ひらめきの数だけ、未来が動く。
- FUTURE BUILDERS -
創造力が動き出す
半透明の7種のブロック。
組み合わせ方は無限大。
くっつけたり向きを変えたりして、
イメージをかたちにしていく。
タブレットやPCでプログラムを組み「転送」を押す。
するとほら、目の前の物体が息を吹き込まれたように動き出す。
何をつくるべきか、どう動かすべきかは決まっていない。
何を、どんなふうにつくったってよいのだ。
子どもたちは自由に考える。
今頭の中に浮かんでいるアイデアを、
ただただ試し、動かし、驚いたり笑ったりする。
さあ、今日は未来の楽器をつくってみよう。
ぐるぐる回転する打楽器。
振動によって音が鳴る楽器。
吊るしたバネの不規則な揺れで、
風鈴のような音がする楽器。
見たこともない楽器が、次々に生まれていく。
子どもたちが手を動かす先には、
わたしたちにはまだ見えていない
未来があるのだ。
東京都町田市にあるキッズプログラミングスクール「KodoLabo」のアトリエにて、真剣な眼差しで机に向かう子どもたち。しばらくすると不思議な立体物が次々に机の上に立ち上がる。よく見ればそれらは半透明の小さなブロックで構成されており、ブロックから伸びたコードはパソコンへとつながっている。スイッチを押すたびに、回転したり、上下したりと自由に動き出す。
子どもたちが手に持つのは、ソニー・グローバルエデュケーション(以下:SGED)が開発/運営するプログラミング学習キット「KOOV®」(クーブ)だ。学習キットではあるものの、子どもたちは無理矢理勉強させられているような顔はしていない。むしろ遊んでいるときのように目を輝かせて取り組んでいる。子どもたちを夢中にさせる、KOOVとは一体何なのか。他のプログラミング教材と何が違うのか。なぜブロックを採用しているのか。そのすべてに、未来を生き抜く力を養ってほしいという熱い想いが込められていた。
INDEX
【第1章】今も、これからも、人間にしか持ち得ない力を。
「論理的思考力を育む教材はたくさんある。そんな中、創造力や好奇心を育むために生み出されたのがKOOVなんです」。「KOOVが生まれた背景とは?」という質問に対して明るい笑顔でそう答えてくれたのは、ソニー・グローバルエデュケーション(以下:SGED)の未来教育事業部に所属する安藤 亮さんだ。KOOVの導入サポートやプログラミングのワークショップなどを手がけており、子どもたちからは通称「アンディ」と呼ばれている。
「もう少し順を追って説明すると、AIを筆頭にしたIT技術発展の流れを受けて、IT技術を使いこなす人材が今後ますます必要となると予測されていることが関係しているんです。そこで文部科学省が打ち出したのが小学校からのプログラミングの必修化。これが2020年のことです。2015年に創設されたSGEDは先駆けてプログラミング教育事業に取り組み、これからの社会を生き抜く力を身につけるためのプログラミング教育とはどうあるべきか、ソニーとしてどんな教材を生み出すべきか、模索し続けてきました」。
一口にプログラミング教材と言えど切り口は無数にある。ソニーグループのパーパスに「クリエイティビティとテクノロジーの力で」とあるように、いかに人間ならではのクリエイティビティを発揮できるかという点を軸に意思決定を重ねたそうだ。
「プログラミング教育=論理的思考力の育成と考えられがちですが、与えられた課題に対して最適な答えを見つけるのはAIが得意とする領域です。この点に関しては、おそらく人間は敵わないでしょう。未来を生きる人々にとって本当の意味で必要なのは、自分で課題を見つける目、つまりは好奇心と、多様な発想と具体的なスキルで解決していく創造力です。自発的に取り組み続ける姿勢がなければ、課題解決の道中で現れるさまざまな壁を打破することはできない。創造力と好奇心を持ってして初めて、独自のクリエイティビティを発揮できるのだと考えています。」
【第2章】余白があるから楽しい。余白があるから難しい。
創造力と好奇心の育成という想いに共感し、発売から今に至るまで数多くの企業や団体がKOOVを導入している。その一つが、小学生から中学生までを対象にしたキッズプログラミングスクール「KodoLabo」だ。代表の正垣 健太さんに話を伺うと、「『KodoLabo』は、これからの未来を担う子どもたちに自ら考え、新しい価値を生み出す力を身につけてほしいという想いで始めたスクールでして、KOOVはまさにそのための教材だと感じたんです」と語る。
「KOOVには、子どもたちが楽しく取り組めるようにするための工夫が至るところに施されている。余白があると言いますか、そこにグッときました。楽しく取り組むことが一番大切だと思うので」。
長年ゲーム開発に携わってきた正垣さんは、楽しみながら発想をかたちにすることに人一倍強い想いがある。勉強の一環としてではなく、遊びの延長線上で行える点にKOOVの魅力を感じたそうだ。
そんなKOOVとは、一体どのような教材なのか。
「大きく、ブロック・電子パーツ=ハードウェアとアプリ=ソフトウェアに分かれており、アプリでプログラムをつくって転送すれば自分でつくったロボットが動き出すという仕組みです」と安藤さんは言う。
「中でも特長なのはブロックの色味やかたち。性別や嗜好に関係なく誰もが楽しみながら試行錯誤できるようにという想いのもと、親しみやすい7色かつ、多様な組み合わせができる7種のブロックと、さまざまな電子パーツを用意しています。そしてよく見るとブロックはすべて半透明なんですよね。ブロックが重なったときに、新しい色が生まれるという点が個人的にはお気に入りです」。
正垣さんも色味の魅力に同意しつつ、ソフトウェアの構成もポイントだと語る。
「手厚い学習ガイドはありつつ、先ほど “余白”という言葉を使ったとおり、プロセスやその後の発展は子どもたちが自由に考えられるように設計されているんです。プログラミングスキルの習得だけに特化していたら、この構成にはならないはず。あくまで自由に、自分の好きなやり方で進めていいんだよというメッセージを感じます」。
KOOVが持つ余白や自由さについて、安藤さんは「アプローチが無数にあるということは、裏を返せばそう簡単には進まないとも言えます」と説明しつつ、「でも、眉間に皺を寄せて考える時間というのは、子どもたちにとって非常に大切な成長の過程でもあるんです」と続ける。
「おもちゃを例にしてみても、誰でも簡単につくれるもの、説明が丁寧でストレスなく進められるものが注目される傾向にありますが、持続性のある強固な好奇心を養うには『一発でよいものをつくれるか』ではなく『試行錯誤を繰り返しながら、いかに理想のものに近づけていけるか』という姿勢が必要不可欠です」。
また、「何をつくるか」以上に「どうつくるか」という点が重要だという。
「アウトプットとして同じものが完成したとしても、そこに至るまでのプロセスに一人ひとりの個性が現れてくるためです」。
そういった理由からKOOVでは、他者の作品を通じてお互いの個性を知ることでより発想を広げられるよう、アプリ上での作品公開や定期的なコンテスト開催も行っている。この仕組みが、子どもたちのモチベーション向上にも寄与しているとのことだ。
【第3章】手を動かし、模索する。その目は輝いている。
正垣さんは「組み立てたブロックが動いたとき、子どもたちの目がキラッと輝くんですよ」と話す。そこで2025年12月某日に「KodoLabo」で行われるというワークショップにお邪魔し、子どもたちが実際にKOOVを触っている様子を見学させていただいた。今回のワークショップのテーマは「未来の楽器をつくってみよう」。曲がる角度やはやさを制御できるサーボモーターや、回転の速さなどを変えられるDCモーターのプログラムのレクチャーを受けつつ、子どもたちは自由に手を動かしはじめた。
まず驚いたのは、子どもたちの迷いのなさだ。「うまくいかないかも……」「間違っているかも……」といった躊躇はせず、まずはやってみる、ダメなら他のアプローチを試してみる、それでもダメなら始めからやり直してみる、といったかたちで試行錯誤を繰り返していく。そしてその間、一度も不服そうな顔を見せない。誰が見ても分かるほどニコニコしている子もいれば、表情は変えず目の奥に炎を宿している子もいるが、どの子も終始楽しそうな点は共通していた。ワークショップは2時間ほど続いたが集中力を落とした子は一人もおらず、むしろ「あと10分しかない!」「他にもやりたいことあるのに」と終了時間が迫るのを惜しんでいた。
そうして出来上がった「未来の楽器」は、どれも私たちの想像をはるかに超えていた。
ワークショップ終了後に子どもたちや保護者に話を聞くと、さまざまな感想が返ってきた。
英会話や塾などさまざまな習い事を掛け持ちしているという小学6年生の子どもは、「ほかの習い事はあんまりやる気出ないけど、これは楽しい。だって好きにつくれるし、新しい動かし方も覚えられるし」と素直な想いを吐露してくれた。また、兄弟揃って「KodoLabo」に通っている子どもたちの保護者は、「お兄ちゃんは構造の理解や細かな調整にこだわっていたのに対して、弟は季節感を意識してクリスマスらしい装飾をしていて、それぞれの個性を改めて理解できたことが親としてはすごくうれしかったです」と語ってくれた。
【第4章】未来の教育への想いが、伝播していく。
子どもたちを笑顔で見送っていた安藤さんだが、KOOVの今後については「やるべきことがたくさんある」と語る。「創造力と好奇心の育成が大切だと繰り返し言ってきましたが、一方でこれらは、どれほど身についたかが分かりにくいスキルでもあるんですよね。そのため保護者の方からすると、KOOVを使ったプログラミング教室に子どもを通わせ続けるべきかどうかの判断がしにくいのではないかと思われます。しかし、数値化できるようなスキルこそ今後AIに取って代わられてしまう可能性が高いと思うので、その点を踏まえ、保護者の理解を得て安心していただくことが、今後のKOOVの運営を考える上で肝になってくると考えています」。
そうした課題解決と並行して、KOOVによる「ことづくり」を実現することも目標の一つだと安藤さんはいう。「ものをつくるためにKOOVを使うのではなく、誰かを喜ばせたり驚かせたりするためにKOOVを使うというように、つくったものの先を描ける体験を設計していきたいです。ものの先には人がいるので。そこまで考えることで、社会で通用する創造力が身につくようになりますし、何より、そうした人を想う力が未来を動かしていくエネルギーになるのだと信じています」。
正垣さんもまた、「KOOVで何ができるのかではなく、日常生活で目にしたものなど身近なところから課題を見つけ、その解決方法を考える習慣を子どもたちが身につけていけるようにしたい」と語る。加えて、「KodoLabo」で学んだ子どもたちが成長し、次の子どもたちの学びを支える存在となるような学びが循環していく場をつくっていきたいと話すと、安藤さんはその言葉に深く頷いた。「KOOVはゴールではなく、これからの教育をつくっていくためのきっかけの一つです。まだまだ伸び代があると思うので、いただいた期待に応えていきたいです」。
未来を想う気持ちが、KOOVを通じてつながり、世代を超えて伝播していく。 子どもたちの目の輝きから分かるように、私たちの想像を超えた未来はすでにひらかれはじめている。
Seeds of Emotion 〜 心が動いた、その瞬間。 〜
安藤 亮 (あんどう りょう)
ソニー・グローバルエデュケーション 未来教育事業部
KOOVの導入サポートやプログラミングのワークショップなどを手がける。
正垣 健太(まさがき けんた)
キッズプログラミングスクール「KodoLabo」 代表
ゲーム開発や新業態店舗開発に従事した後に「KodoLabo」を創設。
プログラミング授業の講師を務める。
Seeds of Emotion
子どもたちの好奇心の大きさと
ものづくりへの熱量に触れられたこと

Seeds of Emotion
同じテーマに対して、子どもたちが一人ひとり
異なる発想で取り組んでいたこと