Cutting Edge

2026年3月24日

今までにない感動体験を提供できる〜エンタテインメント向け群ロボットシステム「groovots(グルーボッツ)」が示した成果と可能性とは?

エンタテインメントの進化をさらなる高みへ——ソニーグループでは、クリエイターの新たな発想や表現を実現する最先端テクノロジーの研究開発、実用化を推進しています。その成果の1つが、エンタテインメント向け群ロボットシステム「groovots(グルーボッツ)」です。ソニーが培ってきたライブソリューションとロボティクスにおける知見を元に開発されたこのシステムは、「アイドルマスター」シリーズにおいて初となる日本武道館でのアイドル単独公演の演出にも導入され、観客に驚きと感動を、そしてクリエイターには新たなインスピレーションを与えることに成功しました。本記事では、開発に携わるエンジニア・デザイナーへのインタビューを元に「groovots」が示したポテンシャルを紹介します。

「思い描くとおりにステージ演出を制作したい」というニーズにこたえる

「groovots」は、複数ロボットが位置精度を保ち、会場の音響信号と高精度に同期させる技術的な課題をクリアしたうえに、クリエイターが普段から使用する映像やCG制作、プログラミングのアプリケーションで導入できる画期的なシステムです。LEDディスプレイを備えた大小のロボットを組み合わせ、空間を活かした新たな表現を実現します。リズム・動きを意味するGrooveとRobotを組み合わせた名称=「groovots」が示すとおり、音楽のライブやフェスはもちろん、演劇やダンス、テーマパークやショッピングモールなど空間を活かして人々を楽しませるエンタテインメントでの活用を目指す技術です。

2025年に開催されたソニーグループ横断の技術交換会「Sony Technology Exchange Fair(STEF)2025」では、メインパフォーマーに見立てた大型ロボットと、バックダンサー的な役割を果たす小型ロボットによるライブステージのデモンストレーションを披露。来場した多くの技術者やクリエイターから大きな関心が寄せられ、中には具体的なイベント日程を提示されてのご相談をいただくなど、「現場にとって今、一番欲しい技術」という評価をいただきました。まさに「演出家が思い描くステージ演出をしっかりと表現できる技術を提供する」という開発チームの強い想いが、エンタテインメントの発展を支える多くの人々の心を掴んだ瞬間でした。

新たな感動体験が、「まるで魔法」とネット上でも話題に

観客の想像を超える感動体験は、2026年1月に日本武道館で実現しました。株式会社バンダイナムコエンターテインメント(以下、「バンダイナムコエンターテインメント」)のゲーム「アイドルマスター」シリーズの中でも屈指の歌姫として高い人気を誇る如月千早(きさらぎ ちはや)の単独公演「OathONE」にて、演出の一部に「groovots」が導入され、来場したファンたちを魅了しました。

ライブステージにおいて、12台の小型ロボットがステージ上から花道まで自在に動き回り、さまざまな動きのある映像演出でステージを大いに盛り上げました。さらに演目の切り替わりでは、幅約2m×高さ2mのLEDパネルを搭載した大型ロボットに如月千早が登場し、花道を歩いて捌けていくサプライズ演出を実現。歩く姿が非常にスムーズで、ファンに手を振る動きも自然で違和感がなく、まるで現実世界に存在しているかのような圧巻のシーンが展開されると、会場中から驚きの歓声が上がりました。まさにフィジカルとバーチャルをシームレスにつなぐ新たな感動体験。ネット上では「まるで魔法のようだ」と投稿され、ライブ後も話題となりました。これは、ソニーが推進するライブ共創の実証実験において大きな成果であったと言えます。

演目転換でgroovotsに如月千早が登場し花道を移動。実在感あふれるパフォーマンスで会場を魅了した。

武道館ライブへの導入は、テクニカルディレクションを担当したソニーPCLがバンダイナムコエンターテインメントとやりとりを重ねる中で、「groovots」を紹介し、バンダイナムコエンターテインメントの皆様にデモンストレーションをご覧いただいたことがきっかけです。「アイドルマスター」シリーズという多くのファンを抱えるIP(知的財産)とのコラボレーションが、演出家の思い描くストーリーに載せて観客に体験を提供できることの重要性を改めて認識させてくれました。

さらなる進化に向けて

バンダイナムコエンターテインメントの皆様や演出家から、「武道館ライブの演出を組み立てるうえで、『groovots』を主軸に考えたと言っても過言ではなく、全体の3割から5割程度を占めるほど重要な位置づけでした」という評価をいただきました。しかし、これがゴールというわけではありません。システムを今後さらに成熟させるための課題もしっかりと見極めました。

1つめは、開発スピードの向上です。クリエイターから具体的なビジョンを伝えられた際に、できるだけ短期間で実現できることが理想です。設計に時間をかけずトライ&エラーをスピーディーに回して彼らのアイデアを速やかに実現することで、「groovots」が活用される機会が増え、それに付随して新たな知見を得ることができます。現状は開発に数か月間を要していますが、今後はこれの短縮に注力していきます。

2つめは、クリエイターとのさらなる共創です。エンジニア側が技術の可能性を具体的に提示し、クリエイター側がそれを利用したアイデアを創造する——この相互の想像力を持ったやり取りこそ、新たな感動体験を生むために不可欠です。そして3つめが、誰でも簡単に動きや映像を作ることができる高い汎用性の実現です。これらの課題をクリアすることで、「groovots」は、ライブステージに限らず幅広いエンタテインメント分野で活用されるシステムに成長できると考えています。

エンタテインメントの未来を共に創る

「groovots」の開発では、あえて明確なゴールは設けていません。その理由は、エンタテインメントの形態によって見えてくるニーズや課題が異なるからです。

たとえば、ライブであれば一発本番のため、ロボットの信頼性はもちろん、トラブルに的確に対処しステージを止めない対応力が求められます。限られた時間で準備・撤収しなければならないので、作業の効率化と安全性の確保も必須です。これらはエンジニア・メカニック視点の課題であると同時に、映像・音響・舞台を有機的に連携させる運用視点でも大切な要素です。運用を的確に回せるパートナーの存在は、「groovots」で新たな表現を実現するためのキーになると言えるでしょう。

またクリエイティブ視点では、ロボットのサイズや形状に関わらず同じソフトウェアで開発・運用できることが重要です。「groovots」は、もともと汎用的な技術との連携を重視して開発された特徴がありますが、今後もこの汎用性をさらにブラッシュアップしていく予定です。

「groovots」は、複数台のロボットがステージ上を自在に動くという、これまでにない、新たな表現を創り出すことに成功しました。しかし、ロボティクス技術のエンタテインメント導入という点では、まだようやく登山口に立ったところ。さらなる高みを目指すには、「こんなことがやりたい」というビジョンやアイデアを持つクリエイターからの声が必要です。彼らのニーズを吸収し、開発チームだけでは想像できない活用法を見出すことで「groovots」の可能性が広がり、これまでにない価値を創出できると確信しています。

フィジカルとバーチャルが境界なく重なり合う未来が迫るなかで、人々の想像を超える新しい感動を届けるには、クリエイティビティとテクノロジーの融合が不可欠です。武道館ライブでの成果が示すとおり、「groovots」はこれを実現した技術の1つと言えます。

次にあなたが創るライブステージで、観客として参加するイベントで、これまで経験したことのない感動に出会えるよう、私たちは「groovots」をさらに進化させていきます。

如月千早武道館単独公演×「groovots」 Behind the Scenes - YouTube

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