最も重要なポイントは、参加費が無料であることです。また、私たちはどのようなフォーマットも歓迎しています。映画監督や製作者の皆さんに、この点を特に強調して伝えてきました。参加者は、それぞれ好みのフォーマットで撮影した作品を応募することができます。
このプログラムでは、ロサンゼルスでワークショップがあり、これは今後もぜひ継続していきたいと思っています。なぜなら、それぞれ異なる経験を持ち、様々な物語を描いてきた各国の映画製作者が、お互いと交流する絶好の機会ですからね。また、このプログラムを通して、新進気鋭のクリエイターたちともどんどんコラボレーションしたいです。なぜなら、若いクリエイターたちの間では、非常にエキサイティングで斬新なアイデアが生まれていると感じているからです。世の中には、発信する機会をただ待つばかりの、驚くべき才能を持ったクリエイターたちが存在していると私は思います。
映画製作者は、ペンと紙さえあれば、創作活動を始めることができます。最近では制作方法も多様化しており、身近なところにある機材を手に取ったり、借りたりしているクリエイターの姿も見かけます。若手クリエイターは、表現したいことを文字にすることから始め、そのアイデアを元に手軽にカメラを借りたり、スマホを手に取ったりしているのです。
私はこれからの映画製作の現場に大きな可能性を感じています。AIがますます浸透していく時代だからこそ、製作者は自分の個性や唯一無二である独自性に向き合い、伸ばすことをより求められるタイミングが来ると確信しているからです。世の中には、あらゆるストリーミング・プラットフォームが無限にあります。このアワードが、まったく新しい世代を生み出し、彼らの躍進に必要なチャンスを与えてくれることを私たちは願っています。また、彼らが業界のキーパーソンと繋がる手伝いをし、自らの想いを話し、サポートを得るきっかけや作品を発表する場を作り出す手助けとなれたら良いなと思います。
監督というのは、基本的には孤独な存在です。他の製作者と出会う機会が少ないのです。だからこそ、自分の作品を映画館で上映し、観客席にオーディエンスと一緒にその場に座ることは、自分の映画について多くの気づきを与えてくれるので、とても素晴らしい経験だと思っています。私も、『おじいさんと草原の小学校』という作品で素晴らしい経験をしました。世界中から集まった名だたる映画監督たちと出会い、彼らの制作プロセスやそれぞれの葛藤、映画製作の手法、そして今取り組んでいることなど、話を聞くことができました。ソニーフューチャーフィルムメーカーアワードが開催されるL.A.では、映画制作者が業界の人々と交流するフィルムウィークがあるのですが、クリエイターたちはそこで今後の活動の助けとなったりアイデアに繋がったりするような、前に進むきっかけとなる出会いを経験するのです。
創作活動とはコラボレーション作業であり、また、学びでもあります。経験豊富な人が、経験の浅い人から学ぶことは多くあります。映画を作るためのリソースが限られている人ほど、必然的に、いかに作品の完成に漕ぎ着けたかなど、あらゆる話のネタを持ち合わせているものです。
マンデラ財団とマンデラ氏のご家族が、映画の制作について話がしたいと、私を南アフリカに招いてくださいました。マンデラ氏は、ご自分が生まれた時から、刑務所を出所するまでの彼の人生を、自著に基づいて映画化したいと考えていました。彼のご家族と直接お会いする機会をいただき、その際、マンデラの生家や彼が住んでいた場所を訪れるよう勧められました。この経験を通じて、彼の人生に起こった出来事を知ることができました。
マンデラが釈放されたとき、私は大学生でしたが、その日のことを今でも覚えています。マンデラ氏が釈放された時に18歳か19歳だった、ビクター・フェルスター刑務所(現在のドラケンシュタイン矯正センター)の警備員に出会った時、彼は釈放の日のことを振り返り、私にこう言いました。「マンデラが釈放された当時、誰も彼の顔を知らなかった。でも、世界が、マンデラが外に出てくるのを待っていた。ずいぶん長い時間待たされましたけどね」と。なぜそんなに待たされたのでしょうかと尋ねると、彼は「マンデラ氏は、遅れて到着した妻のウィニーさんなしでは、外に出ようとしなかったのです。彼は、彼女と共にあることを望んでいた。たとえ2人の夫婦関係に問題があろうと、これまでにいかに二人があらゆる試練に晒されていようとも、マンデラは彼女と手を取り合い歩き出したかったのだと思います」と答えました。その瞬間、私はこのことこそが、この映画の核心であることに気付いたのです。この映画は、ラブストーリーだ、と。
私はプロデューサーらに電話をかけ、ラブストーリーとして物語を描くべきだと伝えました。映画『自由への長い道』を紐解くカギを手に入れ、私は何をすべきか、全てを理解しました。脚本家のウィリアム・ニコルソンも、同様に何をすべきか理解した様子でした。映画が成功した理由は、それが真実とリサーチに基づいたものだったからです。ジャンルに関係なく、その映画が真実を追い求める物語である以上、クリエイティブを仕事とする者として、真実を追い求めることに対し貪欲である必要があるとは思いませんか?周囲の人々と協力し合えば、ともすれば幻と消えてしまいそうな真実の瞬間を映像として捉えられる可能性は、一気に高まります。それは創作活動であり、同時に共同作業でもあります。これまでに私が経験した中で最も素晴らしい結果をもたらしてくれたものは、やはり私自身がコミュニティの中に飛び込み、それを軸に世界を作り上げた時だったと感じます。地元の人々や、地元の才能ある人たち、物語のテーマを深く知る人々と協力し合うことで、俳優たちがその世界に没入するための基礎を作り上げることができるのです。
私は自分の仕事が大好きです。仕事は私の人生の大部分を占めています。クリエイティブでいられること、物語を伝えられる立場にあること、物語を伝える機会を人に与えられることは、とても幸せなことだと思います。私のクリエイティブなプロジェクトは、主に人とのコラボレーションで成り立っています。様々な背景を持つ人と協力しあい、作品を作りあげていくのです。それは、身近な人とだけではなく、自分とは違う意見を持った人や、異なる人生経験を積んできた人とも、という意味です。私にとって、監督として撮影現場でクリエイティブであるということは、率直でオープンな環境をアーティストや俳優陣に提供すること、共に真実を見つけ出すための環境作りをするということを意味します。クリアにビジョンを共有し合えているということが制作には最も大切なことで、一人で抱え続ける必要はありません。いつだってあなたの夢をサポートし、共に叶えようとしてくれる素晴らしいクリエイティブな人々は存在すると思いますし、自分が伝えたい物語、アイデアを追い求めて行く中で良き出会いは生まれていくと、私は信じています。
人は、誰しもクリエイティブな存在です。何か表現したいことがあるのなら、ぜひ立ち上がり、今すぐ実行に移してほしい。今こそ、独創性のある"Voice"が求められている時代なのだから。私たちは、新しい"Voice"を必要としています。ありきたりなソースから生まれたものではない才能を求めているのです。ソニーがまさに目指しているのは、そんな新たな才能を発掘し、原石を見つけ出すことなのだと思っています。
ジャスティン・チャドウィックはイギリスの映画監督。映画以外にも演劇、テレビの監督も手がける。代表作は、アカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞にノミネートされた『マンデラ 自由への長い道』(2013年)、AFIおよびIFTAにノミネートされた『ブーリン家の姉妹』(2008年)、『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』(2017)、『おじいさんと草原の小学校』(2010)など。