テクノロジー分野でグループの垣根を越えて共創を目指すバウンダリースパナー、Corporate Distinguished Engineerの活動とは?
ソニーには、高い技術力を持ち、技術戦略の策定や推進と、人材の成長支援を行うエンジニア集団「Corporate Distinguished Engineer(DE)」がいます。AI、半導体、オーディオ、ディスプレイ、データサイエンス、Web3、コンピューターグラフィックス、エンタテインメントテクノロジーなど多様な専門分野で活躍し、さらにグループの横のつながりから新たな価値を生み出そうと動き出したDEたちについて紹介します。
目次
Corporate Distinguished Engineer制度とは?
ソニーでは、変化の兆しを捉え、グループの持続的な成長のために、技術戦略の策定や推進と、人材の成長支援を担うエンジニアを「Corporate Distinguished Engineer」として、認定しています。
DE制度は2007年度に始まり、その顔ぶれは毎年変わります。各DEの取り組みはAI、センシング技術、セキュリティ、映像処理、エンタテインメントテクノロジーなど多岐に渡ります。2025年度はグループの19の会社から50人を任命し、7人のエンジニアが初めてDEになりました。
例えば、ソニーセミコンダクターソリューションズの馬場由香子は、ソニーの商品やサービスを差異化する源泉であり、ユーザーやクリエーターに感動を届けるタッチポイントとなるLSIアーキテクチャを開発し、多面的に事業に貢献しています。また、米国を拠点に次世代の音楽制作事業を担うSony Immersive Music StudiosのBrad Spahrは、リアルタイム没入型体験を提供するためのコンテンツ管理システムの開発や、ゲームや動画プラットフォーム向けのDigital Human、パフォーマンスキャプチャーなど3D技術の開発で、新しいエンタテインメント体験の創造をけん引しています。
HPでは、50人の専門分野や研究成果を紹介している。
他分野の知見を活かす場に
そして、ソニーのDEの最大の特徴は、専門性の高さに加え、専門領域を越えてグループ全体に横串を通す視点で技術的な課題に取り組む点にあります。現場の技術者としての知見はもちろん、世界的な技術トレンドや市場環境の変化を先読みし、どのような未来に対して備えるべきかを読み解きます。その上で、各事業における技術開発を俯瞰して長期的な視野でソニーグループ全体の成長に貢献する技術戦略を立案し、トップマネジメントへ進言しています。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)でゲームプラットフォーム開発を主導する今井憲一もDEの役割を担う一人です。今井はPlayStationのゲームプラットフォーム開発を手掛けており、昨年度からDEに任命されています。
DEの一人、今井憲一
DEたちは普段、各事業体で各々の研究・開発に取り組んでいる一方、年に数回、全員が集まり、互いの技術の紹介や、喫緊の課題などを話し合うDE会議を設けています。この会議をより体系化するため、今井は今年度、新たに6つのトピックを議論するグループの立ち上げをけん引しました。今までも各DEが自発的にワーキンググループを企画してきましたが、2024年度に新たに策定されたソニーグループ全体の長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」の実現に向けて、新たな価値を生み出すことを狙います。
「昨年度初めてDE会議に参加して、普段の業務ではかかわりのないエンジニアに出会えたことが刺激になりました。ゲーム分野の自分にとっては当たり前のことも、他のエンジニアは意外と知らないことがあることに気づきました。逆にエンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野で勉強になったこともあるし、何でもかんでも話してみるというのに非常に意味がありました」
今年度立ち上がったグループは6つ。それぞれエンジニアとクリエイターの連携・協力、AIなど先端技術の活用、人材育成や組織論などをテーマに議論します。エンタテインメント分野の成長やそれを支える技術基盤の強化を中心に、ソニーグループ全体の技術の底上げ、成長を継続的に支援します。
次世代のエンタメ人材を育てる
また、DEは人材育成にも積極的に関わっています。例えば若手や中堅エンジニアに対しては、メンタリングや技術交流の場を提供し、将来の技術リーダーを育てる役割を果たします。社内では、毎年行われている技術イベント「Sony Technology Exchange Fair(STEF)」を通じて、最新技術や課題への取り組みを共有し、組織の垣根を越えた協働を推進しています。今井は昨年、30周年を迎えたプレイステーションに関して、開発当初の秘話や最新の技術の紹介、開発の際にクリエイター側が求めているポイントなどを同僚と共にプレゼンテーションしました。
DE主導によるエンタテインメントのリアルな現場を伝える活動も始まっている。
「ソニーのエンジニアのポテンシャルは高い。ソニーグループ内でエンタメ系に飛び込みたい人がいる時に、アクセスできる環境を作ることは重要です」
今井自身もオーディオの信号処理を専門にソニーに入社後、エンタテインメント分野の面白さを知って、ソニー・インタラクティブエンタテインメントに異動した経歴を持ちます。コンピューターグラフィックスとインタラクティブ技術に関する国際展示会SIGGRAPHへ出展するデモを制作するために米国に集まったクリエイターたちと共に、ホテルで3週間、ソニーチームの一員として彼らのコンテンツ制作のサポートを行った際、クリエイターのモノづくりに対する考えに驚きました。業界で最も新しい技術を取り入れたいという貪欲さと、技術の確立が途中段階であっても先に進んでその場で問題に対処するスピード感に魅力を感じました。
「クリエイターの皆さんと一緒に仕事をする際に、エンジニアは依頼をこなそうという気持ちになりがちですが、それよりも両者が同じ目線を持って意見をぶつけ合うぐらいの環境、関係性を作ることがよいと思います。そのためにはエンジニア側もクリエイターの知識を持っておくことや気持ちを理解することが重要です」
エンタテインメント分野に対する造詣を深めてもらうために、現在、社内では、映画制作などエンタメの現場のリアルを紹介するブログ記事の連載もDEを中心に始まりました。「若手たちのロールモデルとして、こんなキャリアパスもあるとか、この技術を突き詰めていった先に思いもよらない協働ができるとか、そんなことをもっと伝えられたらと思います」
新任DEの任命式では、ひとり一人が抱負を語った。
今年6月に実施された新任DEの任命式で、ソニーグループの技術戦略を統括するCDOの小寺剛は、「Creative Entertainment Visionを実現するためには、ソニーグループ全体でDEの才能と多様な技術を効果的に活用することが必要です。技術的な境界を越えて連携し、ビジネスユニットや分野を越えて超えて協業し、グループの強みを最大限に発揮する『技術的な境界を越える役割』を果たしていただくことを期待しています」と述べました。
各領域において高度な技術を持ったトップエンジニア集団、DE。ソニーでは、彼らが各々の知見や技術を横につなぎ、グループ全体で強固な技術基盤を作り上げ、多種多様な事業を支えていきます。
今井 憲一(いまい けんいち)
ソニー・インタラクティブエンタテインメント GDFT インタラクションR&D シニアプリンシパルソフトウェアエンジニア ゲーム開発用SDKおよびシステムソフトウェアの開発を通じ、PSPからPlayStation5までの PlayStationプラットフォームの開発に従事。特にオーディオ・ビデオ信号処理技術に精通し、ゲーム向けのオーディオコーデックの開発やHDR技術、オブジェクトベースの3Dオーディオ技術の導入を主導。現在はソフトウェア開発における開発環境の改善や新たな環境の提供、そしてエンジニアの技術向上を目指す活動を推進している。