RCAレコード / ソニー・ミュージックエンタテインメント
インターナショナル・アーティスト・アンド・レパートリー(A&R)
シニアディレクター
両親が、自分たちそれぞれのバックグラウンドであるナイジェリアとデンマークの文化に、子供である私もつながりを持てるようにという強い想いを持っていたので、私はグローバルな文化に触れながら育ったように感じます。米国で生まれ、数年間ナイジェリアにも住み、旅行好きな両親と幼いころから世界各地を訪れる機会に恵まれました。人生の大半を米国で過ごしていますが、両親の母国で過ごす時間を大切にしてくれました。移民一世だということもあり、自身のアイデンティティという点で、両親の文化とも強いつながりを感じています。ナイジェリア人の母とデンマーク人の父を持ち、異なる文化が融合したような家庭環境で育ったので、多様な環境、常識や表現、そしてコミュニケーションスタイルに適応できるようになりました。その微妙な違いを理解し、好奇心を持つことで、文化や伝統への理解が深まったことは、世界各地の才能ある人々と仕事をする上で役立っています。
大学を卒業後はナイジェリアに帰国し、自らマネージメント会社を立ち上げて地元のアーティストと仕事をしようと考えていました。しかし2018年、ピーター・エッジ氏の下、RCAレコード*(以下RCA)で会長室のテンポラリースタッフとして働く機会を得ました。それから2年かけて、テンポラリースタッフからアドミニストレーティブ・アシスタント、そしてエグゼクティブ・アシスタントとなりました。
世の中でアフリカン・ミュージックへの関心が高まっていた当時、私自身はナイジェリア出身のTemsというアーティストに熱中していました。アーティストと契約することすら未知の世界でしたが、同僚のトゥンジ氏や熱心にサポートしてくれる仲間と共に契約を進めることができ、これがきっかけで私はA&Rに異動しました。故郷ナイジェリアに縁のあるアーティストとの仕事に携われたことは、素晴らしいことだと思いました。それ以降、国際的な音楽性のあるアーティストと仕事ができるようにもなりました。
A&Rの役割は、誰をサポートするか、彼らが何を必要とするかによって変わります。仕事のスタイルは人それぞれですが、A&Rはさまざまな役割を務め、アーティストやマネージメントと一緒に手を取り合って仕事をすることが大切です。才能あるタレントを発掘し、アーティストとレーベルの間に立って契約を結ぶのが仕事ですが、そこからの先が責任重大なのです。アーティスト自身のキャリアとビジョンをしっかりサポートする案内役として、音楽に関する技術的なことから些細なことまで、実に幅広く対応します。そして、その前提として、才能あるタレントを発掘し、会社やアーティストに代わって、契約する責任があります。私は社交的な人間なので、特に多様なバックグラウンドを持つ人々とつながり、彼らがどのように働いているかを学ぶことで喜びを感じています。
ここ数年、特にコロナ禍でのロックダウンや米国で同時に起きた社会政治的な出来事の中で、人種や職場の多様性に関する話への関心が高まっています。音楽出版業界は統計的に見ると、歴史的に男性優位で多様性に乏しいイメージがありました。幸いなことに、ソニーは有色人種の女性としての私のキャリアを継続的にサポートしてくれています。喜ばしいことに、若い女性もたくさん入社しています。より多くの有色人種の女性が職場で快適、かつ安心して自分のアイデアを共有し、支援されていると実感し、自信を持って責任あるポジションに就けるようになることを願っています。ソニーで多様性が重視されていることを誇りに思います。私はこのような環境を、自分がそうであったように、次世代の人たちのためにも作りたいと思っています。
この会社の強みはたくさんありますが、中でも私が最も共感しているのは音楽に対する社員の感性が非常に高いことです。我々は音楽やさまざまなものに対し、深い理解と知識を持っています。多様性を大切にし、1つのタイプのアーティストだけを求めるのではなく、多様性こそが世界の才能あるタレントをスカウトする際の基本となっています。RCAは時には常識から逸脱するような音楽でも、世界に影響を与えるタイプの音楽やアーティストを求めています。私はリスクを恐れずに、少しずれているように見えても突拍子もないことに挑戦する人を尊重したいです。すると、あるとき突然、そのずれていると思われていたものが世界で一番クールなものになる可能性もあるのです。
音楽は私の人生に大きな影響を与え、さまざまな理由でコミュニケーション手段となっています。音楽があったからこそ、本来出会うことがなかったあらゆる人と知り合うことができました。私の目標は音楽への理解をより深めるとともに、クリエイティブコミュニティへの支援や機会の提供を続けることです。グローバルな環境で働いていると、さまざまな人や文化、そして音に触れることができ、とても特別で恵まれていると感じます。海外市場を訪問する度に、海外の担当者が夢中になっていることを聞くのにワクワクし、一つ一つの出会いややり取りの中にたくさんの可能性を感じます。私たちは成功したアーティストとはどのようなものかを期待やステレオタイプで分類するのではなく、幅広い考え方で捉えています。そうすることで、私たちと同じような人、私たちとは全く違う人を理解し、支援し、受け入れることができるようになると思います。