所属:AI 技術部門 音声言語AI開発部
出身校:東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻
2010年新卒入社
角尾 衣未留
4歳から17歳まで習っていたピアノ。そして、学生時代に夢中になっていたDJ活動など、私にとって音楽は常に身近にある存在でした。そうした音楽への関心と、プログラマーだった父の影響で幼い頃から馴染みがあったプログラミングの知識を生かし、大学では音楽のジャンルの自動認識について研究していました。
「お前って、ソニーっぽいよな」 卒業が近づき、就職先としてソニーを意識するようになったのは、友人のそんな何気ない一言がきっかけでした。
ソニー入社後の数年間、音楽を解析するシステムの開発に携わった後、『aibo』の音声認識のベースの構築や、『LinkBuds Open/LinkBuds Fit』に搭載されているボイスコントロール機能の開発などを行ってきました。現在は、AIによる音声解析チーム全体のマネジメントをしながら、音声を文字で書き起こす音声認識に加え、言いよどみなど、文字で表しにくい音声の解析などに取り組んでいます。また、昨今の技術トレンドでもある、さまざまな言語の音声とテキストを大規模にモデル化した研究開発を行うプロジェクトを主導。音声の認識のみならず、音声から直接翻訳するタスクを学習することで、たとえば日本語の音声を英語に翻訳して書き起こしたり、日本語の音声を英語に翻訳された音声で出力することが可能になるなど、さまざまな言語の大規模音声モデルの研究開発を行っています。

昨今、AIの分野は世の中の注目度も高く、次々に新しいアイデアや技術が登場しています。その変化のスピードはすさまじく、常に他の研究者の論文を読んでいなければ、一気に置いていかれてしまうほどです。その速さについていくのは大変ですが、そこに面白さも感じます。また、海外の巨大IT企業など強力なライバルがいる中で、ゲームや映画などエンターテインメントコンテンツを持つソニーの強みを生かし、独自の路線を切り拓いていくことは、大きなやりがいになっています。
ただ、製品に搭載される技術の開発に携わるのはもちろん素晴らしいことですが、個人的には学術的な研究をしているほうが楽しさを感じます。数年前に社内の公募留学制度を利用して留学したスコットランドのエディンバラ大学でも音声の研究を行い、そこで改めて研究の楽しさを再発見しました。現在もソニーの社員として研究論文を発表しており、その論文を通して自分の名前が世界中に認知されることは、モチベーションの一つとなっています。

留学先の研究室仲間と国際学会へ参加
つくる側の人間がワクワクしない技術をユーザーに届けても、決してワクワクしてもらうことはできません。第一に自分たち自身がワクワクしながら取り組む姿勢を大切に、日々の研究開発を行うよう心がけています。しかし、ただワクワクする技術を生み出せばそれでいい、というわけではありません。
ソニー入社後に音楽を解析するシステムの開発に携わっていたと冒頭でお話ししましたが、その具体的な内容としては、鼻歌から音楽を推定し、実際の曲をその鼻歌に重なるように再生する、というものでした。各方面に高く評価いただき、さまざまな関係者の方が製品への実装に向けて働きかけてくれましたが、残念ながら実現には至りませんでした。
ソニーには、創業者の1人である井深大が提唱した『説得工学』という言葉があります。せっかくワクワクするような素晴らしいアイデアを思いついても、上司や周囲の人を納得させ、巻き込んでいくことができなければ意味がない、という考え方です。私自身、この時の挫折からこの言葉の意味を知り、自ら周囲を説得し、ものごとを前進させるスキルを磨くことの重要さを学ぶことができました。その経験と気づきは、あれから10年以上が経過した現在の業務にも生かされています。

現在研究しているAIによる音声認識の分野は、変化のスピードがとにかく速いです。かつては各企業が技術を他社に見せず、独自に開発を進めるのが通常でしたが、そのままのやり方では到底追いつかないようなスピード感になってきています。互いの技術を持ち寄り共創する研究コミュニティが必要であり、そうしたオープンな場に今後ソニーがなっていってほしいと願っています。その先にきっと、新たなイノベーションが待っているはずです。
また現在、日々の業務を行うかたわら、大学の社会人博士課程を履修しています。研究コミュニティにおいては、博士号の取得によって説得力が向上したり、可能性がさらに広がることがあるからです。そして将来的には、現在の研究チームを世界的に認知されるチームへとさらに成長させていきたいと考えています。一般のユーザーはもちろん、世界中の最先端の研究者たちにいい影響を与え、たくさんの人に「ソニーは面白い研究をやっている企業だ」と思ってもらえたら嬉しいですね。