
ソニー内におけるオープンソースの適切な利用と
オープンソースコミュニティ連携体制の確立
2003年初頭から、家電製品に向けたLinuxの進化と活用を推進するプロジェクトに取り組み続けている。このプロジェクトを通じてオープンソースソフトウェア(OSS)開発者コミュニティーとソニーの協力関係の確立と、発展に貢献してきた。この結果、ソニー内でもテレビやビデオカメラ、業務用映像機器などに積極的にOSSが活用され魅力的な製品づくりを下支えしている。併せてOSSの適切な使用を推進し法的なリスクを抑止。さらに、ソニー独自技術をOSSコミュニティーと共に進化させるサポートも続けている。


Eマウントレンズの小型軽量化を実現する
新規光学タイプの創出と商品化
Eマウントシステムの強化を目的に、スポーツ分野のプロカメラマンに必須な大口径超望遠レンズと魅力ある大口径広角単焦点レンズのラインナップ構築が求められているなかで小型軽量な光学系の創出を主導。大口径超望遠レンズでは通常の光学設計の常識にとらわれることなく、また広角単焦点レンズでは強みを最大限に活かした新規光学系を創出。両光学系ともに光学性能を向上させつつ、光学重量にて40%を超える軽量化を達成。両光学系を搭載したモデルはヒット商品となった。


Cu-Cu接続を用いた積層型イメージセンサーの開発
と量産化への貢献
積層型CMOSイメージセンサーの画素チップと論理回路チップを、それぞれ積層面に形成したCu(銅)端子で直接接続したCu-Cu(カッパー・カッパー)接続と呼ばれる新しいチップ積層技術を開発し、スマートフォン向け積層型イメージセンサーへの導入と量産化を達成した。Cu-Cu接続の出現により、積層型イメージセンサーのさらなる小型化、多機能化が実現され、積層型イメージセンサーの活用領域の拡大が可能になった。原理検証から量産化開発まで一貫して携わり、性能と安定した製造を両立する製造プロセスを構築し、世界初となる量産化に成功した。


エンタテインメントロボットのモーション設計と
コントロールフレームワークの開発
aiboの生命感と躍動感あふれる動きと、多彩な、愛くるしい仕草のバリエーションを実現するための技術を開発した。モーション設計とコントロールフレームワークの開発および他チーム連携を主導し、目的動作と見た目の自然さを両立させるため、モーションパーツの設計、モーションを再配置する仕組みを構築。aiboの発売後にも、新しいモーションを組み合わせ、可愛く滑らかな動きでリアリティを感じる「成長」を実現し、ソニーのロボティクスビジネスの価値向上に貢献した。


イメージセンサー高画質化における科学的手法の開発
イメージセンサー黎明期からの課題を解決し、イメージセンサーの高画質化と生産設備による画質劣化に対して迅速な問題解決を可能とした。半導体デバイスのモデリング技術、測定技術、ビッグデータ解析技術を組合せた技術をソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所と共同で開発し、これまで特定が困難であった画質劣化の原因を短時間で解明する事でイメージセンサー製品の高画質化手法として完成させた。


画素並列型14bitA/D変換器を用いた
3次元積層イメージセンサーの開発と特性改善
イメージセンサーの究極の姿をめざして、画素並列A/D変換器の開発を主導した。電力課題に対して、コア回路の電流を従来より3桁減し、また、面積課題に対して従来比1/50の小面積A/D変換器を発案した。画素とA/D変換器との1対1の積層接続を、Cu-Cu(カッパー・カッパー)接続技術※で実現。全画素一斉A/D変換を行うことでデジタルグローバルシャッタ機能を持つイメージセンサを実証し学会で報告した。本技術により低消費電力化および高速化が可能となり、新たなビジネス領域の可能性を広げた。
※裏面照射型CMOSイメージセンサー部とロジック回路部を積層する際に、Cu(銅)のパッド同士を接続することで電気的導通を図る技術


ヘッドホン「WH-1000XM3」の業界No.1ノイズ
キャンセリング性能を実現する音響開発
初代MDR-1000Xを超えるヘッドホンのノイズキャンセリング性能をめざし、新規プロセッサの開発者も巻き込み音響開発を主導した。新理論と新プロセッサの能力を引き出す、音響構造と信号処理の設計でノイズを極限までコントロールし、騒音抑制率業界No.1を達成。 2018年秋に発売のWH-1000XM3の商品力に大きく貢献した。WH-1000XM3は、業界での様々な賞を受賞し、ヒットモデルとなっている。


3D ToF(Time of Flight)センサーおよび
センシングシステムを車載/モバイル向けに実用化
CAPD(Current Assisted Photonic Demodulator)技術を用いたToF方式※の画素設計を実現した。また、環境光を抑制してハイダイナミックレンジを実現する回路をToF画素内に配置。そして、ダイナミックレンジと精度を向上させるためのアルゴリズムを開発した。ジェスチャコントロールやロボットナビゲーションのような新しいアプリケーションに、ToFセンサーの応用領域を広げていく。
※光源から発した光が対象物で反射し、センサーに届くまでの光の飛行時間を検出することで、対象物までの距離を測定する方式


世界1位の音源分離技術開発、商品化、及びソニーのプレゼンス向上への貢献
音声信号処理の専門性と最新の機械学習の知見を融合し、理論限界に迫る性能の音源分離を開発した。ドイツのR&Dやインドのソフトウエアセンターのメンバと協力し、音源分離の国際コンペティション、Signal Separation Evaluation Campaign(SiSEC)にて3回連続ベストスコアを達成するという快挙に貢献した。5件の論文発表、国際会議での招待講演等、ソニーのプレゼンス向上に貢献した。


ディープラーニングの分散学習で世界最高速を達成
AI開発の高速化手法として分散学習がある。しかし、並列化するだけでは高速化できず、大きなバッチサイズで学習を収束させる技術や並列数が増えても高速に勾配同期する技術を開発した。これにより、分散学習のベンチマークとして利用される ImageNet/ResNet-50 の学習で世界最高記録を達成した(産総研のABCI(AI橋渡しクラウド)の2176基のGPUを利用)。


米の籾殻由来の新規多孔質炭素材料トリポーラス™の開発とライセンス開始への技術貢献
バッテリー電極材料研究の過程で、米の籾殻が持つ独特な微細構造に着目し、従来の活性炭とは異なる細孔構造を持つ新しい多孔質炭素材料トリポーラス™/Triporous™を開発した。このトリポーラスが、従来活性炭の6倍の消臭速度や、8倍のアレルゲン吸着量、更には水中のウイルスを99%以上除去できる特徴を明らかにした。世界で1億トン以上排出されている籾殻に新たな価値を持たせたとして、トリポーラスの基本特許は、2014年度の全国発明表彰にて21世紀発明奨励賞を受賞し、本年度のライセンス開始に技術面で貢献した。


小型・高倍率・高画質の新規光学系開発による
デジタルカメラRX100M6商品化への貢献
新規ズームレンズタイプを創出、非球面光学設計技術による小型・高画質を実現、新規調芯技術を開発し、高性能・小型のレンズを量産化することに成功した。 RX100M6に搭載され、他社製品との差異化・商品力強化により、売上に貢献した。


業務用カムコーダーにおける操作応答時間の圧倒的な改善と全カテゴリ展開の牽引
4K60Hzで収録・送出するリアルタイム信号処理と、オープンソースを活用したNetStreamingの安定した協調動作のために多数のSoCやFPGAによって構成される業務用4Kカムコーダーの開発において、プロカメラマンが求める操作応答時間を実現するべく、組織を横断した改善活動を牽引した。これまでの個別最適化から、プロセッサ間での処理の移譲や待ち合わせ解消など、システム全体での最適化へと転換することで、電源Onから収録開始までの時間において6倍の高速化を達成。プロカメラマンからの要求に応え、業務用4Kカムコーダーの普及およびビジネスに貢献した。


toio™事業立ち上げ及び、必要な要素技術群の実現と商品化
創造的な遊びと学びを体験できる製品の実現をめざして、商品企画構想から量産化まで主導した。独自の絶対位置センサーやロボット制御アルゴリズム等により、自己位置推定とユーザー参加型プラットフォームを実現。新しいロボットトイのプラットフォームとソニーのリカーリングビジネスの新たな可能性を切り開き、ソニーのブランド向上に貢献した。


凹面鏡構造を利用した世界最高性能の
可視光面発光レーザーの研究開発
凹面鏡を有する独自の構造を窒化物系面発光レーザーに適用し、青、緑帯での面発光レーザーの室温連続発振を実現した。同構造は当該材料系で困難とされてきた横方向光閉じ込めを効果的に実現したブレークスルーであり、世界トップの素子特性を示している。成果は、科学誌への論文掲載を始め、国内外の学会から高い評価を得ている。本素子はレーザープリンタ、プロジェクター、固体照明、光通信、バイオセンサー他、多くのアプリケーションへ展開できる可能性があり、次世代光源として業界からの注目も集めている。


動く被写体をリアルタイムかつピンポイントに
追尾する高精度オートフォーカスの開発
AI※を用いて色や模様、被写体距離からなる空間情報をリアルタイムに高速処理し、動体を高精度に追従し続ける技術を開発した。リアルタイムトラッキングはソニーのカメラにおいて重要な技術のひとつである。ピンポイントでロバストに被写体を追尾するアルゴリズムを開発し、動きのある被写体や遮蔽のある環境でもピントが合い、シャープな写真撮影を可能にすることをめざした。最新のAI※技術を使用した高精度なアルゴリズムを開発したことにより、ユーザー体験をさらに豊かにすることに成功した。
※機械学習を含むAI(人工知能)の技術を活用


テレビ「BRAVIA」の差異化高画質化技術
「オブジェクト型超解像処理」の開発と商品化貢献
ソニーの超解像技術を進化させるために、オブジェクト型超解像技術をソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ株式会社、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社と連携して開発した。映像からオブジェクト毎の特徴量を抽出することで、被写体毎に最適な画質を表現可能なアルゴリズムを、ハードウェア実装を見据えて軽量化して開発。ソニーのテレビ BRAVIA(ブラビア)のプレミアムラインナップにおける高画質プロセッサーX1 Ultimate(エックスワン アルティメット)に搭載され、ソニーのブランド価値向上に貢献した。
