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2026年2月26日

『スパイダーマン:スパイダーバース』から『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』まで
ソニー・ピクチャーズ アニメーション×ソニー・ピクチャーズ イメージワークスの進化するコラボレーション

Jacky Priddle、Josh Beveridge、Michelle Wongによるインフィニティ・フェスティバルのパネル(司会・Deadline/2025年10月10日)

2025年10月9日・10日にハリウッドで開催されたインフィニティ・フェスティバルにて、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ(邦題)』のアニメーションディレクターであるソニー・ピクチャーズ イメージワークスのJosh Beveridgeが本作のプロデューサーたちと共にステージに登壇し、ソニーが試みたミュージカルアニメーション制作の挑戦について語りました。

2025年6月に公開された本作は、Netflixオリジナル長編アニメ映画として史上最多の視聴数を記録し、さらに限定公開されたシングアロング上映では全米興行収入ランキングで1位を獲得しました。この成功は、社会現象を巻き起こすとともに、ソニー・ピクチャーズ アニメーションとソニー・ピクチャーズ イメージワークスにとっても大きな転換点となりました。また、本作は数多くの賞にノミネートされ、複数の賞を受賞しています。

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本作品はミュージカルの緻密な構成、アニメーションならではのダイナミックな表現、そして韓国ドラマの繊細な感情描写を融合させています。そのため、振り付けから台詞に至るまで、あらゆる要素が完ぺきに調和することが求められ、その実現にはこれまでにない高度な制作技術が必要とされました。

また、ソニー・ピクチャーズ アニメーションとソニー・ピクチャーズ イメージワークスにとって、この映画は単なるクリエイティブな挑戦にとどまらず、アニメーション表現を革新し続けてきた両スタジオが、20年にわたり培ってきた技術的なコラボレーションの集大成でもありました。

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「パフォーマンス、カメラワーク、タイミングなど、あらゆる要素が精密機器の歯車のように緻密に連動していなければなりませんでした」

このBeveridgeの言葉は、制作現場のクリエイティブな課題を的確に捉えています。

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』がどのような挑戦を乗り越えて完成に至ったのか──制作を支えた技術、ワークフロー、そしてスタジオ間の密接な連携。その詳細な舞台裏を、ソニー・ピクチャーズ アニメーションとソニー・ピクチャーズ イメージワークスの対話を通じてお届けします。

共に描いてきた未来の軌跡

ソニー・ピクチャーズ イメージワークスが1992年に設立された当時、同社は『ザ・シークレット・サービス』や後に『コンタクト』 を手がけるVFX(視覚効果)のスタジオでした。そして、その10年後、ソニー・ピクチャーズ アニメーションは「完全な長編アニメーションを制作する」という使命をもって設立されました。当初から両スタジオはクライアントとベンダーという関係ではなく、より対等なパートナーとして協力をしてきました。

ソニー・ピクチャーズ アニメーションの技術・制作部門の責任者であるYiotis Katsambasは、「プリプロダクションの段階では、映画を視覚的にどのように見せたいかを探ります。ソニー・ピクチャーズ アニメーションとソニー・ピクチャーズ イメージワークスの関係が特別なのは、ソニー・ピクチャーズ イメージワークスがその高い技術力で応えてくれるおかげで、我々が実現したいビジュアルスタイルを両スタジオのやり取りを通じて深めていくことができる点です。このフィードバックのループこそが我々のパートナーシップの本質です 」と語ります。

両スタジオは数十年にわたり、互いの成長を力にして発展を続けてきました。ソニー・ピクチャーズ アニメーションはストーリーとキャラクターの世界観を創り、ソニー・ピクチャーズ イメージワークスはそれらのアイデアをジオメトリ、アニメーション、レンダリングといった形で具現化し、ソニー・ピクチャーズ アニメーションの描く世界を実際の映像へと結びつけています。

『モンスター・ホテル』から『スパイダーマン: スパイダーバース』シリーズに至るまで、両スタジオのコラボレーションからは、新しいツールや表現が生み出されています。

ソニー・ピクチャーズ イメージワークスのエンジニアは、Katana(ライティングとルック開発ツール)をはじめ、OpenColorIOやOpen Shading Languageなどのオープンソースフレームワークを開発し、これは今や世界中の制作パイプラインを支える基盤技術となっています。こうしたイノベーションの精神は、CGやVFXの大きな転換期を迎える中で、両スタジオの表現力を支えてきました。

たとえば、『ミッチェル家とマシンの反乱』では、主人公ケイティの視点を反映した「動画編集風エフェクト」「ステッカー」「手書き文字」など、現代的なビジュアルカルチャーを取り込んだ先駆的手法であるケイティビジョンや2Dミックスメディアによる映像表現が登場し、『スパイダーマン:スパイダーバース』では、ラインアートレンダリングといった技術的なブレイクスルーがアニメーション制作を刷新し、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』への道を切り開きました。

ソニー・ピクチャーズ イメージワークス(ロサンゼルス)のアワード展示スペース

また、本作品ではリアルタイム・ビジュアライゼーション技術の導入により、コンセプト段階のアイデアをカメラワークに落とし込むまでの期間が、従来の数週間からわずか数日へと大幅に短縮されました。しかし、ソニー・ピクチャーズ イメージワークスの最高技術責任者であるMike Fordはこのように言及します。

「技術はあくまでもクリエイターの表現を支えるものであり、決してその逆ではありません。」

多くのスタジオでは、アート部門からエンジニアリング部門へ、そしてさらに次の工程へと、まるでリレーのバトンのように作業が渡されていきます。しかし、ソニー・ピクチャーズ アニメーションとソニー・ピクチャーズ イメージワークスの関係はそれとは異なります。
Katsambasが「双方のアイデア、デザイン、3Dモデル、メモを絶えず交換しています」と語り、さらにFordが「ソニー・ピクチャーズ イメージワークスでのコラボレーションは”生命体”である」と表現したように、両スタジオは常に互いにフィードバックを送り合いながら制作を進めていきます。

ソニー・ピクチャーズ イメージワークスの最高技術責任者、Mike Ford

また、Katsambasは、両スタジオのフィードバックループの高速化につながった、ショット管理・レビューシステムの再構築についても触れました。この再構築により、素材が制作から編集へ数分で共有可能となり、ディレクターが制作現場から編集室へ移動するわずかな時間の間に素材は映画の形に編集されます。編集室に到着する頃には、すでに最新カットが反映された映像を確認できる──そんなスピード感が実現されたのです。

美的表現を生み出すエンジンの構築

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』はスタイライズ(様式化)が技術によって精密に設計可能であることを示した作品です。本作では、アニメ風のコミカルなデフォルメと韓国ドラマのようなリアリズム、そして実写ダンスの身体表現力を融合させる必要がありました。

Beveridgeはこの複雑なパズルをくみ上げるような取り組みについて次のように語っています。「非常に写実的な表現と、二次元的なアニメの表現をぶつかり合わせることなく共存させることが最大の挑戦でした。」

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この課題を乗り越えるために、Beveridgeとソニー・ピクチャーズ イメージワークスのチームは、アニメーションをモジュール化する仕組み、「Chibi-face」を構築しました。

Chibiシステムは顔の特徴をパーツとして交換できる、ダイナミックなフェイシャル・リグ・ライブラリです。フレーム毎にブレンドシェイプとメッシュを置き換えることで、アニメーターが意図する表情や顔の動きを表現でき、3D制作パイプラインの中で2Dの表現を再現可能にします。

ソニー・ピクチャーズ イメージワークスは『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ(邦題)』のために「Chibi-face」という独自プロセスを構築。これにより、マンガ特有の表情を3Dアニメキャラクターに重ね合わせユニークなビジュアルを実現している。  Netflix

また、Beveridgeは「Motion-Blur Spheres」と呼ばれる、きわめて柔らかな陰影などを表現するソフトライティングのためのシステムについても語りました。
このシステムにより、アニメーターはぼかしの有無を自在にコントロールでき、極めて柔らかいライティングの中でもキャラクターは鮮明なまま表現できます。さらに、アニメ的なシャープさを損なうことなく、映画らしい奥行きを生み出すことも可能となりました。

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の映像制作において特筆すべきもうひとつの点は、ダンスのシーンでフルモーションキャプチャーを使わず、あえて手作業でアニメーション制作を行ったことです。

Beveridgeはこのこだわりについて、「ダンスのタイミングを寸分の狂いもなくアニメーションに落とし込むことは非常に難しいものです。モーションキャプチャーは確かにその助けになりますが、我々がスクリーンで伝えたかったものは、最先端の技術によるリアルな映像表現よりも、アーティストの表現そのものを忠実に再現することでした」と語りました。

これは、ソニー・ピクチャーズ アニメーションとソニー・ピクチャーズ イメージワークスが映像表現においていかに挑戦を続け、同時に両スタジオが映像制作において何を大切にしているのかを示す象徴的な取り組みでもあります。

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リアルタイム・ビジュアライゼーションの重要性

制作チームが本作で取り組んだ大きな挑戦は、ほかにもあります。それはUnreal Engineを用いてリアルタイムにライティングの確認ができるツールセットを開発し、レイアウト部門を再構築したことです。このツールセットの導入によって、制作効率が飛躍的に向上しました。

Katsambasはこのツールセットの開発について次のように語ります。
「従来の制作ツールでは処理に時間がかかりすぎるため、リアルタイムでライティングを決定することは不可能でした。しかし、Unreal Engineを使用することで、ディレクターは最終的なショットに近いものを即座に確認でき、より早い段階でクリエイティブな決定を下せるようになったのです。」

ソニー・ピクチャーズ イメージワークスSVP、制作責任者、Mandy Tankenson

さらに、ソニー・ピクチャーズ イメージワークスの制作責任者であるSVPのMandy Tankensonはこう説明します。

「初期の段階のレイアウト確認をリアルタイムに移行することは、従来のリレー方式のように直線的に進む制作プロセスを、アジャイルで反復的なワークフローに転換することを意味します。これは映像制作の文化を大きく変える、非常に高いリスクを伴う取り組みでしたが、その挑戦は確実に実を結びました。」

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』、アニメーションディレクター、Josh Beveridge

ソニー・ピクチャーズ イメージワークスのビジュアライゼーション部門責任者であるAdam Holmesは、このツールセットを使用した”サンドボックス(Sandbox)”構想について説明しました。

ここでいうSandboxとは、映像制作の初期段階であるプリプロダクションおよび制作の検討を担うソニー・ピクチャーズ アニメーションのビジュアライゼーションチームのことを指します。サウンドボックスでは、ソニー・ピクチャーズ イメージワークスのフルプロダクションと同じリアルタイムのツールやワークフローを利用でき、これは映画のデザインが形作られていく中で、複雑なストーリーを創り上げていくのに役立ちます。

たとえば、キャラクターや環境、映画的な目標がまだ形成されていない段階からサンドボックスが3Dビジュアライゼーションに取り組むことで、映画制作者は制作開始前に作品の重要な瞬間を思い描くことが可能になります。また、世界観の構築、スケールの検証、レンズテスト、ダイナミックなアクションプランニングなどをすべてプリプロダクションで行うことができます。

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『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の制作において、サンドボックスは、Unreal Engineを使用してソニー・ピクチャーズ アニメーションおよびソニー・ピクチャーズ イメージワークスと協力しながら、韓国・ソウルのライティングセットアップを調査し、仮想の浴場での戦闘シーンの振り付け、そしてチャムシルオリンピック競技場を数千人のファンで埋め尽くすビジュアライゼーションなどに取り組みました。

ビジュアライゼーションはもはや「あれば便利」なものではなく、映像制作の基盤であり、ストーリーの決定から技術的な計画に至るまで、あらゆるものに影響を与えます。適切なストーリー・スカウティング、スケールとレンズの関係のテスト、アニメシークエンスを落とし込む前のアクションといった下準備によってのみ、あぶりだされる重要な発見があり、早期に反復することで、手戻りを減らし、最終的な制作コストの削減にもつながります。

Holmesはまた、リアルタイムのワークフローへの移行は単なる技術的なアップグレードにとどまらず、「ストーリーの伝え方そのものを変えた」と指摘しました 。リアルタイム・ソフトウェアを用いることで、制作のごく初期段階からインタラクティブな意思決定が可能になり、アーティストは自身のクリエイティブな流れを止めることなく、指示に即応できるようになりました。かつてのオフライン作業のように、想像に頼って判断しなければならない状況が大幅に減ったのです。

人を中心とした映画制作

テクノロジーが真に力を発揮するのは、人々がお互いを信頼し、そしてそのテクノロジー自体を信頼しているときです。
Tankensonはソニー・ピクチャーズ イメージワークスにはその関係性がしっかりと根付いていると語ります。

「私が最も誇りに思っているのは、個々のプロジェクトではありません。これほど素晴らしい人材が長く働き続けてくれていることです。人々はここでキャリアを築きたいと思っているのです。」

彼女はこの安定性を、ソニー・ピクチャーズ イメージワークスのメンターシップおよびリーダーシップ・プログラムの存在によるものだと考えており、次のように続けます。

「私たちはメンタリングプロセスを体系化し、プロデューサーが段階的に成長していけるよう支援しています。また、リーダーシップ・プログラムでは”マネジメント”と”リーダーシップ”の違いに焦点を当てています。目指しているのは、十分にサポートされていると実感でき、たとえ大きな困難に直面しても素早く立ち直れるチームです。」

グループ連携で拓くエンタテインメントの未来

ソニー・ピクチャーズ アニメーションとソニー・ピクチャーズ イメージワークスのパートナーシップは、二社で完結するものではありません。ソニーグループ全体がつながる大きなエコシステムの一部として存在しており、そこから多様なコラボレーションが生まれています。

その一例が、スタジオ全体でモニターとして活用されているソニーのブラビアです。
ブラビアは色彩精度が非常に高く、照明や色彩のチェックに理想的であるだけでなく、ブラビアのチームがソニー・ピクチャーズ アニメーションおよびソニー・ピクチャーズ イメージワークスの制作環境に合わせたチューニングを行うなど、密接な連携が図られています。

さらに、ジオメトリ、マテリアル、メタデータをひとつのパッケージとして扱い、アセットを再作成することなく映画、ゲーム、XR間を行き来できる「オープンデジタルアセット(ODA)フォーマット」の開発も進んでいます。

いわば "3D版PDF" とも言えるこの標準フォーマットをUnreal Engineにリンクさせることで、映画のために作られたキャラクターがゲームの世界やバーチャルコンサートに直接入り込むことができるようになります。

また、ソニーグループ株式会社が主催する社内技術交換会「Sony Technology Exchange Fair(STEF)」やエンジニアの交流イニシアティブも、部門を超えたフィードバックループをさらに強化しています。

Ford は、このようなコラボレーションを戦略的インフラと考えています。

クリエイティビティとテクノロジーの共鳴

インフィニティ・フェスティバルのパネルディスカッションでは、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』において両スタジオが追求したクリエイティブとテクノロジーのバランスを垣間見ることができました。Beveridgeとプロデューサーたちは、ダンス、音楽、パフォーマンスを精密に同期させるという挑戦、そしてそれを実現に導いたエンジニアリング上のブレイクスルーなど、このプロジェクトにまつわるさまざまな舞台裏を明かしました。

「映画のボスはただ一人、映画そのものだ。」
このBeveridgeの言葉は、映画制作に対する彼の揺るぎない姿勢を端的に表しています。

Katsambasはこう語ります。
「テクノロジーは統合が進み、以前は何日もかかっていたプロセスが数分で済むようになりました。しかし、アイデアを生み出すには時間が必要です。映像制作には人のクリエイティビティが大切なのです。」

Tankensonもまた、進化するテクノロジーがもたらす創作の可能性に触れました。
「『スパイダーマン: スパイダーバース』によって扉は開かれましたが、テクノロジーは日々進化しています。次に何が起こるかわからない——そこに魅力があります。その発見が興奮を持続させるのです!」

そして、Fordは「コラボレーションは我々のDNAです」と語り、創作における協働の価値を強調しました。

映画そのものを第一に考え、人のクリエイティビティを最も大切にしながら、進化し続けるテクノロジーを積極的に取り入れていく。ソニー・ピクチャーズ アニメーションとソニー・ピクチャーズ イメージワークスのコラボレーションはこれからも進化し続けていきます。

関連リンク

KPop Demon Hunters: Sony Pictures Animation x Imageworks Collaborations Interview

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