共感、信頼、リラックス、これが私のキーワードです。現場にコーヒーが準備されている、いい音楽が流れている、雰囲気が温かい、急かされる感じがしない、こうした一つひとつの物事を大切にしています。被写体の方が「この人が撮ってくれたら、きっとうまくいく」と思えるような、絶対的な安心感を醸すこと。それが、私にとって一番重要なのです。撮影する側としては、常に準備を万全にして、決して慌てず、余裕を見せることで、自分たちの経験値の高さをアピールする。撮影に焦りは禁物です。被写体の方の気持ちが整うまで待つことや、何気ない世間話をたくさんしてコミュニケーションを取ることを意識しています。することも効果的です。いつもうまくいくとは限りませんが、常にポジティブに、そして相手の気持ちを思いやること、そして写真を撮られるのが本当に好きな人はいないということを理解することこそが大切です。写真を撮られることを心から楽しんでいる人はほとんどいない。だからこそ、彼らの気持ちに共感しなければならない、私はそう考えています。
アイデアを考える上で重要なのは、それがいつやってくるかわからないということを知ることだと思います。降りてきたアイデアを、大切にしなければいけない。次いつ落ちてくるかわからない稲妻のようなものだからこそ、自分自身に耳を傾け、頭に浮かんだ考えをできるだけたくさん書き留めておく。今年、新しいプロジェクトを始めたばかりなのですが、前回のプロジェクトからかなり時間が空いてしまいました。その間、私は自分自身をオープンな状態にし、アイデアが降りてくるのを今か今かと待っていました。今取り組んでいるアイデアは、今週にも撮影を予定しているのですが、私自身とても手応えを感じています。
私は大きなプロジェクトのアイデアをいくつもストックしているタイプではなく、1つのアイデアを思いつくと、そこに最後までとことん向き合い、可能な限りの熱意と能力、持てるもの全てを注ぎ込むようにしています。何年かに一度、これだ!と思えるアイデアが浮かぶ、そんなイメージが近いかもしれません。アイデアを生み出すマシンみたいなものが人の中にあるとしたら、私のマシンは少し燃費が悪いのかもしれません。だからフラストレーションも溜まります。そんな時は音楽を聴く、食べる、旅行にいく、家族と過ごす、1人で過ごす、運動する、散歩をする、パブで飲むなどしてリラックスするようにしています。イギリス人はほとんどの情報交換をパブで行いますからね。とにかく、アイデアの方からやってきてくれるのをひたすら辛抱強く待って、いざその時が来たら、しっかりと向き合い、大切にすることが重要なのだと思います。
ソニーワールドフォトグラフィーアワードの最も重要な要素は、応募が無料であることだと思います。これは、私は声を大にして言いたい。全ての人に公平な、最高の出発地点となりますから。学生からカメラを趣味にしている方、プロフェッショナルまで、誰もが応募してみよう、と思える間口の広さがポイントです。世界的に最も権威のある写真賞だからこそ、私もエントリーしたいと思えたし、これまで何度もエントリーしてきました。箸にも棒にも引っかかりませんでしたが…。
しかし、2018年にプロフェッショナル部門ポートレートカテゴリーで優勝し、2020年には一般公募部門で優勝することができました。最高に嬉しい瞬間でした。受賞するということは同時に、世界的な認知度を得るということです。今は、良い作品があっても、本当の意味で有益なアウトプットする場は少ないですし、自分の作品が多くの人の目に触れるようになることは、写真家にとって大きな力となります。応募するメリットは他にもたくさんあるので、私としてはぜひみなさんに参加してほしいと思っています。
新しいアイデアが浮かんだとき、プロジェクトの中に深く引き込まれていきます。そのアイデアが自分をあるべき場所に導いてくれるという風に感じるのです。説明が難しいのですが、それは肉体的にも精神的にも強烈な衝動で、それ以外の事は考えられなくなるほどの引力です。そして、すぐにそのアイデアをどう撮影しようか?どう表現しようか?と自分に問いかけ、向き合います。アイデアを使い果たすか、アイデアがあなたを使い果たすか、どちらかになるまで、進んで、進んで、進み続けて行くしかない。クリエイティブな仕事をしている方々に対し、私ができる最大限のアドバイスを贈るとしたら、それに限ります。浮かんだアイデアを大切にし、行けるところまで突き進めばゴールは自ずと見えてくる、ということです。
たとえ突如成功したかのように見えたとしても、その裏には10年の地道な努力があるということです。だからこそ、常に新鮮な空気を入れながら、進みやすい形で歩み続けてほしいです。そして、自分が到達したい地点に辿り着くまでにかかるであろう時間を、甘く見ないこと。この業界では、諦めた人から脱落していきます。努力を積み重ねることでしか、栄光への道は開かれません。何事も、芸を極めるためには気の遠くなるほどの時間と、情熱が必要です。奇跡の一枚が撮れたらそれは喜ばしいことですが、果たして同じものを要求された時、それを再現できるのか?同じクオリティのものを求められ、それに毎度応えられるのか?それにはやはり、集中力と時間が求められます。良い時も、苦しい時もあるでしょう。そうやって何度も何度も転びながら、自分自身を立ち直らせ、撮り続けていく。そうした力こそが、真の成功に必要なものだと思います。
私を作品作りへと駆り立てる"Voice"は、写真が答えるべき疑問を問いかけることだと思います。私自身が満たさなければならない私への要求であり、ある種の強迫観念だと思います。文章では伝わりづらいかと思いますが、自分が無視できない声で『さあ、やってみせろ。やり遂げるんだ』という声が響いてきます。これ以上付け加えられることはないのですが、先ほども言った通り、創作という行為は肉体的にも精神的にも負荷がかかるものです。撮影を終えて、『ああ、あそこはもう少しできたのに』と思うあの心残りな瞬間、もっとできたはずだ、もっと頑張れたはずだ、もっといい写真が撮れたはずだ、とザワザワするような思いをしたことは誰にでもあると思います。
だから、私たちはその感情を忘れずに、訪れたチャンスを絶対に逃さないようにしなければいけないのです。私が使っているSony Alpha 7R Vのカメラに搭載されているようなアイフォーカスがあれば、常に『このショットは決める、いける、いけるぞ』という気持ちになれます。技術の進化、そしてソニーのキットは私の仕事にとって欠かせない要素になっています。
機材に対して絶対的な信頼を持つこと、それが最重要です。何も考えなくても手が動くほどの、信頼感です。一つの理想的な到達点ですよね。機材がもはや障害物ではなく、完全に撮影のフローの一部になるということ。信頼がなければ何もできない。それくらい重要だと思います。
ウサイン・ボルト,アスリート, -80mm ISO100 f8 at 1/250秒 / リアム・ギャラガー,ミュージシャン, 雑誌 MOJO -50mm ISO200 F11 1/125秒 / ジャネール・モネイ, シンガー, 俳優 -62mm ISO100 F7.1 1/125秒 / ペドロ・パスカル, 俳優, -100mm ISO400 F16 1/350秒 / リチャード・アシュクロフト, ミュージシャン -80mm ISO400 F8 1/90秒 / リック・ルービン, 音楽プロデューサー -35mm ISO200 F4 1/160秒 / クリスティアーノ・ロナウド, サッカー選手 -70mm ISO200 F11 1/160秒 / ブカヨ・サカ, サッカー選手, -28mm ISO400 F11 1/60秒