Cinema Line : FX6 / FX3

映像の力を信じる、
すべてのクリエイターへ

本格的な映画から小規模制作のコンテンツまで、幅広い領域の映像クリエイターに
シネマの印象的な映像表現を提供する、映像制作用カメラ商品群Cinema Line(シネマライン)。
この新たなカメラ商品群のデザインコンセプトの策定から、最新モデルであるFX6とFX3のプロダクトデザイン、
さらにCinema Line全体のコミュニケーションデザインまで、その一連のデザインストーリーを紹介します。

映像表現の真価を
探求するもの

現在、映像技術の発展を背景に、大規模な映画制作はもとより、小規模なショートフィルム制作、さらには個人のコンテンツ制作の現場においても、被写体の一瞬の機微を美しく鮮明に捉える、シネマの映像表現が求められています。こうした映像文化の広がりを支えるため、ソニーはCineAltaカメラ VENICEで打ち出した「Emotion in Every Frame - すべてのフレームに感動が宿る」という理念のもと、幅広い映像クリエイターがそれぞれの制作現場で映像表現の真価を探求できるシネマカメラシリーズをつくれないかと考えました。

そのような想いから、これまで映画制作の現場で培ってきた映像表現力と、多様な映像クリエイターの異なる要望に応える操作性や信頼性を追求するために創出したのが、新しい映像制作用カメラ商品群であるCinema Lineです。プロジェクトに際し、デザイナーがまず取り組んだのがCinema Line全体に一気通貫するデザインコンセプトを生み出すこと。そこで、ベースとしたのが2017年の発売以来、世界中の映画業界で広く使用されているVENICEでした。

VENICEのデザイン開発では、映画監督や撮影監督に馴染み深い色を吟味してメタリックグレーをボディ色に選び、さらに過酷な状況下においても安心して撮影できる信頼性を示すため、筐体に使用したマグネシウム合金の剛性感を体現するべく、鋳鉄のようなテクスチャーに仕上げました。一方、操作部が一目でわかるように、ボタンやハンドルなど手が触れる部分はブラックで色分けしました。

Cinema Lineでは、これらVENICEのカラーリングやテクスチャーなどのフォームファクターを、同じDNAを持つ映像制作用カメラ商品群として継承。加えて、VENICEから脈々と受け継がれる、現場を徹底的に学び、必然の造形を導き出す、「クリエイター目線」という思想をCinema Line全体のデザインコンセプトとして定めました。それをもとに、Cinema Lineの新モデルであるFX6とFX3のプロダクトデザインに取り組んでいきました。

映像クリエイターとともに、未知なる感動体験の創造へ

ソニーは長年にわたり、未知なる映像表現に挑む映画監督たちをリスペクトし、彼らの発想を具現化するために、さまざまな映像制作用カメラを創り続けてきました。このCinema Lineにおいても、幅広い映像クリエイターの創造性を最大限引き出すプロダクトを提供し、多様な領域で新たな映像表現の創造に貢献したいと思っています。

統括課長 平野

Cinema Line カメラ FX6創造力を加速させる
「機動力」を

ドキュメンタリーやミュージックビデオなどのショートフィルムの制作者に向けて、シネマの映像表現と高い機動力を提供することを目指したCinema Line カメラ FX6。そのプロダクトデザインは、従来機の徹底的な現場リサーチからはじまりました。リサーチを重ねるなかで得たのが「広告映像の撮影現場などでは、カメラを手持ちして体に密着固定しながら撮影する手法や、トップハンドルを握りながら撮影する手法が散見される」という気づきでした。

そこで機動力を確保する前提として、シネマの映像表現を生み出す高感度フルサイズイメージセンサーや電子式可変NDフィルターといった最新技術を、従来機とほぼ同等のコンパクトなボディに凝縮。そのうえで、カメラを体に密着固定して撮影する際、体や手への負担を最小限に軽減するため、本体の角を大胆に丸くしたRounded Cubeデザインを考案しました。同時に、撮影現場においてCinema Lineの上位機FX9と併用される場合を想定し、FX9と同様のボタンレイアウトを踏襲することで、撮影クルーが機種を交換してもスムーズに撮影できるようにしています。

さらに、トップハンドルを握った状態でもグリップと同様の撮影操作ができるようにハンドル部の操作性を拡充。従来機ではRECボタンとホールドボタン、ズームキーのみが配置されていましたが、多くの映像クリエイターにヒアリングを重ね、使用頻度の高いボタンやダイヤルをハンドルに追加するとともに、それらを親指だけで操作できるように最適なレイアウトを追求しています。限られたスペースの中で指休めの位置なども確保しつつ、ボタンを押しやすくするためにハンドル操作部自体の角度も細かく調整するなど、最小限の指の動きで多様な操作を可能にしています。

より身軽に、より快適に、
撮影に集中するために

FX6は、拡張性を追求し、各種カメラアクセサリーを取り付けるネジ穴のレイアウトにも配慮。従来機では本体上面にトップハンドルを固定する溝があったため、使用できるネジ穴に制約があり、他のアクセサリーを装着する際にカメラケージやリグが必要になることもありましたが、FX6は上面をフラットにしつつ、10個のネジ穴の位置をきめ細かく調整。これにより、カメラケージなどが無くても、多彩なアクセサリーを互いに干渉させずに取り付けられるようにしています。さらに、モニターマウントをトップハンドルだけなく本体上面にも追加。トップハンドルを外した状態でもモニターを直接取り付けられるようにし、ジンバル撮影などもコンパクトに運用できます。

また、膨大なデータ処理を行うデバイスの放熱のために、右側面に大型の吸気排気用ダクトを設置。その際、吸気と排気がつながって乱気流が発生するという課題が見つかりましたが、上部の吸気口のルーバーを水平に、下部の排気口のルーバーを下方向に傾けることで、乱気流を回避。同時に、回転ハンドルを持つ手に排気の熱が直接当たることをも防ぎ、より快適に撮影できるようにしています。さらに、ルーバー奥のメッシュの形状についても、ルーバーとの位置関係を考慮しつつ、造形と調和するように大きさを綿密に調整しています。

1つ1つの造形に命を吹き込むこと

例えば、ボタン1つの配置にしても、現場での使いやすさを考慮しながら、エンジニアとともに改良を繰り返す。1つ1つの造形の意味を追求し、命を吹き込むことで映像制作の可能性を広げられると考えています。FX6のデザインは、映像クリエイターが求める理想と私たち開発メンバーの想いが結集したでもあるのです。

デザイナー 鈴木

Cinema Line カメラ FX3映像撮影にかつてない
「自由度」を

これまでにない小型ボディで、より自由度の高い映像制作用カメラを映像クリエイターに提供したいという想いから開発をはじめたCinema Line カメラ FX3。様々なフォームファクターのプロトタイプを検討するなかたどりついたのが、より小型化を実現できるミラーレスカメラスタイルでした。その背景にあったのが、デジタル一眼カメラで動画を撮影する映像クリエイターが増えているという状況。彼らは一眼カメラのコンパクトさを生かし、自由度の高い映像撮影に挑戦していましたが、一眼カメラは動画撮影に特化したボタンレイアウトや形状ではなく、アクセサリーを取り付けるために大がかりなリグを必要とするケースも多いなど、不自由な面も多く見受けられました。

そこで、動画撮影に特化したミラーレスカメラスタイルの映像制作用カメラの開発に着手。まずα™(Alpha™)で動画を撮影している映像クリエイターにヒアリングし、その声を生かしながらFX3のデザイン開発を進めていきました。クリエイターの「プロの映像制作用カメラとして安心して使えること」という要望から、長時間撮影にも対応できるように、コンパクトなボディを維持しながら、放熱用のファンを搭載。さらに「胸や腰の位置でカメラを構えて撮影することが多い」という声から、そのような体勢でカメラを操作しやすいようにグリップを前方に傾け RECなどの主要なボタンを上面に配置するなど、必然の造形を探っていきました。

撮影現場を見据え
「あるべき姿」を見出すこと

さらに、動画撮影に特化した操作系をミラーレスカメラスタイルのボディに落とし込んでいきました。操作部のレイアウトは、FX9やFX6と同じ考え方のもと、親指で操作できる範囲にRECボタンや、絞り調整(IRIS)/ホワイトバランス/ISOを設定できるカスタムボタンを配置。動画撮影で使用頻度が高いピント拡大やゼブラ表示ボタンなどもボディの表面に配する一方、動画記録中であることを示すタリーランプも加えるなど、隅々まで映像制作用カメラとしての信頼性を考慮しています。

デザイナーが特にこだわったのが、映像制作用カメラの象徴として、独自のトップハンドルを開発することでした。さまざまな映像クリエイターの多様な持ち方に対応するため、T型形状のトップハンドルを考案。ハンドルの長さや持つ範囲などを入念に調整することで、コンパクトさを維持したまま、ローアングルをはじめ、より自由度の高い撮影を可能にしています。

さらに、カメラケージやリグを使用せず、各種カメラアクセサリーを直接本体に装着できるように、取り付け用のネジ穴を6つ設置しました。部品が集約した小型ボディに6つものネジ穴を設けることは至難の技でしたが、エンジニアと協力しながら、複数のアクセサリーを互いが干渉しない位置に設置できるようネジ穴を綿密にレイアウト。これによりコンパクトな状態のまま運用できるため、より軽快かつ自由なスタイルで撮影に臨めます。

クリエイティブな衝動を湧き起こすものを

FX3のデザイン開発において私たちが目指したのは、映像クリエイターの創造性を刺激し、彼らが思い描く映像を記録できる最小ユニットの創出でした。映像クリエイターの方々には、このユニットを核とし、ハンドルやマイクなどの多様なアクセサリーを自由に取り付けてもらい、この小型ボディだからこそ得られる映像表現の楽しさや喜びを感じてほしいと思っています。

アートディレクター 増井

未来に向けて
Cinema Lineを育てるために

Cinema Lineという新たなカメラ商品群を、世界中の映像クリエイターに向けていかに発信していくか。コミュニケーションデザインにおいて第一に考えたのが、世界各地域のプロモーション担当者や、社外の制作チームなど多様なメンバーの意識を統一することでした。ユーザーとのあらゆるタッチポイントにおいて、一貫性を持ったメッセージやトーンをつくりあげることで、Cinema Lineという木を大きく育てていく。そのようなイメージを抱きながら、Cinema Lineの目指すべき未来像と、届ける相手である映像クリエイターの人物像をわかりやすく明示し、 Cinema Lineのコミュニケーションに関わるすべてのメンバーに共有しようと考えました。

そこで、デザイナー自らが事業部門のマネジメントに「Cinema Lineはこの先どういう存在を目指すのか」その事業方針や戦略をヒアリングしつつ、関連部署の担当者とも議論を重ねながら、目指すべき未来像を明文化。同時に、Cinema Lineの商品群がサポートする、映画制作から小規模なコンテンツ制作まで、幅広い領域の映像クリエイターたちに共通する本質を掴むため、彼らへのインタビューを実施。多くの映像クリエイターに対し、映像制作の魅力や現場で常に大切にしていることなどの質問を投げかけ、彼らの心の声に耳を澄ませました。

これらの回答を精査しながら、映像クリエイターの人物像を探求。そこから、「オーディエンスとつながる(Connect with Audience)」ために、「感情を届けること(Transmit Emotion)」や「物語に引き込むこと(Visual Storytelling)」が大切であり、その作品を輝かせるのは「光の表現(Lighting is Everything)」である、という彼らが共通して抱くクリエイションの本質を4つのキーワードで導き出しました。これによって、Cinema Lineと映像クリエイターとの共感の接点を明確化し、世界各地域のプロモーション担当者が同じ方向を向きながら、映像クリエイターの心に響くコミュニケーションが展開できる土壌を整えたのです。

コミュニケーションの「種」を
デザインすること

つぎにデザイナーが手がけたのが、世界中に一斉に発信され、すべてのコミュニケーションの「種」となるCinema Lineのステートメントとキービジュアルをつくりだすことでした。ステートメントについては、これまでヒアリングしてきた社内メンバーの熱意や映像クリエイターへのリスペクトをありのままに伝えたいと考え、メッセージの選定から、構成の流れ、言葉選びに至るまで、関連部署と連携しながら作成。さらに、英語と日本語の翻訳で生じるニュアンスのズレも細かく修正していきました。それは「映像クリエイターを真正面から支え、共創のステージを創出する」というソニーの想いを言語によってデザインしていくことでした。

さらに、キービジュアルについても、Cinema Lineに込められた想いや、これからの共創のストーリーを感じさせるポートレートのような仕上がりを目指しました。「これから映像クリエイターとともにつくる世界こそ、Cinema Lineの世界観である」という考えのもと、静物の中でエネルギーが溢れる「静中の動」のイメージを求め、キーカラーであるグレーの空間のなか、あえて余白を設けて各モデルを配置。さらに「Line」という概念とともに、VENICEの「クリエイター目線」というものづくりの思想が継承されていることを表現するため、VENICEを先頭にし、すべてのモデルを同じ方向に向けて配列しています。

これらのステートメントやキービジュアルで表した世界観やトーンが起点となり、いま世界中でCinema Lineのコミュニケーションがはじまっています。このシンプルでニュートラルなCinema Lineの世界観が、これから幅広い領域の映像クリエイターたちの作品によって、どのような色で彩られていくか。その共創の表現こそが、今回のコミュニケーションデザインの狙いなのです。

映像クリエイターに最大のリスペクトを込めて

ソニーのパーパスは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことです。その実現に向け、まだ見ぬ感動体験の創出に挑戦する映像クリエイターに、最高峰のテクノロジーを提供することが私たちの使命だと思っています。映像で世界は変えられる。そんな映像の力を信じる、すべてのクリエイターをCinema Lineでサポートしていきたいと考えています。

アートディレクター 横山

映像クリエイターの創造性を駆り立てる、新たな映像制作用カメラ商品群 Cinema Line。
ソニーのクリエイティブセンターはこれからも
Cinema Lineの深化を支え、新たな映像表現の創出に貢献していきます。