞により、がん治療の進歩につながる革新的なモデリング手法と新たな治療標的の特定方法について研究を深める計画です。

「私は、最先端のテクノロジーを活用して差し迫った医療問題に取り組むことに情熱を注いでいます。」とRandles氏は語り、「デューク大学で素晴らしいチームと共に研究が出来ることをとても感謝しています。このチームでは、医師が人間の病気を発見し治療するのに役立つ高解像度のデジタルツインを構築しており、これが医療に長期的な影響を与えることを願っています。これまでも女性は、プログラマー、研究室における技術者、問題解決者として、多くの困難な仕事に従事してきましたが、その貢献が評価されることはあまりありませんでした。その点からも今回の受賞はとても意義深く、また、今日でも男性優位のこの分野において、女性の貢献に光を当て、私たちの研究が評価され、称賛される機会を提供してくれるこのような賞は非常に重要です。」と締めくくりました。

Yating Wan氏は、シリコンフォトニクスの研究が称えられ受賞しました。Wan氏の研究は、シリコンチップ上への光源の統合することで、よりエネルギー効率の高いデータ通信と情報処理を実現することに焦点を当てています。

アブドラ国王科学技術大学の助教であるWan氏は、量子ドットレーザー(半導体材料で作られたナノクリスタル)とシリコンフォトニクスを統合するという斬新な手法で知られ、フォトニックチップの商業利用に向けた重要な研究成果を立証しています。同じ目標に取り組むテクノロジー業界の協力者とともに、彼女のチームはこのチップの実用化の方法を探究しています。

Wan氏は「アブドラ王立科学技術大学の統合フォトニクス研究所の素晴らしいチームと、私のビジョンを支援して資金提供してくださった方々に心から感謝申し上げます。私の研究活動を支えてくれた家族、共同研究者、指導者に深く感謝しています。そして、ソニー、Nature、この素晴らしいコミュニティの皆様、私を信じてくださり、このチャンスを与えてくださり、技術分野の女性を応援してくださり、ありがとうございます。」と述べました。

世界中の研究者からレベルの高い応募が寄せられたことを受けて、審査委員会は、Jiawen Li氏に審査員特別賞を授与することを決定しました。

Li氏は、ナノスケールの3Dプリントと光ファイバー技術を組み合わせ、髪の毛ほどの細さの内視鏡を開発しました。この技術は心臓専門医が患者の心臓発作のリスク判定を行う血管検査での活用のほか、予防や個別治療にも応用できます。

バイオメディカル工学者であり、大学で准教授を務めるLi氏は、この命を救う装置を臨床導入する重要なステップとして、この発明の商品化に積極的に取り組んでいます。また、共同研究者とともに、マルチモーダル技術の機能の拡張にも取り組んでおり、部位別の温度や化学的変化といったデータの測定を可能にすると同時に、神経疾患や体外受精といった他領域への応用も模索しています。

「この賞を受賞し、非常に学際的な分野であるバイオフォトニクスの女性としてこの場に立てたことを大変光栄に思います。」とLiは述べ、「この分野では、フォトニクスと光学の技術といった最先端の工学技術を駆使して、バイオメディカルの課題に取り組んでいます。また、コラボレーションが重要で、さまざまな背景を持つ人々が集まり、多様な専門知識を持ち寄って、時には優先順位や時間軸、さらには異なる 言語 を話すことさえあります。この思考の多様性こそが、私たちの強みなのです。」と締めくくりました。

また、最終候補者で、ケンブリッジ大学でAffective Intelligence and Robotics Lab(AFAR)のディレクターを務めるHatice Gunes氏が感情知能とロボティクスの研究において表彰されました。Gunes氏の研究室では、機械学習と感情コンピューティング、人間の非言語的行動認知の分野を融和させる手法で、特に形のあるエージェンシーシステムやロボットのようなAIシステムのためのマルチモーダルや社会性、感情知能の研究に注力しています。

Gunes氏は、「コンピューターサイエンスとAIは、あらゆる科学分野に変革をもたらしています。今こそ、少女たちがこの分野に足を踏み入れ、貢献し、包括的な未来を切切り拓いて行く時です。今回、最終候補者としてノミネートされた私の研究を通じて、少女たちにインスピレーションを与えることができたならこれほど光栄なことはありません。」と述べました。

他の最終候補者であるXiaona Li 氏 (中国・宁波东方理工大学)とYing Wu 氏 (サウジアラビア・アブドラ国王科学技術大学)は、先約があり授賞式には参加できませんでしたが、事前に寄せられたメッセージが紹介されました。

Li氏は、「最終候補者にノミネートされたことをとても嬉しく思います。科学技術に携わる女性として、私の研究が少女たちに夢を追い求める勇気を与えられることを願っています。一緒に明るい未来を作りましょう。次世代のハライド固体電解質材料を開発し、固体イオン伝導のメカニズムを解明することで、全固体電池技術の性能を大幅に向上させ、この分野におけるハライドシステムの技術的範囲を拡大することを目指しています。」と述べました。

「この名誉ある賞の最終選考に残ったことは、非常に嬉しく、また、私の研究が認められたことに感激しています。今回評価いただいたことで、科学界における女性の重要な貢献がハイライトされたと思います。私の研究は、音波の挙動を操作することに焦点を当てています。音波は、私たちの日々の体験の中で最も基本的なもので、この研究によって、騒音公害を減らし、音の反響を最適化することで、より静かで快適な生活環境の実現に貢献したいと思います。」

各受賞者による研究成果の発表の後、Natureの本拠地である英国のご厚意により、東京の英国大使館にてレセプションが開催されました。受賞者らは、ジュリア・ロングボトム駐日英国大使、ソニーグループ 社長 COO兼CFOの十時裕樹のほか、産学官でテクノロジー領域におけるDE&I推進に関わる方々と交流しました。

Sony Women in Technology Award with Natureは科学、エンジニアリング、数学を含むテクノロジー分野において地球や社会にポジティブなインパクトをもたらす研究を進めている、キャリア初期から中期の女性研究者を表彰するもので、各受賞者には、研究活動を推進するための賞金 250,000 USドルが授与されます。

次回の応募は2025年3月6日より開始予定です。この賞の詳細は、Sony Women in Technology Award with Natureをご覧ください。

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