ソニーミュージックグループ
株式会社アニプレックス
次長

大学で芸術理論を専攻しました。次第に映像やアニメに関わる仕事がしたいと思うようになり、ソニーミュージックグループの新卒採用にエントリーし入社、希望していた株式会社アニプレックス(以下アニプレックス)配属となりました。かつては映画監督になりたいという夢を抱いていたこともありましたが、在学中にプロデューサー業を志したいと思うきっかけとなった授業に出会いました。その授業で教授は「芸術家は自分の作品のどこが素晴らしいか、どこが優れているかなんてわかってない。評論家やプロデューサーというのはそれを言語化して本人たちに伝えてあげる仕事だ」とおっしゃっていました。プロデューサーとなった今でも、その言葉を大切に日々の業務に邁進しています。実際アニプレックスでのプロデューサー業は、人間のプリミティブな感情である「好き」という気持ちを分解・分析し、「良さ」を言語化してクリエイターやユーザーに伝えることだと思っています。私たちは0から1を作り出すクリエイティブな才能や手段は持ち合わせていませんが、言語化という手段で、1を10に、10を100にすることを目指しています。0から1を生み出せないことに劣等感を持っていた時期もありましたが、今では言語化した「良さ」をビジネスに結び付け、プロジェクトを発展させていく仕事に誇りと自信を持っています。

「好き」という感情は今の仕事のさまざまな場面で大きな意味を持ちます。例えば2013年頃からメガヒットを記録しているモバイルゲーム“Fate/Grand Order”の企画開発に携わることになりましたが、モバイルゲームはそれまで全く触れてこなかった領域でした。題材となるIP(作品)への愛情と情熱をもってクリエイターとコミュニケーションをとり、そのゲームを中心としたメディアミックスを展開したことで、成功と言える結果の一翼を担えたのではないかと思います。満員の劇場、イベントを楽しむファンの笑顔、インターネットをにぎわす数々の評価。才能あるクリエイターが生み出した作品によって、見たことのない景色を見せてもらえることは、この仕事を続ける強いモチベーションとなっています。どんな大きなプロジェクトも「好き」であることが大前提で仕事が進む面白い会社で、社員同士もお互いの「好き」という気持ちを、仕事外のことでも尊重します。誰かがプライベートで夢中になっていることを熱弁しても、その気持ちを否定する人はなく、最後まで耳を傾けます。自分や誰かの「好き」という感情にとてもオープンで尊重し合う環境だからこそ、最高のエンタテインメントが生まれるという事が、社内の共通認識として共有されているからだと思います。

アニメやゲームのような日本発のエンタテインメントが年々海外で人気を博していくにつれて、意識せずとも日本のマーケット以外にも目を向けるようになりました。2021年からはソニーグループの一員となったCrunchyrollのメンバーとも仕事をする機会が増えました。北米を中心に多くのアニメファンから支持を得る彼らとの仕事は新しい発見ばかりです。日本のアニメを違う視点から見ることができ、とても刺激的な経験になると同時に、驚きの連続でもあります。海外の企業はもっとフランクで自由ではないかと考えていましたが、彼らは非常に理論派です。例えば、必要な活動や予算には必ず明確な理由を、数字などのファクトとともに提示します。先述の通り、日本サイドの我々は「好き」を大事にしている社風だからこそ、感覚を重視している面もあり、異なるスタイルであることを実感します。我々が作ったアニメやゲームを海外パートナーが数字やデータでロジカルに分析してくれることはすごくありがたく、とても勉強になります。

既存のグループシナジーに加え、海外の会社との合併や協業が進むことで、ますますソニーミュージックグループが成長していると実感しています。そのことで挑戦の選択肢をたくさん持てることはこの会社の利点だと思います。「職務外だから難しい」「グループ内にその機能はないから無理」など、そういった会社の組織やシステムに依拠した問題で挑戦を諦める経験をしたことがないのは、とても恵まれていると感じます。かつてアニメのマーケットの中心は日本でしたが、配信環境の進化によって世界へ同時配信・放送できる世の中になりました。マーケットが世界へと広がった今、次にチャレンジするべきこととして、海外で人気のある原作を探し、日本の制作会社や、我々のチームでプロデュースするなど、取り組み自体がグローバル化しています。また、アニメを支持する層の裾野も大幅に広がりました。日本同様にラブコメや日常系と言われるライトな作品も支持を得ています。以前中国の作品の日本版ローカライズに挑戦し、好評を得たこともありました。「面白い」や、キャラクターに対しての「好き」という感情は世界共通だったという発見もあり、海外と仕事の機会が増えるにつれ、多くの気づきや学びを得ています。

プロデューサー業としての現在の目標は面白いビジネススキームをグローバル規模で展開することです。オリジナルIPの開発や海外クリエイターの発掘、海外作品の日本版ローカライズなども考えており、Crunchyrollと共同でのアニメ制作にも取り組んでいます。プロジェクトが多様化したことで、海外の制作スタジオやクリエイターとの関わりもより盛んになりました。北米に限らず、中国や韓国などアジアの企業とも協業を見据えています。アニメの世界展開は成長期だからこそ、さまざまな座組みに挑戦し、知見と経験を貯めたいと思っています。それはきっと、後輩やグループ全体の財産になると信じています。

所属や役職、業務内容はインタビュー当時のものです。