気候変動の取り組み

気候変動へのアプローチ
ソニーは、事業活動ならびに商品・サービスのライフサイクル全体でGHG排出量ゼロを目指します。排出量削減を目指す上で、TCFD提言に沿った形でのシナリオ分析※1を行い、気候関連リスク・機会の分析と把握、対応策の検討などを実施しています。GHG排出量ゼロに向けた主たる対応策としては、使用するエネルギーについて、徹底した省エネルギー(省エネ)化と可能な限りの再生可能エネルギー(再エネ)※2の導入を進めます。
具体的には事業所における使用電力量の削減と太陽光発電設備などの設置推進、および製品・サービスにおけるエネルギー利用効率の最大化とともに、製造委託先や原材料・部品サプライヤーなどのサプライチェーンに対しても同様の取り組みを働きかけ、直接的・間接的なGHGの排出量削減に努めます。なお、最終的に排出抑制が不可能なGHGについては、 炭素除去など排出量を相殺する方法も検討していきます。
- ※1TCFD提言に沿った形でのシナリオ分析についての詳細は、以下の「気候変動関連開示 (TCFD) 」をご覧ください
- ※2再エネとは再生可能エネルギーの略で、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、永続的に利用できるエネルギーのことです
バリューチェーン全体のGHG排出量の把握
GHGについては、近年の気候変動問題の深刻化にともない、企業に対してバリューチェーン※3全体における排出量を把握・管理することが求められています。ソニーでは、主要な原材料・部品サプライヤーおよび製造委託先でのGHG排出量を把握するとともに、バリューチェーン全体におけるGHG排出量を算出しています※4。2025年度におけるソニーのバリューチェーン全体におけるGHG排出量は約1,438.6万トンでした。排出量が最も多かったのは「製品使用時のエネルギー」に起因するもので約745.1万トン、次に多かったのは材料や部品などの「購入した製品・サービス」で約372.5万トンでした。今後も、ソニーではバリューチェーン全体のGHG排出量の把握と管理に努めます。
- ※3バリューチェーンとは、製品の素材調達、製造、使用、廃棄までの一連のプロセスのこと。製品製造の上流と下流を含みます
- ※4GHG排出量は、GHGプロトコル「スコープ3基準」、環境省ガイドラインなどを参照して算出しています。バリューチェーン全体におけるGHG排出量のデータの集計範囲については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「環境データ集計の対象期間と範囲および精度」「集計範囲」「事業所データ」、データの集計方法および考え方については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「温室効果ガスに関連するデータの集計方法と考え方」をご参照ください。なお、当社は2025年10月1日に金融事業のパーシャル・スピンオフを実行しており、本レポートでは原則として金融事業を除く範囲を集計対象としていますが、本実績については、「環境データ集計の方法および考え方」に則り、本スピンオフ実行までの期間における金融事業の実績を含みます
バリューチェーンにおけるGHG排出量
サプライチェーン
原材料・部品サプライヤー、製造委託先への環境負荷低減の働きかけ
サプライチェーンにおける環境負荷削減の一環として、ソニーは原材料・部品サプライヤーおよび製造委託先に対して、「GHG排出量の把握と、排出削減に関する長期・中期目標の設定と進捗管理」および「立地する地域の水枯渇リスクを考慮した水使用量削減目標の設定と進捗管理」を求めています。あわせて、ソニーに納入される原材料・部品・製品の製造にかかわるGHG排出量や水使用量の実績、削減目標の設定状況に加えて、生物多様性への配慮や保全活動の実施状況など、環境負荷低減に関する調査を毎年実施しています※5。
2025年度は、ソニーの総取引額のうち約90%を占める原材料・部品サプライヤーならびに総取引額のうち約90%を占める製造委託先から、各調査データの回答が得られました。また、製造にかかわるGHG排出量の算出ができていないサプライヤーに対しては、排出量の算出を支援するためのツールやガイダンスを提供しました。その結果、調査対象の全サプライヤーが自身のGHG排出量を算出し、把握しました。
また、Science Based Targets (SBT) 1.5℃目標である「2025年度までにサプライチェーンにおけるGHG排出量の10%相当の原材料・部品サプライヤーおよび製造委託先がSBT相当の目標を設定」の達成に対しては、サプライチェーンにおける2025年度のGHG排出量の11%相当のサプライヤーがSBT相当の目標を設定しました。また、ソニーは主要な原材料・部品サプライヤーに対し、ソニーグループ向け製品製造時の購入電力の使用にともなうGHG排出量を2030年度※6までに実質ゼロにするための行動を働きかけ、50社以上のサプライヤーから合意を得られています。
- ※5ET&S分野、G&NS分野、I&SS分野およびその他分野における原材料·部品サプライヤー、ならびに、ET&S分野およびG&NS分野における一部の製造委託先が対象です
- ※6環境計画「Road to Zero」および一部の中長期環境目標の目標達成時期について、従来は「20XX年」と表記していましたが、環境データの集計および目標管理を年度単位で行っている実態に合わせ、本レポートより「20XX年度」と表記しています。なお、公表済みの目標内容に変更はありません。
省エネ活動のノウハウ提供や再エネの活用提案
ソニーは2022年度より、サプライヤーエンゲージメントの一環として、事業所で取り組んできた省エネ活動のノウハウをサプライヤーに提供する「パートナーエコチャレンジプログラム」を推進しています※7。このプログラムでは、環境活動や工場のエネルギー管理に精通する担当者がサプライヤーを訪問し、製造現場の改善点を抽出してソニーのノウハウを提供します。それを起点に、半年間のプログラム期間の中でサプライヤーの製造現場の社員が主体的に改善活動を展開し、その効果を検証していきます。期間中、ソニーは定期的な進捗確認、現地訪問による活動サポートを行う一方、省エネに関する基礎講習会の実施や、サプライヤーが自ら省エネ活動を実施するためのチェックリストの提供など製造現場全体の改善意識の向上も図っています。さらにこのプログラムでソニーは、サプライヤーの電力使用状況に合わせた再エネの活用提案や、SBT相当の目標設定および目標の認定取得に向けた継続的な支援を行っています。
2022年度は日本国内の製造現場を対象にしていましたが、2023年度は中国、2024年度はタイの製造現場へプログラムの実施地域を拡大し、2025年度も継続的に活動しました。それぞれの現場では省エネ活動を実施するための体制が構築され、数多くの改善活動が進められており、現場社員の自発的かつ継続的な行動につながっていることが窺えました。
- ※72025年度において、主にET&S分野において取引関係にある一部の原材料・部品サプライヤーへの支援を実施しました
事業所
事業所のGHG総排出量
ソニーは「2025年度までに事業所のGHG排出量を総量で5%削減 (2020年度比)※8」という目標を掲げ、エネルギー使用にともなうCO2およびPFC (パーフルオロカーボン) などのGHG排出量の削減に取り組んできました。2025年度の事業所のGHG総排出量は約97.0万トンで、2020年度比で約12.0%減となり、目標を大きく上回って達成しました。半導体製造事業所におけるエネルギー使用量は増加しましたが、各地域の事業所における省エネ活動の推進および再エネの導入拡大などのGHG排出削減施策を進めた結果、総排出量は減少しました。
- ※8データの集計範囲については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「環境データ集計の対象期間と範囲および精度」「集計範囲」「事業所データ」、データの集計方法および考え方については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「温室効果ガスに関連するデータの集計方法と考え方」「事業所の温室効果ガス排出量」をご参照ください。なお、当社は2025年10月1日に金融事業のパーシャル・スピンオフを実行しており、本レポートでは原則として金融事業を除く範囲を集計対象としていますが、本目標の実績については、「環境データ集計の方法および考え方」に則り、本スピンオフ実行までの期間における金融事業の実績を含みます
事業所のGHG総排出量
事業所でのエネルギー使用にともなうGHG排出量
ソニーでは高効率機器の導入やエネルギーの循環利用の推進などのハード面による施策に加え、省エネ推進者を育成するプログラムを実施するなどのソフト面での施策も強化し、GHG発生の抑制に努めています。
2025年度のGHG総排出量約97.0万トンのうち、事業所でのエネルギー使用にともなうGHG排出量※9は約84.2万トンで、2020年度比で約16.3万トンの減少となりました。前記のエネルギー使用にともなうGHG排出量には社有車の車両燃料による排出量も含まれ、2025年度における車両燃料によるGHG排出量は約0.7万トンでした。
- ※9データの集計範囲については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「環境データ集計の対象期間と範囲および精度」「集計範囲」「事業所データ」、データの集計方法および考え方については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「温室効果ガスに関連するデータの集計方法と考え方」「事業所の温室効果ガス排出量」「エネルギー使用にともなうGHG排出量(エネルギー起因)」をご参照ください。なお、当社は2025年10月1日に金融事業のパーシャル・スピンオフを実行しており、本レポートでは原則として金融事業を除く範囲を集計対象としていますが、本実績については、「環境データ集計の方法および考え方」に則り、本スピンオフ実行までの期間における金融事業の実績を含みます
PFC類などのGHG排出量について
PFC類などのGHGは、主に半導体などを製造する際に、クリーニングやエッチングなどの工程で使用される地球温暖化係数の高いガスです。2025年度のPFC類などのCO2換算GHG排出量※10は約12.9万トンで、2020年度比で約3.1万トンの増加となりました。PFC除害装置の導入などの削減活動を行っていますが、半導体デバイスの増産により、総排出量は増加しました。
- ※10データの集計範囲については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「環境データ集計の対象期間と範囲および精度」「集計範囲」「事業所データ」、データの集計方法および考え方については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「温室効果ガスに関連するデータの集計方法と考え方」「事業所の温室効果ガス排出量」「PFC類などの温室効果ガス排出量(非エネルギー起因)」をご参照ください。なお、当社は2025年10月1日に金融事業のパーシャル・スピンオフを実行しており、本レポートでは原則として金融事業を除く範囲を集計対象としていますが、本実績については、「環境データ集計の方法および考え方」に則り、本スピンオフ実行までの期間における金融事業の実績を含みます
省エネ推進の事例
2030年度までのGHGの削減目標の達成に向け、ソニーは世界各地の事業所で省エネ活動に取り組んでいます。
工場における高効率エネルギーシステムの導入
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社(SCK)長崎テクノロジーセンターでは、増設棟「Fab 5」の建設に際して、半導体業界最高レベルのエネルギー高効率工場とすることを目指しました。例えば、半導体製造用クリーンルームの温湿度調整に使用する冷凍機やボイラーにおいて、冷凍機をAIの活用により最小動力で稼働させる高度な運転制御技術を採用するとともに、ボイラーの稼働低減策として他の生産装置の廃熱を再利用するシステムを導入しました。これにより、クリーンルーム稼働に必要なエネルギーの消費効率を2015年度比で約30%改善しています。
Sony Technology (Thailand) Co., Ltd. (STT)では、各サイトで高効率のチラーシステム※11を導入・運用することにより、空調システムにおけるGHG排出量の削減に取り組んでいます。同社のChonburi PlantではKansai Energy Solutions (Thailand) Co., Ltd.と協力し、また、Bangkadi Plantでは社内主導の取り組みを通じて、2025年度において2工場合計で年間約1,248トンのGHG排出量を削減しています。
Sony DADC Europe GmbHでは、2021年度に設置したヒートポンプにより熱回収効率を向上させ、2025年度の天然ガス消費量を2021年度比で年間78%削減しました。
- ※11冷凍機により作った冷水を工場内に供給するシステム
製造現場の社員が考え行動する省エネ活動
ソニーは、世界各地の事業所で省エネ活動に取り組んでいます。近年は建物設備の効率化に加え、製造現場の社員たちが主体となった省エネ活動を積極的に実施しています。
この活動では、ソニーの生産業務の中で電力を最も消費する製造現場において、現場を熟知する製造部門の社員たちが主体となって自ら厳しい削減目標を掲げ、施設管理部署と綿密に連携しながら製造工程で使われるエネルギー量の見える化を行い、工程での無駄を洗いだしたうえで改善施策を策定・試行し、確認した結果を踏まえ継続的改善につなげます。また、改善された優良事例は他の事業所へ展開しています。
これら社員主体の活動は、2009年にソニーグループ株式会社 仙台テクノロジーセンター(当時) / ソニーストレージメディア株式会社 多賀城サイトが実施した「エコ・チャレンジ・プロジェクト」がきっかけとなり、その実効性の高さから、今では世界各地の製造事業所に広がり、現場の改善活動に組み込まれるようになりました。
Sony Technology (Thailand) Co., Ltd. では2025年、エアコンや照明などの生産環境と、生産設備を含む製造施設の両面から、社員が積極的に省エネ活動に取り組みました。空調エリアは年々拡大しているにもかかわらず、倉庫の温度管理の改善や作業環境の向上により、2025年度の電力消費量を前年度比で1.2%削減することができました。Sony EMCS (Malaysia) においても社員主導のもと、生産環境と設備の両面から省エネ活動を推進しています。設備ごとの使用状況や稼働時間の把握を通じて電力使用の最適化を図り、生産計画に応じた無駄のない運用を実現し、電力消費量の削減につなげています。
再エネの使用量と再エネ電力率
ソニーは「2025年度までに、事業所における電力使用のうち、再エネ由来の電力を15%以上にする (再エネ電力率)※12」という目標を掲げていましたが、2022年5月、再エネ電力率の目標を引き上げ、2025年度までに35%以上としました。この目標達成に向けて、事業所への太陽光発電設備の導入や電力会社からの再エネ由来電力の購入、証書の利用など、全世界の事業所において地域に応じた最適な再エネの導入に取り組んでいます。2023年度には2年前倒しで上記目標を達成し、2025年度の再エネの使用量は約1,290GWhで、再エネ電力率は44.5%となりました。
- ※12データの集計範囲については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「環境データ集計の対象期間と範囲および精度」「集計範囲」「事業所データ」、データの集計方法および考え方については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「温室効果ガスに関連するデータの集計方法と考え方」「再エネ電力率」をご参照ください。なお、当社は2025年10月1日に金融事業のパーシャル・スピンオフを実行しており、本レポートでは原則として金融事業を除く範囲を集計対象としていますが、本目標の実績については、「環境データ集計の方法および考え方」に則り、本スピンオフ実行までの期間における金融事業の実績を含みます
再エネ調達方針
ソニーでは再エネ調達方針を策定し、自社による再エネ発電設備の導入にあたっては、さまざまな側面から環境影響を考慮したうえで行っています。
主な調達方針
発電設備導入時および運転時の環境影響を評価し、環境への悪影響が発生しないよう配慮されていること。
環境配慮項目の例:
- 土地の安定性 (法面の崩壊などによる土砂や設備の流出)
- パワーコンディショナなどから発生する騒音
- 太陽光パネルの反射光による生活環境への影響
- 景観への影響
- 動物・植物・生態系への影響
- 事業所敷地外に設置する場合は、法規制などの確認を行うとともに、地域とのコミュニケーションを図ること
- 水力発電の場合は、発電容量が25MW以下であること (国・地域の調達環境により除外する場合あり)
- 可能な限り、新たな再エネ発電の普及を促す「追加性」を有すること
- サイトが立地する国・地域に存在する再エネ電源を選択すること
太陽光発電設備を設置している主な事業所
| 所在地 | 事業所 | パネル容量(2026年3月末時点) |
|---|---|---|
|
日本 |
ソニー・ミュージックソリューションズ JARED大井川センター |
1.7MW |
|
日本 |
ソニー・ミュージックソリューションズ 大井川プロダクションセンター |
0.2MW |
|
日本 |
ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ 幸田サイト |
4.4MW |
|
日本 |
ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ 稲沢サイト |
0.7MW |
|
日本 |
ソニーカスタマーサービス 東金テクノロジーサイト |
0.2MW |
|
日本 |
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング熊本テクノロジーセンター |
2.9MW |
|
日本 |
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング長崎テクノロジーセンター |
1.4MW |
|
日本 |
グリーンサイクル |
0.3MW |
|
米国 |
Sony Pictures Entertainment Studio |
1.8MW |
|
米国 |
Sony Interactive Entertainment San Mateo |
0.4MW |
|
英国 |
Sony UK Technology Centre |
1.0MW |
|
オーストリア |
Sony DADC Europe Thalgau Plant |
1.0MW |
|
タイ |
Sony Technology (Thailand) Chonburi Plant |
6.1MW |
|
タイ |
Sony Device Technology (Thailand) |
6.9MW |
|
マレーシア |
Sony EMCS (Malaysia) |
0.8MW |
|
韓国 |
Sony Electronics of Korea |
0.8MW |
各地域での取り組み
ソニーでは「RE100※13」への加盟前から、世界の各地域で再エネ導入を進めており、すでに多くの地域における購入電力について100%再エネ由来電力の利用を達成しています。欧州地域では2008年度にいち早く、事業所で使用する電力を100%再エネ由来電力に置き換えました。中国地域では2020年度に100%再エネ化を達成したほか、北米地域では2030年度での100%再エネ化の実現を目指し、計画的に再エネの導入量を増やしています。
また、パンアジア地域では、事業所への太陽光発電設備の設置や、再エネ証書の積極的な活用によって、2022年度に全製造事業所において購入電力の100%再エネ化を実現しました。Sony Technology (Thailand) Co., Ltd. の Chonburi Plant では、2025年度に駐車場屋根のオンサイト太陽光発電設備の増設を行いました。
日本・東アジア地域においても、さまざまな方法で再エネ導入を進めています。2025年度においては、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社 (SCK) 長崎テクノロジーセンターの増設棟「Fab 5」に発電容量約1.4MWのオンサイト太陽光発電設備を新設しました。 また、Sony Electronics of Korea Corporation (SEK) でもオンサイト太陽光発電設備の増設を行い、発電容量が約0.8MWになりました。
ソニーでは、2022年度より日本初の取り組みとして、フィードインプレミアム (FIP) 制度を活用したバーチャルPPA※14の運用を行っています。バーチャルPPAでは発電した電力は市場で売却されるため、市場価格の変動リスクを受け、損失が生じた場合には需要家であるソニーが補填しなければならないという課題がありました。FIP制度を活用することで国からの交付金 (プレミアム) により、価格変動リスクを抑えることができ、経営的に持続可能な再エネの調達が可能になります。この活動によって、ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社 幸田サイトは年間約220万kWh規模の再エネ由来電力の環境価値を導入しました。さらに、2023年度より、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社もFIP制度を活用したバーチャルPPAを導入しています。
- ※13「RE100」は、全世界での事業活動で使用する電力を100%再エネにすることを目指す企業が参加しており、国際NPOであるThe Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもとで主導する国際的なイニシアティブです
- ※14バーチャルPPA (Virtual Power Purchase Agreement) とは、需要家 (電力を使用する企業) が直接、発電事業者と長期的に電力購入契約を結ぶ仕組みで、実際の電力ではなく再エネ由来電力に含まれる「環境価値」を取引します
物流
国際間・域内における物流GHG排出量
ソニーは「2025年度までに国際間・域内における物流GHG排出量を総量で10%削減 (2018年度比) する※15」という目標を掲げ、製品や梱包の小型・軽量化による輸送重量の削減に取り組むとともに、輸送効率の最適化や、環境への負荷が低い輸送手段への切り替えなどの活動に取り組んできました。
2025年度の製品輸送 (国際間・域内) にともなうGHG排出量は、2018年度比で約42.7%減の約10.3万トンとなりました。減少要因としては、輸送量の変化の他、GHG排出量の少ない輸送手段への切り替え、他社との共同物流やミルクランの活用などによる輸送の集約化、カートンサイズの最適化などを含む梱包仕様の見直しを通じた積載効率の向上などが挙げられます。
- ※15ソニーグループのG&NS分野、ET&S分野、I&SS分野およびその他分野で取り扱う主要なエレクトロニクス製品 (ゲーム機、テレビ、オーディオ、カメラ、スマートフォン、イメージセンサーなど) の国際間の輸送、ならびに、ET&S分野の製品の日本·米国·欧州·中国、ブラジルの域内輸送が対象です。ただし、日本国内についてはG&NS分野、音楽分野の製品などの輸送を一部含みます
製品輸送時 (国際間および域内) のGHG排出量
他社との共同物流による環境負荷の低減
ソニーでは2024年より、日本国内の物流における社会的課題の解決や環境負荷の低減を目指し、他企業との共同物流を実施しています。2024年には、配送範囲の広い北海道において、ソニーマーケティング株式会社と当該他企業の物流倉庫を統合し、各量販店の物流センターへの共同配送に着手しました。その結果、北海道における量販店への配送物量の約8割を共同で配送し、輸送車両台数を削減するとともに、運送ドライバーの負担軽減および環境負荷低減を実現しました。この北海道での取り組みを踏まえ、2025年には西日本エリアでも共同物流を導入しています。
モーダルシフトの推進
ソニーは、より環境負荷を軽減する製品輸送方法の一環として、航空機による輸送から、海上輸送や鉄道輸送の利用を促進する「モーダルシフト」を積極的に実行しています。
米国ではSony Electronics Inc. (SEL) が西海岸地域からの製品輸送において、航空機やトラックを利用した輸送から鉄道による輸送への変更を進め、輸送時GHG排出量の削減を実現しています。さらに、小口輸送を減らして他の荷主との混載を行っている輸送業者と協力するなどして、輸送回数を減らし、積載効率を上げています。また、SELは、米国環境保護庁のスマートウェイプログラム参加メンバーとして、環境負荷の低減に重点を置いた輸送業者指名入札を、物流パートナーとともに毎年実施しています。これらの取り組みにより、2025年度のトンマイルあたりのGHG排出量は、2024年度比で4.13%削減されました。
日本国内では、ソニーマーケティング株式会社が、従来のトラック輸送に加え、GHG排出量の少ない鉄道や船舶を利用した輸送活動を行っています。2025年度における日本国内でのモーダルシフトによる効果は、トラックのみでの輸送に比べて約88トンのGHG排出量削減となりました。
コンテナ輸送による積載効率の向上
テレビ ブラビア®では、大型TV向けのコンテナ輸送における積載効率の改善を可能な限りのルートで進めています。従来のコンテナの積載状況は、10cm以上の厚みがある荷受台の段ボールパレットがかさばるため、1段積みしかできず、コンテナ内の上部にスペースが空いていました。この上部スペースを活用すべく、約0.5mmのスリップシートの使用を積極的に推進し、コンテナ内部の積み段を増やしています。
製品・サービス
ソニー製品がお客様のもとで使用される際に、電力が消費され、間接的にGHGが排出されます。ソニーは「2025年度までに製品1台あたりの年間消費電力量を5%削減 (2018年度比)※16」という目標を掲げ、製品カテゴリーごとに具体的な年度目標を設定し、さまざまな消費電力削減施策に取り組んできました。
2025年度のソニー全体での製品1台あたりの年間消費電力量は、2018年度比で約6.7%減となりました。なお、2025年度に販売されたソニー製品の生涯にわたる使用にともなうGHG排出量は、約745万トンと推計されました※17。 主にテレビやゲームの消費電力の削減や販売台数の減少により、全体のGHG排出量は2024年度比で約27%減となりました。
- ※16ET&S分野、G&NS分野における主機能が商用電源からのエネルギー入力で動作する機器 (AC機器)が対象です
- ※172025年度に生じた使用時GHG排出量を算出するためには、過去に販売されて2025年度も引き続きお客様のもとで使用されているソニー製品の全電力使用量から計算すべきですが、お客様のもとにどの程度残存しているかを過去の販売製品全てについて把握するのは困難です。そこでソニーでは、2025年度に販売した製品が廃棄されるまでの生涯で使用する電力量を仮定して製品使用時GHG排出量を計算しています。データの集計方法および考え方については、データブック「環境データ集計の方法および考え方」に記載の「温室効果ガスに関連するデータの集計方法と考え方」「製品使用時のGHG排出量」をご参照ください
製品の使用にともなうGHG排出量
- 注)2018年度のGHG排出係数については、各国の2013年係数を使用しています
- 注)2021年度以降のGHG排出係数については、各年度(期初または期末)の最新の係数を使用しています。また、2025年度より適用する排出係数は報告年度期末時点の最新の係数としています
製品・サービスの省エネ化と環境価値の活用
テレビ ブラビア®では、映像品質の向上と電力消費削減の両立を目指し、独自技術を幅広いモデルに展開しています。ソニー独自のLEDバックライト技術により、Mini LEDを細かいエリアごとに制御し、必要な部分のみを点灯させることで、バックライトの無駄な電力消費を抑制しています。併せて、バックライトの放熱性を高める構造設計を採用するなど、電力効率の向上に取り組んできました。これらの技術を組み合わせた結果、2025年に導入したBRAVIA 5においては、2024年のLEDモデルと比べて年間消費電力量を約23%削減しました※18。
2025年9月、PlayStation®5 (PS5®) およびPS5 Proでは、ゲーム向けの新機能「省電力モード (Power Saver Mode) 」が導入されました。ユーザーがこの機能を有効にすると、対応するPS5ゲームのパフォーマンスが抑制され、本体の消費電力を約50%※19削減できます。この機能に対応したゲームについては、PS Storeおよびホーム画面上のゲームタイトルに新しい「Power Saver」アイコンが表示されます。
光回線サービスのNURO 光では、契約者向けのサービスとしてテレビ ブラビアのリースと再生可能エネルギー由来電力プラン「NURO でんき CO2フリープラン」を提供しています。この電力プランは、天然ガスや石炭、石油などの化石燃料を使って発電された電力に、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電された電力の環境価値 (非化石証書) を組み合わせたもので、ユーザーはブラビアの使用電力を含む、家庭内で使用する電力にともなうCO2排出量の実質ゼロを実現できます。
ソニーは、映像制作のプロセスにおいてもGHG排出量の削減に資する技術の開発・提供を進めています。バーチャルプロダクション技術は、大型LEDディスプレイ、カメラ、カメラトラッキングシステム、リアルタイム3DCGレンダリングエンジンを組み合わせることで、CGで制作した背景と実際の被写体をスタジオ内でリアルタイムに合成した撮影を可能にし、ロケーション撮影に伴う人員や機材の移動を抑制します。さらに、バーチャルプロダクション用途などで使用される高画質LEDディスプレイ Crystal LED VERONAでは、高効率な微細LEDチップと独自の電力制御技術により、従来比で約32%※20の電力効率向上を実現しています。
- ※18一定条件下での比較による。当社調べ
- ※19以下3タイトルの消費電力の測定結果に基づく値です
PS5省電力モード オフ/オン時:
『Demon’s Souls』:222W/89W
『Death Stranding 2: On the Beach』:214W/112W
『Call of Duty: Black Ops 7』:210W/103W
省電力モードを有効にしていない場合、またはゲームが本機能に対応していない場合は、パフォーマンスは抑制されず、消費電力も削減されません - ※20最大輝度で算出した単位輝度あたりの電力効率の向上。単位輝度あたりの電力効率とは光源がある輝度を出すのに必要な電力量を示します。また、Bシリーズ ZRDB15Aを従来のLEDとして、VERONA ZRD-VP15EB (キャリブレーション機能オン時) と比較しています
啓発活動
ゲーム技術を活用した気候変動への意識向上
Sony Interactive Entertainment (SIE) は、気候変動への対応を支援するため、2019年の国連気候行動サミットにおいて「Playing for the Planet Alliance」に加盟しました。その取り組みの一環として、SIEは2025年6月、PS5およびPS VR2向けに「Climate Station」の無料配信を開始しました。Climate Stationは、バーチャルリアリティをはじめとした最新のゲーム技術を駆使し、プレイヤーが複雑な気候データを視覚的に確認し、操作しながら理解できるようにすることで、気候変動への意識向上を図るものです。
このアプリケーションでは、「Weather Year (ウェザーイヤー) 」、「Observations (観測データ) 」、「Projections (予測シミュレーション) 」という3つのモードを通じて、気候変動について紹介しています。また、気候変動を解説する「Explainer Library (映像ライブラリー) 」も収録されています。
「Weather Year (ウェザーイヤー) 」では、2019年と2020年における地球規模の気象データを分析し、森林火災、暴風雨、洪水、干ばつといった主要な気候事象に加え、雲の動き、暴風雨の進路、温室効果ガス、海氷の変化など、より広範な気候パターンを紹介しています。
「Observations (観測データ) 」では、120年以上にわたる気候データを集約しており、数千地点で記録された気温データを通じて、長期的な気温変化を追跡できます。また、大気中のCO₂濃度、海洋熱量、海面上昇といった指標も提供し、気候変動を裏付けるデータを示しています。
「Projections (予測シミュレーション) 」では、気候変動に関する政府間パネル (IPCC) のモデルや排出シナリオを用いて、将来の気候条件をシミュレーションすることができます。異なる排出シナリオによって、気温、異常気象、生物多様性、干ばつ、洪水などの主要な気候指標やリスクがどのように変化するかを確認できます。
Climate Stationの「Explainer Library (映像ライブラリー) 」では、異常気象から科学モデルまで、気候変動に関する90分間のマルチメディアコンテンツを提供しています。これらの解説コンテンツは、複雑な概念をわかりやすく、印象的に伝えることを目的としています。
Climate Stationは、家庭だけでなく、研究や教育の現場でも活用でき、複雑な気候データを没入感のある体験として提供します。使用する情報は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) 、米国海洋大気庁 (NOAA) 、Berkeley Earth、Climate Research Unit、世界気候研究計画 (WCRP) などの専門機関のデータに基づいています。気候変動は複雑で困難な課題ですが、Climate Stationでは前向きな視点を提示するとともに、解決に向けた取り組みへの関心を高めることを目指しています。本アプリケーションは、人々の行動を促し、前向きな変化につなげていくというSIEの姿勢に基づき開発されました。
音楽業界の運動に参加
ソニーミュージックグループ (SMG) は、音楽業界において脱炭素化を推進するとともに、業界全体で気候変動に関する知見を共有する「Music Climate Pact (MCP)」に積極的に参加しています。また、SMGは、レコード生産における環境負荷を低減する「Physical Audio Eco-Tier Program」を立ち上げました。この取り組みでは、MCPが業界研究から得た科学的根拠に基づくデータをもとに、改善の余地があるポイントの特定を進めています。さらに、音楽業界全体における気候変動対策を推進するため、SMG、ユニバーサル ミュージック グループおよびワーナー・ミュージック・グループをはじめとする大手レコード会社が共同で「Music Industry Climate Collective (MICC)」を設立しました。MICCでは、録音音楽業界向けのスコープ3温室効果ガス (GHG) 排出量算定ガイドラインを策定しました。このガイドラインの策定プロセスには、独立系レコード会社、気候変動の専門家、バリューチェーン全体のステークホルダーが参加し、包括的なレビューとフィードバック期間が設けられました。当該ガイドラインは2025年にオンラインで一般公開されました。SMGは、業界全体のステークホルダーとの関係を深化することに加え、炭素排出量の測定・管理、持続可能な資材の調達、サプライチェーン基準の維持といった環境戦略を推進しています。