Cutting Edge

2024年12月11日

We are here for creators. — テクノロジーを軸に、世界のクリエイターとつながっていく (1/2)

2024年5月の経営方針説明会にて、経営の方向性として示された「クリエイションシフト」。ゲームや音楽、映画、エレクトロニクス、半導体など幅広い領域で事業を展開するソニーグループにおいて、よりクリエイションに軸を置くことが打ち出されました。そうしたなかで、ソニーの研究開発(R&D)はどこに、どのように向かおうとしているのか。その方向性について、ソニーグループCTO 北野宏明に話を聞きました。

クリエイターのためにテクノロジーをつくり、
クリエイターとともに未来を創る

──CTO着任から2年が経ちますが、CTOとしてどのようなことに取り組んできたのでしょうか。

ソニーグループCTOとして重要な役割の一つが、コーポレートR&D(研究開発)の方向性を示し、どのように実行していくかを決めていくことです。

私は、コーポレートR&Dの役割とは、技術を生み出すことだけでなく、イノベーションの在り方を提案することだと考えています。Xerox社のPalo Alto Research Center(ゼロックスPARC)でディレクターを務めたジョン・シーリー・ブラウン氏が著書『Seeing Differently』(Harvard Business Review School Pres, 1997)ならびにハーバードビジネスレビューに掲載された論文で次のように述べています。

“The most important invention that will come out of the corporate research lab in the future will be the corporation itself. As companies try to keep pace with rapid changes in technology and cope with increasingly unstable business environments, the research department has to do more than simply innovate new products. It must design the new technological and organizational architectures that make possible a continuously innovating company. Put another way, corporate research must reinvent innovation.”
引用元:John Seely Brown, “Research that Reinvents the Corporation”, Seeing Differently, Harvard Business Review Press, 1997
参考:https://hbr.org/2002/08/research-that-reinvents-the-corporation

このようなコーポレートR&Dを実現していくためには、さまざまな研究開発をどのように実行するか定めていく必要があります。そこでまず、グループ内で行われている研究開発活動を改めてしっかり把握することにしました。CTO就任時、ソニーグループ株式会社で研究開発にかかわる全メンバーに「皆さんの活動を理解したいので、詳細資料をぜひ送ってほしい」と伝えました。集まってきた膨大な量の資料すべてに目を通し、新しい技術開発領域については研究者やマネージャーと直接話す機会を持つことで、その研究内容をより深く理解することもできました。

実に多様な活動が行われていることを再確認することができ、改めてソニーの研究開発の幅広さを目の当たりにしました。同時に、幅広いからこそ、それらがどういう存在でどこへ向かおうとしているのかを言語化し、旗色を鮮明にする必要があることも強く感じました。

そこで、ソニーグループのPurpose(存在意義)である「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」を支えるものとして、研究開発の方向性を「We are here for creators」と定めました。クリエイターのためにテクノロジーをつくり、クリエイターとともに未来を創る、という思いを込めています。これが、ソニーグループのテクノロジーの向かう先であり、我々のTrue Northなのです。

──具体的には、どのようにコーポレートR&Dに取り組んだのでしょうか。

私のCTO就任前に、ソニーグループとしての大きな変化がありました。それはソニーグループ株式会社(以下 SGC)の発足です。この変化は、単に社名変更ということではなく、企業としての基本構造(コーポレート・アーキテクチャ)を大きく変えるもので、コーポレートR&Dをどのように実行していくかにも大きな影響を与えました。

従来のソニーでは、グループ本社であるソニー株式会社(現在のSGC)に多くの機能があり、その下に事業会社が存在するという形態でした。これが、SGCがグループ本社機能に特化し、6セグメントの各々の事業会社が等間隔で自立して事業を推進するという形に変わりました。

これは、事業の主体は、各々の事業会社が行い、SGCは、グループ運営に寄与する機能に集中することを意味します。R&Dに関しても、この考えに基づき、特定の事業領域と親和性の高い技術については、関連する研究開発組織がグループ本社から事業会社に合流。開発スピードの向上や事業への貢献につながりやすい体制に変更しました。

その結果、現在SGCとその直下では最先端かつ幅広い領域でインパクトをもたらしうるような研究開発テーマのプロジェクトが行われています。例えば、SGC直下のAIに特化した研究組織であるSony Research / Sony AIは、主に北米、欧州、日本、インドに研究拠点を設け、ソニーグループの幅広い領域に大きな影響を与えるようなAI関連研究とその迅速な展開をミッションとしています。

テクノロジーを起点にコミュニティを形成していく

──エンジニアやリサーチャー同士の横断的なコミュニケーションにはどのように取り組んでいますか。

ソニーグループ内には長年の歴史を経て組織を越えたさまざまなリサーチャーやエンジニアのコミュニティが存在しています。

たとえば、ソニーグループ内で1973年から毎年開催されている技術交換会「STEF(Sony Technology Exchange Fair)」。そこでは、エンジニアを筆頭に、さまざまな立場の社員が集まり、グループ内の技術を共有し合い、議論する場になっています。他にも、ソニーグループの技術戦略の策定及び推進と人材の成長支援を行う「Corporate Distinguished Engineer」を中心としたコミュニティや、技術領域ごとにグループを横断して最新技術やノウハウを共有し合う「技術戦略コミッティ」なども行われています。

「クリエイションシフト」に取り組んでいくうえでも、テクノロジーとエンタテインメントをつなぐグループ全体でのコミュニティ形成は重要です。そこで、2023年にはソニーグループのテクノロジーを横断的に駆使した新たなエンタテイメント創造の取り組みを対外的に紹介する「Sony Creators Conference」を開催しました。また、エンタテインメント事業に携わるソニーグループ社員とクリエイターを対象に、制作現場ですぐに活用できる技術を紹介し、意見を交わす技術交流の場「Sony Entertainment Technology Showcase(SETS)」を23年にはロサンゼルスで、24年にはロンドンで開催しました。これらの活動を通じて、テクノロジーとクリエイションが交差するコミュニティが形成され、多様なつながりが生まれています。

また、ある事業会社のテクノロジーを他の事業会社へ提供するというタイプの交流も今後ますます増えてくると考えています。

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