Cutting Edge

2024年12月11日

We are here for creators. — テクノロジーを軸に、世界のクリエイターとつながっていく (2/2)

2024年5月の経営方針説明会にて、経営の方向性として示された「クリエイションシフト」。ゲームや音楽、映画、エレクトロニクス、半導体など幅広い領域で事業を展開するソニーグループにおいて、よりクリエイションに軸を置くことが打ち出されました。そうしたなかで、ソニーの研究開発(R&D)はどこに、どのように向かおうとしているのか。テクノロジーの役割やAIに対する考えについて、ソニーグループCTO 北野宏明に話を聞きました。

クリエイターに寄り添い、テクノロジーの進化に貢献する

──そもそもソニーにとっての「テクノロジー」とはどういったものなのでしょうか。

どういった業種であっても、テクノロジーというのはその産業を支える基盤であると思います。テクノロジーを使ってさまざまな商品やサービスを提供する場合もあれば、より広範な社会基盤の構築という側面もあります。テクノロジー無しには現代の企業の運営は成り立たないと言っても過言ではありません。

それはソニーにおいても同様です。テレビやカメラ、オーディオ機器、半導体などのプロダクトはわかりやすいかと思いますが、映画や音楽、ゲームも、制作や配信などテクノロジーによって支えられています。テクノロジーはコンテンツの世界をつくり上げるための重要な手段であるとともに、ユーザー体験そのものに直接作用します。

たとえば、映画『グランツーリスモ』で走行するレーシングカーの車内を撮影した映像のように、『VENICE 2』と『VENICE エクステンションシステム2』によって撮影の自由度が高まり、臨場感ある表現が可能になりました。また、360 Virtual Mixing Environment(360VME)では、リモート環境にいながら立体音響スタジオの音場を再現できます。 ゲームは、そもそもゲームコンソールというテクノロジーの集大成のようなプラットフォーム 上でその世界が実現されています。さらに、GTソフィー(グランツーリスモ・ソフィーTM)では、最新のAI技術を投入して従来よりもはるかにリアルなレースの再現に成功しています。AIテクノロジーは、クリエイターの表現力を拡大し、ユーザーのゲーム体験をより広げるようになっていくでしょう。

──クリエイターのためのテクノロジーはどのように提供されるのでしょうか。

我々自身のテクノロジーを生み出す力を高めていくことはもちろん重要ですが、一社だけで実現できることには限界があります。スタートアップを含む国内外の企業や大学、研究組織とも積極的に連携を強めていきたいですね。

クリエイターの方々には、各社が開発したテクノロジーを自由に選んで使っていただくことが重要です。そのために、我々はクリエイターの方々に選ばれるようなテクノロジーを開発し提供する必要があります。それがソニーグループ独自のものである場合や、社外との連携による場合など多様なアプローチがあると思います。この際には、We are here for creatorsの方向性に基づいて色々な判断をすることになります。

──北野さんは、特にAI領域を中心に国際的なコミュニティに参加されていますが、どのような考えをもって関わられているのでしょうか。

AIは、産業や社会、そして世の中全体に影響を与える存在であることは間違いありません。一方で、AI開発における世界基準のフレームワークはまだ整っているとはいえません。ですから、私もさまざまな国際的なコミュニティに参加し、その構築に関わっています。

AIについて議論する際、効率性や生産性の話が取り上げられがちです。しかし、ソニーはクリエイターとともに歩む会社として、クリエイターの権利を守るべく、その声を理解し伝えられる存在だと考えています。2023年以降、さまざまな国際会議で、クリエイターの権利保護とAI開発とのバランスを取るという議論を続けてきました。これらの会議において、クリエイターの声を伝えられるメンバーがあまりいないのが実態です。ソニーが、クリエイターとともに歩むという立場から主張を続けることは、クリエイションとAIの健全な発展につながりますし、クリエイターコミュニティーと深いかかわりをもつソニーグループの役割でもあります。

私個人は、AIの研究開発が進むことは社会にとって大きな価値をもたらすはずと考えています。その発展を阻害することも好ましくありません。一方で、著作権の問題、学習データにおける文化・地域・言語の偏りなど、解決すべき問題があることも忘れてはなりません。クリエイターの権利を尊重しつつ、研究開発を前に進めていけるようバランスをとっていくことこそ、私が社内外のコミュニティで担うべき重要な役割だと認識しています。

私たちはクリエイターに寄り添いながら、テクノロジーの進化を目指していけるよう、さまざまなコミュニティに働きかけていきます。

世界中のクリエイターとつながり、
新たなエンタテインメントを共創する

──ソニーのエンジニアやリサーチャーにとって重要な視点やマインドセットは何だと思いますか。

テクノロジーは常に進化していますが、AIの加速度的な展開は、これまでに類を見ないものです。この変化を理解し、その進化を支えるプレーヤーになっていくことが必要です。その意味で、まず、外部のコミュニティに積極的に参加してほしいですね。私自身も多くの外部コミュニティにかかわっていますが、こうした活動を通じて、新たなコラボレーションがはじまることがあります。特にAI関連では、国際的な主要プレーヤーが限られるので、彼らとの議論から戦略的な意思決定に重要な情報を得ることや、プロジェクトへの参加が決まることなどもあります。

外部のコミュニティとの関係ですが、エンジニア自身がそのコミュニティに価値を提供し、キーパーソンになってほしいと思います。そうすることで、より多くの情報や機会を得ることにつながり、コミュニティと自分自身、双方を高め合うことができます。加えて、コミュニティにおいてエンジニアが存在価値を高めるためには、どれだけコミュニティの発展に貢献できるかが重要です。ソニーグループの将来だけではなく、各々の技術分野の将来を担う人になっていただきたいと思います。

私たちは製品やサービス、ゲーム、音楽、映画などを通じて、世界中の人々とつながりたいと考えていますが、先ほども述べたように自分たちだけで実現できるものではありません。世界中のクリエイターとつながり、新たなエンタテインメントを共創することで、その先にいる、より多くの人々とつながることができるのです。そのためにも、視野を地球全体に広げ、多様なコミュニティに関わっていってほしいと思います。

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