ソニー ホームページ

未来を探索し、新たな活動を創り出すソニーのデザイン部門「クリエイティブセンター」

    「デザイナー」と聞くと、どのような仕事を想像するでしょうか。プロダクトや、サービスのUI/UXのデザインなど、世の中の様々なモノ・コトを視覚的に洗練させていく仕事というイメージがあるかもしれません。ところが、ソニーのデザイン部門であるクリエイティブセンターは、そうした活動にとどまらず、未来を探索する「デザインリサーチ」や、リサーチで得られたヒントをもとにプロダクトやサービス、プロジェクトなどの新たな活動の種を創り出す「提案」も行っています。デザイナーならではの視点を活かした、多様な取り組みを紹介します。

    目次

    未来の「原型」を創るには

    クリエイティブセンターは「『原型』を創る」という理念を掲げています。それはつまり、「多様な価値観と共鳴を重ねることで、それが新たな潮流となり、やがて未来の原型になる」ということ。この理念をもとに、デザインのあらゆる可能性を開拓し、新たな価値を創出していこうとしているのが、ソニーのデザイナーなのです。

    社会の多様化や技術の進展により、変化が激しく不確実性が高まっている世界においても、次の原型を創り出すため、クリエイティブセンターでは独自に、継続的なデザインリサーチプロジェクト「CREATIVE RESEARCH」を実施し、未来のストーリーのデザインにチャレンジしています。

    人の感性を重視するデザインリサーチ

    「CREATIVE RESEARCH」では、約3〜5年先を見据えてソニーが向かうべき未来の方向性を導き出すことを目的としています。デザイナーが実際に世界各地に赴き、異文化の中に身を置いてみてそこに生きる人々の行動や考え方を観察したり、有識者にインタビューしたりするなどのリサーチを重ね、自らの気づきと洞察を深め、それをインスピレーションとして、未来へのヒントを探っていきます。これは、単なる情報収集ではなく、未来の可能性を感じ取りデザインにつなげるプロセスとして行います。

    そのようにして、デザイナーならではの感性的なインサイトから生まれた「未来に向けてどう発展しうるか」という洞察は、毎年ソニーグループ社員にレポートとして共有され、新たなプロダクト、サービス、プロジェクトにつながることもあります。

    リサーチに取り組むデザイナーたちの様子

    マーケティングリサーチに代表される定量的な調査は、現状を知ることに長けています。
    一方、デザインリサーチは定性的な調査であり、最新の社会情勢や人々の意識動向を読み解くことで得た気づきをもとに、より良い未来を模索する取り組みです。デザインリサーチを担当する尾崎史享はソニーのデザイナーが自ら現地に足を運んでまでリサーチを行う意義を、こう説明します。

    「デザインリサーチは定性的な調査であるがゆえに、リサーチャーの視点や解釈も重要です。その点、ソニーのデザイナーは、多様なエンタテインメント事業やテクノロジーの知見を活かした横断的な視点、および『よそ者』として現地に身を置くからこそ持ち合わせているフレッシュな視点も強みになりえます。そうした視点を通すことで、特定の市場や業界にとどまらない、既存の枠組みを超えた未来のエンタテインメント体験やライフスタイルにつながるインサイトが得られやすいと考えています」

    「CREATIVE RESEARCH」の成果は、これまでレポート形式で社内のみに公開していましたが、2024年11月に書籍『SIGNALS Creative Research No.01』として発刊し、初めて一般公開しました。

    将来のトレンドを予見する「CMFフレームワーク」

    クリエイティブセンターは、デザインリサーチから得られた将来のトレンドを視覚的に落とし込んだツール「CMFフレームワーク」も作成しています。CMFとはColor(色)、Material(素材)、Finish(仕上げ)の頭文字です。約2〜3年後のトレンドを予見するキーワード、ビジュアル、カラーパレット、サンプル素材をまとめることで、将来のソニーのデザインの方向性を提案する役割を果たしています。多様なツールを制作している背景について、CMFフレームワークの制作を担当する鈴木茂章は「デザイン領域は、プロダクトに限らずUI/UX、グラフィック、空間、メタバースなど多様化していますが、どの領域においても、CMFフレームワークがリファレンスとなる存在を目指しているためです」と語ります。

    2023年度に作成したCMFフレームワークのムードボード

    デザインは、社会情勢や人々の意識などの変化によっては、同じ色や素材、仕上げでも、異なる印象を与えることがあります。人の心に深く響くデザインを追求するために、トレンド分析のほか、世界各都市で街や人々を注意深く観察するフィールドリサーチなどを毎年デザイナーが行い、生活者の心理を読み解いた上で、常に最新の状況をツールに反映しています。「トレンドを把握することで、社会やテクノロジー、人々の動向が見えてきます。例えば、コロナ禍を経て抗菌やウェルネスに貢献する機能的な素材への興味、バーチャルコミュニケーションやメタバースでのマインドフルネスを求める傾向が高まっています。これは、ここ数年での大きな変化の潮流であり、私たちの生活に急速に定着したトレンドだと思います」(鈴木)

    2024年にはデンマーク・コペンハーゲンと東京の2か所で、CMFフレームワークで導き出した8つのCMFクラスターの素材サンプルや、CMFフレームワークをインタラクティブなデザインツールとして体験できるプロトタイプなどを展示しました。鈴木はCMFフレームワークの今後について、従来のフィジカルなサンプルに留まらず、リアルとバーチャルをシームレスに繋ぐ役割を果たすよう、デジタルツールの開発なども進めていると明かしたうえで、「コペンハーゲンと東京で展示した体験型のプロトタイプは私たちのゴールのひとつを示唆したものです」と語ります。

    コペンハーゲンのデザインイベント「3daysofdesign」でのCMF展示の様子

    デザインリサーチから広がる新たなデザインワーク事例

    CREATIVE RESEARCHとCMFフレームワークは、いずれも世の中のマクロなトレンドを把握するための、「トレンドリサーチ」にあたります。クリエイティブセンターでは、その他にも、数年後を見据えたプロダクトやサービスのデザイン開発を行う「R&D向けリサーチ」や、既存プロダクトのデザインのための「ルーチンワーク向けリサーチ」も実施しています。

    こうしたさまざまなデザインリサーチは、報告のみにとどまらず、新たなプロダクト、プロジェクトなどへの提案にも活用されています。ここからは、リサーチで得たヒントをもとに、デザイナーによる提案が大きく貢献した実例をご紹介します。

    ソニーの長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」

    10年後のソニーのありたい姿を描いた長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」の制作にデザイナーも携わりました。プロジェクトのきっかけの一つは、2021年に「CREATIVE RESEARCH」の一環として実施したSci-Fiプロトタイピングの展示を見た社長 CEOの十時 裕樹が、デザイナーが持つ"未来を描き出す力"を実感したことに遡ります。

    ※SF(サイエンス・フィクション)の想像力を活用する方法。

    Creative Entertainment Visionのキービジュアル

    子ども向けのインタラクティブアート作品「The Enchanted Forest」

    ロンドンのキングス・カレッジ病院で、特別な教育支援を必要とする子どもたちに感覚的な刺激とともに楽しい体験を提供する作品「The Enchanted Forest」を、フランスのNPO団体It Is Nowと国際財団Art Exploraと協働で作り上げました。

    ディスプレイの前に立つと魔法の世界に没入する体験ができる

    誰もが楽しめるゆる楽器「ハグドラム」

    障がいのある方や高齢者をはじめとするリードユーザーと協働でデザインの発想を広げる「インクルーシブデザイン」の手法を用いて、誰もが一緒に演奏できる打楽器「ハグドラム」の開発をソニー・ミュージックエンタテインメントとともに進めています。

    叩いた音を光や色、振動で感じることができる打楽器「ハグドラム」

    モバイルモーションキャプチャー『mocopi®』

    過去にCMFフレームワークで掲げた「共鳴するエナジー(energetic resonance)」というテーマが、2022年に発売したモバイルモーションキャプチャー『mocopi』の商品やコミュニケーションアセットのデザインに活かされています。

    CMFからインスピレーションを受けて、ビビットな色合いが特徴的な『mocopi』のデザイン

    ポータブルシアターシステム『HT-AX7』

    デザイナーが「コンパクトで設置しやすいこと」「インテリアに溶け込むこと」を指針に作成したデザインプロトタイプがきっかけとなり、好きなスタイルで手軽に立体音響空間が楽しめるポータブルシアターシステム『HT-AX7』の開発につながりました。

    インテリアに馴染むデザインを実現した『HT-AX7』(クレジット:Dezeen and Beth Davis)

    新たな価値の「原型」を創造

    デザイナーならではの感性を活かしたデザインリサーチと、そこから得たインスピレーションをきっかけに誕生した数々のプロダクト、サービス、プロジェクト。「人のやらないことをやる」というソニーのDNAのもと、クリエイティブセンターは活動の幅を広げ、多岐にわたるデザインとブランディングを行っています。クリエイティブセンターはこれからも、世界中の人々の心に深く響くデザインを追求し、新たな価値の「原型」の創造を続けていきます。

    関連リンク