【ソニーのヒトってどんな人?Vol.8】ブランドとは、未来への約束。ソニーの精神を紡ぐ仕事。

ソニーグループ(以下、ソニー)社員の「その人らしさ」に迫る連載企画。それぞれの個性をMy Work(仕事内容)、My Passion(仕事への想い)、My Sony(自分にとってのソニー)、My Future(将来の展望)の4側面からクローズアップしていきます。
今回は連載企画第8弾として、ソニーのブランド戦略をリードしてきた森さんにインタビュー。ウォークマン®などのプロダクトに関わるブランディングから、ソニーグループ全体、そして現在はエンタテインメント・テクノロジー&サービス分野において、幅広くソニーのブランド領域に携わってきた森さんのキャリア、そして森さんから見たソニーの魅力に迫ります。
My work <ブランドを守り、ブランドで攻める>
── 森さんの現在のお仕事についてまずは簡単に教えてください。
ソニーグループの中でもテレビやオーディオ、カメラやモバイル等、エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野を担うソニー株式会社におけるブランド戦略を担当しています。
── ブランド戦略というのは、具体的にはどのようなことをされるのでしょうか?
業務内容は多岐にわたりますが、まずは全ての企業活動のベースとなる、ソニー株式会社としてのMission・Vision※1を策定しました。
ソニーは2021年にグループ本社機能としてのソニーグループ株式会社を発足。そのタイミングでET&S分野における事業を統括する現在のソニー株式会社が新たにスタートしました。ソニーグループとしてはSony's Purpose & Values※2を策定していましたが、ソニー株式会社として、ET&SとしてのMissionは当時まだなかったんです。そこで社内でヒアリングやワークショップを重ね、1年以上かけてMission・Visionを作っていきました。
※1 ソニー株式会社のMission / Visionについてはこちらのページをご覧ください
※2 Sony's Purpose & Valuesについてはこちらのページをご覧ください
── なるほど、Mission・Visionを定義することがブランド戦略における仕事の第一歩なんですね。そこからはどのような活動につながっていくのでしょうか?
ブランド戦略には「守り」と「攻め」両方の側面があると思います。
ET&Sはソニー株式会社だけでなくグループ企業複数社が事業を担っており、事業展開する地域やプロダクト・サービスも多岐にわたります。そのため、ソニーという名称やロゴの使用についても、ET&Sとしてのガバナンスを徹底する必要があります。これがブランド戦略業務の「守り」です。
「攻め」というのは、策定したMission・Visionを社内外に浸透させる活動です。まずは社内、そして社外へと広げていく。それも特定のプロダクトやサービスの販売促進をめざす短期的なセールスプロモーションではなく、ソニーブランドを認識していただき、中長期的な価値を形成することを目的にしています。

My Passion <原点は、大賀さんとの約束>
── さまざまなプロダクトからソニー全体、そして現在のET&Sなど幅広くブランド領域に携わる森さんの、原点となっているようなご経験はありますか?
入社3年目からウォークマン®の国内マーケティングの担当となり、その2年後の1995年、ウォークマンが発売15周年を迎えるタイミングからはプロモーションをすべて担当することになりました。そのタイミングで私が取り組んだのが、ウォークマンのリブランディングです。
当時ウォークマンは、カセット・CD・MDなどのメディアごとに担当事業部が分かれており、宣伝用ロゴなども全世界では統一されておらず、ブランドとしての強度を保ちづらいと感じていました。そこで商品企画部に異動後に社内公募をかけ、いくつもの案の中からウォークマンの新しいブランドロゴを選定しました。

通称「W.(ダブルドット)」。「.」には「永遠に続く」という、ブランドへの期待を込めた。
── ウォークマンはソニーを代表するプロダクトですから、ご苦労もあったのではないでしょうか?
はい、ウォークマンは、ソニーの創業者である井深さん・盛田さんがつくったブランドでもあり、担当事業部も分かれていたため責任者の数も多く、なかなか話がまとまりませんでした。最終的には、大賀さん(最高経営責任者を経て会長・名誉会長を歴任)がYESと言うなら…ということになり、私が直接プレゼンテーションすることになりました。
大賀さんが出席する会議の場で、新しいロゴマークをお見せして、ウォークマンブランドの課題と実現すべきことを説明したのですが、大賀さんからは「私はこのロゴは好きじゃない」と言われてしまいました。
── なんと…。
私も泣きそうになったんですけど(笑)、続けて大賀さんからこう言われたんです。
「だけど、あなたが本当にこれを必要だと信じて、ソニーのためになると信じ、やりきるというコミットをするのであれば、私は支援するよ。できるかな?」
そう言われたら私には「はい」以外の回答は無いので、「はい、やります」と答えると、大賀さんも「よし、わかった」と言ってくれて。次の日から全社に情報を下ろしてバックアップしてもらいました。
正直、すごい会社だなと思いました。とんでもない責任を押し付けてくる会社とも言えますが(笑)、年次に関わらず、信じてやれば任せてもらえる会社なんですよね。だからこそ、言ったことには責任を持って約束を果たす。まさにブランドとはステークホルダーとの約束ですから、このときの経験が私の原点になっていると思います。

My Sony <ライバルは、過去のソニー>
── 森さんは、ワールドアスレティックスやワールドアクアティクス、ナショナルフットボールリーグ、ナショナルホッケーリーグなど世界のさまざまなスポーツ競技団体とのパートナーシップ契約を主導されてきました。世界でソニーブランドはどのように見られているのでしょうか?
ソニーの製品や技術は世界中で使われ、グローバルブランドとして認識されているため、どこに行っても非常に受けは良いです。また、ソニーというブランドが信頼されているとも感じます。たとえば、パートナーシップ契約の会話は通常トップとトップで行われるものですが、私しかいなくても先方は同じテーブルに着いて議論してくれる。これは、ソニーが信頼されていなければできないことでしょう。ソニーブランドが世界中で信頼いただけていることをありがたいと思うとともに、その信頼を絶対に裏切ってはいけないという責任も感じます。
── 森さんから見たソニーについても教えてください。
全世界のほとんどの人が認識している、なかなか稀有なブランドなのではないでしょうか。ブランドというものは一朝一夕でできあがるものではありませんから、創業から来年で80年の歴史を積み重ねてこられた諸先輩方、そしてさまざまなプロダクトやサービスの実績があったからこそ今のソニーがあるのだと思います。
── そんなソニーブランドを継承し、つくりあげていくうえで、森さんが大事にされていることはありますか?
まずはこの大切に積み上げられた歴史に泥を塗るようなことがあってはならないということです。一方で、過去に囚われすぎていてはいつまでも新しいものが生まれず、古いブランドになってしまう。だから私は、ライバルは過去のソニーだと思うようにしています。ライバルというのは敵ではなく、良い競争相手ということです。なかなか超えることは難しいけれども、過去のソニーをリスペクトしながらもなんとか超えてやろうとチャレンジを続けています。

My Future <「ソニースピリット」を次世代へ>
── これはあくまでも森さん個人の意見としてお伺いしたいのですが、理想とするソニーの未来について教えてください。
ソニーには創造と挑戦のDNAがあって、イノベーティブなことができる会社だと私は思っています。創業者である盛田さんは、ソニーという社名が決まったときに周囲から「何の会社かわからないから、電子とか電機とか付けた方がいい」と言われても譲らなかったそうです。ソニーはどんどん新しいものを作り続けるのだから、10年後、50年後、100年後に何を作っているかわからない。だから社名を定義しないんだ、と。当時のソニーと今のソニーがまったく違う会社になっているように、ソニーはこれから先もずっと形を変えながらユニークなチャレンジを続けていくだろうと私は想像していますし、またそうであってほしいとも思っています。
── 森さんが今後、取り組んでみたいことはありますか?
私はソニーの中でも比較的貴重な経験をさせてもらったと感じていますので、そうした経験を次の人たちにしっかりと引き継いでいきたいと考えています。
── 具体的にはどんなことを次の世代に引き継ぎたいですか?
細かいことを挙げるとキリがないかもしれませんが、一言で表現するなら、「ソニースピリット」みたいなものかもしれないですね。DNAはもうみなさんにしっかりと引き継がれているので、その上に乗せる精神のようなものでしょうか。
先人たちが紡いできた歴史を引き継ぎ、過去に敬意を払いながらも「ライバルは過去のソニー」という気持ちでさらにソニーブランドを強化していく。そうしたスピリットを継承していくという役目を私が担えればと思っています。

<編集部のDiscover>
この記事の中ではご紹介しきれなかったエピソードも含め、さまざまなプロダクトや事業、そして企業ブランディングまで、数多くの経験をされてきた森さんが語る「約束」という言葉には重みがありました。ソニーブランドはソニーのプロダクトやサービスだけでなく、ソニーを信じてくれるすべての人に対して責任を持ち、その信頼と期待に応えようとする森さんのような方々の思いによってもまた支えられ、つくられているのですね。












