デザインとブランディングを掛け合わせ、感動を創り・伝える 〜ソニーのクリエイティブセンター長に新入社員がインタビュー〜
左から石井 大輔、広報部 平野 閑か(取材者)
ソニー製品のデザインに統一性を持たせることを目的に、1961年に設立されたソニーグループのデザイン組織「クリエイティブセンター」。事業の多様化に伴い、プロダクトからエンタテインメント、金融、モビリティなどの事業領域に活動の幅を広げ、プロダクト、UI/UX、ロゴ、ウェブサイト、空間のディレクションなど多岐にわたる業務を行っています。2024年4月からは、ブランディングの役割も担い始めました。クリエイティブセンターとは一体、どのような組織なのか?なぜデザイン組織がブランディングを手掛けるのか?設立からの経緯や現在注力する取り組み、今後の展望などについて、広報部の新入社員が石井 大輔センター長に話を聞きました。
目次
クリエイティブセンターの設立から現在に至るまで
── 1961年に後のソニー元会長 兼 CEOの大賀典雄のもと、クリエイティブセンターの前身となるデザイン室が設立されてからこれまでのクリエイティブセンターの歩みを教えてください。デザイン室創設初期はいわゆるプロダクトデザインが中心で、オーディオやテレビなどの製品のデザインを担当していました。1973年には、現在使用されているソニーのロゴも生みだしています。また、1979年に1号機が発売されたウォークマン®のヒットに伴い、カセットテープなどの記録メディアのコミュニケーションデザインも多く手掛けるようになりました。その後、ゲームやパソコン、携帯などのIT機器が主流になり、UI/UXのデザイン分野が拡張されていきました。現在のクリエイティブセンターでは、プロダクトとコミュニケーション、UI/UXの3つの領域がバランスよくまとまっており、最近はリサーチやデザイン広報にも力を入れています。2024年4月からはブランド戦略のチームも加わり、専門性の拡張と融合がますます進んでいます。
プロダクトやサービスのデザインからブランディング、コンサルティングまでさまざまなプロジェクトに携わる(関連動画)※YouTubeに遷移します
──ソニーが10年後にありたい姿を描いた長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」の制作にもクリエイティブセンターが携わられたと聞きました。クリエイティブセンターはPurpose (存在意義) の策定、CES®などの展示会や経営方針説明会の演出など、コーポレート領域のデザインにも幅広く携わっています。「Creative Entertainment Vision」のプロジェクトには、2021年にクリエイティブセンターが実施したSci-Fiプロトタイピングの展示を見た社長 CEOの十時からの依頼を受けて、デザイナーも参画しました。さまざまな立場のメンバーとともに社内外の有識者にインタビューを行い、議論を重ねる過程で、イメージを可視化して認識を合わせるために10年後の未来の青写真や計画図のようなものを描いた冊子「BLUEPRINTS 2035」を作成しました。
冊子「BLUEPRINTS 2035」の紙面
そうして最終的に導き出したのが「Create Infinite Realities」というキーメッセージです。その世界観を伝えるために制作したコンセプトムービーにおいては、シナリオから映像内に出てくるデバイスなどの細部のデザインまで手掛けています。
撮影用にデザインされたスマートデバイス
「Creative Entertainment Vision」のコンセプトビジュアル
現在のクリエイティブセンター
── 2024年4月からブランド戦略部がクリエイティブセンターへ移管されましたが、どのような意図で、実際にどのような変化があったかを教えてください。例えば、シェフがレストランを運営する際には、素材や料理法を吟味し、美味しい料理を「創る」だけでなく、SNSやウェブサイトなどのメディアを通じてその魅力を世間にどのように「伝える」のかも重要です。「創る」と「伝える」が相互に連携することで、お客さまに「感動」が届く。それは、「インキュベーション」と「ブランディング」の関係も同じだと思っています。
クリエイティブセンターには、グループ内のさまざまな部署から、「こうした技術やニーズ、アイデアがあるが、どのようなサービスやプロダクト、メッセージにしたら良いか?」という相談や依頼が多く寄せられ、プロジェクトの初期段階から携わるがゆえに、個々の製品やサービス、ブランドの成り立ちへの深い理解があります。また、ウェブや空間のデザイン、3Dクリエイション、CG制作などのタレントも揃っています。そのため、インハウスならではのコンフィデンシャルな環境下も生かしながら、コミュニケーションに必要なさまざまなアセットを作り、より効率的・正確に魅力を社内外へ「伝える」ことができます。このようにクリエイティブセンターは、従来から行ってきた「創る」(=インキュベーション)に加え、実は「伝える」(=ブランディング)能力にも長けているのです。そこに、「伝える」機能に特化したブランド戦略部が加わり相互に連携することで、さらに効率的・効果的に、ソニーの魅力を発信できると考え、機能を統合しました。
2024年にブランド戦略部が移管されてからの成果の一つが、CES 2025です。CESの出展は従来からブランド戦略部がリードを務めていますが、2025年のCESでは会場のコンセプトやテーマ、スピーチ、展示などの制作において、早い段階でデザイナーとブランドのメンバーが一体となって、各関係部署と連携し、発信を強化することができました。今後は、デザインとブランドがより近い距離で色々な発信を手掛けたいと考えており、そのための環境構築を進めています。
── ソニーグループにおけるクリエイティブセンターのミッションを教えてください。クリエイティブセンターの活動を一言で表現すると、「クリエイティブ・ハブ」です。つまり、ソニーグループのハブとなって、社内外のさまざまな人や組織、技術などを横断的につなぎ、ソニーグループ全体のブランド価値や企業価値そのものを向上させることをミッションとしています。その意味では、10年後のソニーのありたい姿を描いた「Creative Entertainment Vision」の制作にクリエイティブセンターが参画したのもその一つの例であると考えています。今後は、このような活動をより多くの部署や組織の人と一緒に実現していきたいと考えています。
── 現在特に注力している取り組みや事例を教えてください。一つ目は、先ほども申し上げたインキュベーションデザインとコーポレートブランディングの連携です。ソニーが持っている文化をより積極的に発信し、ブランド自体の価値を上げていくことに注力していきます。「Creative Entertainment Vision」ではまだまだ語られていないこともあるので、その発信に力を入れていきたいです。次に、サステナビリティです。サステナビリティに関する取り組みは、一般のエンドユーザーの方にまだ知られていない部分もあると思うので、コミュニケーションを強化したいと考えています。
二つ目は、デザインの外販ビジネスの拡充です。ソニーデザインコンサルティング(SDC)という子会社では、ソニーグループ以外の方々ともつながり、デザイン業務だけでなく、コンサルティングの業務も多く請け負っています。また、クリエイティブセンターでは毎年独自のトレンドリサーチ活動を行い、社内に向けてレポートしてきました。2025年にはそのリサーチ内容を『SIGNALS Creative Research No.01』という書籍にし、初めて社外に向けて発信し、映画『ゴジラ-1.0』などの監督を務めた山崎 貴監督にインタビューさせていただきました。こうしたエンタテインメント業界とのネットワークを通して、ソニーはテクノロジーとクリエイティビティを強みに、幅広い意味で世界中に「感動」を届けていく会社であることをアピールしていきたいです。そういった発信の蓄積をクリエイティブセンターのノウハウとして活用し、SDCのクライアントを拡充するだけでなく、ソニーブランドの社外発信にも力を入れたいと考えています。
今後について
── クリエイティブセンターとして今後めざす方向性や実現したいことはありますか。「Creative Entertainment Vision」を実現していくことが私たちの一つのミッションです。そのために、さまざまなテクノロジーやクリエイティビティの力でお客さまにサービスやプロダクトを届けていく必要があると思うのですが、クリエイティブセンターにはさまざまなタレントを持った人材がいます。チームとして、リアルとバーチャルの両方の世界で、体験そのものを創ってお客さまに「感動」を届けたいです。その具体的な構想がロケーションベースエンタテインメント※のような場であるかもしれないし、未知のエンタテインメントであるかもしれません。そうした体験を、クリエイティブセンターで一丸となって創っていきたいと考えています。
※コンテンツIPを軸にテクノロジーを活用し、リアルな場に新たな価値を生み出す新しいエンタテインメント。
石井 大輔 (いしい だいすけ)
ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター センター長 1992年入社。ハンディカム®、ウォークマン®などのプロダクトデザインを担当した後、二度のイギリス赴任を経て、Xperia™や、VISION-S Prototype、aiboなどのクリエイティブディレクションを担当。2021年にクリエイティブセンターのセンター長に就任し、2022年からは、ソニー・ホンダモビリティのデザイン&ブランド戦略部のヘッドを兼務。