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Sony Corporate Blog

ソニーのデザイナーがSF作家とともに描く、
「2050年の東京」

発足から今年で60周年を迎える、ソニーのインハウスデザイン集団であるクリエイティブセンター。エレクトロニクスからエンタテインメント、金融、モビリティなどの事業領域に活動の幅を広げ、ブランドやインターフェースを含め、多岐に渡るデザインを行っています。
今回のソニーコーポレートブログでは、SF作家とのコラボレーションを通じて未来の東京を多面的に描くプロジェクトを企画・実行した社員のインタビューをお届けします。

(右)ソニーグループ(株) クリエイティブセンター 企画推進グループ クリエイティブ企画チーム統括課長 大野 茂幹
(左)ソニーグループ(株) クリエイティブセンター スタジオ 3 チーム 2 青島 千尋

SF作家の大胆な想像力をデザイン開発に応用

― 本プロジェクトは、一体どのような内容なのでしょうか。

青島:ソニーのデザイナーとSF作家がコラボレーションし、Sci-Fi(サイファイ)プロトタイピングという手法を用いて「2050年の東京」で暮らす人々の生活を描き出したものです。「WELL-BEING(ウェルビーイング)」「HABITAT(ハビタ)」「SENSE(センス)」「LIFE(ライフ)」という4つのテーマを設定し、WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所の協力のもと、およそ半年にわたって継続的にワークショップを重ね、デザイナーは「デザインプロトタイピング」(各テーマの世界観にもとづくサービスやプロダクトの提案)を行い、作家の皆さんには「SF短編小説」を書いていただきました。

大野:社会課題が複雑化し、テクノロジーも急速に進化する中、デザインが扱うテーマも予測不可能なものになっています。そのような状況下、最新のデザイン方法論を導入し、社外の専門家と協創することが不可欠になっています。また、こうした新たなチャレンジを通じて、デザイナーのスキルアップも図りたいと考えています。
ソニーはこれまでも、テクノロジーで未来を創る、という取り組みを行ってきており、SFとソニーの親和性は高いと思っています。

  • ※ SF(サイエンス・フィクション)を用いて未来を構想し、それを起点にバックキャストして、「いま、これから何をすべきか」を考察する技法。米国西海岸などで注目され、近年活用されるケースが増えている。

― 若手デザイナーを多く起用していますが、どのようなことを期待しているのでしょうか。

大野:日常の業務とは別に、こういった機会でデザイナーならではの想像力を活かして自由で大胆な発想をする経験を積んでもらいたいと考えています。また、2050年になっても現役で働いている可能性が高い、若いデザイナーに未来を予測してもらい、30年後に答え合わせをしてもらえればと思います。

「2050年の東京」で、人々はどのような恋愛をしているのか

― 今回のプロジェクトでは「2050年」「東京」「恋愛」という3つのキーワードを大きな傘とし、4つの世界観を作り上げています。なぜ、「恋愛」というエッセンスを入れたのでしょうか。

大野:ソニーの探索領域に基づいて設定された「WELL-BEING」「HABITAT」「SENSE」「LIFE」という4つのテーマを物語にするには、未来のテクノロジーではなく「人」に焦点を当てるのがよいのではという議論がありました。2050年の東京で、人々がどのような「恋愛」をしているのかをSF作家の皆さんが小説で描き、そうした世界でどのようなプロダクトやサービスが実現しているのか、デザイナーが提案している形ですね。
Sci-Fiプロトタイピングでは、小説家にディストピア(暗黒世界)を書いてもらい、そうした未来を回避するために何をすべきか考えるやり方が主流です。ただし、今回は明るい未来を描きたいという思いもあり、「恋愛」というキーワードを採り入れています。

― 具体的に、どのようなプロダクトやサービスを提案したのでしょうか。

青島:私のチームは「WELL-BEING」がテーマで、SF作家の方と一緒に、AIカウンセラー”オフィーリア”を提案しました。テクノロジーがどれだけ進化しても、人生におけるストレスや挫折をゼロにすることは難しく、だからこそ、そこから立ち直るレジリエンスを身につけるサポートをオフィーリアがしてくれます。主人公が”エモーションキャプチャリングセンサー”と呼ばれるウェアラブルデバイスを常時肌に付けることで日常の体内のストレス数値や健康情報を割り出し、ストレスレベルが異常値になると専用のコンタクトレンズを通してオフィーリアとのカウンセリングプログラムに参加できます。このときオフィーリアは、その人がレジリエンスを身につけられると見極めた人物の姿形に自由自在に変化できるので、例えば亡くなった方と話すこともできます。
他にも、「SENSE」では「香り」のデータ化によって、思い出の香りを共有する、新しいエンタテインメントを提案しています。

大野:「HABITAT」では、気候変動により海面が大幅に上昇した東京湾に浮かぶ移動式住居をデザインしています。この住居には、太陽光発電と蓄電タンクが装備されており、自然環境と共生する独自のエコシステムを持つ海の遊牧民のような集団が暮らす未来を描いています。
「LIFE」で提案した人生設計シミュレーションサービスでは、ビッグデータをAIが統合して、個々人の性格に合った何百もの選択肢を提示してくれます。

デザインプロトタイピング:Resilience Program (レジリエンス プログラム)
(WELL-BEING, 2050)
デザインプロトタイピング:Floating Habitat (フローティング ハビタ)
(HABITAT, 2050)
デザインプロトタイピング:Sensorial Entertainment (センソリアル エンタテインメント)
(SENSE, 2050)
デザインプロトタイピング:Life Simulator (ライフ シミュレーター)
(LIFE, 2050)

― デザインプロトタイピングの作成にあたって、実現可能性の検討もしているのでしょうか。

青島:プロジェクト始動時に、リサーチ会社からトレンド予測の情報をインプットいただいた上で未来を予測しています。
例えば、先ほど説明したエモーションキャプチャリングセンサーの仕組みとして、身体の血管が密集する特定の部位に貼り付けることで体内の情報を読み取り、異常があればオフィーリアを呼び出せる想定です。
突飛なテクノロジーのように思われるかもしれませんが、現代においても、指先に搭載したセンサーで血液情報を読み取るといった研究は進んでいるようです。2045年頃にシンギュラリティが起こるという予測もある中で、こういったウェアラブルデバイスを用いたAIカウンセラーの実現はあり得ると思います。

テクノロジーは人々を幸せにするために存在している

― 実際にプロジェクトに参加して、特に印象に残っていることがあれば教えてください。

青島:世界観を構築する主軸の一つに「恋愛」という要素があったこともあり、それぞれが恋愛観をさらけ出す場面もありました。多様な価値観を否定せずに一つのテーマに集約していくことは、大変だった一方で、とても楽しくやりがいを感じました。
また、プロジェクト内のワークショップで、自分たちでも400字程度の小説を書く場面があったのですが非常に有意義でした。ストーリー化することで、プロダクトや技術だけではなく、登場人物やその時代の社会背景にまで想像力を巡らせる必要があるので、アイデアを発展させることができました。

大野:結果的に、「人に近づく」というソニーの経営の方向性を体現していたと感じます。「人」を中心に考えていけば、テクノロジーが暴走してディストピアが実現してしまうことはない、というのがこのプロジェクトを通じてわかったことです。テクノロジーは、人々の幸せのために活用できると強く思います。

― ソニーだけではプロジェクトを成しえなかったと感じるのはどのような部分でしょうか。

青島:SF作家の皆さんから、「ソニーはもっとこうするべきだ」という意見を沢山いただきました。豊かな発想力を持った方々からのご意見だからこそ非常に勉強になると同時に、「振り切った発想をしていかないと、未来のおもしろいアイデアは作れない」と改めて実感しました。

大野:作家の皆さんの発想力についていくのが大変で、「発表できるものが作れるかな…」と不安を覚えることもありました(笑)

― お二人が考える、クリエイティブセンターの今後の展望を教えてください。

大野:昨今、社会的責任が以前よりも強く企業に求められる中で、新たな社会価値、事業価値を創造していくインハウスデザインチームになっていきたいと考えています。

青島:飛躍的に進化し続けるテクノロジーを活用するには、数年先に発売するプロダクトのデザインだけでなくその数十年先も予測しないとダメだと今回強く感じました。より明るい未来のために、有り得ないと思う発想でも豊かに発想できる人が増えていけば、より面白い組織になると思います。

SF作家からのメッセージ

本プロジェクトにご協力いただいた4名のSF作家を代表して藤井太洋氏にメッセージをいただきました。

SF作家
藤井太洋氏

現代の大企業がどのような形でビジネスを作っているのか、そのなかでもクリエイティブな組織に属する方々がどういう意識を持っていらっしゃるのか……。そこにとても興味があったのですが、参加されたメンバーの幅広さやアイデアや話題の豊富さに触れて、クリエイティブセンターというひとつの組織にもかかわらず、これだけの多様性を持てているのはすばらしいことだと感じました。
Sci-Fiプロトタイピングという手法が優れているのは、SF小説やSF映画が得意とする「未来を予測する」部分というより、「ナラティヴの力を使う体験ができる」点にあると思います。フィクションを人に語ってみせることを通じて、アイデアの箇条書きやマトリックスやシミュレーションからは出てこない視座や発想が湧き出てくる体験を、皆さんされたと思います。その経験を、ぜひこれからのクリエイティブ作業に生かしていただけたらと思います。

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