報道資料
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2008年12月15日
ソニー株式会社(以下ソニー)は、国立大学法人名古屋大学岩田哲准教授と共同で、近年コンシューマ製品において重要性が高まりつつあるデジタル署名※2などの暗号技術を構成するための要素技術として、安全性が高く実装性能が高いハッシュ関数※1アルゴリズム「AURORA(オーロラ)」※3を開発しました。「AURORA」は次世代のハッシュ関数アルゴリズムに求められる安全性を保ちながら、ソフトウェアとハードウェアの実装形態においても高性能を達成したハッシュ関数※1です。ソニーと名古屋大学はこの成果を、米国標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology, 以下NIST)※4が公募している次世代ハッシュ関数の選定を行うプロセス※5(通称SHA-3 Competition) に応募しております。
近年、SHA-1やMD5※6に代表される主要なハッシュ関数アルゴリズムに対する解析技術が目覚ましく発展※7、安全性に対する強度が弱まりつつあります。その結果、今後、それらのハッシュ関数に代わる新しい設計技法に基づく次世代のハッシュ関数の登場が望まれています。
「AURORA」は、ソニーが開発した安全で効率性の高い共通鍵ブロック暗号「CLEFIA™」※8で培ったブロック暗号設計技術を応用し、最新の解析技術に配慮して設計された安全性の高い圧縮関数とそれらの圧縮関数を組み合わせる先進的なドメイン拡張技術を特長としています。圧縮関数では、データの攪拌性能の高い複数の変換関数を接続することで、既存の攻撃への耐性を高めています。圧縮関数の内部はバイト単位の演算を基本とし、さらに繰り返し構造を積極的に採用することで各種の実装形態に適した設計となっています。ドメイン拡張技術では、圧縮関数同士を効率よく接続することにより、さまざまな出力サイズに対応するとともに、期待される安全性を満たしたハッシュ関数を構成しています。その結果、ソフトウェア実装においては、256ビット出力長※9の「AURORA-256」※10で15.4 cycles/byte 、512ビット出力長の「AURORA-512」※11で27.4 cycles/byte の高速性を達成しました※12。またハードウェア実装においては、0.13μm CMOS標準セルライブラリ※13を使用した場合、「AURORA-256」※10ではモバイル機器向けなどの回路規模の小型化を優先した小型実装で回路規模11.1Kgates/速度2.2Gbps、サーバ向けなどの速度を優先した高速実装で回路規模35.0Kgates/速度10.4Gbpsを、「AURORA-512」※11では小型実装で14.6Kgates/1.2Gbps、高速実装で56.7Kgates/9.1Gbpsを達成いたしました。この結果から「AURORA」は、同じ出力長に対応した主要なハッシュ関数SHA-2※14と比較しても、多くの実装形態で性能を低下させることなく、より高い安全性を実現したハッシュ関数であると言えます。
NISTでは将来のアルゴリズムの移行を見据えて、224ビット、256ビット、384ビット、512ビットの各出力長※9に対応した次世代ハッシュ関数の公募を行い、この度「AURORA」が候補アルゴリズムの一つとして正式に認定されました。今後は、NISTの公開選定プロセスにおいて、他の候補※15ととともに安全性や性能等の評価・比較がなされ、最適な候補が2012年に次世代ハッシュ関数SHA-3として決定される予定です。
ソニーでは、SHA-3 Competitionへの関与を通じて、ユーザーが安心して利用することのできる、よりよいセキュリティ技術の発展に向けて貢献をしてまいります。
NISTのホームページ:http://www.nist.gov/