アニメの未来をともに考える、新たな対話の場
「クランチロール アニメ・フューチャー・フォーラム」
10月7日、米国・ニューヨークで「クランチロール アニメ・フューチャー・フォーラム(AFF)」が初開催されました。このフォーラムは、世界中で存在感や影響力が高まり続けるアニメの未来について、異なる立場や国の垣根を越えて語り合うために設けられた新しい対話の場です。ニューヨーク・コミコンの開幕を翌日に控えたこの日、会場には日本を代表するアニメ業界の方々に加え、映画、ゲーム、音楽、テクノロジーなど、さまざまな分野・業界を牽引するリーダーやクリエイターが国内外から集まりました。また、AFFに合わせて、ソニーグループのアニメに関する新たな取り組みも発表されました。
目次
アニメの未来を巡る、多彩なセッション
AFFは、ソニーグループ傘下でアニメ専門のストリーミングサービスを提供するクランチロールの主催により、ニューヨーク・コミコンの会場と同じジェイコブ・K・ジャビッツ・コンベンションセンターで開催されました。テーマは「Designing for Anime's Future(アニメの未来を描く)」。アニメの未来を見据え、ファンとの向き合い方、テクノロジーとの共存、IPの保護、そして次世代のストーリーテリングなどのテーマを、業界の垣根を越えて対話を行う場として企画されました。招待制で実施された本イベントには、幅広い業界から500人を超える関係者が来場しました。
AFFは、ソニーグループ株式会社 社長 CEOの十時 裕樹による挨拶で幕を開けました。
十時は、アニメが「世界中で楽しまれるグローバルなエンタテインメント」であり、世界的な需要の高まり、テクノロジーの進化、配信プラットフォームの拡大、そして、ファンの存在によって、今も成長と進化を続けていると説明しました。また、国や文化、世代を超えて、これまで以上に多くの人々がアニメと出会い、熱心なファンになっていることや、アニメという共通の関心を通じて人々のつながりが広がっていることに触れました。
そのうえで、デジタル時代における物語のつくり方や届け方の変化、世界のアニメファンやその嗜好の発展、そして作品の根幹にあるIPをどのように守り、健全な制作エコシステムを持続させていくかなど、業界が向き合うべき重要なテーマを提起しました。
加えて、テクノロジーによってクリエイターを支え、新たな体験を生み出しながらIPの価値最大化を目指すソニーの長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」において、アニメが重要な存在であることも紹介。ソニーグループ各社の強みを組み合わせてアニメを幅広く支えていることに触れながら、今後も「クリエイターを支えること」、「IPを守ること」、「グローバルなコミュニティとファンダムを育むこと」を通じて、アニメ業界の長期的な成功に貢献していく考えを示しました。
十時が提起したこれらのテーマは、その後のセッションにも引き継がれ、「ファンダム」「テクノロジー」「ストーリーテリング」「IP保護」の4つのトピックを軸として、多彩なパネルディスカッションが行われました。
【スパイダーバースがもたらした効果:アニメーションの新たな表現】
映画監督のボブ・ペルシケッティとSony Pictures Animation社長のクリスティン・ベルソンが登壇。ペルシケッティがジャスティン・K・トンプソンと共同監督を務め、2027年に公開予定の映画『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』をはじめとする「スパイダーバース」シリーズを題材に、作品ならではの映像表現やストーリーテリングがどのように世界中のファンの共感を集めてきたのかについて語りました。また、アニメーションの可能性を広げるクリエイティブな挑戦についても議論が行われました。
【紙からプラットフォームへ:マンガの未来】
アプリの普及やグローバルにおけるライセンス展開など、新たなデジタル時代を迎えて世界的な影響力を拡大しているマンガを題材に、マンガ原作のアニメ化や実写化が広がる中で世界中のファンに作品を届けるための新たな可能性や、デジタル時代における読者との関わり方について議論を交わしました。日本のマンガ業界を代表して、籾山 悠太氏(株式会社集英社)、平文 英徳氏(Link-Uグループ株式会社)、村中 宣彦氏(株式会社スクウェア・エニックス)、平岡 雄太氏(株式会社講談社)が登壇し、ジャーナリストの数土 直志氏がモデレーターを務めました。
【アニメファンダムをけん引するインフルエンサー:声、ビジョン、拡散力】
<左から:リナ・レモン、ビッグ・ショーン、アンバー・グレン、ジョーダン・ハウレット>
ファンダムをテーマに、アニメファンを公言するスポーツ、音楽、デジタルカルチャーのインフルエンサーたちが登壇。アニメが単なる娯楽を超え、人々の価値観や創作活動、自己表現にも影響を与える存在となっていることについて、それぞれの体験を交えながら語りました。
【ゲームプレイを超えて:アニメIPがゲーム原作の映像化から学べること】
PlayStation Productionsの統括責任者であるアサド・キジルバッシュがモデレーターを務めたこのセッションでは、ゲームの世界観やキャラクターを、アニメーションの枠を超えてどのように映像作品へ展開していくのか、また原作IPの魅力を維持しながら世界中の観客に届けるためには何が必要かについて議論が行われました。ゲームジャーナリストであり「The Game Awards」の創設者・司会者でもあるジェフ・キーリー、Vertigo Entertainmentのロイ・リー、Lyrical Mediaのジェイコブ・ロビンソンが登壇しました。
AFFで発表されたソニーグループの新たな取り組み
AFFにはSony Pictures Entertainment(SPE)会長 兼 CEOのラヴィ・アフジャも登壇し、新組織「Crunchyroll Storyworks」の立ち上げを発表しました。
「アニメが世界的な文化として発展してきた背景には、何十年にもわたり、独自のストーリーテリングと魅力的なキャラクターを育んできたクリエイターや制作スタジオ、出版社の存在があります。アニメがさらに成長していく中で、私たちには、常にクリエイターのビジョンを中心に据えながら、アニメならではの魅力を守り、より多くの人々に届けていく責任があります。それが、Storyworksの目指すものです」
Crunchyroll Storyworksは、クランチロール、アニプレックス、日本のクリエイターコミュニティ、そしてSPEをつなぎ、世界中の視聴者に向けた新たなアニメ作品の開発を推進する組織です。海外の物語をアニメ化するだけでなく、日本のアニメを実写化することも視野に入れており、日本のクリエイターと密接に連携しながら原作が持つ創作意図を尊重した作品づくりを目指します。
この発表は、ストーリーテリングやファンダム、アニメのグローバルな可能性など、この日を通じて語られたテーマにもつながるものでした。また、日本のクリエイターとその作品を世界中の視聴者へ届けるために、ソニーとクランチロールが新たな取り組みを進めていることを示すものでもありました。
また、フォーラム終盤にはクランチロールのプレジデントを務めるラウール・プリニが登壇。イベント全体を総括するとともに、ファン体験を拡張する複数の新たな取り組みを発表しました。
「私たちが果たすべき役割は、業界を牽引する皆様、そして皆様の作品を愛するファンを支えることです。このエコシステムを持続的に成長させていくためには、ファンの裾野を広げるだけでなく、より多くのアーティストが活躍できる機会を創出し、制作力を高め、生み出された作品を守っていく必要があります。それが、私たちの責任です。私たちはその責任を喜んで担い、これからも皆様とともに取り組んでいきます。これは、誰か一人で成し遂げられることではありません」
その一つが、PlayStation®5における新たなアニメ体験です。Sony Interactive Entertainment 社長 CEOの西野 秀明と共に発表したこの取り組みでは、PS5のホーム画面上にアニメ専用スペースを新設。アニメや関連するゲーム、クランチロールへのアクセスを一つの場所に集約し、PlayStationコミュニティがより手軽にアニメに出会い、楽しめる環境を提供します。2027年春の提供開始を予定しています。
さらに、マンガ配信サービス「Crunchyroll Manga」の提供地域拡大も発表しました。2025年10月から米国とカナダで展開してきた同サービスは、新たに英国、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、インドを含む11カ国へ展開を拡大し、250タイトルを超える英語ローカライズ作品を提供します。マンガは多くのアニメ作品の原点でもあります。クランチロールは今回の拡大について、ファンがアニメを視聴するだけでなく、原作マンガにも触れながら作品の世界をより深く楽しみ、新たな作品との出会いにつなげるための重要な取り組みと位置付けています。
AFFで交わされた議論だけでなく、未来に向けたクランチロールの具体的な取り組みも発表されたことで、アニメの可能性をさらに広げるための方向性が示される一日となりました。
対話の先にあるもの
アニメが世界中で広がり続ける今、その未来について考えるためには、クリエイターや制作会社だけでなく、ファンやパートナー企業を含むさまざまな人々の対話が欠かせません。クランチロールは、アニメを支える多様な立場の人々の声に耳を傾けながら、ともに未来を考えていくことを大切にしています。
初開催となったAFFは、その出発点となる一日でした。ここで交わされた議論や発表は、今後のアニメ業界にどのような変化や新たな可能性をもたらしていくのでしょうか。