ネイト:『Ghost of Tsushima』に寄せられた反響に、サッカーパンチのチーム一同、とても胸を打たれました。私たちは常に「自分たち自身が心からプレイしたいと思えるゲームとは何か」を考えることから制作を始めています。今回は「オープンワールドで侍としてプレイできたら、最高じゃないか?」というシンプルな発想が、ゲーマーである私たちの心に刺さったのです。だからこそ、そのゲームを世界に送り出したとき、多くのプレイヤーが同じ思いを抱いてくれたことを本当に嬉しく思いました。
期待感を生み出すには、まず「その世界で生きてみたい」と思わせる体験のコンセプトを、はっきりと描くことが大切だと思っています。その体験自体に十分な魅力があれば、過剰な煽りは不要です。好奇心を刺激したり、心に抱いている憧れを呼び覚ましたりすることができれば、人は自然と引き寄せられていくものです。私たちにとっては、侍として生きる人生を追体験する、という美しくもスリル満点の体験そのものが、抗いがたい引力を放っていました。
結局のところ、ローンチ前の期待感を生むうえで最も力を持つのは、作り手自身が本気で「面白い」と信じているものを届けることだと思います。そうした姿勢は、必ずプレイヤーにも伝わるはずです。
ネイト:2作目の「Ghost」シリーズに取り掛かるにあたり、まず向き合ったのは、「このIPを本質的に形づくっているものは何か」という問いでした。私たちにとってそれは、古き良き時代劇に通じる世界観や、どこか美化された封建時代の日本像、緻密に作り込まれた戦闘表現を大切にしながら、何よりも、誰もが共感できる人間らしい感情を物語の中心に据えることでした。
こういった要素がしっかりと保たれている限り、舞台背景を変えることは問題ではありません。場所や時代を変えたとしても、また新しいキャラクターを迎えたとしても、「Ghost」らしさが失われることはありません。大切なのは、プレイヤーが前作と同じ空気感を確かに感じながら、侍映画のような物語に再び身を置き、その一挙手一投足に意味と重みを感じられることです。
考え方としては、ごくシンプルです。感情とテーマの核を見極め、それを徹底して守り抜く。そうすれば、他の要素は自然とそれを中心に展開していきます。
体験としては常に新鮮さを保ちながらも、「Ghost」らしさを失わずにいられる理由はそこにあると思います。
ネイト:「Ghost」というIPがここまで成長してきたことを、私たちは本当に嬉しく思っています。『Ghost of Tsushima』と『Ghost of Yōtei』を通して、いくつもの物語が共存できる世界線が形成されました。異なる背景を持つ主人公たちが、それぞれの道を歩み、自分なりの形で「冥土(くろうど=ゴースト)」に至る世界です。これらは、複数の主人公によるアンソロジーだとも言えます。この考えこそが、数えきれないほどの可能性を生み出しています。
そして、他メディアへの展開にも大きな期待を寄せています。現在、『Ghost of Tsushima』の実写映画の企画が進んでおり、『Ghost of Tsushima: Legends / 冥人奇譚』のアニメ化も進行しています。映画監督やアニメのクリエイターたちが、私たちの築いてきた世界をどのように再解釈してくれるのか、その過程を見届けられることを、心から楽しみにしています。こういった広がりを通して、普段ゲームをしない人たちにも「Ghost」の世界を知ってもらうきっかけになればと思っています。
このシリーズの根底には、侍映画に連なる表現や価値観があります。そしてメディアの垣根を超えて人々の心に響く普遍的なテーマを土台としているからこそ、さまざまな形へと展開させていく可能性も秘めています。新たな時代や、別の主人公を軸に描くこともできますし、私たち自身が思いもよらなかった物語が生まれるかもしれません。「Ghost」というコンテンツは、さまざまな形や方向に広がっていける柔軟性を持っているのだと思います。
何より嬉しいのは、そうした広がりの一つ一つが、新たなファンをこの世界へと呼び込み、メディアの垣根を越えて同じ感動を共有できる瞬間を生み出してくれることです。この「Ghost」の世界を作ってきて良かった、報われた、と感じられる瞬間です。
エイドリアン:まず、ハードウェアの特性や、使用しているエンジンがどのようなことを得意としているのかを理解するところから始めます。そこから、技術がどのようにゲームのビジョンを支えられるのか、その可能性を探っていきます。開発のかなり早い段階で、プロジェクトの指針となる「柱」をはっきりと定めます。それは、プレイヤー体験を形づくる、核となる考え方です。私たちが下す全ての技術的な判断は、その柱を支え、強化するものである必要があります。
私たちは、チームの強みを活かすために技術を使う、という考え方を大切にしています。たとえば、作品として強く印象に残るビジュアルを実現するために、アートチームと特に相性の良いレンダリング技術を選ぶこともありますし、戦闘の操作感を高め、なおかつ表現としても豊かなものに仕上げるためにゲームデザイナーとアニメーターが密に連携することもあります。
本当に良い判断とは、どちらか一方だけではなく双方に良い影響を与えるものです。つまり、プレイヤー体験を高めると同時に、制作チームが効率的に働ける環境を作り出すものです。技術とクリエイティブの方向性が互いを支え合うように噛み合うと、体験全体に統一感が生まれ、その結果ゲームはより完成度の高いものになります。
ジョアンナ:私が特に体験してほしいと思っている瞬間は、羊蹄山の頂上に立つシーンです。羊蹄山はマップ全体の中心にあり、基本的にどこにいてもその姿を見ることができます。しかし、いざ自分がその頂に立つと、世界の見え方は一変します。振り返れば、自分がそこへ至るまで歩んできた道程が見え、目の前には無限の可能性が広がっています。その雄大な景色を、プレイヤーの皆さんの視覚や感覚すべてで受け止めてもらいたいと思っています。
私たちが目指したのは、美しさと、そっと胸を満たす孤独感を同時に喚起させることでした。それは、主人公・篤の人となりや、彼女が歩む人生そのものに重なります。羊蹄山は、その相反する二面性を象徴する存在です。荘厳で、どこか陰を帯びた佇まい。世界の中心にありながら、深い孤独を宿した山。私たちは山の見た目だけではなく、それが放つ存在感についてチーム全体で徹底的に話し合いました。その共通理解があったからこそ、アート、デザイン、レンダリング各チームの全員が、プレイヤーに届けたい感覚のイメージを共有しながら作業を進めることができました。
そうして生まれたこの瞬間は、チームが一丸となって積み重ねてきた努力の結晶です。環境、ライティング、空、天候など、あらゆる要素がひとつに溶け合い、この景色を作り上げているのです。頂上に辿り着いたプレイヤーが、自分自身の歩んできた旅路を振り返り、この景色の中に重ねる。それこそが、私たちがこの瞬間に込めた思いです。
ネイト:ゲームは遊ぶのもとても楽しいけれど、正直に言って、作るのはそれ以上に楽しいものです。もしゲーム業界を目指すなら、インタラクティブ性(注:プレイヤーの操作や選択がゲーム体験に影響を与えること)への情熱を大切にしながら、自分が本当に得意で誰にも負けないと思えるスキルをひとつ磨いてください。それが、業界に入るための大きな足がかりになります。業界に入ってからも、さらなる努力を積み重ねることが大事です。自分の専門分野から一歩踏み出し、未経験の領域にも関わってみましょう。
ここで成功している人たちは皆、それぞれ強いコアスキルを持ちながらも、全く違う分野の人たちと協力し合い、互いをリスペクトする心を持っています。他の人が何に悩み、何にワクワクし、どんなことからインスピレーションを受けているのかを知ることで、強力なチームワークが生まれるのです。実際、心躍るようなひらめきとは、1人で考えている時ではなく、異なる専門性を持つ人たちが出会い、化学反応を起こすことで生まれることが多いのです。
私が皆さんに伝えたいメッセージは、とてもシンプルです。何かを極めて、好奇心を忘れず、周囲の人と力を合わせることを学んでください。それが、良いものを作り出しながら、その過程を心から楽しむための近道だと思っています。
ジョアンナ:私にとって創作とは、常に人に始まり、人に終わります。日々一緒に働く仲間はもちろん、直接会うことのないプレイヤーとも、どこかでつながっていたい。そういった思いが、私の創作の原動力となっています。ゲームとは、作り手とプレイする人とを目には見えないかたちで結びつけてくれるものです。作品を通して、気持ちが自然と通い合うのを感じます。自分たちの手で生み出したものが、世界のどこかにいる誰かの心に届く。その思いが、私を創造に向かわせ続けるのです。
ネイト:私の”Voice”は、子供時代の原風景にあります。職場のデスクには今でも、子供の頃に遊んでいたプラスチック製の宇宙船のおもちゃを置いています。そのおもちゃが、子供だった私に教えてくれた冒険へのワクワクする気持ちや想像力を、次世代へ伝えることが、私の仕事だと思っています。そして、成長する中で自分が感じたときめきを、今度はプレイヤーたちにも感じてもらいたい。その思いが、今も私を前へと突き動かしているのです。
エイドリアン:私の原動力となっているのは、学び続けることへの純粋な興味と、知的でクリエイティブな人たちと一緒に仕事をする楽しさです。ゲーム開発は、アート、デザイン、脚本、テクノロジー、さらには歴史まで、さまざまな分野が交わる場でもあります。好奇心を持って取り組むほどに可能性が広がり、人と協力し合うことで新しい発見が生まれていきます。ゲームを通して、プレイヤーが気づきを得たり、これまで知らなかった自分に出会ったりする。そんな体験を届けられると信じているからこそ、私は今もゲームを作り続けているのだと思います。
サッカーパンチ・プロダクションズ ディレクター
『Ghost of Tsushima』『Ghost of Yōtei』を含む複数作品でディレクターを務める。
サッカーパンチ・
プロダクションズ アートディレクター
両作品において、ワールドデザインとビジュアルアイデンティティを統括。
サッカーパンチ・
プロダクションズ テクニカルディレクター
『Ghost of Yōtei』のプログラミングとエンジニアリングチーム全体を統括。