Cutting Edge

2024年12月6日

SIGGRAPH Asia 2024 基調講演: Co-Creating Worlds with Game Designers, Animators, and Filmmakers~テクノロジーで支える、クリエイターが想い描く世界の実現~

日本語字幕あり

ソニーグループCTOの北野宏明は、SIGGRAPH ASIA 2024の基調講演にソニーグループの3人のクリエイターとともに登壇。クリエイターやアーティストを創作活動の中心に据えながらコンテンツの世界観を創り上げるために、ゲーム、アニメ、映画の制作過程で、どのように新たなテクノロジーを活用しているかについて紹介しました。

そして、プレイステーションの30年にわたる技術の進化や、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの映画とアニメーション制作における最先端技術の活用など、技術の飛躍的進歩がもたらす新たな世界観の実現について語りました。

想像力を刺激する世界の創造

北野は、まずクリエイターが新しい世界を創り出すための重要な要素について説明しました。その要素とは、生き生きとしたキャラクターたち、キャラクターを取り巻く色鮮やかな環境、魅力的なストーリー、そして、ストーリーとユーザーの関わりです。

クリエイティブエンタテインメントカンパニーとして、ソニーは長い間エレクトロニクス製品やその技術を通じて人々に新しい世界の体験を提供してきました。そして、現在では、クリエイターと共に歩む会社として、クリエイターの愉快で独創的なアイデアを具現化するための技術やツールを提供しています。ソニーは、クリエイターのために存在し、クリエイターが新しい世界を構築し、ユーザーをその世界に導く手助けをするためにここにいます、と強調しました。

北野が、「世界を創り出す」ことに魅了されたのは、1980年代にカーネギーメロン大学で自然言語処理システムを開発する研究者としてキャリアをスタートさせた頃でした。大規模なリアルタイム翻訳における自然言語処理の可能性に意欲が掻き立てられたことがきっかけで、それが物語を伝えるツールとしてどのように活用できるかを探るためにテキストベースのアドベンチャーゲームを自ら設計してみたと北野は振り返りました。そのゲームが世に出ていくことはなかったものの、その経験が、インターネット上の3D社会、「バーチャルソサイティプロジェクト」という、自身がソニーで最初に取り組んだプロジェクトの原点となったと語りました。

「バーチャルソサイティプロジェクト」では、ブラウザ内に3Dグラフィックを作る記述言語を他社と共同で開発し、オンライン上の世界でユーザー間のコミュニケーションを可能にしたこと、そして、それは技術的な面でも創造的な面でも大いに挑戦し甲斐のあるものだったと述べました。

PlayStationがもたらす芸術を追求した
テクノロジーの30年

先日、PlayStationは30周年という節目を迎えました。PlayStationの歴史は、技術者とクリエイターのコラボレーションの軌跡です。北野は、PlayStationがゲーム界に与えた影響についても言及しました。

1994年の発売から今日に至るまで、PlayStationコンソールはゲームディベロッパーが、大規模でリアルな世界を創り出すことを支えてきました。PS2で導入されたCPU 「Emotion Engine」によって、現実の世界をより精密に3Dでシミュレーションできるようになり、GPU 「Sony Graphics Synthesizer」によって、ポリゴンレンダリングが強化されました。そして、PS3で導入されたCPU「Cell プロセッサ」とGPU「RSX」によって、ゲームディベロッパーはライティングモデル、ピクセルシェーダー、ダイナミックなリアルタイムでの付影処理、高度なウォーターシミュレーションを使って、映画のように物語を伝えることが可能になりました。

さらにPS4では、4K解像度とHDRグラフィックスにより、世界を創り出すための表現力がさらに豊かになりました。これらの進歩は、キャラクターの描写において顕著に見られました。ポリゴンの進化がキャラクターをよりリアルにし、深みをもたせたのです。そして、PS5に導入されたリアルタイム・レイトレーシングにより、世界はより色鮮やかに表現され、プレイヤーはその世界を自由に動き回れるようになりました。

さらに、ハプティック(触覚)フィードバックと3Dオーディオの登場は、ゲームディベロッパーが、プレイヤーをコンテンツの世界に引き込む強力なツールとなりました。足音や近くで滝が流れる音、パチパチと燃える火の音がそれぞれの場所から聞こえることで、プレイヤーは実際にその世界にいるかのように感じることができるようになったのです。

ソニーグループ各社のクリエイターたちからのメッセージ

続いて、ソニーグループ各社のクリエイターが登壇し、創作活動がテクノロジーとともにどのように進化していくかについて語りました。

グランツーリスモを手掛ける
クリエイターからのメッセージ

山内一典が率いるポリフォニーデジタルは、当初からPlayStationコンソールのためにグランツーリスモシリーズを開発してきました。山内は、ビデオメッセージの中でPlayStationの30年にわたる技術の進歩についての考えを述べました。

ポリフォニーデジタルの設立以来のテーゼは「世界の森羅万象を計算可能な存在にする」ということ。グランツーリスモに登場するクルマやレーストラック、そしてサーキットを取り囲む美しい風景の見た目や雰囲気のシミュレーションを通して、これを探求してきました。山内は、コンピューターの計算パワーの拡大が、ゲームをどれほどリアルにしてきたかを振り返りました。そして、ポリフォニーデジタルの将来の展望について、グランツーリスモをさらに進化させるために、トップダウンかつ設計的なアルゴリズムによる森羅万象のモデル化に加えて、データドリブンのニューラルネットワークを用いたボトムアップかつ創発的なモデル化の使い分けが必要だと述べました。

Techno Magicによって実現する
アストロボットの世界

最新作「『アストロボット』を発売したばかりのTeam ASOBIのスタジオディレクターであるニコラ・ドゥセは、楽しくカラフルなゲームの世界をどのように作り上げたかを紹介しました。東京に拠点を置くTeam ASOBIがゲーム制作において大切にしていることは、「Techno Magic」つまり、技術を魔法に変えることです。

『アストロボット』は、PS5の母艦に乗ったかわいくて楽しいロボット、アストロの物語です。ドゥセは、プレイヤーがゲームをおもちゃのように感じられるように、アストロの世界に非常にリアクションの高い物理ベースの「遊び」のエッセンスを加えて、ルールに縛られず、プレイヤーが気持ちよさと面白さだけを自由に追及できるインタラクションを構築した、と語りました。テクノロジーは、遊び心に命を吹き込みます。『アストロボット』のインタラクティブな物理演算は、物体をおもちゃに変えるのです。例えば、風船はエア遊具のお城のように浮遊感をプレイヤーに与えます。

Team ASOBIは、DualSense ワイヤレスコントローラーを活用し、迫力あるハプティクス表現を実現しました。アストロのカラフルでファンタジーな世界は、私たちの住む世界とはまったく異なるものですが、この技術によってプレイヤーはゲームの中に存在している感覚が持てるようになります。ユーザー体験に対するTeam ASOBIの細部へのこだわりは、プレイヤーを子供の頃に戻ったような気分にさせます。

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』に見る
VFXキャラクターの検討

ソニー・ピクチャーズ イメージワークスのDFXスーパーバイザーであるベン・アギロンは、VFX業界が新しい技術とともに変化してきたことを紹介しました。イメージワークスが映画製作者と協働しながら創作活動における課題を解決してきたことに加え、同社の製作プロセスにおいて不可欠であるオープンソースツールが、『モンスター・ホテル』や『スパイダーマン:スパイダーバース』、『メン・イン・ブラック:インターナショナル』などのコンテンツの世界に命を吹き込む役割を果たしてきたことを語りました。

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』では、原作で登場したプロトン・ストリームに着想を得るなど、古典的な80年代の視覚効果を現代のテクノロジーと融合させ、懐かしさと新しさを感じさせる体験を創り上げました。そして、最後の戦いのシーンでは、苛烈なエフェクト、液体の放出、そして撮影現場の物理的な照明と同期したカラー・シフトを重ねて、三連ビームのプロトン・ストリームを表現しました。

この映画の視覚効果は、炎を曲げ、凍ったキャラクターを粉々にし、何千ものつららと霜の層を表現し、映画の世界に生命を吹き込みました。そして、悪役ガラッカが登場するときの不気味な雲は、原作映画で使われた水槽の視覚効果に着想を得ました。

イメージワークスは、これからも新たな作品に向けて世界の探求を続け、業界の垣根を超えたクリエイターとのコラボレーションを通じて、最先端の技術を進化させ続けていきたい、とアギロンは話を締めくくりました。

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが提供する
映画制作者に向けた探究の場

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのTorchlight パイプラインスーパーバイザー兼FXテクニカルディレクターのレイ・ジャレルは、カリフォルニア州カルバーシティのソニー・ピクチャーズ内にある先進的なビジュアライゼーションスタジオ、Torchlightの舞台の裏側を紹介しました。Torchlightのミッションは「ソニーの最先端技術を映画製作者やクリエイターに直接届け、彼らが想い描く素晴らしい世界を映画・映像の中で実現させる手助けをする」こと。映画製作者は、製作準備段階でTorchlightを訪れ、ソニーグループの新しい研究開発プロジェクトの技術を含む、あらゆるバーチャルプロダクションツールをそれぞれの作品向けに最適化しながら試すことができると説明しました。

Torchlightでは、3Dの世界のすべてをUnreal Engineで構築しているため、映画制作者は実写のセットに近い感覚で、バーチャルカメラリグでいっぱいのステージを活用しながら、映画の世界を探索することができます。つまり、Torchlightだけで撮影計画を立て、仮想のロケハンをし、その映画のビジュアル言語を創り出すことができると強調しました。

Torchlightの根底にある「One Sony」という理念のもと、今後もソニーグループの素晴らしいチームと協力し、クリエイターのアイデアをこれまで以上に迅速に実現していきたい、と熱く語りました。

Torchlightはソニーの画期的な技術でクリエイターを支援し、これまで映画製作者が課題を解決するために費やしてきた時間を、それぞれが想い描く夢を映画の中でリアルに表現するための時間に充てられるようにしていきたい、とジャレルは締めくくりました。

創作活動の未来像

北野は再び壇上に戻り、創作活動の未来像について語りました。ゲームエンジンのようなツールが、多様なジャンルのコンテンツ制作に活用されるようになってきたことによって、さまざまなメディアでストーリーを伝える共通の技術言語が使えるようになりました。

AIやディープラーニングの進歩により、クリエイティブなエンタテインメントにかかわる技術が重要な変曲点に到達したことは明らかで、このような大きな変革期には、アーティストと技術者のコラボレーションが不可欠であることを強調しました。北野は、「皆様とともに、クリエイターの可能性を広げ続けていけることを嬉しく思います。世界中の人々にインスピレーションを与え、楽しんでもらえる世界観をともに創造するために、今後もコラボレーションできることを楽しみにしています。」と締めくくりました。

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