SONY

エリーン・V・マイルズ

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
インターセクショナル・マーケティング担当SVP

ソニーに「インターセクショナル・マーケティング」をもたらす

私は以前、マーケティング会社の部長という立場から、ソニーの多文化なパブリシティやマーケティング活動に携わっていました。転機となったのは 2018年、ある映画の公開にあたって、私は(米国)国内のアフリカ系アメリカ人の視聴者に向けて、心に響くキャンペーンを実現しようと仕事に取り組んでいました。会議に出席するため、ソニーのオフィスに頻繁に出入りをしていた際に、そのキャンペーンとも関係性のあるインターセクショナリティー*に関してさまざまな組織の幹部の人たちと前向きで実効性の高い話をしました。このことがきっかけとなり、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)に入社するに至り、自分の長年積み重ねてきた知見や経験を、充分に発揮できる職を得ることになりました。それまで培った知見や経験を、マーケティング部門だけでなく社内外の取り組み全体で長期的視点に立って生かすことができればと考え、リサーチ、メディア、パブリシティなどのマーケティングチームにさまざまな「インターセクショナル」な視点を持ち込み、あらゆる作品において新しい可能性の追求を目指しました。最初の数週間、この役割の重要性を認識した、テレビ、ゲーム、アニメなどのコンテンツ制作に携わる、さまざまなグループ会社とつながることができました。このように多様なチームと連携し、仕事ができることにやりがいを感じています。

  • *人種、性別、障がい、国籍、性的指向、性自認といった、複数の属性が交差することによって生じる特有の差別や抑圧を理解するための枠組み

業界でいち早くこのような役割を担えることにとてもやりがいを感じています。

脚本からスクリーンまでの共同作業

脚本を受け取るとまず、ストーリーをより良いものにするため、社会的に少数派とされる方たちに寄り添うべき要素が明確で、適切に配慮されているかなど、あらゆる側面を確認するとともに、どのようにテーマを深堀できるか考えます。ストーリーが普遍的で具体的なものであればあるほど、人は共感を覚えます。そして、語り手が誰であっても、自分と同じような経験には感情移入しやすいものです。私たちの取り組みは「LGBTQ+」「障がいのある人のコミュニティ」「アフリカ系アメリカ人」「ヒスパニック系アメリカ人」「アジア系アメリカ人」などのいわゆる「社会的少数派」の方々がオーディエンスであり、各セグメントに精通したチームと緊密に連携しながら、作品の認知度を高めるためのプランを練り、オーディエンスの心に訴え、ストーリーの本質を伝えるメッセージを発信します。私が入社した当初は、映画業界どこを見てもこのような役割を担うチームはなかったように思います。オーディエンスの「インターセクショナリティ(=属性の交差性)」に注目し、マーケティングに取り込んだことで、ユニークなポジションを確立できました。そして、この5年間で「インターセクショナリティ」という言葉を頻繁に耳にするようになり、よりスタンダードな手法になりつつあることを実感しています。業界でいち早くこのような役割を担えたことは、とても喜ばしいことですし、ソニーにとっても、このような手法を取り入れていることが「誇り」となれば良いと思います。

ダイバーシティとインクルージョンが、全ての人にとっての「当たり前」になることを望んでいます。

ダイバーシティは特別なことではない

この10年間で、社会は「ダイバーシティ」と「インクルージョン」を受け入れるという点において、大きな進歩を遂げました。SPEでも、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)のチームによる献身的な努力が見られます。このチームは、想像しうるあらゆるマイノリティグループのために必要なリソースを整え、指針を示し、私たちのコンテンツが厳しいプロセスを経て吟味されていることを保証してくれています。

DE&Iを追求することは単に「社会的に良いこと」だけではなく、ビジネスの上でも大切であることを忘れていけません。映画業界では、興行収入の40%近くを有色人種から得ている事実があり、収益性という面でも大事なマーケットです。幅広いオーディエンスに対して自分事として捉えてもらえるコンテンツを作ることが極めて重要です。社会的少数派とされているオーディエンスを積極的にマーケティング戦略上、大変重要な要素として考慮すべきだと考えています。

私がここで担っているこの職務は、最終的にすべてのチームがダイバーシティとインクルージョンを仕事の本質的な部分と考えるようになり、いつの日か単にマーケティング全般と認知されるようになることです。女優のIssa Raeさんの言葉で、「ダイバーシティ&インクルージョンを別に言い換えると『ノーマル』です。」というものがあり、私はこの考えに完全に同意しています。今日の世界では、さまざまなグループの視点を中心に据えた包容力を持つことが「ノーマル」なのです。私たちはすでに多様な世界に生きているのですから、ダイバーシティについて語るとき、そもそも何と比較しているのかを考えるべきでしょう。それよりも、包括的に全ての人々の声に耳を傾けることこそ、重点を置くべきです。私たち全員が協力して、DE&Iを当たり前にすることができれば、私たちの目標は達成されたことになるのです。

映画の持つ力

この仕事をしていて、刺激を受け、ポジティブなパワーをもらうのは、若者とくに学生達に接するときです。映画業界には、映像上には直接映らない幅広い活躍の場があることを伝え、若者にSTEM(科学・技術・工学・数学)プログラムに興味を持ってもらいたいという思いがあります。いつも若者たちには映画のクレジットを見るように勧めていますが、これは映画制作には俳優や監督以外にもさまざまな役割が必要だと気付いてもらうためです。映画というプラットフォームを通して、未来の世代にインスピレーションを与える立場にいられることは非常に喜ばしいことです。

私たちは、映画やテレビが与える影響力の大きさを忘れがちです。あるパネルディスカッションで、参加者の少女が「スタートレックを見て宇宙飛行士を目指すようになった」と話していたのを思い出します。たった一度の視聴体験が、その人の人生の道しるべとなるほど、影響力は大きいものです。そしてその影響力は、活用の仕方によってポジティブにもネガティブにもなります。私自身、黒人女性として、多くのテレビ番組での犯罪の描かれ方、特に有色人種が加害者と表現されることに懸念を抱いてきました。このような描写は、私たちの思考や認識を長期にわたって形成する可能性があります。DE&Iを推進するためには、映画やテレビが与える影響を認識してコンテンツを制作することも重要です。この先も、私たちの組織を成長させ、価値ある「洞察」を提供し、ソニーグループ全体に私たちのチームの知見や経験を伝えていくことに情熱を注ぎ、仕事に取り組んでいきます。