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CEOインタビュー:経営方針説明会で私が伝えたかったこと

    インタビュー全文

    Q1:Purposeを重視する理由

    ―――今回、長期視点での経営方針について、Purposeを軸に語りました。吉田さんがかねてよりこのPurposeを一番重視する理由を教えてください。

    吉田:一言で言うと、社員と企業文化が一番大切だと思っているからです。社員の観点では、社員一人ひとりの人生において、ソニーが情熱を傾ける対象になりうるか、という問いになります。これは言い換えると、ソニーのPurposeに共感するか、ということです。Purposeというのは社会的存在意義で、人は誰でも、何らかの形で社会に貢献したい、という風に思っているからです。企業文化は経営における実行力の基盤となります。社員の情熱、そして共有し、協同する企業文化が実行力となります。Purposeはその実行力、企業文化の基盤になります。

    ※Sony's Purpose:「クリエイティビティとテクノロジーの力で、 世界を感動で満たす」というソニーの存在意義。長期視点での価値創出に向け、多様な事業に関わる11万人の社員が同じベクトルで進むために、2019年に定義された。

    ―――ソニーで働く社員の情熱と、企業文化が最も大切で、そのためにPurposeを重視されるということですね。その他、長期視点とPurposeについて加えたいことは。

    吉田:付け加えると、今回の経営方針説明会は、Purposeで経営方針を語れるか、というチャレンジでもありました。言い換えると、社会的存在意義であるPurposeが現実社会に即しているかということの検証プロセスだったとも言えるかと思います。

    Q2:「10億人と繋がる」とは?

    ―――現在、エンタテインメントを動機としてソニーグループが直接繋がる人が、世界で約1億6千万人。これを吉田さんは10億人に広げたいと話していました。この10億人と繋がることについての意味合いを改めてお聞かせください。

    吉田:10億人との繋がりは、成長投資の領域における、当社のDTC(Direct-to-Consumer)におけるビジョンという風に位置付けています。自社のDTCの前に上位概念はPurposeであるということをまずお話ししておきたいと思います。
    世界を感動で満たすには、自社だけでできることは少なくて、やはり他の配信パートナーと協業していくことが重要です。世界で4千万人(*)の人に観ていただいた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。これが、一つ良い例だと思います。こうした感動を届けることは、劇場というパートナーが居なければ、出来なかったと考えています。音楽や映画もやはりデジタル配信パートナーの存在が非常に重要で、彼らとの関係を今後も大切にしていきたいと思っています。したがってDTCの10億人のビジョンというのは、垂直統合で全てをやるということではなくて、私が以前から使っている「コミュニティ・オブ・インタレスト(Community of Interest)」、これの発想でソニーとして出来ることは自分でやっていこうという考え方になります。
    ソニーグループにはFunimationというアニメDTC、それからFGOというモバイルサービス、そしてSonyLIVというインドの地域文化に根差したDTCサービスなど、多くの「コミュニティ・オブ・インタレスト」があります。

    *2021年5月24日時点

    ※コミュニティ・オブ・インタレスト(Community of interest):感動体験や関心を共有する人々のコミュニティ

    ※Funimation:日本アニメ作品の配給・配信事業を行うDTCサービス

    ※FGO:『Fate/Grand Order』。アニメ関連IPのモバイルゲームとして、国内はもちろん海外でも展開。中国ではBilibili社との協業のもと配信し、ヒットしている。

    ※SonyLiv:インドでの映像DTCサービス

    ―――まず、Purposeという上位概念があって、このPurposeを満たすためのDTCにおけるビジョンが10億人ということですね。

    吉田:そういうことですね。

    ―――この10億人のDTCビジョンにおいて、吉田さんが特に期待しているコミュニティはなんですか。

    吉田:10億人のビジョンにおいて最も期待しているのは、プレイステーション™ネットワーク(PSN™)という「コミュニティ・オブ・インタレスト」の中では最大のもの、これに期待しています。プレイステーションはソニーが直接ユーザーと繋がるソニー最大のコミュニティになっています。ゲーム自体、それからPSN™というサービス、そしてモバイルアプリという様々な領域でユーザーのそのソーシャルでの体験を上げることでユーザー数を増やせると思いますし、また、クロスプレイも含めたモバイルへのチャレンジなどでユーザー層が広がるんじゃないかと期待しています。

    ―――ユーザーと繋がるコミュニティがPSN™ですね。ソニーがクリエイターと繋がる取り組みも色々やっていると思いますが、そちらについてはいかがでしょうか。

    吉田:SMEJ(ソニー・ミュージックエンタテインメント(日本))のソーシャルを利用したクリエイターとのつながりの活動、具体的に言うと、例えばSMEJで言えばYOASOBIが良い例でしたし、SME(Sony Music Entertainment)のソーシャルを活用した創作活動、それからSMEのアーティストとより広く繋がる活動には非常に期待しています。SMEには以前からThe Orchardというサービスがありますけれども、最近買収したAWALにも期待しています。

    ※The Orchard:ソニー・ミュージック傘下にある独立音楽配信会社

    ※AWAL:2021年に買収を完了した、主にインディーズアーティストを対象として、音楽配給サービスを提供する音楽事業会社

    Q3:多様な事業が連携するために必要なこと

    ―――説明会では連携強化という言葉が何度も出てきました。ソニーは以前から様々な多様な事業体で構成されていますが、その事業間の連携は以前よりも強くなっていることを私自身も実感しています。連携を強めるために、吉田さんはどのようなことを意識されているのでしょうか。

    吉田:そうですね。意識してきたのはチーム、コーポレートアーキテクチャー、そしてPurposeになります。継続して行うことはやはりコミュニケーションだという風に思っております。連携のためにやはり企業文化が大事になっていて、その基盤になるのがPurposeであるという風に考えています。この4月で新しいコーポレートアーキテクチャーが出来て、全ての事業が並列して繋がる形になりました。まあ連携の体制が整ったという風に言えると思います。ただ、経営チームで共有しているのは、連携すること、グループで連携することはそれ自体が目的ではなくて、価値を作ること、クリエイターにとっての価値、そしてユーザーにとっての価値を作ることだ、ということを常々共有しております。

    ―――価値創造という目的のために連携を強化するということですね。

    吉田:はい、そうですね。目的はあくまでも価値創造で、連携は手段だということですね。

    ―――私が入社した頃のソニーは、だいぶ暫くハードとソフトという切り口でのグループシナジーの考え方だったと思いますが、現在はどう見ていらっしゃいますか。

    吉田:もちろんハードとソフト、あるいはテクノロジーとエンタテインメント、これは非常に近い関係で、この連携はしっかり今後もやっていきたいと思います。ただ、今グループ全体がフラットになったことで、一番価値を生み出せるところはどこだろう、という風に客観的に見れるようになってきたと思います。したがって、例えばIPとIP、それからDTCとDTC、特に、映画とゲームのシナジーで言うと映画『Uncharted』、そういったものが生み出せるようになってきたかなと思っています。

    ※IP:コンテンツIP

    Q4:なぜソニーが車を作ったのか? ~VISION-S~

    ―――VISION-Sは現在量産化の予定がない中で、なぜこの領域に取り組むのでしょうか。ソニーのどのようなテクノロジーでこのモビリティの領域に貢献していこうと考えていますか。

    吉田:VISION-Sはモビリティの進化への貢献に向けた探索領域として開発を続けています。
    ソニーはセンシング、あるいはイメージングというテクノロジーがあり、車の安全に貢献できる技術だと思っています。これを積極的に活用していきたいと考えています。
    先日ドイツでボーダフォンと一緒に5GをVISION-Sに実装して、走行、それから通信の実験を行いました。それで我々がはっきり認識したことは、今後のモビリティの進化にモバイルの技術が欠かせない、あるいは活かせる、ということが確認できました。モビリティが進化していくと、最終的には自動運転という形になっていくと思います。
    自動運転が進化していくと、新しい空間、エンタテインメント空間が作られると思っています。そこでは我々の、例えば360 Reality Audioですとか、プレイステーションのリモートプレイですとか、そういった技術も合わせて活かせるという風に考えています。

    ※360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ):オブジェクトベースのソニーの360立体音響技術を活用した新たな音楽体験。アーティストがライブ演奏をする場に入り込んだかのような、臨場感豊かな音場を実現する。

    ―――ボーダフォンとの走行実験は4月から開始したと発表されたものですよね。これは車載システムとクラウドが連携する5Gの部分でもソニーがXperiaで培ってきた知見やノウハウが活かせるということですね。

    吉田:私が知る限り、車に5Gを実装してテスト走行をした例というのはあまり聞いておりません。なので、やはり先ほど申し上げたように、Xperiaで培ってきた技術、アンテナ、RF、通信の技術っていうのは、やはり今後モビリティに活かせるという風に思いますし、これからの車は必ず繋がるんですね。繋がるというということは、お客様が買っていただいた後に進化する車になります。そういった上でもやはり通信技術、それからクラウド技術は欠かせないという風に思います。

    Q5:サステナビリティ領域におけるソニーの貢献

    ―――今回の説明会では、人、社会、地球への貢献について触れられていました。吉田さんはCEOに就任された当初から「地球の中のソニー」というメッセージを社内にも社外にも出されていたと思います。改めてこのサステナビリティの領域で、ソニーはどういった取り組みを目指して貢献をしていくのでしょうか。

    吉田:私自身は、地球というのは企業にとっての大切なステークホルダーという風に考えています。この大事なステークホルダーの環境負荷の低減に向けて、企業として責任と貢献をしていくというのはとっても大切なことだという風に考えています。責任を果たす上では、今進めているRoad to Zero、それからRE100、こういったことを着実に実行していくことが重要だと思います。貢献については、分散型センシングや、先ほども触れたモビリティへの貢献、こういったものがあると思います。
    それから拡張生態系に関連した、環境技術に特化した事業を行うSynecO、この設立があります。協生農法自体が多様性によって環境を良くする。西アフリカでは砂漠を緑化したという実績があります。多様性によって価値を生み出すというのは、ある種、ソニーが事業の多様性、あるいは人の多様性によって価値を作っていこうということと非常に近しい関係にあると思いますので、協生農法、これには非常に期待をしております。
    未来を見据えて、地球というステークホルダーに対して、どういう責任を果たし、それからどういう貢献をしていくかというのがソニーにとって大切なことだと思っております。

    ※Road to Zero:2050年までに自らの事業活動および製品のライフサイクルを通して、「環境負荷ゼロ」を達成することを目指す環境計画

    ※RE100:100%再生可能エネルギー由来電力利用を目指す国際的なイニシアチブ

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