ソニー ホームページ

小さな「できた」を大きな感動に。グループ連携を通じて世界に活動を広げるゆるミュージック

    株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)は、誰もが奏でることができる「ゆる楽器」を使い、誰もがすぐに合奏できる楽しい音楽の世界をプロデュースしている「世界ゆるミュージック協会」に、楽器の開発や音源の制作を担当する役割で参画しています。そして、ソニーグループのさまざまな技術の活用や、外部からの参加者を交えたハッカソンの国内外での開催を通して、ゆる楽器の開発や改良を行い、より多くの人々に音を奏でる楽しみや笑顔を届けています。今回は、この取り組みに込められた想いや今後の展望について、SMEJ EdgeTechプロジェクト本部 MXチームのチーフマネージャーを務める梶望に話を聞きました。

    目次

    ゆるミュージックの活動基準は「笑顔の数」を増やすこと

    ゆるミュージックは、梶と「世界ゆるスポーツ協会」代表理事の澤田智洋さんの出会いがきっかけで始まりました。 「身体的な理由など、さまざまな障壁で楽器ができないと諦めている人が大勢います。世界ゆるスポーツ協会で得た知見を音楽にも活用して、そんな人たちをなくしたい」。 入社前に知り合った澤田さんのその言葉に共感した梶は、SMEJの内部の新規事業の公募に「ゆるミュージック」を提案しました。その公募をきっかけに集まった仲間を加えて、2019年4月にプロジェクト最初のイベントが行われ、SMEJは楽器の開発や音源の制作を担当する役割で「世界ゆるミュージック協会」に参画することになりました。

    ゆるミュージックの活動を行う上でのKPI、すなわち、大事な基準となっているのは、ゆる楽器に触れた人々の「笑顔の数」を増やすこと。その考えのきっかけとなったのは、視覚障がいのある少年との出会いだった、と梶は語ります。とあるイベントで体験ブースを設けていたゆる楽器に興味を持ってくれたその少年に、子どもたちで合奏するプログラムに即興で参加してもらったところ、ガッツポーズをしてすごく喜んでくれたといいます。
    「少年が喜んでいるのを見て、そのご家族がとても喜んでいて。その様子を見ていたソニー社員も感動しました。その時、普段は見逃してしまっている小さな『できた』、つまり成功体験による笑顔を積み重ねて、大きな感動にしていくことがゆるミュージックの意義だ、と強く感じました」

    グループ横断で開発した「ウルトラライトサックス」と「ハグドラム」

    ソニーからは当初、SMEJ社員約10名だけが参加していたゆるミュージック。現在では、SMEJに限らず、ソニーグループ各社の社員が参加し、より多くの人々に音楽体験による感動を届けるために活動を進めています。

    特に、ゆる楽器の開発には、ソニーグループの技術や知見が大いに生かされています。
    例えば、鼻歌を歌うだけでサックスの音色を奏でることができる「ウルトラライトサックス」には、ソニーセミコンダクタソリューションズが開発しているIoT用ボードコンピュータ『SPRESENSE™』が搭載されています。

    省電力ながら高い演算能力を持つ『SPRESENSE』により、マイクが拾った演奏者の鼻歌にエッジAI処理を行ってリアルタイムに音程を検出し、それをサックスの音に変換します。『SPRESENSE』が技術面でサポートすることで、複雑なキー操作の必要がなく、視覚障がい者や高齢者、子どもなど、誰もが演奏できる楽器に近付いています。

    また、誰もが楽しめる楽器を開発するために必要となったもの、それはデザインです。梶は、「ウルトラライトサックスの開発を通じて、楽器に直感的に興味を持ってもらう入り口として、デザインの重要性を実感しました。」と語ります。そこで、2024年に開発された「ハグドラム」では、最初のリサーチ段階から参加し、楽器のデザインにとどまらず、演奏のデザインにも携わったのが、ソニーグループのクリエイティブセンターです。

    ハグドラムは、叩いた音を光と振動で感じることができるため、聴覚障がいのある方も一緒に演奏を楽しめる打楽器です。手のひらで叩くと打面が光を放つとともに、胴体に取り付けられた振動スピーカーにより、演奏者の脇腹に触れる内側の部分から、音が「振動」としてダイレクトに体に伝わります。また、腕に触れる外側の部分からは、一緒に演奏している合奏者の音が振動として再現されます。

    ハグドラムを演奏する様子

    ハグドラムを演奏する様子

    打楽器という形態、そして、このデザインにたどり着くために使われたのが、障がい者や高齢者など多様なニーズをもつ当事者と共に商品・サービスを検討し、その声を反映する「インクルーシブデザイン」の手法です。全社員の6割を障がい者が占める、ソニーグループ株式会社の特例子会社であるソニー・太陽の社員をはじめとする当事者と共に、ワークショップやリサーチを重ね、多様な意見を集めた中で、より多くの人が楽しめるものとして打楽器にたどり着きました。そして、プロトタイプの作成を重ねながら、社内外のメンバーが一丸となり、形や大きさ、機能面などに対する意見を反映しながら、デザインを考案しました。

    「できたら嬉しい」「できなくても楽しい」-。ゆるミュージックの根底に流れるのは、梶が「とても好き」と語る、この考え方です。ハグドラムを使った合奏では、打面を叩くタイミングが合うと同じタイミングで光が放たれるため、とても綺麗に見えます。もし叩くタイミングが合っていなかったとしても、光が交互に放たれ、それもまたとても綺麗です。思った通りに演奏できなくても楽しむことができ、周りにも楽しさが伝わる。そのことが、ゆるミュージックでは大事にされています。

    多様な社員やパートナーを通して、世界中に広がる感動体験

    ゆるミュージックの活動は国内にとどまらず、世界にも広がりつつあります。
    「ゆる楽器」を開発するハッカソンは、インドや上海など世界各地でも実施され、新たな楽器を生み出してきました。国内外のハッカソンで最優秀賞を獲得した楽器の中には、その後改良を加えられ、現役のゆる楽器として活躍しているものもあります。

    直近では今年9月、初めてイギリスでハッカソンを実施しました。さまざまな事業領域から、ヨーロッパと日本のグループ各社の社員約70名が集結。障がいのあるプロミュージシャンや障がいのある人に向けた楽器開発の実績がある団体と協力しながら、最先端のアクセシビリティに配慮した楽器を設計・開発しました。

    イギリスで実施したハッカソンの様子

    イギリスで実施したハッカソンの様子

    梶は、ゆるミュージックはソニーの強みを生かした活動であることを強調します。
    「ソニーは世界中にグループ会社があるため、国内外問わず多様な社員やパートナーと繋がり、連携できます。また、エンタテインメントとテクノロジーの両方を持っているため、その掛け合わせでさらにゆるミュージックの活動の幅が広がっています」

    より多くの人々に音を奏でる楽しみや笑顔を届けたい

    梶は、これまでに8回開催されたハッカソンについて、「グループ各社の様々な社員と繋がれる大切な場所」と評し、「新たな技術の発掘やゆるミュージックへの活用の可能性を検討することにつながるので、今後も続けていきたいです」と意欲を示しています。 また、楽器開発においては、ハグドラムの軽量化などの改良が現在も進められています。改良を重ねることで、子どもや高齢者、障がいのある人などを含め、楽器を演奏できる人をさらに増やし、より「誰もが演奏できる楽器」に近づけていくためです。今後は、介護の現場にもゆる楽器を導入することも検討しています。

    「世界各地で小さな『できた』をつくれていることがとても嬉しいです」と梶は手ごたえを語ります。「このソニーならではの取り組みで生まれた笑顔や感動をもっと大きくしていくことが、これからすべきことだと思っています」

    梶 望(かじ のぞむ)

    株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント EdgeTechプロジェクト本部MXチーム チーフマネージャー 2017年、ソニー・ミュージックレーベルズに入社。現在はSMEJにて世界ゆるミュージック協会に参画し、MXチームのチーフマネージャーを務める。また、ソニー・ミュージックレーベルズ 第三レーベルグループ EPICレコードジャパン 第三制作部 部長として宇多田ヒカル、いきものがかりを中心としたレーベル業務を行う。

    関連リンク