ソニーが銀座に「公園」をつくった? Ginza Sony Parkが継承するソニーらしさとは

皆さんは、Ginza Sony Parkをご存じでしょうか。
東京・銀座の数寄屋橋交差点の一角にコンクリートの建物があります。斬新なデザインに驚きつつも、こんな疑問が浮かんできました。「ソニーはなんでこんな建物をつくったんだろう?」
そこで今回は、Ginza Sony Park Projectの主宰である永野さんにお話を伺いました。Ginza Sony Park建設の裏側や、永野さんの考えるソニーらしさに迫ります。
ソニービルの建て替えプロジェクト「Ginza Sony Park Project」とは
Ginza Sony Parkは、1966年に建てられたソニービルの建て替えにおいて、“建て替えプロセスもソニーらしくユニークに行いたい”との思いから、建物の解体途中を公園にするという全く新しい発想で、2018年8月9日に、都会の中にある「変わり続ける実験的な公園」として開園しました。
2021年10月から再開した建築工事を経て、2024年8月に新しいGinza Sony Parkが竣工。2025年1月のグランドオープンに向けて、さまざまなアクティビティを始動しています。
詳細は、Ginza Sony Parkホームページ「パークについて」のページへ

街に開かれた庭から、公園へ
── このようなプロジェクトが発足したのは、どのような経緯だったのでしょうか。
2013年、当時CEOだった平井さんのもと、いくつかの組織が集まってソニービル建て替え工事の話が進められていました。その頃、私はまだメンバーではなかったのですが、CEO室のスタッフでブランドやコミュニケーションを担当していたことに加えて、個人的にもとても興味があるプロジェクトだったので、自ら手を上げて参画させてもらうことになりました。
最初からいまの「公園にする」というプランだったわけではなく、当初は一般的な建て替え計画として進められていました。でも、その計画案に何か物足りないものを感じて、もっとソニーらしい建物にするにはどうしたらよいか根本から見直すために、リーダーとしてプロジェクトを牽引することになったのです。
── 2013年の時点では、公園を想定されていたわけではなかったのですね。なぜ公園というコンセプトに決まったのですか。
プロジェクトを根本から見直すにあたり、土台となる揺るがない理念が必要でした。その理念には創業時から継承されてきた「人のやらないことをやる」「ユニークである」というソニースピリットを掲げ、建物そのものだけでなく、建て替えプロセス自体も「人のやらないことをやる」ソニーらしくユニークなものにしたいと考えました。当時は2020年のオリンピックに向けて東京中でビルの建て替え工事の計画があったため、どんな新しい建物を建てても埋もれてしまう可能性がありました。それならば、周りが建てるなら、我々は建てない、という選択肢があるのではないかと考えたわけです。では、建てないならばどうしよう…と。
そこで原点に立ち戻り、ソニービルや、ソニー創業者の一人である盛田さんのことを調べ、学び直してみることにしたのです。
ソニービルは、ソニーの情報発信基地である銀座という街に貢献するために、創業者の一人である盛田さんが1966年につくったビルです。建物のコンセプトは「街に開かれた施設」。そのコンセプトを象徴する空間として、敷地の角地で数寄屋橋交差点に面した10坪のスペースをパブリックスペースにしました。銀座という超一等地で、通常ならばビルの玄関口とするような場所をあえて街に開放して季節に応じたイベントを行い、銀座の街を行き交う方々に楽しんでいただいていたのです。
盛田さんはこのパブリックスペースを「銀座の庭」と呼んでいました。この「銀座の庭」こそが建て替えのコンセプトのコアになると感じ、緑や休憩する場所が少ない銀座の街に貢献するためにも「庭」の規模を大きくして「公園」にしようという話になりました。ビルを解体してすぐに建て替えずにいったん公園にする、その後工事を再開してつくる新しい建物も公園をコンセプトとする、という現在のプランになったのです。

── 「街に開かれた施設」というのは、盛田さんだからこその発想とも言えそうですね。
ソニーという私企業が、パブリックのことをすごく大切に考えている姿勢をこのコンセプトから感じて、それを知ったときはとても感動しました。今でこそSDGsなど社会貢献に対する企業の責任は当然のものと認識されていますが、このビルを建設した1966年当時は高度経済成長の時代で、一企業がここまで社会に目を向けて活動するのは、それほど一般的でなかったのではないかと思います。企業としてのこういう姿勢はぜひ継承したいと思いました。
「銀座の庭」から「銀座の公園」へ。創業者の想いが詰まったこの場で、その想いをGinza Sony Park Projectが継承する意味があるとより強く考えるようになりました。
── プロジェクトを進める上で、大変なこともあったかと思います。そんなときに、よりどころにしていた存在はありましたか。
このプロジェクトを牽引し始めて11年になりますが、正直何度も心が折れかけました。反対意見が出ることは、プロジェクト自体がユニークであることの証でもありポジティブに受け止めていましたが、それでも社内でなかなか理解が得られない状況には苦労しました。
ただ、そこで私の心を支えてくれたのは、過去に「人のやらないことをやる」ということを実践してきたソニーの歴史と、その歴史を作った先輩方の実績であり思いでした。2018年にGinza Sony Parkをオープンして以降は、実際に現場で楽しんでくれている方たちの姿が勇気や自信を与えてくださり、自分が信じた道を進もうという決意を新たにしました。
会社、製品、お客様の思いが合致して初めて「ソニー」というブランドになる
── そもそもですが、ソニーと公園は一般的に考えればなかなか結び付かないはずなのに、私はなぜかソニーらしいと感じます。
ソニーの印象を一般の方々に聞いてみると、「先進的」「デザインが良い」「革新的」といった言葉をいただくことがありますが、私はソニーらしさとは人の数だけあると思っています。つまり、ブランドというのは、企業側が「私たちの会社は〇〇です」と一方的に発信するだけでは成り立たないんです。「私たちの会社は〇〇です」と宣言しても、作られている製品やサービス、コンテンツなどが、それを体現していなければブランドにはならない。
ブランドには伝える側と受け取る側がいて、どう伝わるかは受け取る側次第です。伝える側が届けたいものと、受け取る側が受け取るものとが合致してはじめて、それがブランドになるわけです。
── ちなみに、永野さんの考えるソニーらしさは何でしょうか。
やはり、「ユニークである」ということだと思います。盛田さんも、「ユニークであることはソニーのかけがえのない力だ」と言っていますが、私もそのとおりだと感じます。そのうえで、私はソニーのユニークさには3つのポイントがあるのではないかと、勝手に考えています(笑)。
── 3つのポイント、ぜひ教えてください。
「再定義をする」「世の中に問う」「未来への一歩になる」です。これまで、ソニーらしいと多くの方に感じていただけた製品には、共通してこの3つのポイントが適用できると考えています。繰り返しになりますが、私が勝手にそう考えています(笑)。
例えばウォークマン®。ウォークマンが発売される以前、音楽は屋内で聴くことが当たり前でした。ソニーは「音楽を屋外で聴く」という『再定義』を行い、ウォークマンを生み出し、この考え方はどうでしょうかと『世の中に問う』たのです。もちろんその当時は「屋外で聴くと音質が下がってしまう」とか「音楽を聴きながら街中を歩くのは危険だ」といった世間からの反対意見もありました。いつの時代もユニークなものには賛否両論あるものです。しかし、賛同する方がたくさんいたからこそ、今では外で音楽を聴くことが当たり前になりました。これはまさに、ウォークマンが『未来への一歩』になっていたということです。

── 確かに…!ソニーらしさを言葉で表すのは難しいと感じていましたが、今の3つのポイントで説明ができますね。
人のやらないことをやる、ユニークなことをやると言っているだけで、それを体現できなければ、それは先ほどお話ししたようにブランドには繋がりません。突拍子もない製品をつくり「この製品はユニークでしょう、うちの会社はユニークでしょう」と売り出しても、お客様に反応していただけなければ意味がないんですよね。「再定義」して「世の中に問う」て「未来の一歩」になる、そこにソニーらしいユニークさがあると考えています。
── 永野さんにとってのソニーらしさを伺えたところで、Ginza Sony Parkのソニーらしさについてもお伺いしたいです。
先ほどの3つのポイントを踏まえてお話しすると、公園という概念を再定義して、それを構想にとどめずに、多くのチャレンジがありながらも実際に作ってしまった、作らせてもらえる会社であることが一番ソニーらしいところではないでしょうか。実際にGinza Sony Parkを作り「再定義をする」と「世の中に問う」ことは成し遂げられましたが、「未来への一歩になる」というところはまさにこれからですね。
<先日の竣工で公開された箇所からも多くの工夫を感じることができます>


Ginza Sony Park=新しいブランドインターフェイス
── 今後、Ginza Sony Parkはどのようになってほしいですか。
新しいソニーの情報発信の場となることはもちろんですが、銀座の街の新しいリズムをつくることにもこだわりたいですね。そして国内だけでなく世界中の方が、東京・銀座に訪れたときには必ず立ち寄りたくなる場にしていきたいです。ウォークマンやaibo、PlayStation®などのように、世界中の人に愛され、刺激を与えられる存在になりたいと思っています。
Ginza Sony Parkが開園した2018年8月から最初の1年間は、ソニーの商品やサービスを前面に出したイベントは一切行いませんでしたが、来園いただいたお客様へのアンケートでの「この場所をどう思いますか?」という設問には上位に必ず「ソニーらしい」という回答が入っていました。これは、ソニーの商品やサービスがなくても、このGinza Sony Parkという場所自体が「人のやらないことをやる」「ユニークである」というソニースピリッツを体現している場所であると感じてもらえたからだと思っています。
こうしたことからも、Ginza Sony Parkはソニーのブランドのインターフェースのひとつになっていると思いますし、ソニーをより多くの方に知っていただけるきっかけに今後もなっていくと期待しています。
── ブランドのインターフェース、かっこいいですね。
ソニー製品を持っていない、もっと言えばソニーを知らない方でも、Ginza Sony Parkに初めて訪れて「ソニーっていいな」と思ってもらえれば、それだけで価値が生まれるんですよね。だから、必ずしも製品やコンテンツがなくてもブランドは作れるということです。
一方で、ブランドは永久不滅ではありません。だからこそ、ソニーがユニークな会社であるためには、これをずっとやり続けなければならない。そこに事業の種類は関係なくて、プロダクトでも、映画や音楽、金融でも、ユニークなことに取り組み続けてブランドをアップデートしていくことが大事だと考えています。
ソニーという会社はテーマパークの構造に近いところがあると思います。事業という名のエリアがあり、その事業は変わりつつも根底にある「ユニークである」というスピリットは変わらず継承される、そんなブランドであり続けたいと私は思います。

編集部のDiscover
取材の際、2025年1月のグランドオープンにむけてまだ工事中のGinza Sony Parkを実際に見学したのですが、来訪者のことを考えた工夫やこだわりを感じられる公園になっていて、これまでヘッドホンやカメラなどのエレクトロニクス製品のイメージが強かった、私の中での「ソニーらしさ」に変化があった取材でした。数年後には、ソニーといえば?という質問に対してGinza Sony Parkと答える人が多くいるかもしれないことを考えると、より完成が待ち遠しく感じます。
読者のみなさんもぜひ、2025年1月のグランドオープン時には足を運んでみてください。




















