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素材を通じて、人の行動を変えていく。 オリジナルブレンドマテリアルのたった一つの開発軸。

Culture

新しいものを買って箱を開封するとき。その瞬間、皆さんはわくわくしませんか。実は皆さんが何気なく手にするそのパッケージには、開発者のこだわりが詰まっています。今回ご紹介する「オリジナルブレンドマテリアル」もその一つ。竹、さとうきび、市場回収したリサイクルペーパーを原料にする、環境に配慮した紙素材で、既にソニーのヘッドホン『WF-1000XM4』や『WH-1000XM5』、スマートフォン『Xperia 1 IV』のパッケージに使われています。この新素材の開発に携わった、デザイナーの廣瀬さんにお話を伺いました。

廣瀬 賢一
鷲尾 美波

「気づいたらすべて終わっていた」がパッケージの基本作法

オリジナルブレンドマテリアルの発想はどこから始まったのでしょうか。

オリジナルブレンドマテリアルは、それまで私たちがつくってきたパッケージの考え方が進化して発展して行きついたものです。例えば、箱を開けて中の袋から取り出して商品にたどりついたときには、机の上が梱包材でいっぱいになって煩わしさを感じる経験がありますよね。ソニーでは「OOBE(ウービー、out-of-box experienceの略)」というパッケージの基本作法を重視しており、パッケージを手に取って開封するその最初の出会いから商品を使い出すまで、煩わしさのないパッケージ体験ができるように工夫しています。商品の発売後にパッケージに関して調査をすると面白い結果が出ます。「気づいたらパッケージ開封は全て終わっていた」、「パッケージについてあまり記憶がない」といった声が上がります。私たち開発者にとっては、煩わしさのないパッケージ体験をつくれた証拠で、これらは最高のコメントです。また、パッケージにいろいろな材料が使われていたり、紙にプラスチックのコーティングがされていたりすると分別に非常に困ります。総合的に考えて、煩わしさなく環境にも配慮するために、「再生素材でありながら単一素材でパッケージづくりが完結できること」、これが私たちの大きなテーマとなりました。

竹、さとうきび、市場回収リサイクルペーパーを原料にした紙素材

その材料に「伝える力」はあるのか。

こうして始まった素材開発。中国から竹を、タイからさとうきびを、アジアで市場回収リサイクルペーパーを調達するとのことですが、なぜ日本国内で原材料の産地を選定しなかったのでしょうか。

ソニーの商品は世界中に広く行き渡るので、世界を基準に物事を考える必要があります。私たちは、オリジナルブレンドマテリアルのことを「コミュニケーションマテリアル」とよく呼んでいます。単なる素材ではなく、商品を受け取るお客さまに「伝える」ことによって環境に対する行動変容を起こすための素材を意味しています。大切にしているのは、この原材料を世界に伝えて誰の心が動くか、という観点です。例えば、オリジナルブレンドマテリアルの原材料である竹は中国の貴州で採集していますが※、ここは持続可能な栽培伐採が行われて自然が維持されているエリアで、世に伝えるべき美しいところです。そして、中国にはパンダが生息しています。パンダが食べられる竹は実は10種類くらいしかないそうですが、オリジナルブレンドマテリアルでは別の種類を使っています。パンダの餌とは被っていない安心感を持っていただくために、現地で「パンダの餌ではない」という証明書も発行してもらっています。
※2023年4月現在

中国貴州の竹林

ユーザーの行動ありきの材料選定なのですね。

まさにその通り。人は、何かを知ったり感じたりすることで、行動が少しずつ変わっていくものです。だからこそ、ユーザーに環境を考える行動を起こしてもらうためには、パッケージを「伝えられる材料」で構成する必要がありました。商品を受け取り開封した後、パッケージを廃棄するのではなく、再生するという選択肢をとってもらうにはどうすればいいのか。ユーザーの行動を変えるという判断軸を絶対に揺るがさないことで、これまでのパッケージの常識を覆すような、全く違うパッケージづくりが成り立っていきました。

反対されるものこそ、新しさがある。

新しいものを作ることに迷いが生じたことはありませんでしたか。

そうですね。私が所属するクリエイティブセンターには、「原型を創る」というフィロソフィーがあります。その柱となるのが「先駆」・「本質」・「共感」。私が特に難しいと感じるのが、最初の「先駆」、つまりまだ誰もやっていない事をひと足先にデザインすることです。ソニーの社員は、人のやらないことをやろうとよく言うのですが、今世の中にないものを作ろうとすれば、実際は反対する人が出てくるものです。これは新しいことを言い出した人が通らなければならない宿命だと私は思っています。逆に、全員が賛成するものは、世界中の人が当たり前だと思っているという考え方もできます。自分の中で、最初は多くの人に反対されるくらいのものでなければアイデアとして切り捨てようという意識を持っておけば、先に進むことができます。

オリジナルブレンドマテリアルを提案したときの周囲の反応はいかがでしたか。

最初はほとんどの人に反対されました。季節ごとに色合いが変わる市場回収リサイクルペーパーが混ざっているため、「色ブレ」のある素材になっていたり、材料である竹の調達場所を1カ所の山に限定していたり。これまでのパッケージづくりと異なる路線を行こうとしていたので、懸念の声が多くあったのは当たり前だったと思います。まず自分で心構えをして、反対する人がいればその的確な意見を取り入れ、より良いものを作るチャンスをもらったと前向きに捉えることが大事だと思います。私自身も最後まで意志を貫き、周囲に伝え続けることで、理解してくれる協力者が徐々に増えていき、今があります。常に動き続け、言い続ける人には、必ず仲間が寄ってきてくれるものです。加えて、ソニーには「試してみたいです」と言うと自由に挑戦させくれる風土があり、その環境も後押ししてくれました。

反対されてもご自身の軸を貫き通すことができたモチベーションの源は何でしょうか。

違う立ち位置で違う考え方をすると、違う世界が見えてきます。そして違う世界を見ると楽しくなっていきます。そういう考え方でものづくりをしていると、非常にモチベーションが上がってきます。立ち位置を1メートル変えてみるだけで、風景は変わります。まずは行動してみることがとても大切です。会議室で考えていても何も見えてこなかったのに、中国の竹林に行くと考え方が変わります。迷ったら行動する。そうすれば、物事が明らかになってくると思いますし、ソニーはその自由さを許してくれる会社ですね。

いろいろなものに変身できる、「万能細胞」として。

今後、オリジナルブレンドマテリアルを使うパッケージが増えていくのでしょうか。

実は、ソニー社員の名刺や封筒など、パッケージ以外のものに既に展開しています。名前に「ブレンド」と入っているように、オリジナルブレンドマテリアルは3つの原材料の配合を変えることで、超薄紙から厚紙まで成型することができます。例えば以前、日本を代表するテクノロジーの展示会でソニーのブースを作った際に、ソニーのロゴや展示物を置くテーブル、側面のカーテンまで、全てオリジナルブレンドマテリアルで完成させたことがあります。どんなものにも変身できる「万能細胞」としてさまざまなシーンで活用できるように、汎用性の高さも重視しています。

展示会でのソニーブースの様子 テーブルからカーテンまであらゆる厚さ・形のものをオリジナルブレンドマテリアルで制作

最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

環境への配慮は幅広く求められ、すぐには対応が難しい部分もありますよね。でも私は「人の行動を変える」こと以上の正解はないと思っています。何人の心を動かして行動変容に繋げられるか。その中でオリジナルブレンドマテリアルに込めた想いが皆さんに届くことを祈っています。

<編集部のDiscover>
素材に込められた意味を知ると、人の行動は変わる。実は廣瀬さんとお話しした後から私も世の中にあふれているパッケージを見る目が少し変わった気がしています。
人の行動を変えることという軸を大切に、この世界にオリジナルブレンドマテリアルという画期的な素材をもたらした廣瀬さん。その開発への熱い想いや意志の強さに、私という一人の心がまず動かされました。皆さんはいかがでしたか。


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