アクセシビリティアドバイザープログラム始動!誰もが使いやすく、楽しめる製品やサービスを目指して

エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野を担っているソニー株式会社では、アクセシビリティを「年齢や障がいなど個人の特性や能力、環境にかかわらず、商品・サービス・エンタテインメントを利用できること」と定義し、誰もが使いやすい、使いたくなるような製品やサービスを目指しています。そうした中で、2025年に障がいのある社員がアクセシビリティの担当者として、商品化プロセスの前段階から継続してプロジェクトに参加する「アクセシビリティアドバイザープログラム」が始動しました。現在、1期生として視覚および聴覚障がいのある社員4名が、アドバイザーとして活動しています。
今回の記事では、アドバイザーとしてプログラムに参加されている髙木さん、そしてプログラムを運営されている武上さんのお二人に、アクセシビリティアドバイザープログラムの詳細や裏側についてお話を伺いました!
※本記事では本来の業務を「主務」、本来の業務とは別の新たな仕事やプロジェクトを「兼務」と表記します。

- 園井 千智
自分の経験や知識を生かしたプログラム
── まずは、お二人の自己紹介をお願いします。
髙木:私には聴覚過敏という症状があり、日常のさまざまな音に対して過敏に反応し、気分が悪くなることがあります。例えば道を歩いていると、車の走行音など、さまざまな音が一斉に耳に入ってきます。そのすべてを拾ってしまうため、頭の中で不協和音が鳴っているような感覚になり、体調を崩してしまいます。こうしたバックグラウンドを持ちながら、主務であるPMO業務に加え、アクセシビリティアドバイザーとして商品化のプロジェクトにも参加しています。
武上:私はソニーに入社してから、商品企画を約10年ほど担当していました。その後、会社全体に貢献する仕事に携わりたいという想いから、コーポレート部門に異動し、現在はアクセシビリティの推進・統括を担当しています。そしてその一環として、アクセシビリティアドバイザープログラムの運営も行っています。
── アクセシビリティアドバイザープログラムとは、どういったプログラムなのですか。
武上:障がいのあるソニー社員にアクセシビリティのアドバイザーとして、商品化プロジェクトに参加していただくプログラムです。ご自身の経験や視点を生かし、製品の使いやすさを高めていくことを目的としています。

── 続いて髙木さんにお伺いしたいのですが、アドバイザーとして参加しようと思った理由は何かありますか。
髙木:学生時代からアクセシビリティに興味があったことが、大きな理由です。また、入社してからカメラサービスに関するUI設計を担当していたのですが、開発プロセスのどの段階においても、アクセシビリティを意識する場面が多くありました。そうした経験を重ねる中で、アクセシビリティについて何らかの形で携わり、知識を身につけたいという想いが強くなっていきました。そうした中で、社内のキャリアプラス制度※にアクセシビリティアドバイザープログラムの募集があるのを見つけ、参加したいと思いました。
※本来の担当業務を続けながら、業務時間の一部を別の業務に充てることができる制度のこと。キャリアプラス制度に関する記事は、「社内で兼業?!『キャリアプラス制度』で自ら広げるキャリアの可能性」のページへ
感じ方を具体的に言語化する
── アクセシビリティアドバイザープログラムでは、どんな活動をしているのですか。
髙木:活動が始まって最初の3か月間は、アクセシビリティに関する研修を受けました。その後、実際のプロジェクトに参加し、自分の特性に応じて「見る」「聞く」のいずれかのチームに所属することになりました。私は聴覚過敏の症状があるため、「聞く」チームに入り、活動を続けています。自分の障がいについてチーム内に共有した上で、主務で得た知見も生かしながら、商品に関するディスカッションに積極的に取り組んでいます。
武上:運営側は、髙木さんにも受けていただいた研修の枠組みを設計すること、そしてアドバイザーとプロジェクトをマッチングさせることの大きく2つを担っています。特にマッチングにおいては、アドバイザーの障がい種別だけを見るのではなく、その人の性格や強みも踏まえ、プロジェクトメンバーとして上手く機能するかどうかを判断しています。仕事は人と人で進めていくものなので、メンバー同士の相性といった点もしっかり見るようにしていますね。
── ちなみに、研修はどういったことを行うのですか。
武上:アクセシビリティに知見のある社外の方にお話を伺う機会を設けた他、アドバイザー同士でワークショップを実施しました。特にワークショップでは、自身の障がい特性を分かりやすく伝えることを意識してもらうようにしていました。実際にプロジェクトメンバーとして活動する際、「この音を聞きたくない」「これは見えにくい」といった感想だけでは、エンジニア側でどこをどう改善すべきか判断しにくい場合があります。そのため、感じていることを具体的に言語化する力を養えるような研修を設計しました。また、アドバイザー同士がお互いの特性を理解し合いながら、自然に伝え方を磨ける場にもなっていたと思います。
髙木:自分の聞こえ方を言語化するトレーニングを行ったことで、プロジェクトの議論の場で表現の仕方に気を配れるようになったと感じています。研修終了後はそれぞれ異なるプロジェクトに所属していますが、2週間に一度は定例で集まり、各自の活動状況やアクセシビリティに関する資格の話題など、さまざまな情報を共有しています。そうした対話の場があることで、アドバイザーとしてさらに成長していきたいという前向きな気持ちにもつながっていると思います。

── これまでの活動で、印象に残っていることはありますか。
髙木:私にとっては当たり前のことを共有した際に、エンジニアから「新しい発見だ」と言っていただけたことです。例えば、苦手な音を遮断するために、音楽を流さずノイズキャンセリング機能だけを使って生活しているという話をした際に「そういう使い方があるのは新しい発見です」と言っていただけました。その言葉を聞いて、自分の日常を共有すること自体に意味があるのだと気づきましたね。
多様な見え方・聞こえ方の社員とものづくりがしたい
── これまで活動してきた感想を教えてください。
髙木:アドバイザーとしての活動が、主務にも生かされていると日々感じています。主務では、商品化プロセスの全体を見る業務を担当していますが、兼務しているアドバイザーとしては、商品化の先行検討を主に担っています。その両方を経験することで、「先行検討での議論が、その後のプロセスにどのようにつながっていくのか」という流れがより立体的に理解できるようになりました。もちろん、アクセシビリティの知見も深まりましたが、こうした業務理解の広がりは、参加した当初は想定していなかった気づきでした。良い意味でのギャップだったと感じています。
武上:プログラムを立ち上げて初年度は、率直に言って手応えを感じることができた一年でした。ただ、私たちが目指しているのは、単に障がいのある社員をインクルージョンすることではなく、多様な見え方や聞こえ方の社員たちと共にものづくりをすること、そしてその価値を生かしていくことです。今後も、この軸はぶらさずに活動していきたいと思っています。

── 活動する中で、やっていて良かったと思うことはありましたか。
髙木:商品化の先行検討という早い段階からアドバイザーとして参加することで、障がいのある人たちにとって必要な機能がしっかりと実装されるのだと実感しました。私が必要だと感じた機能を一つの意見として伝えることで、障がいのある方に限らず、多くの人にとっての使いやすさにつながっていると思っています。もちろん、私の意見がすべて採用されているわけではありませんが、自分が感じたことや考えたことを積極的に伝えるよう意識していますね。
武上:運営側としても、アドバイザーに対して「たとえ意見が採用されなくても、落ち込む必要はない」と伝えてきました。商品化は、プロジェクトメンバーが議論を重ねながら形にしていくものであり、意見を出すことに大きな意味があると思っているからです。これから新しいメンバーも加わる予定ですが、髙木さん含め1期生の活動を社内に周知する中で、参加したいと手を挙げる社員がいることを心強く感じています。障がいや苦手なことを自分から周囲に伝えるのはなかなか難しいですが、1期生の姿を見て、自分の特性がもしかすると日々の業務や企業活動全般に生かせるのだと気づくきっかけになっているのではないかと思います。
自然に共創できる環境を作る
── これからもアドバイザーとして活動していく中での目標を教えてください。
髙木:障がいのある社員というくくりではなく、アクセシビリティの知見を持つ一人として、これからもアドバイザーとして関わり、主務においても周囲をサポートしていければと思っています。そして、どの担当領域であっても、アクセシビリティの視点は欠かせないものだと周知していきたいです。
── アクセシビリティアドバイザープログラムの継続を通じて、どのようなことを実現したいですか。
武上:最終的には、このプログラム自体がなくても、多様な視点が自然に生かされる環境になれば理想だと思っています。もともとソニーには、どんな立場であってもものづくりに携わり、意見を出し合えるオープンな風土が根付いていると感じています。そうした土台があるからこそ、アクセシビリティアドバイザープログラムがなかったとしても、障がいの有無を問わず、誰もが自由に意見を交わしながら、より良い製品やサービスを共創していける状態を実現できればと思っています。

<編集部のDiscover>
お二人のアクセシビリティアドバイザープログラムへの熱意を感じたインタビューでした。お話の中で印象的だったのが、「最終的には、アクセシビリティアドバイザープログラムがなくても、多様性を生かしたものづくりが進められる職場環境にしたい」という言葉です。プログラムがなくても、意見を聞きたいと思った時に、誰もが気軽に声を掛けられる。そうした環境を実現するための土台として、このプログラムは大きな役割を果たしているのだと感じました。私も、今後の活動を陰ながら応援したいと思います!










