理工系女子学生×ソニー。次世代にバトンを繋ぐプログラム ~未来の女性エンジニアの創出を目指す「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」とは?~


ソニーグループが2024年に立ち上げた、理工系分野を学ぶ女子学生を支援するプログラム「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」。その取り組みの狙いについて担当者に話を聞くとともに、プログラムに参加中の理工系女子学生とソニーの若手女性エンジニアにもインタビュー。今回の体験で得た気づきや理工系分野の学びを深める魅力について語ってもらいました。
2本の柱でSTEAM分野を学ぶ面白さをサポートするプログラム
「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)を掲げるソニー。ゲーム機器やテレビなどのAV機器、デジタルカメラなどの最新のテクノロジーを活用した製品は、とても身近な存在です。そんな同社が、2024年4月からSTEAM分野を学ぶ女子学生へのサポートを始めました。その背景とは?
種子島由子(以下、種子島):Purposeの実現には、イノベーションの原動力となる人材の多様性が大切だと考えています。異なる体験や視点を持つ人たちが刺激し合うことで、新たなイノベーションが生まれる、それがソニーらしさでもあります。さまざまな制約を取り除き、自ら枠を超えていくこともソニーの特徴の1つです。
ソニーの製品やサービスがターゲットとしているお客さまは、性別も年代も国籍もさまざまです。そうしたお客さまの心に響くものを創り、感動を生み出すためには、多様な価値観や背景を持った人材が不可欠ですが、これはもちろん技術の観点でも同じです。
ソニーで採用する人材の多くはエンジニアですが、その男女比においては女性が少ないのが現状です。背景には、社会の中でも広く認識されているように、日本全体で理工系を選択する女性が少ないということがあります。当社ではここ数年、産学連携などの活動を強化してきましたが、理工系の女子学生と話す中で、「女性は文系に進むべきだ」といったアンコンシャスバイアスによって理工系進学を躊躇した経験を聞いたり、さまざまな悩みを抱える人材との出会いがありました。そうした生の声も聞く中で、理工系人材の分母を増やし、未来の可能性を広げるためには、より広範囲に働きかけていく必要性を感じました。そういった課題感からも「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」は誕生しています。
このプログラムには2本の柱があり、1つは理工系の学びを支援するための奨学金プログラム。選考を経て年間最大120万円の奨学金を給付します。もう1つは、奨学生とソニーの社員が連携して、女子中高生に対して理工系分野の面白さや、働く楽しさを伝える「STEAM GIRLSバトンプログラム」です。

ソニーグループ 採用人材開発部 統括部長
杉上雄紀(以下、杉上):この「STEAM GIRLSバトンプログラム」はソニーらしいプログラムだと思います。奨学生とソニーの女性エンジニア、そして中高生と3つの世代が、バトンを渡すようにつながることを目指しています。奨学生たちは、ロールモデルとなるソニーの女性エンジニアの話を聞くことで刺激を受け、同時に自分たちからも、中高生に理工系の学びの楽しさを伝えてもらいます。実際のイベント実施後は「中高生たちが興味を持って聞いてくれたのがうれしかった」と、奨学生のみんながとてもいい表情をしていたのが印象的で、そこに手応えを感じました。
また、このプログラムでは、進路やキャリア選択におけるアンコンシャスバイアスや不安を取り除くことも目指しています。大学受験の際、高校の先生方が理工系の具体的な業種や職種をあまりご存知ではなく、選択肢として示しづらいという話もよく聞きます。また漠然と周囲から「女の子は文系のほうがいいでしょう」とアドバイスされることすらあるようです。プログラムには親御さん同伴で参加できるイベントもあるので、中高生自身はもちろんのこと、周囲の方たちの理解が深まり、バイアスをなくしていくことにつながってほしいと感じています。

ソニーピープルソリューションズ 産学越境推進室 統括課長
種子島:長期的視点の活動なので、すぐに変化が起きるかというと難しい部分もありますが、つながりから得た学びを将来に生かして下さることを私たちは心から願っています。
ソニーには、国際科学雑誌Natureと創設した「Sony Women in Technology Award with Nature」という、テクノロジー領域でより良い地球と社会を築く画期的な研究をリードする研究者を表彰し、支援するアワードがあるのですが、その授賞式に奨学生も招待しました。世界の優秀な研究者に触れることで、若い人材にもポジティブな刺激があると良いなと思います。
理工系を学ぶ女子学生とソニーの女性エンジニアが語る理工系を学ぶ楽しみ
実際に「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」にかかわる奨学生2名とソニーの若手女性エンジニアが、それぞれ理工系を選んだきっかけや、このプログラムで体験したこと、理工系を学ぶ楽しみについて語り合いました。
続麻優菜(以下、続麻):私は中学時代に大好きだった担任の先生の専門が化学だったことがきっかけで、理工系分野に興味を持ちました。ソニーとの出合いはもっと早くて、小学2年生のときに自分のお小遣いで買ったウォークマンです。その後もPlayStationなどの製品の素晴らしさ、クオリティの高さに感動し、こういうものを作れるようになりたいと、就職活動ではソニーを志望しました。晴れてエンジニアとして入社し、当初は半導体にかかわる仕事をしていましたが、現在は人事部門で「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」の運営に携わっています。

ソニーピープルソリューションズ 産学越境推進室
戸田綾佳(以下、戸田):私は現在入社4年目で、PlayStationのネットワーク機能のサーバー運用などにかかわる仕事をしています。ソニーを選んだのは、子どもの頃から算数など理数系が好きだったこともありますが、父の趣味がパソコンやゲームだった影響が大きいですね。特に、父はPlayStationが好きだったので、私も一緒に楽しんでいました。今は仕事でPlayStationにかかわれているがとてもうれしく、やりがいを感じています。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント プラットフォームエンジニアリング部
杉山輝恵(以下、杉山):私はいま情報系学部の学士課程1年で情報工学を専攻しています。小学生の頃から、クワガタやカブトムシをとったり、カナヘビやカエルを観察したり、生きものが大好きでした。中学では科学部に、高校では大学の研究プロジェクトに参加し、そこでの活動を通して生物学だけでなく、もっと幅広い分野でワクワクドキドキできるような経験をしたいと思い、現在の進路を選択しました。

「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」プログラムの奨学生
吉田真悠(以下、吉田):私は理学部の情報科学科の1年生です。小学生のときに、母が実験や勉強を体験できるイベントに連れていってくれて、そこで、プログラミング言語で自分のウェブサイトを作成しました。自分の手掛けたものが形になるのがすごく面白く、理工系への興味が深まりました。

杉山さんと同じく「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」プログラムの奨学生
参加者が語る「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」の魅力
杉山:私の大学は女性の割合が1~2割で、自分がこの先どう生きていくべきかを考えるロールモデルになる先輩が少なく、モデルとすべき人に会いたいというのが「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」に応募した一番の動機でした。実際に奨学生として参加してみて、ソニーの女性エンジニアの方とお話ができるのはもちろん、他の奨学生の皆さんと接することでも、自分の立ち位置が分かり、自分の目標を定めるきっかけにもなり、たくさん刺激をもらっています。
吉田:私が通うのは女子大で、理工系の女性が少ないということを実感はしていませんでした。ただし、女性エンジニアの方にお話を聞ける機会が貴重だと思いましたし、自分と違う分野で頑張っている理工系の仲間ができたらうれしいなと思って「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」に応募しました。私はプログラミングの勉強をしていますが、他の参加者の皆さんは生物、医療、健康など、分野が全く異なるので、自分の学ぶ分野との融合を考えると、きっと新しいことができそうでワクワクしています。また、プログラムに参加したことで、普段はなかなか触れることのない、ソニーの最新のテクノロジーを体験できたことも、すごくいい経験になりました。
戸田:私は学生時代、同じ分野で働く女性のロールモデルが少なく、就職活動では苦労しました。ですから、「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」は本当に素晴らしいプログラムだと感じますし、そういったチャンスがあることが羨ましいと思います。私の職場では女性エンジニアが1割程度しかおらず、多様な視点でより良いものを作っていくためにも、今後ますます増えてほしいと思っています。そのため今後も、エンジニアの1人としてプログラムに協力していきたいです。
続麻:私は理学部の出身ですが、本来は工学部に興味がありました。でも当時の私は、工学部は作業服を着た人がはんだ付けしている、という勝手なイメージを持っていて、自分がそうしている姿が想像できませんでした。でも、ソニーに入社し工学部出身の先輩のお話を聞くと、私が持っていた先ほどのイメージとは大きく異なった業務を存分に経験したとおっしゃっていて、中高生ぐらいのときにそのことを知っていたらもっと選択の幅が広がったはず、と思うこともあります。
そういった自身の経験もあり、いまは理工系のそれぞれの学部ではどんな勉強ができるか、さらに、その先の可能性を伝えることができる「STEAM GIRLSバトンプログラム」にやりがいを感じています。今日お話を聞かせてもらったお2人は1期生。このプログラムは今後も継続していきます。より発展的に理工系の学びを深めてもらいながら、次の世代にバトンを繋いでいく取り組みも考えていますので、これからが楽しみです。

取材・文/中澤小百合 写真/小林大介










