ソニー独自の素材でめざす、地球に寄り添うモノづくり
皆さんは、日常生活に不可欠な衣服や生活用品、また、暮らしを豊かにする電子機器やそのパッケージなどが、どのように作られているかご存知でしょうか。それらを作る過程において、温室効果ガス排出や森林伐採など、地球環境に負荷がかかるケースもありますが、ソニーグループでは、テクノロジーを活用し、環境に配慮した素材を独自開発しています。そうした素材は、さまざまな製品に形を変え、日々、お客さまのもとに届けられています。今回のソニーコーポレートブログでは、独自開発の素材を通じた環境への取り組みをご紹介します。
水や空気を磨く新素材「Triporous™(トリポーラス™)」
まずご紹介するのは、世界中で年間1億トン以上廃棄される米のもみ殻から生み出した、天然由来の多孔質炭素材料Triporous™(トリポーラス™)です。
バッテリー電極材料の研究開発に取り組んでいた社員が、もみ殻が持つ独特な微細構造を発見し、水と空気を浄化する優れた吸着特性を何かに生かせないかと研究を進めたのが、このトリポーラスです。「活性炭が毛穴の黒ずみを除去!」といった宣伝文句に耳馴染みのある方もいらっしゃるかもしれませんが、トリポーラスには活性炭以上に細かな汚れを除去する吸着特性があります。
以下の通り、トリポーラスには2nmのマイクロ孔、2〜50nmのメソ孔、1μmを中心とした50nm以上のマクロ孔が複合して存在していて、従来の活性炭よりも凹凸がたくさんあります。
そのため、トリポーラスは従来の活性炭で吸着しづらかった、大きな有機分子やウイルスなども容易に吸着します。従来の活性炭(※1)に比べ、スギアレルゲンは約3倍、イヌ・ネコアレルゲンは約8倍の吸着性を達成し、ウイルスや菌の除去率は99%以上という結果もでています。さらに、吸着スピードも速く、体臭やペットのニオイの原因になるアンモニアガスを6倍のスピードで吸着(※2)します。
このように、環境に配慮しているだけではなく、実際の効果効能でも優れている点が着目され、さまざまな業界とのコラボレーションも進んでいます。
Triporous FIBER™(トリポーラスファイバー)というブランドの下で、株式会社ユナイテッドアローズやタビオ株式会社、美津濃株式会社、コムサ・メン(株式会社ファイブフォックス)、株式会社サザビーリーグ エストネーションカンパニー、株式会社 イッセイ ミヤケなど、複数の企業がアパレル製品の開発を進めており、Tシャツや肌着、靴下やマスクなどが発売されています。衣類以外でもこの素材が活用され、ソニーストア名古屋や本社ビルの一部エリアでは、スツールとカーテン、カウンターチェアにTriporous FIBERを採用しています。
また、MOON-X社からはトリポーラスを配合した洗顔製品も発売中です。他にも、世界遺産である京都府の平等院をはじめ、さまざまな場所で美術品や工芸品の、文化財などの保護にトリポーラスが使われはじめています。今後は、浄水フィルターのような水浄化分野や、食品や医薬品への展開もめざしています。

ユナイテッドアローズとのコラボレーションアパレル商品

トリポーラスが汚れやすい脂性肌をきれいにする

©平等院 平等院の文化財倉庫でトリポーラスの空気浄化性能を検証中

トリポーラスファイバーが使用されたベンチ(ソニー本社1Fエントランス)
難燃性再生プラスチック「SORPLAS™(ソープラス)」
次にご紹介するのは、再生材利用率最大99%を実現した、難燃性再生プラスチック SORPLAS™(ソープラス)です。
電子機器に使われる一般的な難燃再生プラスチックの再生材利用率は30%程度(※3)であることを鑑みると、この数字の意義を理解いただけるかと思います。

SORPLAS[1]再生ポリカーボネイト樹脂99%(※4)[2]難燃性など1%

一般的な難燃性ポリカーボネイト再生樹脂(※5)[1]新しいポリカーボネイト樹脂(※6)55% [2]再生ポリカーボネイト樹脂30% [3]難燃性など15%
この素材の開発がスタートしたのは、約20年前のことでした。当時のソニーでは、各地の事業所で排出されていた廃プラスチックを有効活用するための研究を進めていました。その研究の中で、廃プラスチックから再生したポリカーボネイト樹脂に、添加剤として独自開発した硫黄系難燃剤を加えることで、SORPLASが生まれました。
独自開発した硫黄系難燃性とSORPLASのペレット
添加剤が微量で済むことの利点は、再生材使用率の向上だけではありません。一般的に添加剤の使用量が多いとリサイクル時に樹脂の劣化を促進してしまいますが、SORPLASは複数回のリサイクルを行った場合でも、劣化がほとんどみられません。にもかかわらず、従来の難燃性ポリカーボネイト樹脂より優れた耐久性・耐熱性を実現しています。さらに、色のくすみが少なく、塗装処理なしでも鮮やかな色とツヤが表現可能な、高品質のプラスチックです。
加えて、SORPLASはリサイクル性にも優れています。適切に回収されたものは、一般的なリサイクル素材と同様に粉砕してペレットに加工され(※7)、再度、新しい製品づくりの原料として使用することが可能です。
[1]粉砕・洗浄・ブレンド [2]粉砕してペレット化 [3]製品に導入 [4]製品からSORPLAS 製部品を回収 [5]市場から回収
しかし、実用化するにはいろいろなハードルがありました。プラスチックを成形する工程は、たい焼きの製造工程と似ています。金型に流し込む素材の粘度が硬いと素材が金型全体に流れていかず、柔らかいと強度が弱くなってしまいます。バージンプラスチックの場合、製品が求める材料特性に適した原料を使用できますが、再生材は原料を複数の素材から構成するために特性が一定ではなく、特に大型の外観部品に再生材の割合が高いプラスチックを採用することはこれまで困難でした。
そうした課題を乗り越えるためにSORPLASでは組成検討を重ね、再生材利用率は高いままで、流動性と強度のバランスを実現しています。
こうしたハードルを乗り越えて、SORPLASはソニーグループのさまざまな製品に導入されています。2021年4月に発売した有機ELテレビBRAVIA XR™の一部のモデルでは、背面カバーにSORPLASを採用。バージンプラスチックの使用量を従来機種と比較して、テレビ本体で最大約60%削減するという大きな成果を出しています(※8)。
近年、プラスチックごみによる海洋汚染が世界的な問題として認識されています。ソニーグループでも、今年4月に活動を開始した環境中期目標「Green Management 2025」で、新たに設計する小型製品のプラスチック包装材の全廃を目標として設定するなど、グループ全体でプラスチック使用量の削減に取り組んでいます。こうした活動においても、「廃棄物に新しい価値を付与したい」という想いから誕生したSORPLASが大きく貢献しています。
100%(※9)リサイクルが可能なパッケージ素材「オリジナルブレンドマテリアル」
そして最後にご紹介するのは、竹とさとうきび、市場回収リサイクルペーパーを組み合わせて独自開発した素材、「オリジナルブレンドマテリアル」です。この新しい素材は、今月発売の完全ワイヤレス型ヘッドホン『WF-1000XM4』のパッケージで初めて使用されています。このモデルでは、「サステナビリティ」をデザインテーマの一つとし、ラベルを除くすべてのパーツにオリジナルブレンドマテリアルを使用することで、ソニーのヘッドホンシリーズで初めて包装材のプラスチック全廃を達成しました。
多くの紙製品は成長サイクルが長い植物から作られていますが、オリジナルブレンドマテリアルでは、短期間で成長する竹やさとうきびを採用しています。成長サイクルが長い植物は、素材として使えるようになるまでに人間が何世代にもわたり管理する必要があるのに対し、サイクルが短い植物は必要な分だけ栽培して選定や伐採ができるため、自然に与える影響が小さくなるというメリットがあります。
また、さとうきびは製糖された後、残った繊維は発電燃料として燃やされて二酸化炭素排出の原因となることが多いですが、パッケージ素材の材料とすることでリサイクル可能な循環型資源としての活用を広げています。
そして、もう一つの材料として使用しているのは、市場回収リサイクルペーパーです。私たちが日常で使用した紙を再利用することでリサイクルが実現します。これらの原料は、世界中でソニーグループの製造拠点が最も多いアジア圏から調達しています。
また、オリジナルブレンドマテリアルは3つの素材の配合比率を変えることによって多様な成形や製紙が可能なので、幅広い用途で使用できる点が特徴です。加えて、エンボス加工でインクを使わずに文字を入れられるため、インク使用量も削減できます。この独自の自然な風合いは3つの素材の組み合わせで表現しており、着色はしていません。


この新素材は、リサイクルを前提として開発されています。そのため、オリジナルブレンドマテリアルでできたパッケージは、分別せずに他の紙類と合わせて資源回収に出すことが可能です(※9)。また、オリジナルブレンドマテリアルの成り立ちも発信することで、環境への取り組みについてお客さまとともに考えていくきっかけにすることもめざしています。
ソニーグループの環境への取り組み
ソニーグループでは、事業運営において、人、社会、地球が健全であることを前提としており、環境を配慮したさまざまな活動に注力しています。2010年に制定した環境負荷ゼロに向けた長期計画「Road to Zero」のもと、再生可能エネルギーの導入など、幅広い環境活動を行っています。
素材を通した取り組みはその一例ですが、持続可能な社会と環境のためにできることを考え、さまざまな活動を推進していきます。
- ※1ヤシ殻系の活性炭
- ※2等重量あたりでの比較
- ※32014年6月ソニー調べ。一般的な難燃性再生ポリカーボネイト(熱可塑性プラスチックの一種)樹脂の場合。
- ※4再生材使用率は用途により異なる。
- ※5プラスチックの種類の一種。
- ※6再生ポリカーボネイト樹脂ではない新しい樹脂材料。
- ※7使用済みのSORPLAS™を原料として再資源化する場合は、国や地域のリサイクルインフラに依存します。
- ※82018年モデルと比較した場合。詳細はこちらをご覧ください。削減率は機種により異なります。
- ※9製品パッケージのリサイクルは、適切なリサイクル制度のある地域でのみ可能です。