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ソニーグループUX/HCD全社推進担当が学会発表を通して感じたこと。 ~外からのフィードバックで自社を知る試み~

Technology

今回は、ヒューマンインターフェース(以下、HI)シンポジウム2025で論文を発表した宇多村さんにインタビューしました。宇多村さんは経験者採用で入社後、ソニーグループ全社のUser Experience/Human Centered Design (以下、UX/HCD )の推進を担当し、多様な事業を展開するソニーグループにおいて「組織の仕組みづくり」の視点から、UX品質の向上に取り組む業務の魅力や、学会での発表を通じて得られた気づきについてご紹介します。

※UXはユーザーが使う前から後まで含めたすべての体験のこと。HCDは、技術中心ではなく、人を中心に望ましい体験を設計していく方法のこと。
ソニーのUI/UXデザイナーを紹介した記事はこちら
ソニーのUI/UXデザイナーの働き方徹底解剖! イメージング領域のユーザー体験を支える先輩社員インタビュー。 | ソニーグループポータル

宇多村 志伸

外部の目線で自社を見つめ直す。学会発信がもたらした新たな気づき

──HIシンポジウムに参加・発表された経緯について教えてください。

UX/HCD戦略コミッティという、ソニーグループ各社から技術領域を横断した多様なメンバーが集まってUX/HCDに取り組む全社的な活動があるのですが、その中の「社外発信WG 」のメンバーとして、自分自身の取り組みを発信することになりました。 ソニーに入社してから取り組んできたチャレンジングなテーマについて、ちょうど形になってきたタイミングだったのと、論文という形で自身のキャリアを形に残せることもモチベーションの一つになりました。

※WG:ワーキンググループ (Working Group)の略。特定テーマごとに少人数で活動する専門チームのこと。

また社内の活動だけに閉じていると、プロジェクトを客観的に捉えることが難しくなるので、外部の研究者や他の企業の有識者にフィードバックをいただきたい、という思いもありました。 ソニーグループ全社のUX/HCD推進業務は、社内に精通するだけでなく、自社の立ち位置や業界を俯瞰し、取り組むべき課題の見極めをしていく必要があると考えています。グループ全社を見渡すには、高い視点と広い視野を求められるのと、社内外の様々な情報を収集することが必要なので、その技術領域の有識者が集まる学会という場に出向くことは、重要な業務の一環でもありました。

シンポジウムの会場だった、金沢工業大学 扇が丘キャンパス

──学会に参加して感じたメリットや新たな気づきはありましたか?

HIシンポジウムは論文発表以外にも、ワークショップや講習会がプログラムとして提供されました。初日のワークショップでは「UXの評価の課題と展望‐そもそも測れるのか?何を測るべきなのか?」という、今回私が発表した論文の内容に密接に関係するテーマが扱われていました。3名の大学研究者がそれぞれの見解や課題を述べて、会場内の参加者とディスカッションするのですが、最新の研究動向や業界全体を通じた様々な課題を把握でき、客観的に自身の取り組みを顧みれる機会となりました。

私が発表した論文は「ビジネス指標と連動するUX独自指標および質問紙の開発」という題目で、製品・サービスのUXの向上とビジネス価値との関係性を定量的に示すことのできる指標開発の試みについてまとめました。人を中心に据えたアプローチでデザインやマーケティング領域を跨ぎながらキャリアを積んできましたが、どのビジネスの現場でも必ず問われるのが「UX/HCDの取り組みが、ビジネス成果にどう結びつくのか」ということでした。UX/HCD業界全体の課題として常に取り上げられるテーマです。この問いに対し、説明可能な指標が存在すれば、現場で同じ課題を感じているUXデザイナーと、立場の異なる役割を持つ方々にとっての共通言語にできるのではないか、コミュニケーションの手助けになるのではないか、そんな想いで取り組んできました。

発表後の質疑の場でも、想定していた以上に多くのフィードバックをいただき、独自性のある取り組みであることを確認できました。私と同じように企業側の立場の方からも一定の評価をいただけたことも励みになりました。 まだ道半ばのプロジェクトなので、今回得られた知見を、業務にフィードバックさせていきたいと思っています。

発表15分、質疑15分と十分討論する時間が確保されていた。
発表論文:ビジネス指標と連動するUX独自指標および質問紙の開発

多様な事業・多様な人材をつなぐ再現性のある仕組みづくりへの挑戦。

──ソニーグループ全社のUX/HCD推進という「組織の仕組みづくり」を担う業務の面白さについて教えてください。

企業が様々な製品・サービスを一定の品質で提供するということは、再現性が求められるということです。デジタルイメージングやオーディオを中心としたエレクトロニクス事業から、ゲームや音楽などエンタテインメント事業まで、ソニーグループは幅広い事業を展開しています。様々な個性や役割を持つ個人が集まる"組織"という集合体に対して、仕組み(プロセスや基準、制度など)で働きかける仕事は、とてもスケールが大きくやりがいを感じます。こうして導入した仕組みで組織やチームが望ましい方向に動き出し、お客様が満足する製品サービスの提供が実現できるのなら、企業としてこれ以上嬉しいことはないと思っています。 前職も大きな企業だったので、様々な事業部が集まる中、同じ方向性を共有しながら前進することの難しさはよく理解しています。 ソニーには多様性や個性を大切にする企業文化があります。どんな仕組みがあるとお客様と約束したいと思っていること(期待と想像を超える体験の追求)を実現できるのか、各組織の皆さんと一緒に日々自由闊達に検討しています。仕組みづくりは、組織のHCD(Human Centered Design)です。仕組みを使う人がどんな悩みや課題を抱えながら日々業務遂行しているのか、その仕組みができると誰が嬉しいと感じるのか、まさにHCDそのものだと考えています。

オンラインと会場からのハイブリッド開催で、質問はDiscord上でも受け付ける

──今回、社内HCD専門家の方も同じ学会内で発表されたとのことですが、そうした環境についてはいかがですか?

UX/HCDを推進する社内の仕組みの一つに、専門家認定制度というものがあります。高い専門性と実績を持つ社員が認定されるのですが、そういう方々と一緒に業務を進める機会が多く、日々刺激をもらっています。それぞれの社員が様々なフィールドで活躍されているので、UX/HCDという専門性の中にも多様性があります。 今回の学会でご一緒した齋藤真里さんは、R&D領域で活躍されている社内HCD専門家のうちのひとりですが、社外発信WGのリーダーも務めていらっしゃいます。R&Dで研究開発を本業にしながら、博士課程にも在籍し、国内外の学会を飛び回っているパワフルな方です。実は学会での発表が15年ぶりだった私に、様々なアドバイスをしてくださり、そのおかげで安心して発表に臨めました。リーダーとして自由な発想やチャレンジを後押ししてくださる存在であるとともに、その仕事ぶりからはプロ意識が滲みでていて、今回3日間一緒に行動することで、齋藤さんの仕事観を肌で感じえられるよい機会になりました。

学会で発表中の齋藤真里さん。
論文の題目は「高齢者向けペットロボットのコンセプト受容と態度変化 ~R&DにおけるHCDの取り組み~」

──学会参加後、ご自身の業務や意識に変化はありましたか?

UX/HCD戦略コミッティの活動の中で、学会やカンファレンス等で発信する機会があることは、とても貴重です。対外的に発信していくことに活動の意味や目的があるため、個人的なモチベーションと会社への貢献との重なりが見つけやすいからです。普段の仕事の枠を越えた経験やフィードバックが新たな気づきや学びになり、自分としても視野が広がるよい機会になりました。
社外発信WGの活動はまだ始まったばかりですので、早速、第二弾に向けて発信計画を立てたいと思っています。

齋藤真里さん発表:要素技術の研究領域だからこそ、HCDに取り組む価値がある

<編集部のDiscover>
今回のインタビューを通じて、普段は社内の視点にとどまりがちなところ、外部の専門家や他企業の方々から意見や質問を受けることで、自分たちの強みやまだ気づいていなかった課題が浮き彫りになります。特に今回の研究発表は、業界全体でも注目されているテーマということで、他社の方々とも共通の課題意識を持てることが分かりました。今後も積極的に外部と交流し、得られた知見を社内に還元していくことが、ソニーグループのさらなる成長につながると感じました。


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