私は常に、男性以外のプロデューサーと接点を持つ機会を模索しています。ジェンダーバランスの偏りが指摘される音楽業界において、共通の視点や課題意識を共有できる仲間と出会うことは難しいと常々感じていました。そうした中で、この賞の存在を知り、自分にとって大きな意味があると直感し、応募しました。副賞が用意されていたことも魅力の一つでしたが、それ以上に、受賞後も継続的な支援が期待できる点に強く惹かれました。
また、受賞者同士がつながる機会があることも重要でした。単に賞を獲得することが目的ではなく、共通の関心を持つプロデューサーたちと繋がり、お互いのプロセスから学び合い、共感し合える場を築けたことが、私にとって何よりも意義深い体験でした。
参加してみて、「自分は一人ではない」と、改めて強く感じることができました。受賞者に限らず、応募した多くのプロデューサーたちが互いに協力し合い、知見を共有しながら意義のある関係を築いていることを知り、それがとても心に残る気づきとなりました。年々、男性以外のプロデューサーとの出会いが少しずつ増え続けていて、そこから自然に新たな繋がりが生まれていくのを感じています。
この賞を通じて生まれたネットワークは、音楽プロデューサーとしての歩みを互いに支え合う、豊かな交流の場として広がりを見せています。業界内での孤立感を和らげ、互いに励まし合いながら成長していける土壌が、ここには確かに存在していると感じています。
正直なところ、「音楽プロデューサーになろう」と意図的に選んだことはありませんでした。むしろ、自然とその道に入り込んでいった、というのが実感に近いかもしれません。
当初、音楽はあくまで自分自身を理解するための手段でした。感情を整理したり、世界と折り合いをつけたりするために、音に頼るようになったのです。それが徐々に個人的な表現を超え、他者と共有するものとなり、気づけばプロデュースという仕事の形を取るようになっていました。
キャリアという意識を持つ前から、音楽は常に私の生活の一部でした。ですので、ある意味で職業としての選択というよりも、流れの中で必然的にたどり着いた場所だったと言えると思います。
私にとって最も大切なのは、個人的な価値観と芸術的なビジョンがきちんと共鳴することです。経済的な条件や制作環境の制約ももちろん考慮はしますが、やはり一緒に仕事をする相手との関係性に違和感が生まれた場合には、無理に関係を続けることはしません。
ベルリンのように物価が高く、創作の場を確保するだけでも多額のコストがかかる都市では、創造性と経済的な現実のあいだで、つねに慎重な判断が求められます。自分の中にある「本当にやりたいこと」と、生活を成り立たせるための現実とのあいだで、折り合いをつけていく感覚も、常に試されているように感じます。
技術の進化には本当に驚かされています。同時に、私たち人間がその進化に感情的に置き去りにされないよう、慎重であるべきだとも感じています。
私自身は、13年前、音楽制作ソフトGarageBandだけで制作を始めましたが、現在は、あらゆるプログラムやツールにアクセスでき、創作の幅は格段に広がったと感じています。面倒な工程をスムーズに処理できる技術が増えたことで、創作に集中できるようになったのは大きな利点です。
ただ、どんなに技術が進化しても、私にとって制作の中心にあるのは感情です。テクノロジーはあくまで補完的な存在であり、創作の原点を置き換えるものではないと考えています。
現在最も関心を寄せているのは、音が身体に与える影響についてです。音楽をソマティック(身体的)なレベルで捉え、その作用をより深く探究していきたいと考えています。
私が所属しているスタジオには、ノイズと細胞の関係について研究しているアーティストもおり、そうした科学的アプローチと創造性が交差する場所に可能性を感じています。将来的には、音楽とセラピーや教育をつなぐような取り組みにも挑戦したいと考えています。
私にとって最大のインスピレーションは、聴くことです。創作というと何かを生み出す行為に意識が向きがちですが、私はむしろ、耳を澄ませることからすべてが始まると考えています。
音楽制作において重要なのは、音をただ受け取るのではなく、身体的に感じ、深く関わることだと思っています。聴くという行為は単なる受動的なものではなく、感覚を研ぎ澄まし、現象を観察するという、非常に能動的なプロセスです。
他のアーティストとのコラボレーションにおいても同様で、私はできるだけ前に出すぎず、相手の声や空気感を丁寧に捉えるよう努めています。プロデューサーとしての役割は、ある意味ですでに存在するものを翻訳すること。そうした姿勢が、結果として創造性を育てる源となっているのだと思います。
まず何よりも、自分を支えてくれる人たちとつながることを大切にしてほしいと思います。それは同じ分野の仲間でなくても構いません。信頼し合える関係の中に、自分の創造性を安心して委ねられる場所をつくることが、何よりの支えになります。
キャリアを築くうえで、個人の力だけではどうにもならない局面は必ずあります。だからこそ、「誰といるか」が「何をするか」と同じくらい重要なのです。
私は、すべての人間が本来的に創造的な存在だと信じています。日々の暮らしの中で何かを工夫し、選択し、応用していくことも、広義の創造だと考えています。ただ、その創造性はしばしば社会構造や環境によって押し殺されてしまう。だからこそ、私は人々が自分自身を表現できる場を持つことがとても大切だと思っているのです。
創作の衝動は、何かを伝えたいというより、存在していたいという感覚に近いかもしれません。誰かのためのスペースをつくることは、同時に自分自身の存在の輪郭を形づくる行為でもあるのだと思います。