好きだから挑む。ソニーのエンジニアが語るFPGA AIハッカソンにかけた情熱

「好きなことを仕事にしたい」「会社に入っても、自分の興味を深く学び続けたい」。そう思ったことがある方は多いのではないでしょうか。私もその一人ですが、就職すると外部での活動は制限され、学生の頃のように情熱を注ぐのは難しいのではないかと考えていました。しかしソニーでは、「好き」を追求する想いが尊重され、働きながらも自由に課外活動の場を持つことができます。今回は、プライベートで AI 系ハッカソンに参加し、見事優勝したソニー株式会社のエンジニア3名の中から、杉岡さんと高木さんに挑戦の経緯や優勝までの過程、その後の気づきを伺いました。学び続けられる環境や、仲間との挑戦の魅力に迫ります!

- 廣瀬 羽音
純粋な好奇心が、ハッカソン参加の原動力

── まず、お二人のこれまでのご経歴を教えてください。
高木: 学生時代は、現在の業務内容とは直接関係がない全く別の技術を専攻しており、2020年に入社してから初めて機械学習に携わりました。その後、カメラの組み込み開発についてより深く学ぶため、セグメンテーションモデルのアルゴリズム開発に5年間携わりました。そして今年から現在の部署に異動してきました。
杉岡:私は2013年に新卒でソフトウェアエンジニアとして入社しました。当初はセキュリティシステムの開発に携わっており、そこで初めて画像認識技術に触れました。その後、認識系の技術や機械学習を社会実装したかったことに加え、新規ビジネスに携わりたかったため、スポーツ系の新規事業にエンジニアとして加わりました。その時に認識技術のトレンドを実感し、専門性を高めたいと思うようになりました。そして2018年に社内募集*を活用して現在の部署に異動してきました。
※社内募集について、詳しくはこちらをご覧ください。
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── 現在はどのような技術の開発に携わっていらっしゃるのでしょうか。
高木:私たちは同じ部署に所属していて、現在広く利用されているカメラの認識技術開発を行っています。今は次世代カメラに対して、AI系のモデルを使ってトラッキング機能を改善するための先行技術を検討しています。
杉岡:私は人物の瞳や姿勢の認識技術開発を担当しています。部署としては技術開発以外にも、作った技術をどのように応用して社会実装するか、お客さまのニーズにどのように応えられるか、仮説を立てて検証していくという価値探索も行っています。
── 今回参加されたハッカソンも、現在の業務内容と関連があるのでしょうか?
高木:今回参加したのは、東京大学Agile-Xプロジェクト主催のFPGA AIハッカソンです。AIモデルを FPGA ボード V260に実装し、性能と精度を競うものでした。なので、AIの活用という面では業務内容に近いですが、専門分野以外の内容はハッカソン参加に向けた準備段階で勉強しました。
杉岡:このハッカソンは、基本は学生向けですが企業で働く社会人の参加も認められていて、私たちははじめソニーとは名乗らず覆面で参加しました。
── 覆面で…!?プライベートで参加するつもりだったということですか?
杉岡:そうですね。このハッカソンは、もう一人のメンバーである湯澤さんが見つけてきてくれて、部署内で雑談をしている時に紹介されて存在を知りました。その時は完全にプライベートで参加しようとしていました。
高木:はじめはソニーの名を出さず参加しようとしていたので、当日会場でチーム名を聞かれたときには「パソコン部」とその場しのぎの回答をしてしまいました(笑)。
── プライベートで外部の活動に参加できるのですね。そのような機会は少なくないのですか?
杉岡:わりとみんな好きなことをやっている印象があって、かなり自由度は高いと思います。カタチはさまざまですが、それぞれ社内の勉強会や外部での発表の場を設けるなど、自分の興味のある技術を深掘りしている人も多いです。
高木:他にも、写真が好きで外部の展示会に出展するなど、自分の興味範囲で外部でも活躍の幅を広げている方が多いです。
仲間とともに、勉強会とは違うリアルな学びと挑戦

── では、実際にハッカソンに参加しようと決めたきっかけや理由は何だったのでしょうか?
高木:第一印象で面白そうだなと感じて、最初は好奇心から本当に軽い気持ちで参加しました。私はAIやソフトウェアの専門性があるので、その部分で何か貢献できればと思った一方で、ハードウェアについては深くは知らないので勉強したいと思いました。
杉岡:私もやはり勉強したいという想いが強かったですね。個人的に、普段からコンテストやハッカソンなどの情報はチェックしていて、外部の活動に参加することには抵抗がなく、どんどん挑戦したいと思っているので、今回はFPGAハッカソンで勉強することにしました。
── エンジニアの方々は勉強会に参加される機会も多いと思いますが、勉強会とハッカソンの違いは何ですか?
高木:まず、かける時間が全く違います。また、勉強会は講座形式のものが多く受け身になってしまうことも多いのですが、ハッカソンなどは明確に競う相手がいて、自分で手を動かします。目標を達成するためにできる限りの時間を使って取り組む、という意味で勉強会とは大きく異なると思います。
── 参加するにあたり、なぜこの3人が集まったのでしょうか?
高木:前提としてチームの人数上限が3人と決まっているのですが、部署内で自然とやりたい人が集まった感じですね。
杉岡:仕事のタイミングもちょうど都合がよかったのもありますが、3人とも好奇心と、このハッカソンで勉強したいという想いがあったので自然とメンバーは決まりました。
── 勉強したいという想いが一致した3人が集まったのですね。メンバーが集まってからは、どのような準備をされていたのでしょうか?
高木:まず、湯澤さんがFPGAボード上で動かすソースコードのベースラインを整えてくれました。ベースラインが整ってからは、まずボードを動かしてみて挙動とスコアを確認しました。そして、どうすればスコアが伸びるか考え、開発項目の洗い出しと性能目標の設定を行いました。私自身はボードについても一から知識を身につけて、理解しました。
杉岡:通常業務と同じようなミーティングをしていましたね(笑)。過去参加しているAI系コンペのノウハウを生かして、進めるにあたって提出期限から逆算して優先順位を決めて、早い段階から勝つための戦略を話し合いました。

チーム一丸で生みだした時間、苦労を超えて高まる熱量

── 通常業務もある中、どのように両立されていたのでしょうか?
杉岡:もちろん定時までは通常業務に専念していたので、プライベートの時間をかなり使いました。学生は研究室一丸となって取り組んでいる方々もいましたが、私たちは「どうにか時間を生みだす」「時間を絶対につくってやる」という意識で取り組んでいました。通常業務に支障が出ないように進めるというのは、大前提のルールになっていましたね。
── 苦労したことや辛かったことはありますか?
高木:大きく辛いと感じる場面はありませんでした。ただ、4月の初期段階は通常業務との両立ペースがまだ固まらず、まずどこから手を付けるかを探っている状態で、ハッカソンへの気持ちが十分に乗り切らない期間が続きました。
杉岡:当時は飲み会で音を上げていましたね(笑)。私はずっと楽しかったので辛いと思ったことは特にないですが、時間の捻出は大変でした。ハッカソンにも取り組む中で家族との時間を確保するのが難しかったです。
── それぞれどのように乗り越えられたのでしょうか?
高木:ちょうどゴールデンウィークがあり、まとまった時間が取れたことが大きいです。その時期にFPGAボードに少し触れ始めたのですが、いざ始めてみると少しずつギアが上がっていくような形になりましたね。
杉岡:ハッカソンにかける時間と家族との時間のバランスは難しかったですが、メンバーも家族も理解があったので感謝しています。また、やるからには絶対に成果を出すと決めていたので、最後の方は全員の頭の中が興奮しているような状態になり、時間の捻出は意外と何とかなりました。
──皆さんの頭の中が興奮している状態!?すごいですね。そんな熱量になるのにどれほどの時間をかけたのでしょうか?
杉岡:はじめは停滞する時期もありましたが、最後の2週間ほどは加速して毎日3時間以上はやっていました。最後の2日間なんかは、睡眠時間も削り20時間くらいかけて追い込んでいました。もう意地でしたね。プロとして絶対に勝ってやるっていう(笑)。
高木:誰も、寝ようと言い出さなかったですもんね。結局、発表直前まで改良を重ねていました。
── チームはどのような雰囲気だったのでしょうか?
高木:雰囲気はよかったですね。それぞれ専門分野が違って、相互に情報共有もできましたし、役割分担が上手くできていました。
杉岡:湯澤さんがハードウェア、高木さんがモデル、私がソフトウェアを担当していたのですが、絶対に誰かが手を動かしている状況だったので、それを見て自分もやらなきゃという気持ちになりました。
── とても素敵なチームですね。
高木:やっぱり目標や想いの強さ、熱量が一致していたのでやりやすかったです。熱量をもって取り組んでいるメンバーを見て奮起されることも多かったです。一人だったらここまではできなかったと思います。
杉岡:全員自分の専門以外にも興味があって、お互いに何かアドバイスを入れると、どんな無理難題でも受け止めて試行錯誤するメンバーだったので、ここまでできたのかなと思います。
ハッカソンへの挑戦がもたらした、濃密な時間と成長

── 今回ハッカソンに参加してよかったこと、得られたことは何ですか?
高木:通常業務では、短い時間の中でこれほどの熱量をもって一つの目標に取り組むという経験はなかなかないので、密度の濃い時間を過ごせました。その中で、多くの刺激を受け、自分自身も成長できました。
杉岡:私も同じで、やはりチーム一丸で一つの目的を達成するなかで、課題に対する進め方や分担について学ぶことが多かったです。通常業務では見えていなかった、メンバーの意外なスキルや知識、情熱を発見できたのも良かったです。
── 今回の経験を、通常業務にどのように生かしていきたいですか?
杉岡:まず、今回のような小さいプロジェクトで工夫したことや学んだスキルは絶対に生かせると思います。加えて、通常業務では各メンバーが業務の分担を持っていて、どうしても周りの仕事が見えなくなってしまうことがありますが、ハッカソンでは自分の担当外のことにも手を出して対応してきました。この感覚や雰囲気は通常業務にも生かせたらすごくいいなと思います。
高木:限られた時間の中で仕事を進めることや、熱量をどこで発揮するかなど、意識面で生かせることが多い気がします。また今回、明確な競争相手がいたことで、競合に対する意識も芽生えました。
── ハッカソンで優勝したことを受け、周囲の反応はありましたか?
杉岡:上長や同僚もポジティブな受け止め方をしてくれました。東北大学の研究会で招待講演の機会を頂いたことも、とてもありがたいですね。社内でも、勉強会などに声をかけてもらっているので、我々が取り組んだことや積み上げたものが、いろいろな場所で日の目を浴びられることがうれしいです。
── お話にもありましたが、東北大学の研究会で伝えたいことや期待していることはありますか?
杉岡:研究会では、FPGAやハードウェアなど、今回私たちが取り組んだことをベースに、何か興味をもってくださる方が多くいればいいなと思っています。また、これを機にネットワークを広げられたり、私たちの方が新しい知見を得られたりすることも期待しています。
<編集部のDiscover>
取材を通して、お二人の技術に対するまっすぐな熱意と、心から楽しんでお仕事に取り組んでいる様子が伝わってきました!また、会社に入っても外部での活動を制限されず、輝ける環境があるというのは、とても意外で新鮮でした。会社に入ると課外活動のような挑戦は難しいのでは…と思っていたのですが、ソニーではむしろそうした場が応援されていることを知り、就活生として希望が持てました。そして何より、高い志をもつ仲間と互いに支え合い、刺激し合いながら同じ目標に向かって取り組む機会があるということが、とても魅力的に感じました。











