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エンタテインメントと技術が出会う場所
ー Sony Entertainment Technology Showcaseの歩み

    「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」 このPurposeのもと、ソニーグループでは、エンタテインメントとテクノロジーの融合を通じた新たな価値創出を進めています。「Sony Entertainment Technology Showcase(SETS)」も、そうした取り組みの一つです。すでに商用化されている技術から開発段階のものまで、エンタテインメント分野での活用が期待できるさまざまな先端技術を持ち寄り、ソニーグループの社員・クリエイター・エンジニアが知見やアイデアを交換する場として発展してきました。社外のクリエイターや学生も招待することで、グループ外のエンタテインメント関係者からフィードバックを得る機会にもなっています。2023年にスタートし、今年も7月15日から3日間にわたり米国・ロサンゼルスで開催されたSETS。これまでも展示やパネルディスカッション、交流を通じて、技術協業のきっかけを生み出し続けています。本記事では、SETSの成り立ちやこれまでの展開を紐解きつつ、今回の開催内容をご紹介します。

    目次

    SETSの成り立ち

    ソニーグループの伝統的なイベントの一つに、1973年から開催されている社内技術交換会「Sony Technology Exchange Fair(STEF)」があります。国内外のグループ会社から技術者が集い、互いに多様なテクノロジーを共有、意見を交わすことで、新たな協創につなげることを目的としたイベントです。

    一方で、長年にわたり社員同士の技術交流の場として発展してきたSTEFの考え方を日本国外へと展開し、エンタテインメント領域にも広げる取り組みとしてスタートしたのがSETSです。

    新たな技術を、実際にそれを活用する人の視点を取り入れながら次のアイデアへとつなげていく。そうした発想のもと、ゲーム・音楽・映画といったソニーのエンタテインメント事業領域を越え、社外からも人々が集う場として誕生したのが、SETSです。

    ロサンゼルスからロンドンへ。広がるSETSのコミュニティ

    2023年にロサンゼルスでスタートしたSETSは、その後、イギリスのロンドンへと活動の場を広げました。ロンドンにはソニーグループの複数のエンタテインメント事業の拠点が集まっており、事業横断的な交流を生み出しやすい環境があります。より多様な参加者が集う場となるよう、現地のグループ会社が緊密に連携し、近隣のエンタテインメント施設や社屋内のカンファレンススペースを会場とすることで、幅広い参加を促しました。
    開催を重ねるなかで、SETSは単なるイベントの枠を超えたコミュニティへと発展しています。ロサンゼルスやロンドンで生まれたつながりをきっかけに、新たな協業や地域ごとの活動も広がっています。

    SETS LA 2026 ー 今年の会場から

    こうして育まれてきたSETSのコミュニティは、今年は再びロサンゼルスに集いました。
    そして、映像制作、空間コンテンツ、オーディオ、制作ワークフローの効率化など、エンタテインメントの現場に新たな可能性をもたらすさまざまな技術が集結しました。
    その中からいくつかの展示をご紹介します。

    Lens Calibration-Free Live-Action CG Compositing (OpenTrackIO)

    右の恐竜は実物のフィギュア。左の恐竜はそのデータをもとに生成したCGだが、本技術によって実写映像とリアルタイムに位置が合わせられ、自然に配置・合成されている。

    事前に取り込んだ高品質なCGをリアルタイムで実写映像と融合できる技術が紹介されました。カメラの位置や向き、ズーム、フォーカスなどの情報をリアルタイムでほかの機器へ送信するオープンソースソフトウェア「OpenTrackIO」を活用することで、実写映像とCGの合成をより手軽に行うことができます。
    背景映像をLEDディスプレイに映し出し、その前で実物の演者やセットを同時に撮影する映像制作手法「バーチャルプロダクション」では、多数の機器間で正確な情報連携が求められます。本技術の活用により、そうした複雑な作業の負荷を軽減し、制作プロセスの効率化を目指しています。

    4D Capture Technology

    動きのある3Dモデル、つまり、4Dの撮影には、通常大がかりなセットアップが必要となりますが、この技術では1台のカメラによる動画撮影だけで、被写体の高精細な4Dモデルや4K深度マップを生成できます。長距離LiDARとミラーレスカメラを組み合わせた独自のセンシングデバイスにより、色だけでなく、服のしわなど細かな質感まで捉えた密度の高いデータを取得でき、映像制作や空間コンテンツ制作などへの活用も期待されます。

    ※レーザーの光を照射し、その反射により対象物との距離や、被写体の形を正確に測るセンシング技術

    Auto Dailies

    映画やドラマの制作現場では、その日に撮影した映像や収録した音声、撮影データなどを整理し、監督やプロデューサー、編集者などの制作スタッフが内容を確認できる状態にまとめる「Dailies」という作業が行われます。脚本に描かれた世界が、実際の映像としてどのように形になったのかを初めて確認できる、とても重要な工程です。
    この展示で紹介された「Auto Dailies」は、そのワークフローの中でも、特に繰り返し発生する作業の自動化を支援する内製ツールです。撮影された映像を解析し、映像と音声を同期させるための目印となるカチンコ(クラッパーボード)を検出することで、そのタイミングを基準に映像と音声を紐づけます。さらに、撮影レポートなどの資料を読み取り、ロール番号やシーン、テイク、OKテイクなどの情報を自動で抽出することが可能です。従来はマニュアルで整理していた情報を、確認用データへ直接反映することで、作業の効率化を支援します。
    繰り返し発生するマニュアル作業を削減し、制作素材をより早い段階で確認できる状態に整えることで、Dailiesの作成をより迅速かつ効率的に行えるようにします。制作ワークフロー全体の効率化を目指す取り組みです。

    ※Dailies: 日本の映像業界では「ラッシュ(Rushes)」と呼ばれます。

    LBE technology in Wwise

    ロケーションベースエンタテインメント(LBE)では、映像、音響、振動といった複数の演出を組み合わせた総合的な体験が没入感を生みだします。
    「Wwise」は、ゲームやインタラクティブメディア業界で広く活用されている音響制作・制御プラットフォームです。実際のLBE施設ごとに異なるスピーカー配置に合わせた音響演出の制作と、それに連動する振動(ハプティクス)の設計を一貫して行うことができるソリューションが紹介されました。複数の演出を並行して、統合的に設計・調整できることで、より没入感のある体験づくりを支援します。
    なお、このソリューションは、ソニーがCES 2025で展示した実証実験でも活用されています。

    空間コンテンツ制作向けソリューション「XYN™」

    ソニーは、空間コンテンツ制作を支援するソフトウェアやハードウェアを統合したソリューション群「XYN™」を展開しています。今回のSETSでは、現実空間を高品質な3DCGアセットとして生成し活用するXYN™の「空間キャプチャーソリューション」などが紹介されました。本ソリューションでは、カメラとスマートフォンを接続し、XYNが提供する専用アプリケーション「XYN Spatial Scan Navi」のガイドに従いカメラで現実空間を撮影、クラウドアプリケーション「XYN Spatial Scan」によって高画質な3DCGを生成できます。これまでコスト・技術面で高いハードルがあった高品質な3DCGの作成と活用までの一連のワークフローの簡素化と効率化を叶えます。

    展示エリアでは、来場者が開発者と意見を交わす姿も多く見られました。また最終日には、社外のクリエイターをはじめ、映画・テレビ業界の関係者、メディア企業の社員、大学教授や学生など、幅広い来場者が会場を訪れました。

    来場者からは、「技術そのものを紹介するだけでなく、人やアイデアをつなげようとする姿勢が印象的だった」「制作現場の効率化につながる可能性を感じた」といった声に加え、「クリエイター同士のコミュニティを大切にしている点が興味深い」「クリエイターや業界関係者のニーズに応えるために、ソニーグループ各社がそれぞれの強みを生かしながら連携していることが伝わってきた」など、多くの好意的な反応が寄せられました。

    また、並行して実施されたパネルディスカッションにも観客が集まりました。なかでもアクセシビリティをテーマとしたセッションは多くの来場者の関心を集め、ソニーグループが進める取り組みへの理解を深める機会となりました。

    エンタテインメントと技術、その出会いから生まれるもの

    SETSで紹介される技術は、完成された製品や商用化されたソリューションだけではありません。その多くは、クリエイターとの対話やフィードバックを通じて磨かれ、将来の協業や新たな表現につながる可能性を秘めています。展示やカンファレンス、交流を通じて生まれる対話やつながりは、新たなエンタテインメントの創出を支える原動力の一つともなっています。

    これからもSETSは、エンタテインメントとテクノロジーを結びつける場として、新たな共創の可能性を広げていきます。