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インドや能登における社会課題の現場を訪れ、解決策を考えるソニーの社員参加型プログラムとは?

    11月20日は、子どもの権利の実現や福祉の向上を目的に制定された「世界子どもの日」です。ソニーのファウンダーの一人である井深大は、戦後の日本を立て直すには科学技術の振興が重要であり、その鍵は次世代を担う子どもたちへの理科教育にあると考えていました。その思いを引き継ぎ、ソニーグループは現在も、社会貢献活動の重点領域として、「災害・人道支援」、「グローバル課題への対応」と並んで、「次世代育成支援(教育)」に注力しています。また、この三つの重点領域に関連する社会課題について、希望する社員自ら現地を視察し、解決策を模索するプログラムを2023年から始めました。その狙いや内容、今後への期待について、ソニーグループ株式会社サステナビリティ推進部CSRグループの相田愛恵に聞きました。

    目次

    社員自らが社会課題と向き合う現地視察

    社員参加型のプログラムは、ソニーの製品・コンテンツ、テクノロジー、社員の力の3つを生かして、社会課題解決に貢献できる会社の土壌を作る取り組みの一つとして始動しました。実施場所や向き合う課題は各回異なるものの、枠組みは共通しています。それは、社会課題を現地で視察し、当事者に直接話を聞き、その中から関心を持てる課題を見つけて、社員自身の業務を通じた経験・スキルを生かして解決のアイデアを考えるということ。この枠組みを設定した理由について、相田は「社会課題に関心があっても、自分の身近な問題としてとらえるのは難しい。社員に現地を訪問し、現場の話を聞く機会をつくることで、社会課題に向き合うきっかけをつくりたいと考えました」と説明します。さらに、参加した社員には自分の業務に落とし込んで解決策を考える機会まで設けることで、次のアクションにつながることも期待しているといいます。

    初回となる2023年4月は公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと連携してインドの子どもを取り巻く課題を、2024年11月の第二回は国連児童基金(UNICEF)と連携し、再びインドで子どもや妊産婦に対するメンタルヘルスに関する取り組みを現地で視察しました。そして、特定非営利活動法人クロスフィールズと連携した第三回は、2025年5月に石川県の能登半島で開催しました。

    能登で深刻化する子どもの居場所と体験機会の不足

    能登で実施したプログラムでは、2024年1月に発生した能登半島地震の現場にも訪れたものの、向き合った社会課題は「人口減少地域における子どもの豊かな学びの機会の不足」でした。これは、教育格差の解消を目指してソニーが行っている「感動体験プログラム」などを通じて連携しており、震災直後から能登で支援を行う特定非営利活動法人Chance For Allから、子どもの居場所不足という従来から能登が直面していた課題が、発災後さらに深刻化していると聞いたことがきっかけです。

    社員にも現場を見て「子どもたちの豊かな学びを創出するアイデア」を考えてほしいとの思いで相田が企画を進めた能登のプログラムには、ゲーム&ネットワークサービスや音楽などのエンタテインメント事業から、半導体やエンタテインメント・テクノロジー&サービス事業まで、ソニーグループ内の計8社から20代〜50代の13名の社員が参加しました。参加者のひとりであるソニー株式会社の稲葉拓也は、プログラムへの期待を次のように語ります。

    「自然豊かな地方における教育格差に実感がわかない一方、多くの人が課題と捉え、取り組んでいる事実もあります。現場を訪れ、五感で捉えることで、自身の理解と事実のギャップを解消し、社会課題の『自分ごと』化という、新たな視点も獲得したいと考えました」

    能登では、被災後にChance For Allが提供している移動式の遊び場「プレイカー」を視察したほか、現地で課題解決に取り組む方々に話を聞きました。その一人が、能登の街づくりと振興に取り組んでいる、石川県七尾市のまちづくり会社「御祓川(みそぎがわ)」代表取締役の森山奈美氏です。震災以前から人口減少などの課題を抱えていた能登にとって、今は地域課題を解決するチャンスととらえている森山氏に対して、参加した社員からは「地震を前向きに捉え直し、能登から未来をつくるという強い想いに心打たれた」といった声が寄せられました。森山氏は、「今回のプログラムを通じて能登と関わるという選択肢がソニー社員の皆さんに生まれたのなら、それはこのプログラムの大きな成果ではないか」と期待感を語ります。

    Chance For Allの移動式遊び場「プレイカー」

    震災の跡地を社員に紹介する御祓川代表取締役の森山奈美氏

    ソニー社員の多様性

    能登から戻った約1か月後、現地で得られた学びをもとに、社員一人ひとりが自分の専門性を生かして立案した「子どもたちの豊かな学びを創出するアイデア」の発表会がソニー本社で開催されました。通信事業を展開するソニーネットワークコミュニケーションズの社員からは、通信技術を生かして感情と位置情報を紐づけて地域の魅力を発見できる「地図型感情記録アプリ」、ソニーセミコンダクタソリューションズの社員からは、光をとらえるデバイスの専門家として「光の性質を楽しく学ぶワークショップ」により子ども達の好奇心を育むアイデアが発表されました。その他の参加社員からも自分の業務や所属会社の強みを生かした提案が行われました。

    震災を受けて能登に赴き、現在も現地で子どもたちの支援を続けるChance For All 代表理事である中山勇魚氏も今回のプログラムに同行し、発表会にも参加しました。中山氏はソニー社員の提案について、「理想論ではなく、本当にできそうなアイデアが多かった」と評価し、「企業で働く人の経験や仕事を生かしコラボレーションするという新たな可能性を感じた」と語ります。

    相田も、「同じ旅程で同じ経験をしたにもかかわらず、関心を持つ課題や、考えるアクションプランが多種多様」だと、ソニー社員の多様性と、これからの活動に期待を寄せます。

    渡航だけで終わらせない、社員の底力

    アクションプランの検討と発表をもってプログラムは終了となりますが、その後も自主的に活動を続ける社員がいます。

    第一回でインドに渡航した社員は、社内のボトムアップ提案活動の一つである「チャレさぽ」にインドの社会課題の解決を目指すアイデアを応募し、入賞。それを機に得た活動資金を活用して再度インドに渡航し、子どもの好奇心を育むことを目的としたSTEAM領域の教育プログラム「CurioStep with Sony」とも連携して、ソニーのIoTブロック「MESH™」を使って身の回りの課題解決のアイデアを考える子ども向けのワークショップを実施しました。そして、2025年には、日本でもインドで行ったものと同じワークショップを開催するなど、プログラムをきっかけに社会課題と向き合い続けています。

    第三回の能登でのプログラムに参加した社員からも「ビジネスが新たな社会課題を生み出していないだろうかという新たな視点を得た」「社内で情報共有をして、自分の抱いた疑問を投げかけている」といった声が上がっています。プログラムに参加した社員が起点となって、社会課題への関心や理解が社内に波及していく──そんな変化もこのプログラムがもたらした成果の一つです。

    ソニーのIoTブロック「MESH」を使ったワークショップを三井住友フィナンシャルグループが運営する「アトリエ・バンライ -ITABASHI-」(東京都・板橋区)でも開催

    プログラムの今後について、相田は「過去3回とも手ごたえがあったので、継続的に実施していきたい」と意気込みます。また、さまざまなサステナビリティの課題に対して、ソニーグループ全体の目指す方向を明確するためにソニーが掲げる「感動に満ちた世界を創り、次世代へつなぐ」というSony's Sustainability Visionの実現には、社会課題に直面する人も含め、誰もが安心して暮らすことができる社会づくりが欠かせません。

    ソニーは、多様な社員の社会課題に対する意識を高め、その意欲と可能性を引き出すことで、社会課題の解決に向けた取り組みを広げていきます。

    相田 愛恵(あいだ まなえ)

    ソニーグループ株式会社 サステナビリティ推進部CSRグループ 2023年に経験者採用で入社し、社員向け講演会やニュースの発信など、サステナビリティに関連する社内外のコミュニケーションに携わる。2024年より外部パートナーとの連携を通じた社会貢献活動を担当。

    相田さんの顔写真